現場で役立つスポーツ栄養学の知識②【スポーツ栄養の果たす役割 #11】

「野菜は必須!」 という基本

食事・栄養の基礎・基本は何かと、改めて問われれば――。またそれか、と思われるかもしれませんが、やはり『野菜を中心とした食事をバランスよく!』。これに尽きるといえるでしょう。

なぜ、野菜が中心かといえば、食物繊維やビタミン・ミネラルを豊富に含んでおり、かぜやケガの予防はもちろん、メタボリックシンドロームの予防、あるいは貧血や熱中症の予防にもなるからです。

また、ビタミンCを多く含む食品は、体内に蓄積できないので、日々の摂取を欠かすことはできないという理由もあります。つまり、ヒトの身体が健やかに機能するという意味では、「野菜を中心に!」というのはすべての人に共通した大前提になるというわけです。

ちなみに、USOC(United States Olympic Committee=アメリカオリンピック委員会)のアスリートレストラン(https://www.teamusa.org/nutrition)においても、通常のトレーニング時においては野菜をワンディッシュのうち半分とるようにと指導されています(トレーニングの多い日と試合の日においてもお皿の4分の1程度)。

つまり、外国人選手は肉ばかり食べているから強いなんていうのは、もはや時代遅れのナンセンス以外のなにものでもない。こういったことも正しい情報として認識しておきたいものです。

したがって、指導者や運動実践者の方々であればなおさらのこと、まずは『野菜は必須!』というルールを基本として、そのうえで目的や生活(仕事)環境に応じてさまざまなバリエーションを活用したり、あるいはアレンジを加えるという、まずは健康第一の本来の考え方に切り替えるべきではないかと思います。

飛び道具”を活用するタイミング

例えば、指導者の中でも一日に何本もレッスンを抱えるフィットネスインストラクターの方々の場合、その運動消費量はアスリートに勝るとも劣らないといえるでしょう。ましてや、どの時間帯であっても質の高いレッスンを提供するためには、欠食なく規則正しく食べることが絶対条件となります。ところが、言うは易く行うは難し。おそらく規則正しくとは真逆の不規則な仕事環境を強いられることによって、その条件は十分に満たされていないのが現状ではないでしょうか。

私が教えていた卒業生の中には、インストラクターとなって活躍している教え子も少なくないのですが、その教え子たちが社会人になってから一様に痩せていくのです。これは、明らかに運動による消費エネルギーに見合った摂取エネルギーがとれていない証しといえるでしょう。レッスン過多になると、疲労の影響で食欲もなくなり、次第に痩せていくという悪循環に陥ってしまっているのです。

アメリカスポーツ医学会では、こういった状況をアスリート特有の問題であるlow energy availability(利用可能エネルギー不足)と定義し、警鐘を鳴らしています。こうしたエネルギー不足は、女性の場合、月経周期異常や生涯にわたる骨粗しょう症のリスクを高める可能性を秘めており、女性アスリートの三主徴(Female Athlete Treard)として注意喚起されています。

こういうとき、「それでも基本通りに食べなさい」と正論を振りかざしても、問題はなかなか解決するものではありません。むしろ、それはさらなるストレスとなってしまうものです。したがって、こういったケースでは、いや、こういうケースだからこそ、前回述べた‟飛び道具”を緊急避難的に活用すべきではないかと考えます。

例えば、私は、そんな彼女たちに対して「1日1つ、バニラアイスを食べてから寝るように」といったアドバイスをすることがあります。なぜなら、それくらいしなければエネルギーが全く足りていないからです。心身ともに疲弊しているときには、胃腸も弱ってしまっています。いわゆる、これはたくさん食べるよりも高カロリーの食品を少量食べるという考え方です。というのも、食べたものを消化するには、それだけでもエネルギーが必要だから。つまり、疲弊しているときは、たくさん食べなさいといっても、それを消化するエネルギーさえないときもあるというわけで、その究極の状態が点滴といえるでしょう。

