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2020.07.02
スポーツ&アスリート
【対談】才賀紀左衛門(格闘家)×杉本健勇(サッカー) ~メンタル編~
すぽとり編集部
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アスリートはコンディショニングやパフォーマンスを上げるために、日ごろどのようなことを考えているか。プロ格闘家・才賀紀左衛門選手とプロサッカー・杉本健勇選手が対談する。

共に大阪府出身でプライベートでも仲がいい2人は、プロが持つ思いや苦労を共有し、互いの競技生活に生かしている。今回は、メンタルを中心に2人の考えを探る。

ゲン担ぎよりも食事のルーティーン

杉本健勇選手(以下、杉本) 食事とつながってくるんですが、試合前に何を食べるか、試合時までに何を食べるかとか、そういう物はだいたい同じですね。ただ、スタジアムに入ってから何かをやる、例えば右足からピッチに入るとか、そういうのはありません。細かくやっている選手はいるんですが、僕は一切なくて、それこそ食事の部分だけですね。

これ食べたら得点取れたとかありますけど、そういうのは本当にたまたまだと思っているので。以前は僕もゲンを担いでやっていた時期もあるんですが、トレーニングでも食事でも継続することが力になってくるので、今はそういうのはありません。

ラグビー日本代表の五郎丸歩選手の活躍でルーティーンが脚光を浴び、いろいろな人が取り入れました。もちろん僕もいい手法だと思っていますけど、それより自分の感覚を信じたいですね。

才賀紀左衛門選手(以下、才賀) 格闘技は1人で目の前の相手を倒さないといけないので、メンタルが物をいうスポーツだと思っています。試合に向けていくらみっちりトレーニングを積んでいても、気持ちが入っていなければパフォーマンスも発揮できません。

健勇と一緒で、気持ちを高めるための”食事のルーティーン”はありますね。計量が終わった後は、年齢を重ねて知識や情報が入ってきて多少変わってきますけど、基本的には食べる物は変わっていませんね。

個の結果とチームの結果

杉本 格闘技って、もちろんサッカーとは全然違うし、年間通して試合数も少ない。僕の場合は毎週試合があって、そのたびに良くなかったこととか、反省点をすぐに検証して、いろいろな方法を試しながら改善していくことができるんですけど、なかなか難しいですよね。どうやって対応しているんですか?

それに、減量って言葉でいうのは簡単だけど、本当にしんどいと思うんですよ。僕はやったことないんですけど、モン君を見ていると本当にすごいと思います。

才賀 パフォーマンスを発揮できる時は、「いつでも試合できるぞ」って気持ちも入っているし、体重もベストをキープできている。反対に、パフォーマンスが発揮できない時は、体重のブレもあるし、ストレスもかかってくる。経験を積むごとに自分なりにポイントっていうのはわかってきていて、自分でコントロールしているって感じかな。

格闘技は個人競技だから自分との闘いに集中すればいいけど、サッカーの場合、出場できる人数も限りがあって、ポジション争いから始めないといけない。大変だと思うわ。

杉本 確かにそうなんですけど、個人競技って自分のパフォーマンスがもろに結果に出るじゃないですか。サッカーは、パスを出してくれて自分が得点できるとか、共同作業があって成り立つ競技。勝っても負けてもチーム全体の評価になってくる。僕は個人競技をしたことがないので、その点はシビアだと思っていますけど。

才賀 団体競技って、1人がいいパフォーマンスを発揮できたとしても、例えばパサーの調子が悪くてタイミングが合わなくて得点できないとか、チーム全体で気持ちを合わせないと崩れてくると思うし、結果にも反映されない。そういった難しさはあるよね。

杉本 本当にそうです。自分が好調でも結果に必ずつながるわけではないですし。FW(フォワード)は点を取るのが仕事なので、「3点取られても、俺が4点取ってやる!」って意気込むんですけど、そんなにうまくいかない。

やっぱり、チームが試合に勝てなければうれしくないし、悔しい。ただ、試合に勝ったとしても自分が得点を決められなければ、気持ち的にも沈んでしまいますね。「自分が得点を取って勝ちたい」というのは常に持っています、やっぱり。

