中学生年代の食の問題点とその対策 ~スポーツと五大栄養素~【Z世代におくるスポーツ栄養講座 #05】

神戸女子大学・坂元美子先生による「Z世代におくるスポーツ栄養講座」。第5回は「中学生年代の食の問題点とその対策 ~スポーツと五大栄養素~」をテーマにお送りする。

 

※Z世代とは、欧米で10~20歳を指す言葉として使われている。すぽとりでは「成長世代」と同義と捉えて使用する。

動画「すぽとりChannel」

 

成長が本格的に始まる中学生年代

中学生になると、身長・体重の発育・発達が起こり始めると同時に、内臓が大きくなっていくのに伴って消化・吸収能力も高まってきます。そして、最も特徴的なのが、免疫力が成人の約2倍高まるということです。

ですから、中学生年代では、体を大きくするための栄養のとり方はもちろん、免疫力を高めるための栄養のとり方も重要になってきます。

また、中学生、その後の高校生というのは、一生のうちで最もエネルギーをとらなければならない時期になります。エネルギーを獲得するために、どのような栄養のとり方をするかを考えていく必要があります。

スポーツと5大栄養素の関係

みなさんもご存知かと思いますが、毎日の生活の中で、食事から「たんぱく質」「脂質」「炭水化物」「ビタミン」「ミネラル」の5大栄養素をとらなければいけないといわれています。では、これらがスポーツをする時にどのように体内で働くのかを説明していきます。

炭水化物と脂質はエネルギー源になります。日常生活での必要エネルギーは一般的に、炭水化物と脂質を半分ずつ使用しているといわれていますが、スポーツをする場合、運動強度や量が増えていくので、より多くの炭水化物が必要になってきます(持久系スポーツは脂質の必要量も増加)。

体に貯蔵されている体脂肪をエネルギーとして利用する脂質に対し、炭水化物は食事からその都度体内に入れてあげないとすぐに不足してしまいます。炭水化物は脳のエネルギー源としても使われます。とる量が十分でないと、スポーツをするうえでの「判断力」「集中力」が失われかねません。スポーツをする前には、「炭水化物をしっかりとる(体に入れておく)こと」を心がけておくと良いですね。

筋肉、骨、血液、爪など体の材料となるのが、たんぱく質です。たんぱく質が不足すると、スポーツ選手としての体作りができなくなってしまいます。もう一つ、たんぱく質には免疫力を上げるという大きな役割があります。ウイルスや病原菌が体に入ってくると、体内では防衛機能を果たす抗体が作られます。この材料になるのがたんぱく質です。

炭水化物、脂質、たんぱく質が体の材料になるものなら、材料を使ってエネルギーや身体に作り変える役割を果たすのが、ビタミンとミネラルになります。いくら炭水化物、脂質、たんぱく質をしっかりとっていても、ビタミン、ミネラルがなければエネルギーや身体への作り変えができなくなるので、忘れず一緒にとる必要があります。ミネラルの中には骨の材料となるカルシウム、マグネシウム、血液の材料になる鉄と、スポーツ選手の体作りには不可欠なものも含まれています。

このように、5つの栄養素を必ず摂取しなければ、スポーツ選手の体作りができませんし、中学生で起こるべきさまざまな発育・発達に支障をきたす可能性があります。

5つの栄養素の関係はチームスポーツと似ています。一人だけ上手な人がいても、周囲が協調しなければ結果を出すことができません。栄養素も同様に、一つ一つがそれぞれ役割をもっていて、うまく機能することで、体を健康に保ったり、強くしたりすることができるのです。

中学生、高校生は、5つの栄養素をバランス良くとらなければなりません。そのためには前回ご提案したように、「毎食、虹色の食材をそろえる」ことをしていただければと思います。

