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2020.05.06
特集
名門ラグビー部を支えるスポーツニュートリショニスト【ニュートリションな人々 #03 ~藤井瑞恵さん 後編~】 
Kiyohiro Shimano
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ニュートリション関係者の人物背景や取り組みについて紹介するオープニング企画。第3回目は、帝京大学助教(スポーツ医科学センター所属)で、日本スポーツ協会公認スポーツ栄養士の藤井瑞恵さんの半生を振り返る(全2回)。

藤井さんは、名門ラグビー部に帯同し、選手たちのコンディション作り、パフォーマンスアップのために、スポーツ現場で日々活動している。

名門ラグビー部に帯同、「選手の観察」が目標達成の肝

ラグビーはコンタクトスポーツなので、まずケガをしないための体づくりが大切になってきます。その上で、フォワードならパワー負けしないようにもっと増量しようとか、バックスなら瞬発力を落とさずに筋力アップしようとか、ストレングスコーチなどのスタッフと情報共有しながら選手のパフォーマンスアップを目指します。

例えば、増量を目標にする選手がいたとして、食事の量、内容、サプリメントの活用とトレーニングで強化を図るのですが、食の面で「脂肪がつき過ぎてしまう」、「増量しにくい(体質)」、「食が細い」など、目標達成に向けた課題も見つかってきます。

選手たちの食の課題を見出すためには「よく観察すること」が重要です。私はチームスタッフとして練習や合宿に帯同しているため、練習時はもちろん、食堂へ行って選手たちの食事の仕方や量、顔色をうかがいつつ、会話をしながら選手たちの状態を把握していきます。

毎日バランスのいい食事を摂るというのは前提としてあるものの、やはり個人で体質や習慣が異なってきますので、すべてが思い通りに行くとは限りません。身体強化のための食のアプローチはもちろん大事なのですが、選手たちの体調、体質を把握して良いコンディションを作るために、食事や補食の工夫を施したり、アドバイスをしたりするのが私たちの仕事になってきます。

現在、ラグビー部には約150名の部員が在籍しており、2人(藤井さん、堀内麻央さん)で栄養サポートをしています。1年間でみると、春先はチーム全体へのアプローチを中心にしています。

普段の生活では「残食はしない」「規定量の食事を摂る」といった、チームで決めたことを全員が実行していくように、指導・教育していきます。練習時には、リカバリーのためのプロテイン摂取を徹底しています。

ラグビーはエネルギー消費が激しいスポーツなので、練習の合間に小さいおにぎりやバナナなどの補食も欠かせません(練習メニューによって異なる)。エルゴジェニックエイド※3も有効なのですが、まずは、食事から体づくりやコンディションづくりを考えられるように、アドバイスをしています。

※3 パフォーマンスアップを目的としたサプリメント。クレアチン、HMB、β-アラニンなどがあるが、各国によって定義はさまざま。

ラグビーシーズンが深まってくる秋までに、こうしたチーム全体の基本方針に沿って、食のアプローチはしていきますが、秋以降はトップチームの選手たちへのサポートに重点を置いていきます。

オフの日の食事管理から、試合後のリカバリーに何を摂っているか、試合で消費した体力(体重)がどれだけ戻っているか、水分補給はきちんとできているかなど、一人一人の細かいコンディションについて数字を用いながら細かくチェックしていきます。コンディションで課題が見つかった選手に対しては、個別に話をしながら次の試合をベストな状態で臨めるように改善を図っていきます。

本当は選手一人一人をしっかり見ていければいいのですが、物理的に難しい部分があります。ですから、チーム全体で決めた最低限のルールを、意志を持って自主的に考えて行動してもらえるように、私たちは最初に指導していきます。

スポーツ現場では「選手を強くする」、「チームが強くなる」ことが目指すところです。栄養の部分は強化のための一過程で、選手たちには「栄養も大事だけど、トレーニングと組み合わせてこそ効果が出てくる」といったことをよく話します。

自身の強化やコンディショニングと栄養の関わりがわかっている選手はどんどん実践していきますが、当然そうでない選手もいて栄養だけの話をすると理解が難しい面もあります。

選手たちの「こうなりたい」という理想像を作り上げるために、指導者や各分野のスタッフ、スポーツニュートリショニストが一緒になって考え、結果に結びつけていく。こういった姿勢がラグビー部には浸透していると思いますので、とてもいい環境で仕事をさせていただいています。

早いものでラグビー部に来て4年になり、培った現場での指導・サポート経験を次の世代に伝達していく立場にもなりつつあります。でも、やはり選手たちが日々成長していく姿を見ていくのはとてもやりがいがあるので、これからもスポーツ現場で栄養の大切さを伝えていければと思っています。

<完>

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