鉄人レース「トライアスロン」で早い時期から世界の舞台を経験し、現在東京五輪日本代表の最有力となっている高橋侑子選手(富士通)。食やトレーニングなどを通じてコンディショニングを常に意識し、自らを高め続けている。
1日最低2種目は練習し、1週間単位でみると、スイム5回、バイク4~7回、ラン5~9回で、とにかく「基礎を大事に」を心がけている。練習メニューは大方決まっているものの、パウロ・ソウザコーチが高橋とのコミュニケーションをとる中でコンディションを読み取り、練習の強度や内容をコントロールする。
トライアスロンは、スイム、バイク、ランと異なる種目を長距離、長時間で競う競技だ。ハイパフォーマンスを発揮するには、かなりのトレーニングを積む必要がある。高橋はオフも取らず、毎日練習を続ける。
ハードな練習で消費したエネルギーを補い、次の日の練習の質を上げるために、日々の食事には気を使う。トライアスロンでは、特にレース前までの栄養戦略が結果に左右するといわれており、高橋はレースが近づくにつれて炭水化物中心に切り替えていく。
「米さえあれば大丈夫なんですよね。海外にいても比較的手に入りやすいので、調達には苦労していません。たとえ米が手に入らなくても、ジャガイモやパスタなどがあるので、(エネルギー源となる)炭水化物をきちんと摂ることができます。大学時代に学んだ栄養学の知識を生かし、体調と疲労度なども考慮しながらしっかり食事をするようにしています」
普段の食事は基本、高橋自らが調理し、チームメイトと分担して作ることもある。海外生活をたっぷりと楽しんでいる。ソウザコーチもスポーツにおける栄養学への関心は高く、論文を日々リサーチするほどの理論派。「○○を食べるといいよ」と頻繁に連絡をしてくる。最近はキヌア、ホウレンソウがおススメのようだ。ただし、「しっかり食べること」以外、指示を出さない。高橋の食事に対する取り組み、しっかりした考えを尊重している。
追い込んだ練習をしたときは早めのリカバリーが必要なため、スムージーにプロテインパウダーを混ぜた物、プロテインバーで栄養補給する。海外では魚を食べる機会が減るため、オメガ3など魚油系の有用成分はサプリメントから摂取するようにしている。サプリに関しては、食事よりもさらに気をつけている。五輪代表レベルの選手にはドーピング検査が義務づけられているからだ。
「海外で生活をすると、なじみのない食品やサプリも多いんです。商品の表示を見ても、英語ならまだしも他の言語では何かわかりません。だから、自分が信頼する物以外は手をつけない。この姿勢でいます。薬に関しては、医師とスポーツファーマシストに確認を取ったうえで、自分でも禁止薬物リストを確認します。また、日本薬剤師協会に薬の成分リストを送って判断を仰ぎ、相手とのやりとりもすべて残しておいて問題が起きないように万全を期しています」
ロシアのドーピング問題に端を発し、サプリや薬品の安全性がクローズアップされている昨今。高橋は競技生活を守るために、東京五輪に出場するために、日々の食事、サプリ、薬と口にする物すべてに最新の注意を払いながらレースに臨む。
高橋はレースのスタート3時間前に食事をする。ご飯、たまご、スープが定番で、ウォーミングアップ開始のスタート2時間前にはバナナ、スタート直前(20分前)には栄養成分がきちんと配合されている機能性ゼリー飲料を摂取する。心を落ち着かせる効果が見込めるギャバが入っており、レースへのスイッチとしても欠かせない物になっている。コーチからの指示で、コーヒーなどのカフェインも摂取するようにしている。
バイク時はボトル2本を積み、水、スポーツ飲料、高濃度のエネルギージェルを使い分け、継続的に水分とエネルギー補給を可能にしている。レース直後には機能性ゼリー飲料を再度摂取してリカバリーを図る。そして、しっかり食事をとって次のレースや日々の練習に備えている。
「レース前からレース中、その後に至るまで、だいたい何を摂るかは決まっています。いろいろ試して、安全性や自分にバチッとハマる物を選びました。ただ、それらに頼り過ぎないようにもしています。ある程度のルーティーンはありますが、それが崩れた時にパフォーマンスが落ちるのでは本末転倒。どんな時でも動じずに対応できる力が最も大事だと思っています」
食、トレーニングなどを常に意識しながら日々を送り、レースに万全の状態で臨めるように心を砕いている。
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