小学生のうちから虹色の食事を心がけていれば、最もエネルギーが必要なこの時期にバランス良く、たくさん食べることができるようになっているはずです。

サプリメントなどに頼らず、消化・吸収能力を高めたい

中学生年代の食事で注意したいのは、サプリメントや加工食品の摂取です。今、スポーツをしている人に向けて多くのサプリメントや加工食品が発売されており、いずれも消化・吸収の良い状態で栄養素が摂取できるように作られています。

成長期が過ぎた成人が使用するのは良いと思いますが、成長が著しい中学生の時から慣れてしまうと、内臓の消化・吸収能力を高めるせっかくの機会を失うことになりかねません。食べ物を咀嚼し、胃で消化することこそが能力を高めることにつながりますので、サプリなどの摂取はなるべく控えた方が良いですね。

また、サプリなどの摂取で食事量が減ってしまう可能性も出てきます。これらはタブレットや粉末など、小さくても栄養素が凝縮された形状になっています。これに慣れてしまうと、摂取量が少なくても栄養は十分と脳が勘違いする(食べた気になる)ため、食欲を止めてしまいます。「サプリなどでお腹一杯になり、食事が食べられない」ということも起こりえます。これでは、たくさんエネルギーが必要な時期に食事量が減ってしまい、身体、内臓の成長が小さくなりますし、先ほどの消化・吸収能力にもかかわってきます。

サプリなどは手軽で便利なので使いたいと思っている人も多いことでしょう。しかし、身体の成長も内臓の成長もこの時期しかありません。せっかくの機会を失わないためにも、使いたい気持ちをグッとこらえて、食事から栄養をとる生活を心がけていきましょう。

<次回に続く>

次回は、スポーツを頑張る高校生年代が抱える問題点についてお送りします。お楽しみに!!

小学生年代の食の問題点を解決するために ~にじ色をそろえよう!~【Z世代におくるスポーツ栄養講座 #04】

神戸女子大学・坂元美子先生による「Z世代におくるスポーツ栄養講座」。第4回は「小学生年代の食の問題点を解決するために ~にじ色をそろえよう!~」をテーマにお送りする。

バランスの良い食生活を崩してしまう小学生年代特有の「こ」食問題。毎日の生活の中で自然とバランス良く食材がとれるようになるのが解決の糸口になってくる。坂元先生は、7つの色(虹色)と食材を組み合わせて覚え、小学生のうちから食への意識を高める必要性を訴えている。

※Z世代とは、欧米で10~20歳を指す言葉として使われている。すぽとりでは「成長世代」と同義と捉えて使用する。

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「こ」食の解決=食のバランス

前回、小学生年代の食の問題点として「こ食」を取り上げましたが、これはバラン良く栄養がとれなくなることを意味しています。ですから、「どのようにしてバランスのいい食事をとるか」がこの問題を解決するポイントになってきます。

一言で「バランス」と言ってもなかなか難しいですよね。「そもそもバランスのいい食事って何?」と思う方もいるかもしれません。

そこで、私からの提案です。朝・昼・晩で毎食、7つの色の食材を意識してそろえていただきたいと思います。7つの色とは、赤、だいだい、黄、緑、青、藍、紫で、「虹」の色を表現しています。

小学生のうちから毎食、「虹色の食事」を意識していただければ、みなさんのスポーツ選手としての未来も虹色に輝いてきますよという、私からのメッセージでもあります。

虹色の食材を一つずつ解説

まず、「赤」は、牛・豚・鶏の肉類と卵。多く含まれる栄養素は、タンパク質、ビタミン、ミネラルになります。肉や卵はいろいろな調理法がありますので、朝食からしっかりそろえるようにしたいですね。

次に、「だいだい」は、魚介類、豆腐・納豆など大豆製品で、多く含まれる栄養素は、タンパク質、ビタミン、ミネラルです。

「黄」は「主食」といわれている物で、ごはん、パン、麺類、餅などが挙げられます。多く含まれる栄養素は、炭水化物(糖質)です。

「緑」は、色が濃い緑黄色野菜といわれる物です。いも類、海藻類もこのグループになります。ほうれんそう・ブロッコリー・にんじん、わかめ・ひじき・こんぶ、さつまいも・じゃがいも・やまいもなど、ビタミン、ミネラル、食物繊維が多く含まれています。

