好相性の食材を組み合わせて骨強化①(@Spring ver.) ~チーズ×しらす~【スポーツ食マッチング #02】

「季節感(旬の食材)」「相乗効果が期待できる好相性の食材を組み合わせる」「目的(強化・予防・対策など)」――この3点を踏まえた食を提案する「スポーツ食マッチング」。第2回は「骨強化編 ①」です。

本企画は神戸女子大学 健康スポーツ栄養学科 坂元ゼミとのコラボ企画で、栄養解説は坂元美子先生、レシピ作成&調理は坂元先生監修の下、徳田優希さん(3回生)が担当しました。

Z世代のスポーツ選手を想定して献立を作成していますが、自炊しているスポーツ選手、部活のマネジャー、運動習慣のある成人の方にもご活用いただけます。簡単、かつ栄養価の高い献立で、スポーツや運動シーンでお役立てください。

「好相性の食材を組み合わせた目的別スポーツ食」動画一覧

「Z世代におくるスポーツ栄養講座」動画一覧

動画「すぽとりChannel」

 


【骨強化に必要な栄養素は?】

<ポイント>

・骨の材料になるカルシウムたんぱく質ビタミンDビタミンKをしっかり摂る。

競技スポーツでは、身長が高い方が有利に働くものがあるため、Z世代(成長期)のスポーツ選手が骨を強化する食を意識することで、「身長を伸ばす」可能性を高めることにもなる。ただし、身長を伸ばす確かな方法は存在せず、科学的にも証明されていない。ここでは、一つの可能性として「骨の強化」を提案する。

中学、高校になると、練習量、トレーニングや相手との接触強度が増すため、骨折、疲労骨折の発症リスクが高まる。骨の強化を図ることでケガ予防にもつながる。

40歳以上の女性、中高年になると、骨粗しょう症のリスクが高くなるため、日ごろから骨の材料、体内吸収を助ける食品を摂って将来に備えたい。

カルシウムは体内への吸収率が非常に低いため、吸収が高まるビタミンDを一緒に摂ると良い。体の中でカルシウムやたんぱく質を骨に合成する働きのあるビタミンKも不足することなく摂取しよう。

関連記事:起こりうるスポーツ障害 

【好相性の食材組み合わせ】

骨強化のために組み合わせたい食材は、乳製品小魚(今回はチーズとしらすの組み合わせ)。

乳製品は、小魚や海藻類に比べて体内への吸収率が高く、カルシウムが豊富。しらすやいかなごなどの小魚にはカルシウムの吸収を助けるビタミンDが多く含まれている上、カルシウムも多い。また、乳製品、小魚ともたんぱく質が多く、まさに好相性の組み合わせといえる。

この好相性の組み合わせを台なしにしてしまうNG食材は、生のほうれん草や大豆。ほうれん草にはシュウ酸、大豆にはフィチン酸と、いずれもカルシウムの吸収を阻害する成分が含まれている。シュウ酸、フィチン酸はいわゆる「あく」で、ゆでると取り除かれるため、あくの強い物はゆでて食べると良い。ただし、ゆで汁は調理に使用しないように。

【摂取タイミング】

成長ホルモンの分泌が高まる時間帯に摂取したいので、運動後(睡眠前の)夕食がベスト。


◎しらすの簡単和風ドリア

<材料(1人分)>

ごはん:270g
チーズ(ピザ用):40g
しらす(微乾燥):10g
バター:5g
しょうゆ:7g
こしょう:少々

<手順>

① 炊き立てのご飯にバターとしょうゆ、しらすを入れて、切るように軽く混ぜる
② こしょうを適量入れ、混ぜる
③ 混ぜご飯を耐熱皿に盛る
④ チーズをのせる
⑤ 1000Wトースターで約5分焼く

<栄養量(1人分)>

エネルギー:643 kcal
たんぱく質:18.7 g
脂質:15.4 g
炭水化物:101.5 g
カリウム:152 mg
カルシウム:284 mg
鉄:0.6 mg
ビタミンD:4.6 μg
ビタミンB1:0.08 mg
ビタミンB2:0.20 mg
ビタミンB6:0.85mg
ビタミンB12:1.7 μg
ビタミンC:0 mg

<レシピ作成&調理担当:徳田 優希 / Yuki Tokuda>

Z世代からプロまで、サッカーニュートリションならお任せあれ!【ニュートリションな人々 #05 ~鈴木いづみさん 後編~】

ニュートリション関係者の人物背景や取り組みについて紹介する永続企画「ニュートリションな人々」。久々となる第5回目の主人公は、博士(スポーツ健康科学)で日本スポーツ協会公認 スポーツ栄養士の鈴木いづみさんです(全2回)。

