スポーツを頑張る女子の健康上のリスク➁ ~月経障害~【Z世代におくるスポーツ栄養講座 #10】

神戸女子大学・坂元美子先生による「Z世代におくるスポーツ栄養講座」。第10回は女子選手の三主徴(Female Athlete Triad:FAT)の一つ、「月経障害」がテーマ。

専門家たちは、対応を間違えると引退後や成人になってからも苦しめられる障害として警鐘を鳴らしている。選手、指導者、保護者が一体となって、月経に対する理解を深めると同時に、環境作りも進めていく必要がある。

※Z世代とは、欧米で10~20歳を指す言葉として使われている。すぽとりでは「成長世代」と同義と捉えて使用する。

※記事と動画(図表解説あり)で少し内容が異なります。両方をご覧いただき、理解をより深めていただければ幸いです。

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女子選手特有の「月経障害」

FATのうちの一つ「月経障害」は、「利用可能エネルギー不足」や「骨障害」とは異なり、女子特有の生理現象からくるものなので、男子には起きないものです。体重が軽ければ軽いほど有利になる競技や常に減量しないといけない競技の選手によくみられる症状です。また、スポーツをしていない成人の女性にも起こり得ることなので、注意点を押さえておきましょう。

競技のために女子選手が減量する場合、筋肉(除脂肪)量まで減らしてしまうと競技能力の低下につながってしまいますから、「まずは体脂肪を落とそう」という考え方の人も少なくないのではないでしょうか。ところが、女子には月経が訪れるので、単純に体脂肪を落とせばいいとはいえません。かえって悪影響を及ぼすことにもなります。

周期的な月経を迎えるには、正常な女性ホルモンの分泌が不可欠です。分泌を促すためにはある程度の体脂肪が必要になってきます(月経発来には体脂肪率17%以上、安定した月経の発来には22%以上)。減量を意識するあまり、必要な体脂肪までそぎ落としてしまうと、女性ホルモンの分泌に異常をきたし、月経障害の発症リスクが高まってきます。

※松田貴雄, etal : 競技種目別スポーツ障害と外傷の画像診断, 女性アスリート 無月経と拒食症のリスク画像診断, 28(8) 821-829 (2008)

また、女性ホルモンの分泌は精神状態に大きく影響される点もありますので、日常ですごく落ち込むような出来事があると、月経が遅れたり、止まったりすることもあります。特に、スポーツを頑張っている女子選手は、「試合結果や自身のパフォーマンスに納得がいかない」、「高すぎる理想を求めるコーチング」、「合宿続きで落ち着けない」「指導者が頻繁に代わる」といった悩みの種がただでさえ多いうえに、毎日激しいトレーニングをするわけですから、心身でストレスを受けている状態といえるでしょう。こうしたことから、ホルモンバランスが崩れて月経障害に陥るケースが多々見受けられます。

月経障害の種類はこんなにある

月経障害にはいくつかのケースがあります。年齢的なものでいえば、通常なら12歳ごろに来る初経が10歳未満で起きてしまう「早発月経」、15歳になっても月経がない「遅発月経」、18歳になっても初経がない「原発性無月経」があります。

月経周期の異常としては、正常な周期(28日前後)よりも早く(24日以内に)月経が来る「頻発月経」、35日以上月経がない「希発月経」、基本的に90日以上月経がない「無月経」に分類されます。

正常なら1週間程度続く月経ですが、月経の持続日数の異常も挙げられます。8日以上月経が続く「過長月経」、反対に2日以内で月経が終わってしまう「過短月経」があります。他にも出血量が多かったり、少なかったり、出血時に血の塊が混じったりすることもあります。

最近では、月経開始に伴い、体に痛みが出て日常生活に支障をきたす「月経困難症」、月経開始前から不安やイライラなどに襲われ、心身に異常が出る「月経前症候群」も健康上の問題として挙げられています。

月経への意識が低くなりがちなスポーツ現場

今、女子のスポーツ現場では「痛みもないし、気持ちも楽だから、月経は来ない方がいい」と考えている選手が多いようです。とても悲しいことですね。月経が正常に来ないということは、明らかに良くないコンディションです。

この状態でいくらトレーニングをしても効果は上がりません。人間の本能を無視してまで競技をすることは決して健全とはいえず、引退した後の生活にもかかわってきます。心身ともに健康な状態で試合に出場し、結果を出す。これが「真のアスリート」なのではないでしょうか。