ただし、これはあくまでもケガをしたときの‟応急処置”と同じ。したがって、現在の自分に最も適した食べ方を模索し、食事・栄養面からもコンディションを整える術をいち早く身につけることが重要であることはいうまでもありません。

<次回へ続く>

スポーツを頑張る高校生にとって大切なこと【Z世代におくるスポーツ栄養講座 #07-2】

神戸女子大学・坂元美子先生による「Z世代におくるスポーツ栄養講座」。第7回は「スポーツを頑張る高校生にとって大切なこと」がテーマ。

高校生になると、プロスポーツ選手並みの練習量、パフォーマンスが求められるようになる。もしかしたら、練習量はプロ以上かもしれない。

ただ、勉強、放課後の練習、土日の試合、遠距離の通学など息つく間もない多忙な毎日で、少しでも気を抜けばケガにつながってしまう。ケガは、ライバルに差をつけられたり、力を発揮できなかったり、目標とする大会に出られなかったりする「悔しさ」の元凶でもある。

光り輝く高校生たちが悔しい思いをしないように、食事はもちろん、他の大切な要素も頭に入れておく必要がある。

今回は記事2本立て(動画は1本)で、スポーツを頑張る高校生たちに伝えたいことをまとめた。2本目はコンディショニングを中心に。

※Z世代とは、欧米で10~20歳を指す言葉として使われている。すぽとりでは「成長世代」と同義と捉えて使用する。

動画「すぽとりChannel」

量よりも質! 3時間勝負の「睡眠」

スポーツを頑張っている皆さんの理想的な睡眠時間は、「7時間」といわれています。長く眠ればいいかといわれるとそうでもありません。

一晩の睡眠で「浅い眠り」と「深い眠り」が繰り返されて、朝を迎えることになります。浅い眠りを「レム睡眠」、深い眠りを「ノンレム睡眠」と呼び、前者は主に身体、後者は脳をそれぞれ休ませる役割をもっています。みなさんの成長に必要なホルモンは、深いノンレム睡眠時に分泌が促進されます。

図のように、深いノンレム睡眠は入眠1時間後、2時間後、3時間後で訪れますが、4時間後以降は成長ホルモンの分泌促進が終わっています。ですから、入眠3時間後までに深い眠りにつくことが質の良い睡眠(=成長のためになる)をとるために重要となります。

 

成長ホルモンの分泌促進のために早く深く眠りにつきたいのですが、高校生(中学生)たちの天敵になる物があります。ズバリ、「スマートフォン」です。スマホで動画を見たり、ゲームをしたりと楽しくなってついつい遅くまで夢中になってしまうでしょう。ハードな練習の後ですから、なおさらです。

しかし、スマホから出る光は太陽とほぼ同様の明るさで、脳を刺激して覚醒させてしまいますし、眠る前にたくさんの情報を得てしまうとかえって脳が働き、眠りに入りづらくなってしまいます。成長のためにも、眠る前のスマホやゲームはできる限り避け、早く深くノンレム睡眠に入りましょう。

ストレス状態の継続には注意

高校生年代は顕著な成長をとげる半面、精神的に不安定な時期ともいえます。特に、スポーツを頑張る人たちは、小さいころから高いレベルで活躍することを目標にしてハードなトレーニングを続けています。

練習や試合で負う身体的なストレスはもちろん、「がんばらなきゃ」「勝たなきゃ」といった精神的なストレスを常に受け続けている状態といっていいでしょう。この状態が続くと、「慢性疲労(ステルネス)症候群」や「オーバートレーニング症候群」に陥ってしまいます。

これらは、気持ちがついていかずに体が動かなくなってしまい、最悪の場合、選手生命を絶ってしまう恐れもあります。選手自身が気をつけるのはもちろんですが、指導者のみなさんも選手のメンタルケア、休むべき時には休ませることを検討していただきたいと思います。

