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2020.04.18
特集
トレーニング・栄養の統合を目指した最高のコーチングを【ニュートリションな人々 #01 ~清野隼さん①~】
Kiyohiro Shimano
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ニュートリション関係者の人物背景や取り組みについて紹介するオープニング企画「特集:ニュートリションな人々」。記念すべき第1回目は、ストレングス&コンディショニングの資格を保有しており、日本スポーツ協会公認スポーツ栄養士でもある筑波大学・清野隼さんの半生を振り返る(全5回)。

清野さんは、森永製菓株式会社が運営する「トレーニングラボ」で、長くトップアスリートを指導してきた。競技力やコンディショニングのためにトレーニングと栄養の両面を踏まえてコーチングし、現在筑波大学の特任助教として、現場で行われている実践知の体系化に向けて、多くの仕事に就いている。

ケガをした経験から栄養の大切さを知る

すぽとり スポーツ・運動シーンでニュートリションが注目されている半面、まだまだ未知数な点や進化するところがあります。トレーニング資格の保有者であり、スポーツニュートリショニストでもある清野さんは、トレーニングや運動とニュートリションの密接なかかわりについて、どうお考えでしょうか。

清野隼さん(以下、清野) そうですね。パフォーマンスを上げるためにはトレーニングだけをしていてもだめで、栄養面も一緒に考えることが重要ですし、それが統合されることで競技力やコンディショニングのイノベーションにつながると思っています。

すぽとり 多くの競技現場でコンディショニングに携わる清野さんですが、スポーツニュートリションに興味を持ったきっかけは何だったんですか?

清野 僕は小さい頃からずっと野球をやっていて、高校時代に肘の痛みに悩まされていました。その時母が栄養学の本を買ってきて、ケガが治るための食の情報を家のあちこちに張り出したんです。

最初はちょっと敬遠していたんですけど、食事をしている時でも自然とそれが目に入ってくるので、「きちんと食事を摂っていればすぐに治るかもしれない」と思って実践していました。

すぽとり お母様が大変熱心に取り組まれていたんですね。

清野 当時、スポーツニュートリションに関する情報が少なかった中、食をきちんと考えることで体調管理やケガ(からの復帰、予防)にも影響があると身をもって感じました。スポーツニュートリションに興味をもったのは、いろいろとやってくれた母の影響が大きいですね。

すぽとり その後、仙台大学の運動栄養学科に進んで勉強をするわけですね。どのようなことをしていたんですか?

清野 野球の道をスパッとあきらめて、選手をサポートする側に回ろうと。選手として経験したことをサポートに生かそうと考えました。大学1、2年の頃は、部活動の現場へ行って栄養のサポートを試みるんですが、正直言って何をすればいいかわかりませんでした。あまり知識もなかったですし、選手や監督からも「あいつ、何しにきたんだ」みたいな顔をされて(笑)。

すぽとり そんな感じだったんですか。

清野 選手たちは「なぜ食べないといけないの?」と。確かに、いきなり来て「あれを食べろ」「これを食べろ」といってもわかってくれるはずがありません。「どうしたら選手に理解してもらえるか」。そればかり考えていましたね。

それで視点を変えて、栄養面から選手をサポートするだけでなく、トレーニング面も意識するようになりました。仙台大学には学生トレーナー部というのがあって、栄養サポートを行う傍ら、トレーナー部の中でトレーニングやコンディショニングについて学ぶ機会をつくっていました。

そんなこともあり、野球部の監督から「トレーニングを見てくれ」と言われて、2年生の秋から学生トレーナーをするようになりました。

すぽとり 確かに栄養摂取の目的を理解してもらうのはなかなか難しいことです。選手たちが意識を向けやすいトレーニングにもアンテナを張ったわけですね。

清野 トレーニングのことを一から勉強し直しました。アスレティックトレーナーのカリキュラムを大学で選択したり、ハワイ大学のインターンに参加したり。

知識を得て、選手たちにトレーニングプログラムを作成し、指導しているうちに、選手にとって本当に必要なことや、何を望んでいるかが少しずつわかってきました。

同時に、トレーニングのことを知れば知るほど、やっぱり栄養が必要なんだと再認識するようになりました。

すぽとり 清野さんからよくうかがう言葉「食と運動は車の両輪」につながってくるわけですか。

清野 学生トレーナーを務めたことが、本当にいい転機になったと思います。トレーニング、栄養の両方を知ることは、選手にとってパフォーマンスに繋げるための近道になると思っています。

「なぜ食が重要か」。これをトレーニングや日々の練習と組み合わせて論理的に説明できるようになりました。そうすると、選手たちも考えを受け入れてくれました。僕は、選手としての経験もありますから、その点も強みになりましたね。

今思えば、大学1、2年の頃は、自分たちが考えた食事メニューを、学科の予算でただ調理して提供して、それで満足して。選手が何を欲しているのか、そして「今この選手に最も必要なことは何か?」ということを考えていなかったと思います。

「この食事をしておけば大丈夫」と、自分たちの知識を押しつけているだけに過ぎなかった。選手の身になって考えることの大切さもその時に学んだような気がします。

すぽとり トレーニングがわかって、栄養のこともわかる。双方を紐づけてサポートやコーチングをしてもらえれば、選手にとっても非常に心強い存在になりますね。

清野 選手と栄養サポートチームの橋渡しの役割を担うことでチームがうまく回っていったと思います。こうした動きは僕の今に通じるものがあります。

<②に続く>

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