「月経はなくて当たり前」というのは完全に間違った考えです。選手自身が月経に関する正しい情報に接し、知識を得ていく必要があります。そして、私たちスポーツニュートリショニストはもちろん、親御さん、指導者ら選手・チームを取り巻く周囲も、月経への理解を深めて選手が間違った方向に行かないよう、協力しながら導いていくことが重要です。

月経の自己管理と指導者の理解

月経障害の予防に一番大切なのは、「基礎体温をつける」ことです。自身のホルモンバランス、周期を知ることにつながるからです。そして、正常な月経周期を迎えるためには、自分にとって理想的な体脂肪率も同時に把握しておきましょう。

関連記事:体脂肪率の求め方

例えば、トップスポーツ選手、メディア露出の多い人が公表する体脂肪率にならって、無理な減量を行う選手もいるのですが、正解とはいえません。それよりも、自分が最も良いパフォーマンスを出せた時、好結果を残した時、月経が正常にきている時の体脂肪量、体脂肪率を覚えておき、常に頭に入れて意識的にコントロールすることの方が大切です。

選手は体が重く感じたり、月経による痛みがあったりする場合、無理にトレーニングをしない選択をするのもありだと思います。むしろ、月経周期に合わせたトレーニングメニューを自分で考える、もしくは指導者に作成メニューを提案することも必要になってきます。それくらい、自己管理を徹底すべきことだと考えます。

月経に関しては、指導者側の理解も求められます。選手が「今日は月経で体調が悪いので、練習を休みたい」と指導者に伝えると、「まだ月経なのか!」「トレーニングが足りていないんじゃないか!」と、逆に叱責されるという話をよく聞きます。FATを理解していませんし、選手とコミュニケーションが取れていない指導者ということになりますね。一昔前と比べれば少なくなってはいますが、いまだにこのような”パワハラ”指導が行われている現場があるのも事実です。

月経は、女子選手にとっては当たり前の生理現象です。指導者側は、選手がいつでも月経の悩みや相談を打ち明けられるような環境を作ってあげてほしいものです。

月経障害が起きてしまったらすぐに婦人科へ

月経障害は前回お話しした摂食障害と同様、「病気」です。症状が出たら専門医の診察を受けて治療しなければなりません。

月経障害の専門は婦人科なので、思春期の女子選手にとって行きづらい所ですし、気が引けるかと思います。しかし、「一時の恥」という言葉もあります。症状を放置し、治療が遅れて大事な試合に出られなくなっては本末転倒です。選手生命を脅かす事態にもなり得ます。もし、症状が出ても適切に対応すれば、それだけ復帰も早くなるのです。

そして何より、女子選手は引退後も月経と向き合って生きていくのです。月経障害の治療を疎かにすると、女性らしく生きていくための大きな障害に発展する恐れもありますから、軽く考えず真剣に受け止めましょう。

FATで重要なのは「常に予防を心がけること」「症状が出たら病院へ行く」。これにつきます。月経障害の場合、月経周期、ベストな体脂肪率の把握、指導者側の理解、周囲の気づきなど、選手のコンディションを安定に保つためには、問題の共通認識をもって当たることが好成績に結びつく要因につながるのではないかと思っています。

<次回へ続く>

スポーツを頑張る女子の健康上のリスク① ~利用可能エネルギー不足~【Z世代におくるスポーツ栄養講座 #09】

神戸女子大学・坂元美子先生による「Z世代におくるスポーツ栄養講座」。第9回は女子選手の三主徴(Female Athlete Triad:FAT)の一つ、「利用可能エネルギー不足」がテーマ。

女子選手が抱える健康上のリスクは、利用可能エネルギー不足が根源とも考えられている。生理現象が異常をきたし、心身のストレスからさまざまな症状がひき起こされる。今回は、利用可能エネルギー不足に伴う心理的疲労について解説する。

※Z世代とは、欧米で10~20歳を指す言葉として使われている。すぽとりでは「成長世代」と同義と捉えて使用する。

※記事と動画(図表解説あり)で少し内容が異なります。両方をご覧いただき、理解をより深めていただければ幸いです。

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利用可能エネルギー不足とは?

