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2022.01.31
コラム
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「スポーツファーマシスト」が気になる【替天行道! 編集長コラム #02】
Kiyohiro Shimano

最近、「スポーツファーマシスト(薬剤師)」が話題に上がります。というより、いろいろな方と会話する中で意図的にこのワードを入れ、どういう広がりがあるか反応をみているといった方が正しいかもしれません。ファーマシーも食・栄養とリンクする部分があるので、横目で見ています。

スポーツファーマシストの資格制度は以前から知っており、何人かの先生とも意見交換をさせていただきました。スポーツ現場で活躍できる能力を有するとみています。現状は「10数年前のスポーツ栄養」といったイメージです。つまり、「(プロを含めた)スポーツ現場にどう食い込み、周知させていくか」という段階。スポーツ栄養分野の先生方が現場で地道に存在感を示していったように、同様のことを行っているのかなと想像します。

スポーツ分野の薬剤師を連想する主なキーワードとして、「薬品」「アンチ・ドーピング」が挙げられます。アンチ・ドーピング規定違反で多いのは圧倒的に薬品なので、自分が摂取する薬品について専門家にアドバイスを受けることは極めて重要なことです。ドーピング根絶に向けた啓もう活動も大事な役割です。

ここで、気になるのは「サプリメント・エルゴジェニックエイド(以下、エルゴ。運動パフォーマンスを向上させる”食品”)」の存在。どうすみ分けするのか。サプリは「栄養」補助食品なので、栄養士の領域になるのはわかります。ビタミンCとか鉄分とか、足りない栄養素をどう補いましょうかという話ですし。ところが、最近のサプリは配合素材に薬品のような効果が見込める物を混ぜたり、複数の素材をミックスしたり、明らか食品に機能性成分を添加・配合したりするトレンドもあり、どんどん複雑化しています。

さらに面倒なのがエルゴ。特に海外商品はバンバン強力な素材や新しい素材を配合しており、全部が全部、ドーピングフリーを証明するとされる検査・認証を受けているわけではありません。ネット購入が一般化している昨今、誰でも手に入れやすい状況で、ドーピングコントロール下にあるトップ、エリートレベルのスポーツ選手(一般の方など大半は無関係)も選択の際に注意が必要ですし、知識や情報の受け取り方にも気をつけたいところです。

トップやエリートスポーツ選手のサプリ・エルゴ摂取率が7~8割程度といわれ、安全かつ、その効果に期待して摂取するのであれば専門家の介入は不可欠です。それでは、サプリ・エルゴの摂取について、スポーツ選手は誰にアドバイスを仰ぐべきなのでしょうか。改めて考えてみたいと思います。

僕は以前まで栄養士の役割と考えていました。しかし、食品≒サプリ≠エルゴ≒薬品の境界線が商品の多様化によってぼやけていること、ドーピングへの意識が高まっていること、トップ・エリートレベルでは摂取効果よりも安全性が何よりも優先されることなどを考えると、薬剤師も積極的に介入すべきと考えるようになりました。

スポーツニュートリション関連の論文も、摂取効果の検証と同じくらいドーピングとセットで論じられているケースが多く、選手生命を絶ちかねないドーピング問題に精通し、高度な化学知識を持つ薬剤師がスポーツ現場に介入するのは自然の流れではないかと考えます。さらにいえば、「体内に入れる物」で共通する食と薬の専門家が連携・協力してスポーツ現場で相談し合える存在になれば、選手が安心して競技に打ち込める環境が整います。食・薬が相容れない関係といわれていることは度外視して。

この話題、複数の栄養専門家に聞いたところ、「正直、サプリ・エルゴに関しては薬剤師に任せたい」「協業できる道が模索できるといいですね」「サプリ・エルゴのドーピング問題は難しい…」などの声が聞こえました。「トレーナーの勧めで摂りました」みたいな話もよく聞きますが、結構危険な気がします。特にエルゴに関しては理論武装が必要なテーマといえるでしょう。

あとは、チーム、球団、学校など受け入れる側の理解です。ニュートリション同様、成長期のZ世代から教育・意識づけが大切ですし、「複数の専門家が介入するのが当たり前のスポーツ現場」でチーム・選手の強化を目指すべきですが、どこまで進むのか。

東京五輪を見据えて、日本の食品(サプリ・エルゴ)業界ではドーピングへの意識が一時高まりました。国内で商品の検査ができるようになり、ドーピングフリーを”証明”し、選手(消費者)に対して安全性を担保する。マーケティングの側面があるにしても、この意識が高いメーカーは「商品に対するドーピング検査の自由化」がされた2015、16年以前から取り組んでいます。その後、雨後の筍のように検査を行うメーカー・商品が急増しました。残念ながらスポーツ分野に進出するための「印籠」になっていることも否定できません。

青柳氏のコラムで指摘している点も少し問題です。あまり大きな声ではいえませんが、パッケージにそれらしい成分をデカデカと載せている商品の表示と価格を確認してみると、「あぁ、目薬ね(成分が1滴くらいしか入っていない)」「原価何銭?」という物が存在します。「摂取タイミングはいつでも大丈夫です! いつがいいかを限定すると売れなくなるので」といわれ、困惑したこともありました。体感が命であるスポーツ向け、健康向けで売るのであれば、健全な物を販売してほしいですね。「安物買いの銭失い」にならないように注意しましょう。

一方で、検査・認証がなくても体感に優れ、効果が期待できる商品もたくさんあります。検査・認証ありきで一切NGというのもマーケットの縮小につながるので疑問に思う点はあります。市場が大きくならないとビジネス・研究も進みませんからね。それで、僕がいろいろな商品・関係者の取材をしてきた中で、「ある程度の価格」「開発者・研究者の顔が見える」商品にはまず外れがないです。前者は成分にこだわって有効量を担保しようとする気概(配合素材、成分量が多くなるほど原料費がかさみ、販売価格も高くなる傾向)がうかがえ、後者は開発意欲の高さ・ビジネス目的だけではない大義名分や思いが感じられるからです。こういった裏側の部分も、今後しっかりお伝えしていければと考えています。

話がズレましたが、これからスポーツ現場でも重要性が周知されていくであろう薬剤師。現状は栄養士が担当することになっているサプリ・エルゴは今後、効果検証(エビデンスの構築)などは栄養士、安全性は薬剤師、もしくは安全性を優先するのであれば一切を薬剤師にゆだねるといった整理ができれば、アドバイスを受ける側はわかりやすいかもしれません。いずれ両専門家によるコラボ企画なんかもやろうと思います。

スポーツ現場における薬剤師の現状・役割について、ここだけでは一方発信になるので、後日しかるべき方に話を聞いて、スポーツ現場で頼りになる存在ということを示していきたいと思います。<<了>>

アンチ・ドーピング | エルゴジェニックエイド | サプリメント | スポーツファーマシスト | 薬剤師 | 薬品
Kiyohiro Shimano

スポーツ新聞社勤務を経て、テレビ、ネット、雑誌とすべての媒体で記者、編集職を経験。前職の食品関連メディアでは編集記者として取材活動する中でスポーツニュートリション分野を開拓し、日本初の一般向けスポーツニュートリション専門誌を創刊(運営母体の事業悪化により、現在は休刊)。企画立案から営業、制作まですべてを担当した。スポーツ関係者・従事者ら、食品・栄養・健康業界の研究者や開発者らへの取材多数。

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