才賀 健勇が出ている試合を見てても、「今のは健勇に渡せよ! フリーだろ!」みたいなのがあるじゃない。いいポジションを取っていてもパスが来なかった場合、結構フラストレーションはたまるよね。

そこで、不満を表に出すと、チーム全体に悪影響を及ぼすし、自分をうまくコントロールしないといけないんかなと思う。俺なんかは、目の前の相手を倒すことで、ある程度解消されるんだけど。

杉本 いいポジショニングしていても、パスが出てこないなんてことは日常茶飯事なんで。練習でも絶対ありますし。

才賀 健勇が相性いいなと思っている選手とプレーすると、そういうのはないの?

杉本 相性っていうのはもちろんありますし、いつも相性のいい選手とプレーできればいいんですけど、それは自分では決められないじゃないですか。出場する選手を決めるのは監督なんで。

だから、出場する選手同士でコミュニケーションをとるんです。「俺がこう動いたときは、ここにパスを出してくれ」とか。求め合いっていうんですかね、そういうのはすごくやっていますね。それでも、合わないことの方が圧倒的に多いんです。

メンタルを強くするのではなく、考え方を変えてみる

杉本 僕はメンタルが弱いと思っていて。

才賀 え、そうなんだ。

杉本 今でこそいろいろな経験を積んできて、心の切り替えができるようになってきたんですけど、若い時はシュートを1本外しただけであとのプレーに影響して全くダメになるとか。そんなのばっかりでしたよ。だから、メンタルは、トレーニング、食事と同様、とても大事だと思っています。

才賀 俺の場合は、パフォーマンスを発揮できるメンタルの状態っていうのは、いかに日常のストレスを減らすかということかな。

杉本 僕はプロサッカー選手をやっていますけど、そのほかの競技を含めて「メンタルが弱い」という選手の方が断然多いと思っています。「メンタルを強くする」という思考を持つより、「考え方を変えてみる」という発想の方がいいんじゃないかと。

僕自身、いろいろな経験をした後にそこに気づいて、それからは自分の中で気持ちの整理がつくようになりましたし、パフォーマンスも良くなってきました。

才賀 何に対してメンタルが強い、弱いというのもあるよね。

杉本 確かに。

才賀 俺は個人競技だけど、子供にはチーム競技をやらせたいね。社会に出た時に1人で生きていくってなかなか大変。健勇はメンタルが弱いっていうけど、その点をチームメイトが補ってくれたり、健勇自身も補ったりする時もあるわけじゃない。

みんなでチームを理想の形に作っていく過程で、協調性とかサポート意識とか、うまくいかなかった時の対応の仕方、それこそメンタルが培われるわけで。そういう点を学ぶ経験をさせたいよね。俺もそういうのもっとやっとけば良かったんだけど(笑)。

杉本 メンタルって本当に難しいです。僕もめちゃくちゃ落ち込んだ時期もあるんで。それでも喜怒哀楽を表に出さず、いかに平常心を保つかってことも大事だと思います。

才賀 ま、そうだね。人それぞれ、周囲の環境とか生まれ育ってきた背景とか違うし、俺はとにかく何でもプラスに考えるようにしているわ。

<完>


杉本健勇(すぎもと・けんゆう)

1992年11月18日、大阪府生まれ / プロサッカー選手

所属クラブ:セレッソ大阪→川崎フロンターレ→セレッソ大阪→浦和レッズ

高校2年時にセレッソ大阪(下部組織)でクラブユース選手権優勝を経験し、大会MVPに選出。2017年シーズンには日本代表初選出を果たし、リーグ戦得点ランキング2位を記録。恵まれた体格と高い決定力を武器にする大型FW(フォワード)。

 

才賀紀左衛門(さいが・きざえもん)

1989年2月13日、大阪府生まれ / キックボクサー、総合格闘家

高校時代から格闘家として活躍し、数々のK-1ビッグマッチに出場。2013年にはプロレス、2014年には総合格闘家デビューを果たした。30歳代に入り、ジム経営と選手の2足のわらじで日々奮闘している。

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