FATが最初に提言された時は、「摂食障害」「月経障害」「骨障害」でしたが、2007年に「摂食障害」の部分が「摂食障害の有無にかかわらない利用可能エネルギー不足(low energy availability)」に変更されました。

利用可能エネルギーとは、食事から摂取するエネルギー量から、運動によって消費されるエネルギー量を差し引いた、「基礎代謝や日常生活に必要なエネルギー量」のことをいいます。特に成長著しいZ世代のスポーツ選手は基礎代謝が重要で、成長に必要なエネルギーをしっかり確保することが理想的な体を作るための要素となります。

利用可能なエネルギーが不足している状態が続くと、特に女子選手は「女性ホルモンの分泌低下・異常」によって、「月経障害」「骨代謝異常(疲労骨折)」「心理的疲労(摂食障害・オーバートレーニング症候群)」に陥る可能性が高くなってきます。ですから、利用可能エネルギー不足はFATの根源ともいっても過言ではなく、常に気を配っておかなければなりません。今回は、利用可能エネルギー不足からくる心理的疲労について説明していきます。

スポーツで受けるストレスが「摂食障害」にも

摂食障害は、ストレスを原因とする心身症の一つと考えられており、食事がとれなくなってしまう「神経性食欲不振症(拒食症)」と、食べずにいられなくなってしまう「過食症」があります。

ストレスを適切に処理する能力が未熟な思春期(Z世代)によくみられる症状で、さまざまなケースが想定されます。女子に多いものですが、男子でも成人になってからでも十分に起こる得ることを覚えておきましょう。

トレーニング理論や方法の進歩によって、小さいころから専門的なトレーニングを行ったり、体力に見合わない練習をするといったケースも見受けられます。このような状態が続いていると、自分でも気づかないうちにストレスがたまり、症状が出ることがあります。こうした摂食障害の低年齢化は新たな問題として憂慮されます。

そして、体重制限を余儀なくされる競技を頑張っている女子選手は要注意です。長期間減量をしなければならない、体重を維持しなければならないプレッシャーやストレスが「食」に向かうことで、発症のリスクが高まります。また、ケガでトレーニングができない間に仲間やライバルに差をつけられるのではないかという不安、気が置けない指導者が交代することの不安も原因として挙げられます。

拒食症と過食症の症状として、前者は「体が食べ物を受けつけない」、もしくは「食べたいのに食べ物がのどを通らない」などに対して、後者は、食べることはできても、食べてしまった罪悪感から結局、下剤を使ったり吐いたりして体外に排出してしまいます。

いずれにしても、必要なエネルギーや栄養素が足りなくなるので、身体に異常をきたします。この状態でトレーニングや練習を続けると、体重が減っていくのはもちろん、疲労の回復が遅れたり、疲れやすくなったりします。栄養不足によって、免疫力が低下して病気になりやすくなったり、骨の代謝異常による疲労骨折などケガにもつながりやすくなったりします。

生理的な症状としては、徐脈、低血圧、低体温、月経障害、貧血といった症状もみられるようになります。これらはまさにエネルギー不足の弊害で、体の防御反応で自然と基礎代謝を落としてしまいますから、根本的な改善なくしては日常生活も困難な状態になります。

摂食障害が疑われる場合は速やかに心療内科へ

拒食症が疑われる人は、こんにゃくや海藻類などエネルギーが低い物しか食べないといった特徴があります。一方、過食症が疑われる人は、食事はするものの、吐くためにトイレにこもってしまってなかなか出てこないといった行動がみられます。

実際に、自分、もしくはチームの誰かに疑わしい症状が出た場合は、速やかに心療内科医にゆだねてください。Z世代の指導をする中で、私たちスポーツ栄養の専門家は食べ方の指導はできます。しかし、摂食障害は「心の病気」が原因なので、食べ方以前に病の元を断つことが優先されます。そして、それが何よりも重要になってきます。

摂食障害は自分では気づかないこともあるので、指導者、チームメイト、家族など、周囲の理解・協力も欠かせません。行動に少しでも異常な点がみられたら、心療内科医に一緒に行ってあげることも解決の糸口になるかもしれません。日ごろから「EAT26」のようなアンケート調査で食生活・行動を常に把握しておくこともいい手段だと思います。

自分を追い込んでしまう「オーバートレーニング症候群」

利用可能エネルギー不足が長く続くことによってひき起こされるのが「オーバートレーニング症候群」です。別名「ステルネス症候群」と呼ばれ、継続的にストレスを受けている状態をいいます。

他者(主に指導者)による激しい叱咤・激励、身の丈に合わない指導を受けるケースと、自分自身を必要以上に追い込んでしまうケースがあります。キャプテンを任されるようなまじめな性格の選手、責任感の強い選手、向上心の高い選手などは注意した方がいいでしょう。