自分への栄養ケアは自己管理能力の向上に

最もエネルギーが必要な高校生年代にとって、3食きちんととることは成長を促すことにつながります。また、決まった時間に食事をとることで、消化酵素の分泌が活発になり、栄養を効率良く吸収できるようになります。

そして、何よりも大切なのが、自分自身で「いつ」「何を」「どれだけ」食べればいいかを理解する、考えることです。これが、自己管理能力の向上に結びついてきます。

高校を卒業して、さらに高いレベルで活躍する人もいるでしょう。海外で活躍する人もいるかもしれません。その時、いかに自分をコントロールして競技に集中するか、自分にとって身になる食べ物を選択できるか。これを当たり前のようにできるのがトップ選手たちなのです。高校生年代は、自己管理能力を高める最後のチャンスなので、意識して食べ物、栄養と向き合うと良いでしょう。

最後に、成長のために食べ物や栄養への意識をする以前に、食べることが苦にならないようにしてほしいと思います。

食べることは楽しいことですし、おいしい物を食べれば心も安らいできます。反対に、無理をして食べても体にうまく吸収されませんし、体重制限などで食べたいのに食べられない、食事も楽しむことができない。これでは、体が成長するはずがありません。

ですから、食事が楽しみになるように、指導現場、家庭でもどうするかを一緒に考えていただきたいですね。

<次回に続く>

次回は、「スポーツを頑張る女子の健康上のリスク ~女子選手の三主徴の概要~」についてお送りします。

スポーツを頑張る高校生にとって大切なこと【Z世代におくるスポーツ栄養講座 #07-1】

神戸女子大学・坂元美子先生による「Z世代におくるスポーツ栄養講座」。第7回は「スポーツを頑張る高校生にとって大切なこと」がテーマ。

高校生になると、プロスポーツ選手並みの練習量、パフォーマンスが求められるようになる。もしかしたら、練習量はプロ以上かもしれない。

ただ、勉強、放課後の練習、土日の試合、遠距離の通学など息つく間もない多忙な毎日で、少しでも気を抜けばケガにつながってしまう。ケガは、ライバルに差をつけられたり、力を発揮できなかったり、目標とする大会に出られなかったりする「悔しさ」の元凶でもある。

光り輝く高校生たちが悔しい思いをしないように、食事はもちろん、他の大切な要素も頭に入れておく必要がある。

今回は記事2本立て(動画は1本)で、スポーツを頑張る高校生たちに伝えたいことをまとめた。1本目は食関連について。

 

※Z世代とは、欧米で10~20歳を指す言葉として使われている。すぽとりでは「成長世代」と同義と捉えて使用する。

動画「すぽとりChannel」

スポーツを頑張るために必要なエネルギー量を知っておこう

これまでの講座で示してきたエネルギー摂取量は、食事摂取基準(厚生労働省)に基づいたもので、あくまで一般的な数値になります。高校生年代に入り、練習やトレーニング量が増えて成長が進んで筋肉量も増えてくると、必然的にエネルギーの必要量も多くなってきます。

ですから、すでに成長期に入った、または成長が進んでいる高校生たちは、一般的な数値ではなく、よりスポーツに特化した数値を知る必要があります。スポーツ選手向けの推定エネルギー必要量を求める計算式がありますので、自分の競技特性や体格などを把握し、日々の練習、食事に役立てましょう。

以下、スポーツ選手の推定エネルギー必要量の計算式です。

28.5×除脂肪体重(LBM)×種目分類別身体活動レベル(PAL)

LBM = 体重-(体重-(体脂肪率÷100))

除脂肪体重(LBM)とはその名の通り、体の脂肪分を除いた筋肉・体水分(血液含む)・骨などを合わせた重量のことです。LBMを求めるためには体脂肪率の値が必要になりますが、すでに学校やチームで定期的に測定してわかっている人は数値を当てはめ、計算をしてみてください。

