ほとんどの動物には爪がありますが、種によって爪の役割は異なり、「エサを取る」「木にぶら下がる」「体をしっかり支える」など、さまざまな用途があります。
ヒトの場合、指先の神経、血管、骨を保護するために爪があり、手指の場合は「物をつかむ」「持つ」「書く」「投げる」など指先を器用に動かしたり、力を入れたりするために存在しています。足指の場合は「立つ」「走る」「蹴る」「跳ぶ」ために体を支えたり、力を入れたりするために必要で、人間の活動には欠かせないパーツといえますね。
ヒトの骨は指先まで届いていないので、爪がないと指の腹に加わった力を跳ね返す力が不完全になり、力が伝達しなかったり、うまく体のバランスを取ったりすることが難しくなります。爪があることで、跳ね返す力「爪圧」が生まれてバランスを保ちスムーズな歩行・動きができるようになるのです。
爪を構成する主な成分は繊維状のたんぱく質で、髪の毛と同じ成分「ケラチン」が集まって構成されています。だから、爪を健康的に保つためには、食事や栄養の状態が密接に関係しています。
爪はタテ・ヨコ・タテの三層になっており、爪に硬さと柔軟性を与えています。各層の間には、最低限の水分と脂肪が含まれていますが、年齢や季節、環境によって変化してきます。
手指の爪は一日当たり0.1mm、1カ月で3mm伸び、爪の根元から指先まで育つのに5~6カ月かかる計算で、足指は一般的に手の1/2の速度で伸びるといわれています。季節によっても爪の伸びる速度は変化します。暖かくて活動量が増える夏場では体の代謝が促進されるため、爪の伸びが早くなります。反対に、冬場は爪の伸びが遅くなります。
ヒトの生活と密接にかかわる爪には、さまざまな言い伝えがあります。例えば「半月」をめぐるもの。みなさん、「半月がくっきり出ているほど健康的」という話を聞いたことがありませんか? 結論からいうと「関係ない」です。
爪の根元に見られる半月は新しく作られたばかりの爪で、比較的水分を多く含んでいるので白く見えるだけです。半月については、生まれつき見えない人もいて、爪上皮(甘皮)の長さが多分に影響しているといえます。甘皮が長い人は半月が見えにくく、短い人は見えやすい。それだけだと思います。
外でよく遊ぶ(=紫外線に当たる)子供に半月が大きく見られる傾向は確かにあります。子供はもともと体内水分量が多いので半月が白く見えやすく、活動量が多くなれば代謝量が上がり、爪が伸びやすくなる(半月も伸びやすい)ので、半月がくっきり白く見えるのは「活発なお子さん」の証拠ともいえるかもしれません。
もう一つ、爪の逸話で有名なのが「夜爪」。「夜に爪を切ると親の死に目に会えない」など、良くないことを表すものです。若い人たちはそもそも明かりに囲まれて生まれ育ってきているので、ピンとこないと思います。
諸説ありますが、江戸時代中期まで爪は短刀やノミを使って切っていました。また、現在とは照明環境は異なり、ロウソクの火を灯して生活するような時代でもありました。手元が暗い中で爪を切ると当然、爪をちょうどいい長さに切りそろえるのが難しく、かえって深爪や指を切るケガが多発したようです。
その名残りから、「夜、爪を切るのは良くない」と近年まで伝わったのでしょう。ちなみに、大正時代から現在みなさんがよく使っているニッパー型が普及するのと同時に、照明環境も大幅に改善されたので、夜爪のトラブルは次第になくなっていったと考えられます。
次回は、爪の色や形から見る症状、対策について解説していきます。