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2020.08.19
連載
サーフィン競技における取り組み①【連載:スポーツ栄養の果たす役割 #05】
松本 恵(日本大学文理学部教授、公認スポーツ栄養士)
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私が現在、サポートしている競技にサーフィンがあります。実は私、競泳選手を引退してからは長年サーフィンに取り組んでおり、そういう意味では、この競技には特に思い入れがあるといっても過言ではないかもしれません(笑)。

2018年に、一般社団法人日本サーフィン連盟から栄養サポートと世界ジュニア選手権への帯同依頼があったときには、自分自身になじみのある競技のサポートに関われるということとよく知った現場で食環境整備ができるという意味で、まさに念願がかなったという思いでした。

栄養サポートは、主に13~18歳くらいまでのジュニア年代を対象に実施しています。彼ら、彼女たちが取り組んでいるショートボードは2020年東京オリンピックで新たに採用された競技であり、2018年に行われた世界ジュニアサーフィン選手権では日本が団体で優勝するなど、若い世代の成長が大いに期待されている種目として注目されています。

サポートに携わってまず感じたのは、サーフィンという競技と食事をはじめとした体調管理体制がうまくかみ合っていないことでした。その理由を考えてみると、1つ目が、例えば陸上や柔道などのように、学校スポーツとして管理されておらず、たとえ10歳代であっても、すでにプロとして世界の大舞台で活躍している選手たちであるということ。2つ目が、スノーボードなどと同様、ファッション性の高いエクストリームスポーツであるという特性にも起因しているからではないかということ。すなわち、そこには誰にも干渉されない“自由”な気風が漂っており、食生活においてもまたしかりだった、というわけです。

サーフィンの場合、大きな大会になると、ビーチの周りで1~2週間過ごし、連日のヒート(試合の組み合わせのこと)に臨むという戦いが繰り広げられます。各ヒートは最大4名で競い合い、上位2名が次のラウンドに進み、下位2名はリパチャージ(敗者復活戦)に進むことになる。

さらにファイナルでは、本戦の上位2名とリパチャージの上位2名が戦うことになり、優勝するためには最低でも7ヒートを勝ち抜く必要があります。また、1ヒートは原則15~20分で実施され、選手は競技中にパドリングとライディングを繰り返す全力間欠運動が続くため、筋持久力や強い心肺機能、筋パワーが必要となる競技なのです。

そのため、試合期間中の選手の食事内容としては、持久系競技に適した高糖質食の摂取が望まれるわけですが、その間、選手たちは何を食べているかといえば、タコスとかピザなどのファーストフードばかり(笑)。

でも、だからといって、彼ら、彼女たちを責めるわけにはいきません。なにしろ、ビーチカルチャーの周りにいるわけですから、それらの食事こそが彼ら、彼女たちにとっては手っ取り早く手に入る食事の典型だからです。

あるいは、たとえお腹が空いていてもビーチ周辺には何も食べるものがなかったり、飲むものもなかったり…。一方で、緊張感が高まってくると、食べるのも飲むのも忘れてしまったり…。

結局、飲まず、食わずでヒートに臨むことも日常茶飯事だったようです。ビーチでは潤沢に食べ物が手に入るわけでもありません。したがって、もともとそういうことには無頓着であり、だからこそ何の違和感も覚えなかったのでしょう。結局、「試合における食事とは不便でもがまんするものだ」と思い込んでいる選手もいたのです。

私は、かつて競泳選手だったころ、身近に私が抱えている食生活の悩みに相談に乗ってくれる人や体調やトレーニングに合わせた食事を整えてくれる専門職のサポートスタッフがいてくれたら、どんなにいいだろうと考えていたことはすでに述べた通りです。

一方、彼ら、彼女たちのケースは環境の整った都市型の競技よりも栄養サポートの重要性はもっと高いと現場を知ってさらに感じました。また、ジュニア選手の健全な体をつくっていくためには、しっかりした体調管理体制を整え、スポーツニュートリショニストが現場の最前線で指導することの意義は非常に高く、どの競技にも共通している事柄ではないかと思いますが、サーフィンのような独特のカルチャーの上にある競技のジュニアの選手の育成では、さらにその意義は高いのではないかと考えています。

もちろん、座学において栄養教育を実施することも重要ですが、現場において日々のご飯を健全に食べるということに勝る教育はない。同時に、健全な食生活には、自己管理能力はもちろん、スポーツマンシップにも通じる数多くのことが学べるのではないかと思っています。

<次回へ続く>


まつもと・めぐみ

北海道札幌市生まれ。2004年北海道大学大学院農学研究科応用生命科学博士課程後期修了。日本大学体育学部体育学科教授。管理栄養士。日本スポーツ協会公認スポーツ栄養士。

大学では、陸上競技、柔道、トライアスロン、スキージャンプ選手などの栄養サポートに携わる。スポーツ貧血の改善・予防、試合時のコンディショニング・リカバリーなど幅広い研究をするとともに、ソチ・オリンピックではマルチサポート・ハウス ミール担当など多岐にわたり活動。日本スポーツ栄養学会理事。

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