「青」は、淡色野菜といわれる色の薄い物になります。だいこん、きゅうり、なす、ごぼう、たけのこ、なす、レタスとたくさんあります。きゅうりやなすは一見、緑黄色野菜と思われがちですが、皮をむくと白っぽいので、「青」になります。多く含まれる栄養素は、ビタミン、ミネラル、食物繊維です。

ここで、「緑」と「青」の野菜を比較してみましょう。どちらも多く含まれる栄養素は同じですが、実は「緑」の方がより豊富に含まれています。

スポーツ選手に「野菜をちゃんと食べていますか?」と聞くと、「サラダやキャベツの千切りをいっぱい食べています」と、返ってくることがあります。これらは淡色野菜の「青」で、もちろん栄養素はとれるのですが、意識してとりたいのは緑黄色野菜の「緑」の方です。

また、「緑(海藻類:わかめ・ひじき・こんぶなど)」は、特にミネラルが豊富に含まれていますので、体の成長、スポーツ選手になるための体作りを考えて、毎食積極的にとっていきたいところです。

「藍」は、牛乳、チーズ、ヨーグルトなどの乳製品を表しています。タンパク質、ミネラルが多く含まれ、特にカルシウムが豊富です。「緑」でもカルシウムをとることができますが、吸収率が低めという欠点もあります。一方、「藍」は「緑」よりも2倍の吸収率があるといわれているので、カルシウムを効率的にとるなら「藍」の方が良いでしょう。

「藍(牛乳、チーズ、ヨーグルトなど)」をとる上での注意点は食物アレルギーです。もし、乳アレルギーがある場合、「緑(海藻類)」、「だいだい(大豆製品、骨ごと食べられる小魚)」などで代替して、毎食しっかりとれるように心がけましょう。

「紫」は果物全般になります。特におススメしたいのがすっぱい物で、これらはさまざまな栄養素の吸収を良くするクエン酸が含まれています。食後のデザートにすっぱい果物を食べることで、食事でとった栄養素を体内に取り込みやすくしてくれます。成長に必要なビタミンCもより多く含まれています。

また、果物には糖質が多く含まれているので、成長に必要なエネルギー源を「黄(炭水化物)」とともにとっていただければと思います。

このように、7つの色の食材を毎食とっていれば、自然にバランス良く栄養素をとれるようになっていきます。

不足した色を自分でそろえられるように…

小学生が栄養素の名前を覚えようとすると難しいと思いますので、まずは7つの色とどんな食材があるかを覚えると良いでしょう。

それができたら、次は普段の食事で「これは何色の食材」と一つ一つ確認をしながら食事をとってみましょう。

最終的には、毎回の食事で足りない色があれば、自分で冷蔵庫を開けて用意する。このくらいまでできるようになるのが理想です。

この段階までくれば、無意識にバランスの良い食事がとれるようになっていますし、身長・体重、内臓(消化・吸収能力)などの成長が顕著で、最も栄養が必要な中学生、高校生の時期に「たくさん」食べられるようにもなっているはずです。

「たくさん食べる」という点から注意が一つあります。前回お話しした「濃食(味が濃い物を食べる)」には気をつけていただきたいですね。

特に化学調味料がたくさん使われている物は、少し食べただけで脳が満腹感を覚えてしまい、たくさん食べたと勘違いしてしまいます。小さい頃からこれに慣れてしまうと、本来必要な量をとることができず、成長に悪影響が出てくる可能性もあります。