オーバートレーニング症候群は摂食障害と同様に、体重制限を余儀なくされる競技の選手によくみられる症状ですが、減量のために摂取エネルギー量を減らしてしまうことは体と心の成長に悪影響を及ぼします。成長期の選手はトレーニング量も多いので、必ず消費したエネルギー、栄養をしっかり食事で補充し、常に利用可能エネルギーが不足しないように保つことが何よりも大切です。

<次回へ続く>

スポーツを頑張る女子の健康上のリスク ~女子選手の三主徴 概要~【Z世代におくるスポーツ栄養講座 #08】

神戸女子大学・坂元美子先生による「Z世代におくるスポーツ栄養講座」。第8回は女子選手をめぐる健康上のリスク(女子選手の三主徴)についてお送りする。

成長が進んでいく中で、男女の体の構造や習慣に変化が出てくるが、女子は将来の出産に備えて多くの栄養を摂取する必要がある。この時期に無理をし過ぎると、現役を退いた後にも響いてくるため、正しい知識と自分の体をいたわる心を持ってもらいたい。

※Z世代とは、欧米で10~20歳を指す言葉として使われている。すぽとりでは「成長世代」と同義と捉えて使用する。

※記事と動画(図表解説あり)で少し内容が異なります。両方をご覧いただき、理解をより深めていただければ幸いです。

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指導者の方には知ってほしい・・・否、知らなければならない問題

スポーツを頑張る女子選手には、「女子選手の三主徴:Female Athlete Triad(FAT)」と呼ばれる健康上のリスクが存在し、近年、指導者や専門家などの愛大で問題視されています。

FATとは、疲労骨折、若年性骨粗しょう症などの「骨障害」、「月経障害」、オーバートレーニング症候群や摂食障害をひき起こす「利用可能エネルギー不足」の3つを指しています。この3つの症状は、1つしか出ないこともあれば、同時期に2つ、3つ出てしまうこともあります。中でも、利用可能エネルギー不足は、骨障害、月経障害の原因にもなり得ます。

FATは、女性ホルモンの分泌に異常をきたす、無理な減量、過剰なトレーニング、指導者からの“圧力”など、栄養、精神ともに健全ではない状態が続き、自分が耐えられるストレスの容量を超えると発症してしまいます。多感で体が変化している高校生(中学生)の時期は、少しでも気を抜くと簡単にFATに陥ってしまいます。

スポーツを頑張っている間にFATに発症すると、パフォーマンスが落ちたり、最悪は競技が続けられなくなることにもなりますが、実は引退した後の生活にも響いていきます。最近では、著名な女子のトップ選手が減量や疲労骨折に苦しんだ過去を告白した事例もあります。

元気に競技生活を送るために、FATの正しい知識、対処方法について、次回以降、一つずつ解説していきます。

<次回へ続く>

スポーツを頑張る高校生にとって大切なこと【Z世代におくるスポーツ栄養講座 #07-2】

神戸女子大学・坂元美子先生による「Z世代におくるスポーツ栄養講座」。第7回は「スポーツを頑張る高校生にとって大切なこと」がテーマ。

高校生になると、プロスポーツ選手並みの練習量、パフォーマンスが求められるようになる。もしかしたら、練習量はプロ以上かもしれない。

ただ、勉強、放課後の練習、土日の試合、遠距離の通学など息つく間もない多忙な毎日で、少しでも気を抜けばケガにつながってしまう。ケガは、ライバルに差をつけられたり、力を発揮できなかったり、目標とする大会に出られなかったりする「悔しさ」の元凶でもある。

光り輝く高校生たちが悔しい思いをしないように、食事はもちろん、他の大切な要素も頭に入れておく必要がある。

今回は記事2本立て(動画は1本)で、スポーツを頑張る高校生たちに伝えたいことをまとめた。2本目はコンディショニングを中心に。

※Z世代とは、欧米で10~20歳を指す言葉として使われている。すぽとりでは「成長世代」と同義と捉えて使用する。

※記事と動画(図表解説あり)で少し内容が異なります。両方をご覧いただき、理解をより深めていただければ幸いです。

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量よりも質! 3時間勝負の「睡眠」

スポーツを頑張っている皆さんの理想的な睡眠時間は、「7時間」といわれています。長く眠ればいいかといわれるとそうでもありません。

一晩の睡眠で「浅い眠り」と「深い眠り」が繰り返されて、朝を迎えることになります。浅い眠りを「レム睡眠」、深い眠りを「ノンレム睡眠」と呼び、前者は主に身体、後者は脳をそれぞれ休ませる役割をもっています。みなさんの成長に必要なホルモンは、深いノンレム睡眠時に分泌が促進されます。