そうでない人は、以下の手順で計算すると、おおよその体脂肪率が求められ、LBMを算出することができます。

①自分の標準体重を求める
身長 (m) × 身長 (m) × 22

②体脂肪を求める
(実際の体重-①) ÷ ① × 100 👉LBMの計算式へ

種目分類別PALは、競技によって特性などが異なり、個人のエネルギー量も変わってくるため、持久系、筋力・瞬発力系、球技系とそれぞれの競技に分けて数値化したものです。表を見ると、マラソンや長距離などの持久系競技は他の競技よりも数値が高くなっていますが、これはより多くのエネルギーが必要(=著しいエネルギー消費)であることを示しています。

「たくさん食べる」の受け取り方

高校生は「一生のうちで一番食べなければいけない(エネルギーが最も必要な)時期」と繰り返しお伝えてきました。ただ、「たくさん食べる」といっても、食が偏ってしまうと体の中で栄養をうまく使うことができません。

体を大きくする目的で、タンパク質(プロテイン)ばかりとったとしても、タンパク質を体の材料に変換するビタミンB群が不足していては筋肉になりませんし、身長を伸ばすためにはカルシウム、マグネシウムといったミネラルも同時に必要です。

また、エネルギー源である炭水化物が不足した状態でタンパク質をとっても、体の材料になる前にタンパク質がエネルギーとして使われてしまうので、目的を果たすことができないのです。

ですから、「たくさん食べる」よりも「バランス良く食べる」の方を意識してほしいと思います。これは、以前提案した「毎食7つの色をそろえる」につながってきます。

小学生のうちから心がけたいところですが、高校生になってから始めても大丈夫です。まずは量よりもバランス、7つの色の食材を毎食とるように意識して、それができるようになったら量を増やしていくといいでしょう。

関連記事:バランス良く食べるには?

男子は男性に、女子は女性に

高校生は、男女ともにホルモン分泌が最も活発になる時期になります。男子は男性らしく、女子は女性らしく、体が変化していきます。

男子の場合、男性ホルモンが正常に分泌されていれば、それほどハードなトレーニングを積まなくても自然と筋肉の量は増えていきます。ですから、筋肉をつけるための栄養よりも、ホルモン分泌が促される栄養を考えていくと良いと思います。

女子の場合、女性ホルモンを正常に分泌させるためには、ある程度の体脂肪が必要になってきます。審美系競技(新体操、フィギュアスケートなど)や体重別競技で、過度なダイエットや減量によって適切な体脂肪が確保できないと、「女子選手の三主徴(FAT=Female Athlete Triad)」を代表とするさまざまなスポーツ障害をひき起こします。スポーツ障害は選手寿命を縮めたり、競技生活からの引退を余儀なくされるので、そうならないためにも「体脂肪を減らしすぎないこと」を認識しておきましょう。

<#07-2に続く>

スポーツを頑張る高校生年代が抱える問題点 ~起こりうるスポーツ障害~ 【Z世代におくるスポーツ栄養講座 #06】

神戸女子大学・坂元美子先生による「Z世代におくるスポーツ栄養講座」。第6回は「スポーツを頑張る高校生年代が抱える問題点 ~起こりうるスポーツ障害~」をテーマにお送りする。

※Z世代とは、欧米で10~20歳を指す言葉として使われている。すぽとりでは「成長世代」と同義と捉えて使用する。

 

動画「すぽとりChannel」

競技を取り巻く環境が大幅に変わる高校生

高校生は、中学生の時と比べて、大幅に競技をする環境が変わってくると思います。

練習量が格段に増えて長時間に及んだり、平日のみならず土日も練習や試合があったり、競技によってはダイエットや減量をしなくてはならないこともあります。また、スポーツを頑張るために、遠方の学校へ通うといったケースもあります。

高校生たちには、インターハイ、選抜など目標とする大会が多く、これらに出場することを励みに日々の練習に力を入れていることでしょう。ただ、頑張り過ぎてしまうあまり、生活のリズムが崩れがちになるのも確かです。

例えば、長時間の練習で帰宅が遅くなってしまい、満足に食事をしないまま睡眠に入ったり、寝る時間が遅くなることで休息が十分に取れなかったり。ハードな練習が続いていても体を休める時間がなかったり。これは、本人だけの問題ではないかもしれませんが、考える必要があります。