ですから、小学生のうちはできる限り、自然な食品・食材そのものの味をおいしいと感じるような食生活を送ることが必要になってきます。

<次回へ続く>

第5回は「中学生年代の食の問題点とその改善 ~スポーツと五大栄養素~」をテーマにお送りします。

小学生年代の食の問題点 ~知っていますか? さまざまな「こ」食~【Z世代におくるスポーツ栄養講座 #03】

神戸女子大学・坂元美子先生による「Z世代におくるスポーツ栄養講座」。第3回は「小学生年代の食の問題点」をテーマにお送りする。

小学生年代特有の「こ」食が問題視されている。本格的に成長を迎える中学生、高校生年代に備え、成長の妨げになるリスクをしっかりと押さえておきたい。

※Z世代とは、欧米で10~20歳を指す言葉として使われている。すぽとりでは「成長世代」と同義と捉えて使用する。

動画「すぽとりChannel」

成長の妨げになる「こ」食

今、栄養士の間で話題になっているのが小学生の「こ」食。これは、5つの「こ」の漢字に当てはめて問題提起をしているものです。

1つ目は「孤食」。共働きをする親御さんが多い社会ですが、仕事の都合でどうしても帰宅が遅くなり、出来合いの物をレンチンして食べたり、お子さんの食事時間に合わせて用意することができなかったりする状態をいいます。

規則正しい食習慣を身につけたい時期ですが、お子さん一人の食事となり、食べる時間がバラバラになったり、バランスの良い食事をとることが難しくなります。

2つ目は「個食」。例えば、おじいさんは柔らかい物(煮物など)、お父さんは酒の肴、お母さんはダイエット食、お子さんは好きな物と、家族そろって食卓を囲むことができているものの、それぞれで食べる物が異なる状態をいいます。

3つ目は「固食」。これは、「こり固まった物を食べる(偏食)」という意味になります。例えば、毎日の朝食が菓子パンだけ、ダイエット中だから〇〇だけしか食べない(お子さんには少ない)など、食事が偏ってしまってバランス良く栄養が取れなくなってしまいます。

ちなみに、文字通り、固い物を食べることはお勧めします。固い物は自然とかむ回数が増えて、食べ物の消化・吸収を助けたり、脳の活性化にもつながります。

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4つ目は「粉食」。小麦粉を使った料理ばかり食べることです。粉物の代表的なお好み焼きは具材がある程度そろっているのでまだマシですが、具材がシンプルなたこ焼きが夕食というのは栄養バランスを欠くことになりますので、気をつけたいですね。

最後は「濃食」で、味の濃い物ばかり食べることをいいます。味の濃い物、特に塩辛い物ばかり食べて、それがおいしいと感じてしまうと、味つけの薄い物や食品そのものの味を感じづらくなってしまいます。

もう一つ、大きな問題として挙げられるのが化学調味料と添加物です。化学調味料はごく少量で味がつきますし、添加物は本来の味に似た物を人工的に作り出します。これらを使用した物に食べ慣れると、本来の味がわからなくなってしまうという錯覚が生まれます。

さらに、食品や飲料で使用されている人工甘味料。こちらもごく少量で味つけできるため、とても甘いのにゼロカロリー(エネルギーがない)という物があります。エネルギーが足りていないのに、甘さだけを感知して勘違いした脳が「もう満腹だから食べるのをやめなさい」と指令を出してしまいます。

小学生年代で人工甘味料に慣れてしまうと、この後の中学生、高校生でエネルギーが必要な時に適切な量を食べることができなくなります。人工的な物はとても便利で食生活にも密接していますが、体作りを考えるのであれば、小学生年代ではなるべく控えた方が良いでしょう。

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「しっかり食べる」意識づけを

小学生年代でも、熱心に練習を続けている人は多いと思います。ただ、これも体の成長を考えると弊害が出てきます。

夜遅くまで練習が続く場合、帰宅時間が遅くなって食事の時間が本来睡眠をとる時間帯にかかってしまいます。そうなると、睡眠時間が削られて眠りが浅いまま起床→お腹がすいていないので朝食を抜くという悪循環に陥ります。