深いノンレム睡眠は入眠1時間後、2時間後、3時間後で訪れますが、4時間後以降は成長ホルモンの分泌促進が終わっています。ですから、入眠3時間後までに深い眠りにつくことが質の良い睡眠(=成長のためになる)をとるために重要となります。

成長ホルモンの分泌促進のために早く深く眠りにつきたいのですが、高校生(中学生)たちの天敵になる物があります。ズバリ、「スマートフォン」です。スマホで動画を見たり、ゲームをしたりと楽しくなってついつい遅くまで夢中になってしまうでしょう。ハードな練習の後ですから、なおさらです。

しかし、スマホから出る光は太陽とほぼ同様の明るさで、脳を刺激して覚醒させてしまいますし、眠る前にたくさんの情報を得てしまうとかえって脳が働き、眠りに入りづらくなってしまいます。成長のためにも、眠る前のスマホやゲームはできる限り避け、早く深くノンレム睡眠に入りましょう。

ストレス状態の継続には注意

高校生年代は顕著な成長をとげる半面、精神的に不安定な時期ともいえます。特に、スポーツを頑張る人たちは、小さいころから高いレベルで活躍することを目標にしてハードなトレーニングを続けています。

練習や試合で負う身体的なストレスはもちろん、「がんばらなきゃ」「勝たなきゃ」といった精神的なストレスを常に受け続けている状態といっていいでしょう。この状態が続くと、「慢性疲労(ステルネス)症候群」や「オーバートレーニング症候群」に陥ってしまいます。

これらは、気持ちがついていかずに体が動かなくなってしまい、最悪の場合、選手生命を絶ってしまう恐れもあります。選手自身が気をつけるのはもちろんですが、指導者のみなさんも選手のメンタルケア、休むべき時には休ませることを検討していただきたいと思います。

自分への栄養ケアは自己管理能力の向上に

最もエネルギーが必要な高校生年代にとって、3食きちんととることは成長を促すことにつながります。また、決まった時間に食事をとることで、消化酵素の分泌が活発になり、栄養を効率良く吸収できるようになります。

そして、何よりも大切なのが、自分自身で「いつ」「何を」「どれだけ」食べればいいかを理解する、考えることです。これが、自己管理能力の向上に結びついてきます。

高校を卒業して、さらに高いレベルで活躍する人もいるでしょう。海外で活躍する人もいるかもしれません。その時、いかに自分をコントロールして競技に集中するか、自分にとって身になる食べ物を選択できるか。これを当たり前のようにできるのがトップ選手たちなのです。高校生年代は、自己管理能力を高める最後のチャンスなので、意識して食べ物、栄養と向き合うと良いでしょう。

最後に、成長のために食べ物や栄養への意識をする以前に、食べることが苦にならないようにしてほしいと思います。

食べることは楽しいことですし、おいしい物を食べれば心も安らいできます。反対に、無理をして食べても体にうまく吸収されませんし、体重制限などで食べたいのに食べられない、食事も楽しむことができない。これでは、体が成長するはずがありません。

ですから、食事が楽しみになるように、指導現場、家庭でもどうするかを一緒に考えていただきたいですね。

<次回に続く>

スポーツを頑張る高校生にとって大切なこと【Z世代におくるスポーツ栄養講座 #07-1】

神戸女子大学・坂元美子先生による「Z世代におくるスポーツ栄養講座」。第7回は「スポーツを頑張る高校生にとって大切なこと」がテーマ。

高校生になると、プロスポーツ選手並みの練習量、パフォーマンスが求められるようになる。もしかしたら、練習量はプロ以上かもしれない。

ただ、勉強、放課後の練習、土日の試合、遠距離の通学など息つく間もない多忙な毎日で、少しでも気を抜けばケガにつながってしまう。ケガは、ライバルに差をつけられたり、力を発揮できなかったり、目標とする大会に出られなかったりする「悔しさ」の元凶でもある。

