スポーツ・運動と食を結ぶ
ウェブマガジン
お問い合わせ
2020.03.31
特集
ニュートリションで日本と世界に橋を架ける 【ニュートリションな人々 #02 ~青柳清治さん②~】
Kiyohiro Shimano
1+
Twitter Facebook

ニュートリション関係者の人物背景や取り組みについて紹介するオープニング企画。第2回目は、栄養学博士で株式会社ドーム執行役員(サイエンティフィックオフィサー)の青柳清治さんの半生をお送りする。今回はVol.2。

長い間欧米の企業で要職を務め、現在は日本のスポーツニュートリション分野の発展に力を尽くし、幅広い活動を行っている。

アメリカのノウハウを日本へ導入、世界中を飛び回る日々

青柳さんがアボット・ラボラトリーズで病態別栄養の研究・商品開発を進めていたころ、日本には栄養剤に配合する良質な原料が数多く開発されていた。

原料探索のため、頻繁に帰国するようになり、臨床栄養の専門家とも交流をもつようになった。専門家らと日米の臨床栄養に関する意見交換などをするうちに、NST(ニュートリションサポートチーム)が日本国内に存在していないことに気づく。

NSTは、患者に最良の栄養療法を提供するため、医師・看護師・管理栄養士・薬剤師などのスペシャリストで構成され、欧米ではNSTが現場でチーム医療を施すことが当たり前だった。

そこで、青柳さんは日本国内の専門家や関係者に最先端の現場を見学してもらい、日本とアメリカの橋渡しをした。この活動を契機に、日本版NST誕生への流れに変わり、現在ではNSTは医療現場で定着している。

日本へ頻繁に行くことが多かったため、1998年に大日本製薬とアボット社の合弁会社「ダイナボット」(現:アボット・ジャパン)の栄養剤関連の総責任者として赴任。10数年ぶりに日本を中心に活動することになった。ここでも日米の違いを発見することになる。自らの専門分野である病態別栄養の研究が日本では行われていなかったのだ。そこで、アメリカで行っていた仕事をそのまま日本にも流用することにした。

また、医師の栄養への理解を深めることを目的に、日本静脈経腸栄養学会と合同で、アボット社が開発した臨床栄養教育プログラム「トータルニュートリションセラピー(TNT)」の国内普及プロジェクトにも携わった。TNTは今でも多くの医師が受講しており、NSTにはTNTを受講した医師が1名常勤する必要になっている。

さらに、「日本人の新身体計測基準値(JARD2001)」の確立にも一役買った。身体計測は患者の栄養状態を知るため(栄養アセスメント)に重要な項目だが、当時は欧米人の指標を使って日本人に当てはめていたため、意味をなさないことが多かった。

日本栄養アセスメント研究会と一緒になって、栄養アセスメントキット(皮脂厚や腕の周囲長を測定する道具)を普及させ、さらに年齢、男女別など日本人の体格の基準を事細かく決めていった。

「アメリカと日本ではやはりいろいろな違いがあって、特に優れたプログラムだったTNTとJARD2001の普及活動は当時力を入れていて、日本の臨床栄養分野の発展に少なからず貢献できたのではないかと思っています。自分でも誇らしい仕事をしたと胸を張れます」

海外の最先端ノウハウを日本へ“輸出”する役目をいったん終え、アメリカに戻った青柳さんは世界を舞台に栄養剤ビジネスを展開する要職に就いた。もちろん、力を注いできたTNTの普及活動を、今度は南米、東南アジアで進めていった。2009年までの7年間世界中を飛び回り、1年間のうち8割は海外出張という多忙な日々が続いた。

2009年からは、アボット・ラボラトリーズがシンガポールに栄養研究所を設立することになり、現地に赴任。研究者を集めたり、分析機器を取りそろえたり、試作品開発の施設づくりまで、まさしくゼロからのスタートで研究所を立ち上げた。

一定の成果を挙げた後、アメリカ製薬大手「GSKグラクソ・スミスクライン」へ移籍。ヘルス事業部で薬事、品質管理、開発すべての部門を統括する責任者を務めた。歯磨き粉「シュミテクト」、「アクアフレッシュ」、入れ歯洗浄剤「ポリデント」、入れ歯安定剤「ポリグリップ」、総合感冒薬「コンタック」など、日本でもなじみ深い商品の開発に携わった。

ビジネスは順調だったが、ここで自らがライフワークとしていたニュートリションから離れた仕事をする毎日に疑問が生じる。

「ニュートリション分野に戻りたい」-そう思っていた矢先に乳業大手「ダノン」からの誘いを受けて移籍。日本国内でもヨーグルト需要が爆発的に高まっていた2012年のころだ。

研究開発部長を務め、OIKOS(オイコス)、Bio(ビオ)に携わった。そして、2015年1月、現所属先である「ドーム」のスポーツニュートリションブランド「DNS」の責任者として辣腕を振るっている。

<③に続く>

関連記事