週末は1日で何度も試合があって、物を食べる機会が失いがちになります。お腹に物が入っていると動きが鈍くなるので、簡単な物で食事を済ませてしまうこともあるでしょう。

しかし、小学生年代のうちから、しっかり食べることを意識しておかないと、何度もいうように中学生、高校生で最も食べなくてはいけいない時期に食べられなくなります。

それから、小学生年代は味覚が確立されてきて、好き嫌いが増えやすい時期でもあります。食べ方や食べる物を意識することが大切になってきます。

今年は新型コロナウイルスの蔓延によって、かつてない状況になっています。学校が始まらなかったり、給食が提供されなかったりと、必要な栄養をとれないケースが出てきてしまいました。

「こ」食問題に始まり、今年の状況を踏まえると、小学生年代は特にスポーツを頑張っているお子さんにとって、理想的な食習慣を整えることが難しいといえます。

小学生年代は体が急激に大きくなる時期ではないので、たくさんの量を食べることがそれほど必要ではありません。「規則正しい時間に食事をする」「きちんと朝ごはんを食べる」といった基本的なところを押さえておきましょう。

また、小学生自身でバランスの良い食事をとれるようになりたいですね。最初は意識をしながらですが、それを続けていけば無意識にできるようになってくるはずです。

<次回に続く>

第4回は「小学生年代の食の問題を解決するために」をテーマにお送りします。お楽しみに!

成長期に何が起きているのか【Z世代におくるスポーツ栄養講座 #02】

神戸女子大学・坂元美子先生による「Z世代におくるスポーツ栄養講座」。第2回は「成長期に何が起きているのか」をテーマにお送りする。

誕生から20歳の間に体が成長する中で、4つの成長型が存在する。この時期に合わせて、適切に栄養をとることで理想的な体作りを可能にし、競技人生やその後の健康的な生活にも深くかかわってくる。

※Z世代とは、欧米で10~20歳を指す言葉として使われている。すぽとりでは「成長世代」と同義と捉えて使用する。

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成長型を意識して適切な栄養摂取をしよう!

人間は誕生から20歳の間に体が成長していき、図のように一般型、リンパ型、神経型、生殖型の4つの成長型に分類されています。

1つ目の一般型」は、身長・体重の発育・発達を示す成長曲線で、誕生~3歳、小学生の高学年~高校生と2度成長する機会があります。女子は小学生の高学年~中学生、男子は中学生~高校生と、一般的に女子の方が機会が早く訪れる傾向にあります。

この時期、スポーツを頑張るみなさんはトレーニングを積んでいくと思いますが、トレーニング量に見合った栄養摂取ができないと、成長が鈍化する可能性があるとともに、さまざまなスポーツ障害をひき起こす原因となります。ですから、体の成長のための栄養、スポーツ選手としての栄養をしっかりとることが大切になってきます。

2度の成長機会には内臓の発育・発達も促されると同時に、食べた物の消化・吸収能力を獲得する、とても重要な時期になります。

1度目の成長機会「誕生~3歳」でカギを握るのは、離乳食です。この時期にさまざまな食材をとることで、食物アレルギーや好き嫌いが少なくなる確率が高くなります。

2度目の成長機会「小学生の高学年~高校生」は、本格的にスポーツをしているころになりますが、練習時や試合時により効果的に栄養を摂取するために、サプリメントを使用することも選択肢の一つになってくると思います。

サプリは、栄養を効率良く簡単に摂取でき、消化・吸収にも優れる加工食品です。パフォーマンスやコンディショニング面でも助けになるでしょう。

ですが、サプリに頼りすぎてしまうと、せっかくの消化・吸収能力を獲得する機会をみすみす見逃してしまうことになり、内臓面での発育・発達という点で逆効果になりかねません。この時期はサプリを使うのを我慢して、食事からの栄養摂取を心がけていきましょう。