光り輝く高校生たちが悔しい思いをしないように、食事はもちろん、他の大切な要素も頭に入れておく必要がある。

今回は記事2本立て(動画は1本)で、スポーツを頑張る高校生たちに伝えたいことをまとめた。1本目は食関連について。

※Z世代とは、欧米で10~20歳を指す言葉として使われている。すぽとりでは「成長世代」と同義と捉えて使用する。

※記事と動画(図表解説あり)で少し内容が異なります。両方をご覧いただき、理解をより深めていただければ幸いです。

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スポーツを頑張るために必要なエネルギー量を知っておこう

これまでの講座で示してきたエネルギー摂取量は、食事摂取基準(厚生労働省)に基づいたもので、あくまで一般的な数値になります。高校生年代に入り、練習やトレーニング量が増えて成長が進んで筋肉量も増えてくると、必然的にエネルギーの必要量も多くなってきます。

ですから、すでに成長期に入った、または成長が進んでいる高校生たちは、一般的な数値ではなく、よりスポーツに特化した数値を知る必要があります。スポーツ選手向けの推定エネルギー必要量を求める計算式がありますので、自分の競技特性や体格などを把握し、日々の練習、食事に役立てましょう。

以下、スポーツ選手の推定エネルギー必要量の計算式です。

28.5×除脂肪体重(LBM)×種目分類別身体活動レベル(PAL)

LBM = 体重-(体重-(体脂肪率÷100))

除脂肪体重(LBM)とはその名の通り、体の脂肪分を除いた筋肉・体水分(血液含む)・骨などを合わせた重量のことです。LBMを求めるためには体脂肪率の値が必要になりますが、すでに学校やチームで定期的に測定してわかっている人は数値を当てはめ、計算をしてみてください。

そうでない人は、以下の手順で計算すると、おおよその体脂肪率が求められ、LBMを算出することができます。

①自分の標準体重を求める
身長 (m) × 身長 (m) × 22

②体脂肪を求める
(実際の体重-①) ÷ ① × 100 👉LBMの計算式へ

種目分類別PALは、競技によって特性などが異なり、個人のエネルギー量も変わってくるため、持久系、筋力・瞬発力系、球技系とそれぞれの競技に分けて数値化したものです。表を見ると、マラソンや長距離などの持久系競技は他の競技よりも数値が高くなっていますが、これはより多くのエネルギーが必要(=著しいエネルギー消費)であることを示しています。

「たくさん食べる」の受け取り方

高校生は「一生のうちで一番食べなければいけない(エネルギーが最も必要な)時期」と繰り返しお伝えてきました。ただ、「たくさん食べる」といっても、食が偏ってしまうと体の中で栄養をうまく使うことができません。

体を大きくする目的で、タンパク質(プロテイン)ばかりとったとしても、タンパク質を体の材料に変換するビタミンB群が不足していては筋肉になりませんし、身長を伸ばすためにはカルシウム、マグネシウムといったミネラルも同時に必要です。

また、エネルギー源である炭水化物が不足した状態でタンパク質をとっても、体の材料になる前にタンパク質がエネルギーとして使われてしまうので、目的を果たすことができないのです。

ですから、「たくさん食べる」よりも「バランス良く食べる」の方を意識してほしいと思います。これは、以前提案した「毎食7つの色をそろえる」につながってきます。

小学生のうちから心がけたいところですが、高校生になってから始めても大丈夫です。まずは量よりもバランス、7つの色の食材を毎食とるように意識して、それができるようになったら量を増やしていくといいでしょう。

関連記事:バランス良く食べるには?

男子は男性に、女子は女性に

高校生は、男女ともにホルモン分泌が最も活発になる時期になります。男子は男性らしく、女子は女性らしく、体が変化していきます。

男子の場合、男性ホルモンが正常に分泌されていれば、それほどハードなトレーニングを積まなくても自然と筋肉の量は増えていきます。ですから、筋肉をつけるための栄養よりも、ホルモン分泌が促される栄養を考えていくと良いと思います。

女子の場合、女性ホルモンを正常に分泌させるためには、ある程度の体脂肪が必要になってきます。審美系競技(新体操、フィギュアスケートなど)や体重別競技で、過度なダイエットや減量によって適切な体脂肪が確保できないと、「女子選手の三主徴(FAT=Female Athlete Triad)」を代表とするさまざまなスポーツ障害をひき起こします。スポーツ障害は選手寿命を縮めたり、競技生活からの引退を余儀なくされるので、そうならないためにも「体脂肪を減らしすぎないこと」を認識しておきましょう。

<#07-2に続く>