サッカーは血で戦う競技、体脂肪と鉄がカギになる

明治在籍時代に培った経験からサッカー栄養のベースを作った鈴木さんは、2000年からJリーグ・ジェフユナイテッド市原・千葉の選手寮の栄養アドバイザーとなる。2010年よりクラブと正式契約を交わし、計18年にわたって、トップから育成年代まで多くの選手へ指導・サポートし、コンディショニング面からチームを支えた。

「長くサッカーに携わってきた中でわかったことは『サッカーは血で戦う』です。体重と体脂肪率の管理に加え、血の中身をいかに管理するかが最も重要。つまり、持久力をサポートするヘモグロビンの量とフェリチン(貯蔵鉄)を長いシーズンにわたっていかに高値で維持するか。これがすべてといっていいと思います。体内で鉄が不足すると走れなくなりますからね。走ることが生業のサッカー選手が意識すべき点だと思います」

鈴木さんは現在、チーム契約のほかに、個人のプロサッカー選手と契約し、試合日程に合わせて1週間単位の栄養マネジメントを行っている。試合が日曜日の場合、前日(土曜日)、当日は高糖質食、試合後24時間(日、月曜日)は運動による筋損傷をケアするために、フェノール化合物(アントシアニンなど)、ω-3多価不飽和脂肪酸(α-リノレン酸、EPAなど)、ビタミンDなど抗炎症が期待されるエレメンツを含む食品の摂取を促す。その翌日(火曜日)はオフのためリフレッシュデーとして好きな物を食べてよい。ただし、翌日(水曜日)からチーム練習なので試合でロスした体重を元に戻す作業も同時に行う。体重が戻っている状態で、試合に向けて鉄を貯蔵するための食生活を試合前日まで続ける。週2で試合がある場合はさらにタイトなマネジメントになるものの、基本的には年間を通じてこの工程を踏み、厳しくチェックしている。

選手個人へのマネジメントは、労力がかかるうえに管理能力も問われる。そして、何より求められるのは「成果」だ。例えば、鈴木さんのサポートを受けた選手が「1年間ケガをしなかった」「出場時間がチームトップ」「スプリントパフォーマンスが前年より向上した」など、具体的な成果が出なければ次の仕事につながらず、ビジネスにもならないシビアな世界。鈴木さんは、あくまで成果を強調する。

「指導・サポートしたからには、絶対に結果を残さなければならない。これがフリーランサーとしての私の信条です。2020年はコロナ禍ということもあり、とても難しい仕事を余儀なくされました。強行日程による選手への負担は大きく、気を抜くとあっという間に体重が落ちる。外部との接触が制限されたことで採血もままならず、血液指標の動態がわからない。そういった中でとにかく体重管理には例年以上に細心の注意を払いました。それでも、シーズンを通じてベスト体重を一定に保てたことや、ケガをしなかったこと、安定的にハイパフォーマンスを発揮してシーズンを無事に乗り切ったことで、結果は出せたかなと思っています」

教育と研究、人とのつながりを大事に

鈴木さんが現在、ライフワークにしていることが2つある。「育成年代への教育」と「学び」だ。スポーツ栄養関係者に問われる、相反する課題に対して真剣に向き合っている。

育成年代への教育は、ジェフ千葉時代の同志でアカデミーコーチをしていた武田雄哉さんと連携し、選手・保護者への栄養教育を施す。武田さんはジェフ千葉を退団後、東京都世田谷区に本拠を置く「駒沢サッカークラブ」で副理事長に就き、未来のトップ選手への指導を行う。同クラブは、育成年代の男女サッカー、男女フットサルチームがあり、都内でも上位の成績を誇る古豪。鈴木さんをはじめとする各分野の専門家もチームにかかわっている。

「昨年4月から月1回、選手に向けてオンラインの栄養講習会を実施しました。サッカー選手に必要な栄養摂取、食品の選び方、さらには特殊な状況が続いている中で、免疫力を上げる食事や自粛期間中の食事に関することと、アドバイスは多岐にわたりました」

本来なら選手たちの顔を見ながら講義をして、理解の深化を促すが、オンラインが主になっている昨今、なかなか難しい。画面を見ただけでは選手が本当に理解してくれているのかもわかりづらい。選手の理解度を図るためにどうすればいいか。武田さんと鈴木さんは一計を案じ、「おにぎり選手権」を企画した。

「練習後に食べるおにぎり」をテーマに、選手たちが講習で学んだサッカー選手に必要な栄養を含む具材を使って、おにぎりを自作するというもの。そして、鈴木さんが専門家の立場から「おいしさ」「うんちく(食材の栄養情報)」「見ため」など、さまざまな角度から審査してランキングをつけた。詳細は後報するが、選手、保護者を巻き込んだおにぎり選手権は、選手たちの理解度を確認するのに大いに役立った。