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2つ目の「神経型」は、体を上手に使う器用さ(運動神経)を示す成長曲線で、8歳(ゴールデンエイジ)でほぼ完成するといわれています。

この時期までにさまざまな運動をすることで、体全体を上手に使えるようになれば、後々ハードなトレーニングをしてもケガをしにくい体になっていきます。

3つ目の「リンパ型」免疫力の獲得を示す成長曲線です。8~16歳がピークになりますが、実に成人の約2倍まで免疫力をあげることができます。

免疫力を上げるための食事(後日解説)はもちろん、屋外で活動することによってビタミンD(免疫調整機能)の合成も促されます。集団行動・生活をすることでも免疫力が獲得できます。

スポーツを頑張っているみなさんは、屋外や集団での活動は自然と行っていると思うので、栄養のとり方を意識すると良いかもしれませんね。

最後は「生殖型」です。女性、男性ホルモンの分泌にかかわるもので、「一般型」とほぼ同様の成長曲線を描きます。

男子は、男性ホルモンの分泌が高まることで筋肉の量が自然と増えていきますので、無理のないトレーニングをすることが効果的です。

女子は、特に審美系(新体操、体操など)競技では減量せざるを得ない場合があり、手段として体脂肪を落とすということがあります。

しかし、女性ホルモンを正常に分泌させるためにはある程度の体脂肪が必要で、過度の減量はホルモン分泌に支障をきたして「月経障害」「骨の成長障害(骨粗しょう症、疲労骨折)」の原因になるので要注意です。

 

人生のうち最もエネルギーが必要なZ世代

Z世代のスポーツ選手は、競技に適した体作りのための栄養、トレーニングのための栄養、そして、人として成長するための栄養がより多く必要になってきます。

日本人の食事摂取基準によるエネルギー摂取量の目安は図の通りです。女子は12~14歳、男子は15~17歳で、一般型の成長曲線と同じ時期に一生のうち最も多くエネルギーが必要になってきます。

この時に、必要なエネルギー量だけを意識していればスポーツ選手としての体作りができるかというとそうではありません。また、筋肉をつける、体を作るために必要な栄養はタンパク質ですが、それだけをとっていれば体がどんどん大きくなるわけでもありません。

必要エネルギー量を確保するためにどのような栄養をとって、そのバランスをどのようにとるかがとても重要になってきます。

 

食のコントロールは自己管理能力を高めることに

Z世代では最も多くのエネルギー、栄養をとる必要があります。体の成長のためには、自分自身で「何を」「どれだけ」「どのタイミング」でとればいいのかを理解し、実践できるようにしたいですね。そのためには正しい生活・食習慣を身につけることが大切で、成長機会が訪れる小学生のうちに意識できるように心がけましょう。

それができるようになれば、中学生、高校生でスポーツを最も頑張る時期に成長が見込める上、パフォーマンスやコンディショニングと食の関連性や大切さを自然と考えられるようになっているはずです。これは、自己管理能力にも結びついてきます。

五輪やプロで活躍するアスリートは、自己管理能力に長けているとよくいわれます。海外など食べ慣れた物が手に入らない環境下でも、自身で食のコントロールをしてパフォーマンス、コンディションを維持して結果を残しています。

ですから、早い時期から食を意識することは、体の成長、自身の成長を高めることになるのです。

<次回に続く>

第3回は『小学生年代の食の問題点 ~知っていますか? さまざまな「こ」食~』をテーマにお送りします。お楽しみに!

