今回から「JOSAI ニュートリション通信」と題して不定期に、城西大学 薬学部 医療栄養学科の先生方と連携して、主に「栄養」に関する知識・情報を発信していく。第1回は、医療栄養学科の取り組みについて。本連載企画の取りまとめ役である内田博之先生に詳細をうかがった。

学生と教員が一緒になって楽しむJOSAIライフ

城西大学は1965年、教育者・新藤富五郎と吉田・池田・佐藤内閣などで閣僚を務めた政治家・水田三喜男が、前身の城西実務学校を母体に創立。埼玉県坂戸市にメインキャンパスを置き、5学部8学科・別科が設けられている。

薬学部は、薬剤師を養成する「薬学科」、薬科学研究者を育成する「薬科学科」、管理栄養士を養成する「医療栄養学科」に分かれ、さらに医療栄養学科は「食品機能学」「病態解析学」「予防栄養学」など13の研究室(表)を構え、学生のうちから専門性を模索・選択できるようになっている。

「医療栄養学科は6階建ての専用棟にあって、講義室をはじめ、演習室・演習実習室、研究施設など充実しています。学びの特徴としては、おいしい食事の調理や食品の開発・研究など食品の機能性、からだと病気の仕組みを理解した食事療法栄養療法、からだとスポーツを理解した食事指導、地域住民の健康を守るための栄養教育、そして医薬品について詳しく学ぶことができる体制が整っています」(以下、「」は内田先生のコメント)

学生の学べる内容が豊富なため、教員も栄養学の専門家、管理栄養士、医師、薬剤師の有資格者に加え、健康運動実践指導者、NST(ニュートリションサポートチーム)専門栄養士、静脈経腸栄養管理栄養士などが在籍。内田先生のように企業で研究職を務めた経歴を持ち、解剖生理学、内分泌学、予防栄養学特論、地域健康医学特論、統計学、疫学と幅広く教授するなど、人材がそろっているのも学科の強みともいえる。

各研究室が掲げるテーマから少し難しい印象がある一方、教員と学生の距離はかなり近く、学内外で連携することが多いという。また、大学卒業後も教員と一緒に学べる体制になっており、“城西ファミリー”としてのつながりは強い。

「学科の教員一人あたり、一学年につき6~10人を担任として受け持ち、学生にきめ細かい対応ができるよう心がけています。今年度は、新入生歓迎イベント『学内スタンプラリー』、新入生のサポートを目的とした『上級生ピアサポーター相談』などを実施。コロナ禍を考慮しながら、例年おこなっていた担任・研究室イベント、バーベキューなどの企画もしていきたいですね。

DHA(食と健康のサークル)薬と食の研究会ANSWER(スポーツ栄養サポートサークル)といった学生サークルは活発で、高麗(こま)川河川敷の美化活動、アカデミーフェスティバルの参加、サッカー部の栄養サポート、薬膳食材を用いたレシピ開発、郷土料理の介護食メニュー開発、『JOSAIコラーゲンようかん』の開発など、定期的にいろいろなことを実施しています。こうした学生たちの有意義な大学生活の一端を教員も一緒になって味わっている感じですかね。

在籍中だけでなく卒業後も一緒に学べる『生涯教育講座』、『薬局管理栄養士研究会』、『城西栄養士会』などがあって、編入学による栄養士有資格者の管理栄養士資格収得のサポート、社会人入学など、栄養に興味がある方々のスキルアップに対応できるようになっています。

“科是”として『学生と共にある』を掲げているので、何より学生に寄り添った教育を目指しています」

多彩な教員とともに過ごした学生たちは、大学で得た知識や専門性をもって社会へ旅立っていく。進路先は病院、ドラッグストア・調剤薬局、給食施設、栄養行政など多岐にわたる。卒業後にもサポートを得られる点でも、学生は安心して楽しみながら将来の進路が決定できる。