「武田さんとは馬が合うというか(笑)。長い雑談の中でいろいろと話しているうちに、この企画が浮上しました。ほとんど武田さんのアイディアです(笑)。今後は他チームとの対抗戦とか、プロ選手との対決とか、幅を広げていければと思っています。選手が楽しく、競いながら参加できるスポーツ食育として普及させたいですね。オンライン時代でも工夫次第で、きちんと教育できることも示せたと思います」

育成年代への教育をする一方、スポーツ栄養研究の向上も忘れない。トップスポーツ現場での経験が豊富で、スポーツ栄養の発展に情熱を注ぐ鈴木さんだが、行き詰まりを感じた時期があったという。「対エリートアスリートでは現場経験だけでは勝負できない、しっかりとしたサイエンスがなくては」と。

一念発起した鈴木さんは順天堂大学院でスポーツ健康科学を学び直し、博士号を取得。企業との共同研究に携わったり、海外のスポーツニュートリションに関する最新情報を有志とともに翻訳したり、研究分野での実績を着々と積んでいる。

また、スポーツ関係者が集まる私的勉強会「すぽべん(SPOBEN」の活動も熱心に行う。すぽべんは栄養分野だけでなく、スポーツ医科学に関するさまざまな分野の研究者と実践者が集まり、自身の研究や活動内容を発表してディスカッションする場だ。

「少人数から始まったすぽべんですが、今では数十人規模になりました。いろいろな研究内容を聞くことで刺激されますし、とても参考になります。また、スポーツ医科学分野のHUB機能を持たせ、人と人、仕事と仕事をコネクトすることにも注力しています。興味のある方はぜひご参加いただきたいですね。参加要件はすぽべんメンバーの紹介があること、加入1年以内に自身の研究に関するプレゼンの意思があることです。多様なパッションに触れるとともに求める情報がきっと見つかるでしょう」

スポーツの先行きが不透明な中でも「とにかく楽しく仕事をさせていただいています」と、笑顔で話す鈴木さん。自身が組み立てた栄養マネジメントが成果につながった時の達成感は他では味わえないという。

鈴木さんは、厳しさもやりがいも感じながら、スポーツ栄養の最前線で活躍を続けている。「10年後はスポーツ栄養分野がもっと発展しているはずなので、その時にいい仕事ができるように常に勉強を続けています」と、その目は未来を見据えている。

<完>


鈴木いづみ / Izumi Suzuki

博士(スポーツ健康科学)、日本スポーツ協会公認 スポーツ栄養士、順天堂大学スポーツ健康科学部 協力研究員、とちぎスポーツ医科学センター 協力栄養士

1990年 女子栄養大学栄養学部栄養学科 卒業。1990~1998年 明治製菓(株)ザバススポーツ&ニュートリション・ラボ。2004~2013年 宇都宮文星短期大学地域総合文化学科 准教授。2015年 順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科 博士前期課程修了。

アトランタ大会(1996年)女子バスケットボール日本代表、ロンドン大会(2012年)競泳日本代表・萩野公介選手など、五輪選手への指導・サポート歴多数。ジェフユナイテッド市原・千葉の全年代の栄養教育に携わった。現在は、Jリーグ 北海道コンサドーレ札幌、および個人のプロサッカー選手との契約のほか、、地域のタレント発掘育成事業など育成年代の教育に力を注いでいる。

Z世代からプロまで、サッカーニュートリションならお任せあれ!【ニュートリションな人々 #05 ~鈴木いづみさん 前編~】

ニュートリション関係者の人物背景や取り組みについて紹介する永続企画「ニュートリションな人々」。久々となる第5回目の主人公は、博士(スポーツ健康科学)で日本スポーツ協会公認 スポーツ栄養士の鈴木いづみさんです(全2回)。

「いい仕事をすれば必ず次につながる」

全世代のサッカー選手へ指導・教育に力を注ぐ鈴木いづみさん(クリックで画像拡大)

育成年代からトップのサッカー選手へのサポート・指導に強みをみせる鈴木いづみさん。研究、現場の両方で経験が豊富なスポーツニュートリショニストの一人だ。

プロ意識を常に持ち、チームやプロ選手から課されたミッションに対し、経験に裏打ちされた知識・ノウハウを駆使して成功に導くための任務を遂行する。プロとしての矜持を鈴木さんはこう言い切る。

「スポーツ栄養の仕事はブーメランなんですよね。いい仕事をしていれば、良い結果が自分に帰ってきて、それが必ず次につながる。逆もありますけどね(笑)。でも、独立してからも途切れることなく仕事をいただけているのは、この思いでずっとやってきたからです」