前回まで、「スポーツ選手としての体を作るためにはしっかりと栄養をとらなければならない」、「中学生~高校生は一生のうちで最も食べなければならない時期」と説明してきました。ハードな練習や生活のリズムが崩れることで十分に食事がとれず、体の成長に必要な栄養が不足してしまうという事態が実際にたくさん起こっています。

このような生活が長く続くと、さまざまなスポーツ障害をひき起こすことにもなります。

栄養不足からくるスポーツ障害のリスク

高校生年代では、さまざまな理由から多くのスポーツ障害が起きるリスクがあります。

ハードな練習をし続けた結果起きる「疲労骨折」、コンタクト競技では不可抗力による「骨折」が多くなってきます。持久系スポーツでは血液の材料になる栄養(鉄)不足による「スポーツ貧血」、体作りのための栄養が足りない場合、「じん帯の損傷・断裂」、「ねん挫」、「脱臼」などの関節系のケガが増えてきます。

心理面が影響して起こりうるのが「オーバートレーニング症候群」で、「もっと練習しなきゃ」「自分はもっと頑張れる」という気持ちがマイナスの方向に働いてしまい、練習ができなくなる症状をいいます。同様に、ダイエットや減量を強いられるあまり食事がとれなくなる「摂食障害」にも要注意です。

高校生年代は男女ともにホルモン分泌が高まる時期ですが、特に女子にはそれが起因となる障害もあります。今世界中の女子選手に起こりえる大きな問題となっている「女子選手の三主徴(FAT)」です。これは、「利用可能エネルギー不足」「疲労骨折」「月経障害」の3つを指し、これらは相関関係を持っているため、問題解決には食事はもちろん、医学的なアプローチも必要不可欠になってきます。FATについては、次回以降、一つずつ解説していきます。

この問題は適切に処置しないと、成人になってからも心身に多大な影響を及ぼすことになるので、指導者や保護者の方はぜひ知っておいていただきたいと思います。

高校生年代は、生活のリズムの変化、ハードな練習、身体の成長過程(ホルモン分泌)における影響など、スポーツ障害の原因を考えて日々の練習に向き合っていくことが大切です。

<次回に続く>

次回は、「スポーツを頑張る高校生年代にとって大切なこと」をお送りいたします。

中学生年代の食の問題点とその対策 ~スポーツと五大栄養素~【Z世代におくるスポーツ栄養講座 #05】

神戸女子大学・坂元美子先生による「Z世代におくるスポーツ栄養講座」。第5回は「中学生年代の食の問題点とその対策 ~スポーツと五大栄養素~」をテーマにお送りする。

 

※Z世代とは、欧米で10~20歳を指す言葉として使われている。すぽとりでは「成長世代」と同義と捉えて使用する。

動画「すぽとりChannel」

 

成長が本格的に始まる中学生年代

中学生になると、身長・体重の発育・発達が起こり始めると同時に、内臓が大きくなっていくのに伴って消化・吸収能力も高まってきます。そして、最も特徴的なのが、免疫力が成人の約2倍高まるということです。

ですから、中学生年代では、体を大きくするための栄養のとり方はもちろん、免疫力を高めるための栄養のとり方も重要になってきます。

また、中学生、その後の高校生というのは、一生のうちで最もエネルギーをとらなければならない時期になります。エネルギーを獲得するために、どのような栄養のとり方をするかを考えていく必要があります。

スポーツと5大栄養素の関係

みなさんもご存知かと思いますが、毎日の生活の中で、食事から「たんぱく質」「脂質」「炭水化物」「ビタミン」「ミネラル」の5大栄養素をとらなければいけないといわれています。では、これらがスポーツをする時にどのように体内で働くのかを説明していきます。

