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2020.02.14
レポート
第16回乳酸研究会 栄養サポートの現場から競走馬まで幅広く
Kiyohiro Shimano
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乳酸研究会発起人の八田秀雄氏

2月1日、東京大学で第16回乳酸研究会が行われた(協賛:コービオンジャパン株式会社、アークレイ株式会社)。同会は、東京大学大学院総合文化研究科・八田秀雄氏が立ち上げ、「乳酸=疲労物質」という概念を覆し、再利用可能なエネルギーである新たな知見を見出し、スポーツ界、健康分野への啓発・研究を進めている。

今回は、栄養サポート、基礎的トレーニング科学、競走馬による乳酸値の活用法など、多岐にわたって発表が行われ、約200人の聴講者が熱心に耳を傾けた。

温熱刺激による骨格筋ミトコンドリアの適応と機序:物理療法の作用を生命科学で紐解く(日本体育大学体育学部・田村優樹氏)

骨格筋のミトコンドリアの量、機能を高めることは、高い運動能力と健康寿命延伸に貢献できる一方、量・機能の低下は老化による筋萎縮などの原因になる。トレーニングによりミトコンドリアの量・機能向上が明らかになっているが、田村氏は新たな手法として「温熱刺激」に着目して研究を進めている。動物実験で、運動後の温熱刺激が持久的トレーニングによるミトコンドリア生合成を増強すること、筋不活動に伴う骨格筋萎縮が軽減されることを実証した。

 

アミノ酸研究を活用したアスリートの科学的栄養サポート~研究と選手強化の融合をめざして~(味の素株式会社食品研究所・加藤弘之氏)

運動選手へのタンパク質推奨摂取量について、従来の評価法では運動パフォーマンス、トレーニング効果を高めるのに最適であるかが明らかになっていないと指摘。その上で、より最適な摂取量を測定するため、近年開発された指標アミノ酸酸化法を用いて検証している。エリート選手らを対象に強化トレーニング期間の食事調査などを含め、現場でのデータを収集し、摂取推奨量を見出す取り組みが重要とした。

 

毎年2月ごろに行われる同会は研究者、指導者らが聴講

女子サッカー 世界で戦うためのコンディショニング(早稲田大学スポーツ科学学術院・広瀬統一氏)

世界の女子サッカー選手の運動能力、スプリントスピードの向上は顕著で、日本人選手も特に強化する点とし、同時にプレー強度、ボール奪取能力を向上させるため、基礎パワー、変換パワー、サッカーパワーの強化の必要性を訴えた。男子よりも発症率が高いACL(膝前十字じん帯)損傷の予防を最重要課題に挙げた。

 

中学・高校生選手育成に向けたスポーツ医・科学サポート~東京都競技力向上テクニカルサポート事業~(日本体育大学・船渡和男)

2008年から進められている同事業の中で、競技の特異性を考慮した動き評価(トレーニングサポート)が、陸上中長距離選手から得られた生理学的な指標と記録の向上と関連していること、競技会での動き評価(パフォーマンスサポート)が、カヌー・スラローム競技会でのレース分析などに活用できることなど、実践例を報告した。

 

乳酸から見た競走馬のトレーニング管理(JRA競走馬総合研究所・平賀敦氏、日高育成牧場・冨成雅尚氏)

競走馬のトレーニング(走る)の運動強度を設定する指標となるのが走行スピードで、心拍数と運動強度は比例する。高強度トレーニング下では最大心拍数とされる心拍数での運動になり、従来の心拍計では測定しきれない情報が多いが、血中乳酸濃度の測定を行うことで、馬の体力の確認、運動強度の目標設定に役立つという。

乳酸研究会は毎年2月ごろに行われている。乳酸の新しい知見を知りたい方はこちら