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2021.12.28
コラム
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「専門家の使う表現」が気になる【替天行道! 編集長コラム #01】
Kiyohiro Shimano

2021年最後は編集長コラムで締めくくることに。

運営元であるミールケアの副社長さんから「コラム書いた方がいいよ~」と勧めがありまして。これからこの枠を使って思いや意見をつづっていこうと思います。

ちなみに、副題の「替天行道」というのは、中国四大奇書の一つ「水滸伝」と関係があります。水滸伝は、腐敗した政治に激怒したアウトローなキャラクター108人が自然要塞「梁山泊」に集まって戦力を整え、悪官に壮大な喧嘩を売る物語。彼らが掲げる旗に記されていたのがこの4文字です。最初は少なかった同志がどんどん増えていき、勢力が拡大されていくさまが痛快で、小さいころから繰り返し読んでいます。

ただ、言葉通りに「天に替わって道を行う」なんて大それたメッセージ性は全くなく、単純に「連載タイトルにする4字熟語、何かねぇかな~」と考えているうちに、ふと思い出しただけなのです。

さて、今年は待ちに待った東京五輪が行われました。ある程度の盛り上がりが見られたのではないでしょうか? 無観客だし、インバウンドもなかったので「ある程度」に留まってしまったと思います。僕は、競技もさることながら、報道各社の「表現」に注目していました。直前まで「やる」「やらない」で意見が二分される状況が続き、「おたくの会社、どっちなの? どういう表現なの?」と、日によって報じる姿勢に変化が生じるのはすごく不思議でした。

A社は開催に否定的な表現をしながら、子会社のスポーツ紙を使って肯定的な表現をして帳尻合わせしたり、B社は終始、肯定的な表現で通し、C社に至っては「中止だ」といいながらスポンサーを降りない、絵に描いたような矛盾。あれは、なかなかのモンでしたね(笑)。

報道各社は五輪の公式スポンサーに名を連ねている開催当事者。大っぴらに批判はできないけど、世論も無視できない。とても難しい対応を迫られました。そもそも報道機関が何社もスポンサーに名を連ねること自体おかしな話で…単純に金の話になるんですけどね。

通常であればスクラムを組んで五輪を盛り上げる急先鋒がメディアであり、そうなる予定でした。ところが、予期せぬアクシデントで想定とは異なる動きをしなければいけなかった苦悩は何となく伝わりました。五輪が始まってからはどの社にも躍動感のある記事が戻ってきたので、本来の仕事を全うできて良かったなと思います。

今回の五輪で、いろいろと見えてくる部分が出てきましたが、僕からしてみれば「いやいや、スポーツはもともと金の世界だよ」です。目標に向かって努力するスポーツ選手には尊敬の念しかありません。でも、選手の周辺にうごめく何者かがウヨウヨしているのもまた事実で、そうした構造を踏まえていれば、そこまで騒ぐほどではなかったと思います。

そうそう、表現といえば、ずっと気になっていたことがあります。コロナ禍で「免疫が上がります!」という言葉があふれかえりました。レシピのタイトルなどにこの表現が使われているんですが、アリなんですかね。他にも「背が伸びる・身長を伸ばす(食事・方法)」とか「頭が良くなる(食事・方法)」とか、普段からかなり目につきますが、言葉の世界で生きてきた人間としては心配な表現が多いです。

僕自身、データが求められるサプリメントや原料の世界を理解した上で、スポーツニュートリション分野をのぞいているわけですが、体感はもちろん、「科学的根拠があるのか」というのはとても気になります。とはいえ、すべてにおいて求めるわけではないですし、食事にそこまでの効果・効能は期待できません。あまりこだわり過ぎると苦しくなっちゃいますからね。

ただ、スポーツとも関連のある「背・身長」に関していえば、食事の影響はもちろんあるけど、決定打にはならないという認識です。ましてや、レシピ通りに作った物でかなえられるものでもありません。遺伝、運動、生理、ファクターXなど要因がいくつも考えられる中で、「背が伸びる・身長を伸ばす(食事・方法)」と文字づらでも断言するのは危険かなと。

「それいったら全部そうじゃん」となりますけど、何年か前に大手メーカーが商品広告にその表現をうたって大問題になった(薬機法ではありますが…)ことを考えると、背に関してはかなりセンシティブで、現時点では断言する表現は境界線を越えていると考えられます。もっといえば、背が伸びる期間は人生でも限られていて、大人になって伸ばそうとしてもほぼ無理。期待させるような表現は慎むべきではないでしょうか。むしろ、「食事だけではなく」と前置きしつつ、背が伸びるその他の要因・可能性もセットで説明してこそ価値のある情報になるのではないでしょうか。

もし、どうしても表現したいのであれば、「可能性を高める」「期待できる」「見込める」とかになります。「”背が伸びる”」は特に使い勝手が良く、「””」は「100%ではないけど、まぁそうだよね」「言い回しをあいまいにしてるけど、察してね」という意味で表現することができます。玉虫色大好きなテレビ局にいた時、「迷ったら使え」と教育されました。ある意味、読む側にもリテラシーが求められる使い方の一つです。何かいわれても、表現の意図を説明できるので理論武装、自己防御にもなります。

今、自己発信の時代といわれ、どんどん個人”メディア”が成長する一方、表現に気をつけないと大きなトラブルになることは周知の通りだと思います。だからこそ、公正な視点で報じる第三者的な目が必要なわけで、メディア(編集者)とつながりのある専門家は世に出す途中で危うい表現を改めたり、相談して変更することができるのです。

これまで多くの原稿に触れてきて、先生方の知識をよりわかりやすく、間違いのないように発信する方法はわかっているつもりです。いい情報なのに誤解を生む表現をされているのを見ると、ついつい敏感に反応してしまいます。 言葉と根拠の話なので、僕も含めて本当に気をつけたいところです。もし、表現に不安のある方はいつでもご相談ください。

はい、ということで、最初のコラムは仕事柄考えることの多い「表現」について、生意気にも注意喚起してみました。今後も、コタツ記事やコピペ記事ではない、オリジナル記事(表現)にこだわってすぽとりを展開していきますので、引き続きよろしくお願いします。

来年は、長いトンネルからようやく抜け出せそうですね。やっとという感じです。新たな連携も始まっていきますので、期待感を持って年を越すことができます! みなさん、よいお年を!! <了>

メディアリテラシー | 個人発信の危うさ | 免疫が上がる… | 東京五輪協奏曲 | 矛盾 | 第三者からの発信 | 背が伸びる… | 言葉の表現 | 頭が良くなる…

Kiyohiro Shimano

スポーツ新聞社勤務を経て、テレビ、ネット、雑誌とすべての媒体でライター・記者、編集職を経験。前職の食品関連メディアでは編集記者として取材活動する中でスポーツニュートリション分野を開拓し、日本初の一般向けスポーツニュートリション専門誌を創刊(運営母体の事業悪化により休刊)。企画立案から営業、制作まですべてを担当した。スポーツ関係者・従事者ら、食品・栄養業界の研究者や開発者らへ数多く取材しており、双方の分野に通じる。