各教員の研究テーマは幅広く、コラーゲン研究では成果示す

医療栄養学科(食品機能学)では、コラーゲン摂取に関する研究が先進的におこなわれている(本連載企画の発端)。コラーゲンは美容面でいまや欠かせない物になっているが、体づくりやケアにおいて運動器との相性がいい。城西大学は駅伝部などスポーツ活動が盛んで、現場(指導者・選手)と連携して知見が得られている点からもニュートリション研究が進んでいるといえるだろう。

「超高齢社会になった日本では、自立した生活を送れる期間を示す『健康寿命』の延伸が特に望まれています。健康寿命を延ばすためには、要介護の原因の一つ『骨・関節・筋肉などの運動器の不調』を予防することがカギになります。

食品機能学を専門とする君羅好史、真野博両先生は、これまで必要とされてきた5大栄養素や食物繊維に次ぐ『第7の栄養素』として、運動器の健康に有効な成分『コラーゲン』、柑橘系の苦味成分『リモノイド』に着目して研究を進めてきました。これらが骨や軟骨の元となる細胞や骨を壊す細胞に影響を与えることを世界で初めて研究成果として示しています。

また、コラーゲンは魚や豚、鶏などの皮や骨、リモノイドは柑橘類の種子や果皮に含まれ、どちらも本来は廃棄される部位。不要とされた物が実は健康に寄与するという、フードロスの観点からも社会的意義の高い研究テーマです。

スポーツ・運動分野で応用できる研究成果も出していますので、連載企画の中で両先生に詳しく解説していただけると思います」

内田先生が専門とする病態解析学ではスポーツ分野から高齢者まで、運動機能低下など疾患に関する栄養対策を中心に追求している。

「私は、高齢者にみられる活動量の低下・過度の安静で生じる疾患に対する栄養成分の有効性を研究テーマに掲げています。それ以外には、年々変動していく健康指標(健康寿命・平均寿命など)をひも解いて将来の社会を予測し、栄養面からどのように対策が講じられるかを考えています。

私と一緒に研究をしている伊東順太先生は、栄養士養成課程ではあまり取り扱わないデンタル(歯学)分野と栄養の関連性を追求しています。スポーツ分野の栄養学も専門にしていますので、陸上競技部の栄養コーチングを継続実施し、選手らの体重・体脂肪量の測定、食事調査から、体づくりやパフォーマンスの向上と関連する食品・栄養素の探索をおこなっています」

社会でも大きな関心を持たれている健康問題に対し、医療栄養学科では多角的に研究し、問題解決への糸口を探っている。学科として、研究者や人材(卒業生)を輩出し、将来社会にどのように貢献できるのか。内田先生はこう答えている。

「病院での栄養指導やニュートリションサポートチーム(NST)、ドラックストア・調剤薬局での健康・食事のサポート、給食委託での調理配食、製薬・食品企業での研究開発、フードプランナーとしてのレシピ開発・本の執筆活動、フリーランスとしてのオリジナル商品開発・コラム執筆・栄養セミナー講師、行政分野での食品衛生業務、福祉分野での在宅栄養指導、スポーツ分野での選手の栄養指導など、栄養関連で実に多くの人材が活躍しています。

私たち教員は引き続き、高度な医療現場で活躍できる医薬品を理解した管理栄養士、運動と食事を介した健康への誘導役、多様な食文化を理解して楽しく豊かな食の世界で活躍できるフードコーディネーターなど、社会に貢献できる人材の育成に注力し、新知見を明らかにしていきます。

学生たちには、大学の時に学んだ料理や薬の知識・技能を生かして、みなさんの健康をサポートする管理栄養士としての役割を果たしていってほしいですね」

「JOSAIニュートリション通信」では今後、すでに編集部と知己を得ている君羅、真野両先生による「コラーゲン基礎講座」など、「研究者」の視点から有益な栄養情報を発信していく予定。

スポトリ

編集部