なぜ成長年代の栄養が大切なのか ~指導現場から見えるもの~【Z世代におくるスポーツ栄養講座 #01】

神戸女子大学・坂元美子先生による「Z世代におくるスポーツ栄養講座」。第1回は「なぜ成長年代の食が大切なのか」をテーマにお送りする。坂元先生の人生、キャリアを通じて得た経験が背景にあり、Z世代への栄養指導に力を入れる理由となっている。

※Z世代とは、欧米で10~20歳を指す言葉として使われている。すぽとりでは「成長世代」と同義と捉えて使用する。

動画「プロローグ 坂元美子先生ってこんな人」はこちら

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ケガが多い高校生アスリートたち

多くの高校生たちは、試合で活躍するために体を酷使しながらたくさんトレーニングを積んでいます。

オーバートレーニングについては最近、(野球の)投球数制限や成長期での試合数減がようやく叫ばれてきましたが、それでも無理をして練習をする選手が後を絶ちません。

ケガをして当たり前」の感覚でトレーニングをすれば、スポーツ障害や女子選手の生理不順からくる疾病(貧血、骨粗しょう症など)につながってしまいます。

これらの問題は食事面と相関があり、予防の観点から食が大きな影響を及ぼすことがわかっています。したがって、食事のとり方を考えることが、成長期のスポーツ選手にとっていかに重要かを感じています。

現役生活が長いベテラン選手の特徴…それは成長期の食事にあり

プロ野球選手に栄養指導をしていた時、成長期こそ食事の重要性を訴える必要があると気づきました。体作りがプロになる前にある程度できていれば、プロになってもケガをしない、丈夫な体で試合に臨むことができるからです。

プロ野球は毎日のように試合があり、暑さの厳しい夏でも体調を崩さないようにしなければ、シーズンを乗り越えることができません。ナイターも多いので、生活のリズムを一定に保つことが難しくなります。

さらに、プロ野球選手はお酒をよく嗜みます。この点は、指導する側として苦労したこともあるんですが、一見すると無茶な食生活を送っていても活躍するベテラン選手がいるんですね。

こういったベテラン選手が小・中・高の成長期にどのような食事をしたかを分析すると、おやつが煮干しだったり、毎朝同じ物を食べるんですが、消化・吸収がよい加工食品に頼らない食事だったりと、成長期に必要な栄養を自然にとることで丈夫な体を作り上げていたのです。

体がしっかりできていれば、プロになった後に無理が利くようになるので、結果として選手寿命が長くなります。ただ、これは「成長期に適切な栄養をとっていたから」であって、その点に理解がなくプロ入り直後の選手がベテランの真似をすると、ケガをしたり、かえって選手寿命が短くなったりするので、気をつける必要があります。

食を意識することが体調良化に直結する

私は高校生まで小児ぜんそくを患っていて、体育の授業も毎回休むような生活を送っており、スポーツとは無縁でした。

小児ぜんそくは通常であれば、体や内臓の成長に伴って改善されていくんですが、私の場合は違いました。ですから、ステロイドを注射するために通院する日々が長く続いていました。

通院が続く中で、看護師さんにお世話になっていたこともあり、病院看護師を将来の職業として考えていました。ある日、「これからは栄養の時代」と父からの助言を受け、管理栄養士を志すことにしました。

神戸女子大学に進んで栄養学を学び、それまでの食生活を振り返ると、自分がいかに体に良くないことばかりしていたと気づいたんです。それから少しずつ食事を変えていき、大学を卒業するころにはガラッと食事内容が変わっていました。

食事内容が変わったことで、体調もどんどん良くなって小児ぜんそくも完治していました。ですから、食事の内容次第で体調の良し悪しが変わってくることを身をもって経験することができたんです。

最近、「自分の体をしっかり理解し、向き合うことがアスリートには大切」という話題に触れたんですが、まさしくその通りです。私も大学4年間で同様の経験をしているので、よくわかります。

プロ選手の指導を通じて得た成長世代の食の重要性、食で病気を克服した自らの経験を踏まえることで、成長年代への適切なアドバイスができているのではないかと思っています。

<次回に続く>

第2回は『成長期に何が起きているのか』をテーマにお送りします。お楽しみに!