炭水化物と脂質はエネルギー源になります。日常生活での必要エネルギーは一般的に、炭水化物と脂質を半分ずつ使用しているといわれていますが、スポーツをする場合、運動強度や量が増えていくので、より多くの炭水化物が必要になってきます(持久系スポーツは脂質の必要量も増加)。

体に貯蔵されている体脂肪をエネルギーとして利用する脂質に対し、炭水化物は食事からその都度体内に入れてあげないとすぐに不足してしまいます。炭水化物は脳のエネルギー源としても使われます。とる量が十分でないと、スポーツをするうえでの「判断力」「集中力」が失われかねません。スポーツをする前には、「炭水化物をしっかりとる(体に入れておく)こと」を心がけておくと良いですね。

筋肉、骨、血液、爪など体の材料となるのが、たんぱく質です。たんぱく質が不足すると、スポーツ選手としての体作りができなくなってしまいます。もう一つ、たんぱく質には免疫力を上げるという大きな役割があります。ウイルスや病原菌が体に入ってくると、体内では防衛機能を果たす抗体が作られます。この材料になるのがたんぱく質です。

炭水化物、脂質、たんぱく質が体の材料になるものなら、材料を使ってエネルギーや身体に作り変える役割を果たすのが、ビタミンとミネラルになります。いくら炭水化物、脂質、たんぱく質をしっかりとっていても、ビタミン、ミネラルがなければエネルギーや身体への作り変えができなくなるので、忘れず一緒にとる必要があります。ミネラルの中には骨の材料となるカルシウム、マグネシウム、血液の材料になる鉄と、スポーツ選手の体作りには不可欠なものも含まれています。

このように、5つの栄養素を必ず摂取しなければ、スポーツ選手の体作りができませんし、中学生で起こるべきさまざまな発育・発達に支障をきたす可能性があります。

5つの栄養素の関係はチームスポーツと似ています。一人だけ上手な人がいても、周囲が協調しなければ結果を出すことができません。栄養素も同様に、一つ一つがそれぞれ役割をもっていて、うまく機能することで、体を健康に保ったり、強くしたりすることができるのです。

中学生、高校生は、5つの栄養素をバランス良くとらなければなりません。そのためには前回ご提案したように、「毎食、虹色の食材をそろえる」ことをしていただければと思います。

小学生のうちから虹色の食事を心がけていれば、最もエネルギーが必要なこの時期にバランス良く、たくさん食べることができるようになっているはずです。

サプリメントなどに頼らず、消化・吸収能力を高めたい

中学生年代の食事で注意したいのは、サプリメントや加工食品の摂取です。今、スポーツをしている人に向けて多くのサプリメントや加工食品が発売されており、いずれも消化・吸収の良い状態で栄養素が摂取できるように作られています。

成長期が過ぎた成人が使用するのは良いと思いますが、成長が著しい中学生の時から慣れてしまうと、内臓の消化・吸収能力を高めるせっかくの機会を失うことになりかねません。食べ物を咀嚼し、胃で消化することこそが能力を高めることにつながりますので、サプリなどの摂取はなるべく控えた方が良いですね。

また、サプリなどの摂取で食事量が減ってしまう可能性も出てきます。これらはタブレットや粉末など、小さくても栄養素が凝縮された形状になっています。これに慣れてしまうと、摂取量が少なくても栄養は十分と脳が勘違いする(食べた気になる)ため、食欲を止めてしまいます。「サプリなどでお腹一杯になり、食事が食べられない」ということも起こりえます。これでは、たくさんエネルギーが必要な時期に食事量が減ってしまい、身体、内臓の成長が小さくなりますし、先ほどの消化・吸収能力にもかかわってきます。

サプリなどは手軽で便利なので使いたいと思っている人も多いことでしょう。しかし、身体の成長も内臓の成長もこの時期しかありません。せっかくの機会を失わないためにも、使いたい気持ちをグッとこらえて、食事から栄養をとる生活を心がけていきましょう。

<次回に続く>

次回は、スポーツを頑張る高校生年代が抱える問題点についてお送りします。お楽しみに!!