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2020.03.30
特集
ニュートリションで日本と世界に橋を架ける 【ニュートリションな人々 #02 ~青柳清治さん①~】
Kiyohiro Shimano
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ニュートリション関係者の人物背景や取り組みについて紹介するオープニング企画。第2回目は、栄養学博士で株式会社ドーム執行役員(サイエンティフィックオフィサー)の青柳清治さんの半生をお送りする(全4回)。

長い間欧米の企業で要職を務め、現在は日本のスポーツニュートリション分野の発展に力を尽くし、幅広い活動を行っている。

“アメリカ人”として青春時代を送り…

青柳さんは1976年、エレトロ二クス関係の販売会社に勤務していた父の転勤でアメリカ合衆国のロサンゼルスに渡った。中学2年生の時だ。当時を振り返り、青柳さんはこう語る。

「あのころは今ほど日本人を受け入れる体制が整っておらず、全く英語が話せなかったし日本人もほとんどいないのでずいぶん苦労しました。でも、周囲の人たちに本当に親切にしてもらってね。無事に高校を卒業することができたんです。もう日本人というより、アメリカ人として生活を送り、青春時代を過ごしたといっていいでしょうね(笑)」

ちなみに近年の在米邦人の数は約50万で推移しているが、1997年に25万人を突破して以降、約20年で倍増している。青柳さんが渡米した1976年当時、もっと日本人が少なかったことを考えれば、「ほぼアメリカ人として生活を送り・・・」という言葉はうなずける。

今ほど日本の文化や国民性に寛容ではない時代。言葉ではいえない辛酸も味わっただろう。語学習得、勉学に精力を傾けて高校卒業時には成績優秀者として表彰されるまでに至った。

青柳さんは大学を決める際、日本に帰国する考えはなく、アメリカで永住しようと考えていたことから、南カリフォルニア大学(USC)、カリフォルニア大学バークレー校(UCバークレー)、オクシデンタル大学(Oxy)の3校に進路を絞った。いずれも、アメリカの名門大学で多くの著名人、政治家、研究者などを輩出している。

USCとUCバークレーは比較的大きな規模で学生数も多い一方、Oxyは比較的小規模で特定の分野に偏らずさまざまな分野が学べる、いわゆる「リベラル・アーツ・カレッジ」。一学年も少数でじっくり勉強できる環境だと思い、後者を選択した。2学年上にはバラク・オバマ前大統領がいる。物心つく頃からダーウィンの進化論に共感を覚えていた青柳さんは、大学で生化学を専攻する。

「僕はね、生粋の『ダーウィニアン』。なぜ人間がここまで進化したのかを考えると面白いよね。古くから人間が脈々と受け継いできたDNAが進化して、今に至ると思っているんです。生化学を極めれば、その答えに少しでも近づけるのかなと思っているんですよ」

みっちり勉学にいそしみながらも4年間の大学生活を満喫した後、青柳さんは「日本人なのに日本のことを何も知らない」と感じ、日本国内でアミノ酸の研究・開発を行う企業で研究者としての職に就いた。

糖を微生物で発酵し、アミノ酸を生産する技術の応用でアルギニンを生成し、アルギニンの生産株からオルニチン、シトルリンを生産する技術を見出した。それが1985年。今でこそ消費者の認知度が高いアルギニン、オルニチン、シトルリンのアミノ酸3種はこの頃から研究が行われ、青柳さんはその黎明期にかかわっていたのである。

その後、アミノ酸の用途開発の研究に携わることになる中で探求心が強くなり、社内留学制度を利用してイリノイ大学の大学院に進む。ここで、アミノ酸研究の第一人者、デイヴィッド・H・ベイカー博士に師事し、研究スキルを磨いていった。留学期限の2年で、通常は4年かかる博士課程も修了できるメドがついたため、退職してそのままアメリカに残って栄養学博士号を取得した。

博士号を取得後、アメリカ製薬大手「アボット・ラボラトリーズ」に入社。オハイオ州にある研究所で病態別栄養学の研究に従事した。ここではリウマチの栄養治療をテーマに用途開発研究を進め、在籍中には3つの米国特許を取得した。

「リウマチは自己免疫異常が原因で、免疫組織が自分の関節を壊してしまい、痛みが発生するメカニズムになっています。このときⅡ型コラーゲンをごく微量に摂取すると免疫系が変化して自分の抗原を攻撃しなくなり、リウマチが改善されるということを突き止めました。アボット社在籍時にいろいろな研究をさせてもらって、薬ではなく栄養をきちんと摂ることで病気の予防に役立つことがよくわかりました。この時期はとても面白かったですね」

そのほか、栄養摂取による抗炎症作用の研究にも力を注ぎ、EPAが持つ作用に着目。EPAを配合した栄養剤「オキシーパ」の開発に着手した。オキシーパはやけど等でICUに搬送される患者用の栄養剤で、長期間ICUに入ることを余儀なくされた患者に飲ませると、EPAの抗炎症作用から早期にICUから離脱できるという臨床効果が得られている。ほかにも、COPD(慢性閉塞性疾患)患者向け、糖尿病患者向けの栄養剤を次々に開発し、病気の予防や治療という観点から栄養摂取の有用性について考えるようになった。

<②に続く>

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