幼いころから活発だった鈴木さんは、スポーツ中心の学生時代を過ごしたという。高校生になるころには、体育教師になることを思い描いていた。ところが、担任の教諭に進路を相談したところ、「体育大学を出て、地元(長野県)に戻って教員採用試験に受からなかったら、つぶしがきかないよ」と、現実を突きつけられた。日ごろから気の置けない間柄の恩師の言葉に、鈴木さんは「確かに」と納得してしまった。そして、スポーツの次に興味のあった「栄養」の道を志すことにした。

進学した女子栄養大学で、栄養学の基礎を学ぶかたわらで、運動生理学も学んだことから、自分の経験・興味、スポーツと栄養学が合わさってスポーツ栄養の道へ。当時は、「スポーツ栄養」「スポーツニュートリション」という言葉がほとんど知られていなかったにもかかわらず、鈴木さんは突き進んでいく意思を固めるのだった。

スポーツ栄養がやりたんだけど…

鈴木さんは大学卒業後、「ザバス」ブランドを立ち上げて間もない明治製菓(現:明治)に入社。健康産業事業部に配属され、顧客に健康・栄養情報を提供するニュートリションセンターで仕事をすることになった。

「上司はどうも、私の外見や雰囲気からスポーツとは無縁だと思っていたようで(笑)。それで、同期がザバスに配属されて、私がセンターに。その後、私がスポーツ分野に強い関心があるとわかって、ザバスへ異動することになったんです。そこがすべてのスタートになりました」

思わぬところで道は開け、晴れてスポーツニュートリショニストの第一歩を踏み出した。入社2年目の夏に、日本陸連長距離マラソンブロック日本代表選手団の高地トレーニング合宿へ科学委員会からの派遣というかたちで帯同することになり、選手への栄養指導と食事管理を任された。ちなみに、当時の代表にはスポーツ医科学分野の研究者が帯同しており、日本でも医科学の観点から選手を強化する取り組みが始まっていた。まさに、スポーツ医科学の黎明期。研究者たちに交じり、入社2年目の鈴木さんは研究のためのデータ取得、方法論を0から確立していった。

選手のエネルギー摂取量、各栄養素の摂取量をすべて把握し、高地環境の下でヘモグロビン量がどう変化するのか。カロリーとの関係性はどうなっているのか。きちんとデータを取って分析し、世に出してスポーツの強化につなげる。それがミッションだと思い、懸命に取り組んだ。

「毎日の栄養データの管理もそうですし、三食数十人分の食事を用意するのも大変でした。それでも、とにかく楽しかったですね。今思えば、当時一緒に過ごした選手たちがのちのメダリストだったり、実業団や代表の指導者になったりしていて、今でもつながりがある。本当に貴重な経験をさせていただきました」

毎夏の高地トレ帯同を3年続けた後、プロサッカーチームの指導・サポートに携わる。折りしも、Jリーグが産声を上げた時。当時の明治はプロチームを積極的にサポートしており、栄養の知識・現場経験を持つ管理栄養士は重宝された。鈴木さんは、プロサッカーの誕生と歩を合わせて指導・サポートを通じた栄養の重要性をプロに浸透させ、スポーツ栄養学の価値を高めていったのだった。

<後編へ続く>


鈴木いづみ / Izumi Suzuki

博士(スポーツ健康科学)、日本スポーツ協会公認 スポーツ栄養士、順天堂大学スポーツ健康科学部 協力研究員、とちぎスポーツ医科学センター 協力栄養士

1990年 女子栄養大学栄養学部栄養学科 卒業。1990~1998年 明治製菓(株)ザバススポーツ&ニュートリション・ラボ。2004~2013年 宇都宮文星短期大学地域総合文化学科 准教授。2015年 順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科 博士前期課程修了。

アトランタ大会(1996年)女子バスケットボール日本代表、ロンドン大会(2012年)競泳日本代表・萩野公介選手など、五輪選手への指導・サポート歴多数。ジェフユナイテッド市原・千葉の全年代の栄養教育に携わった。現在は、Jリーグ 北海道コンサドーレ札幌、および個人のプロサッカー選手との契約のほか、、地域のタレント発掘育成事業など育成年代の教育に力を注いでいる。

スポーツを頑張る女子の健康上のリスク③ ~骨障害~【Z世代におくるスポーツ栄養講座 #11】

神戸女子大学・坂元美子先生による「Z世代におくるスポーツ栄養講座」。第11回は、成長期を迎える女子選手が抱える問題「女子選手の三主徴(Female Athlete Triad:FAT)」の一つ、「骨障害」がテーマ。

骨障害は、前回までの「利用可能エネルギー不足」、「月経障害」とは異なり、適切な栄養摂取での予防・改善が可能な一方、予防・対策を怠ると生涯にわたって影響を及ぼす可能性もある。

※Z世代とは、欧米で10~20歳を指す言葉として使われている。すぽとりでは「成長世代」と同義と捉えて使用する。

※記事と動画(図表解説あり)で少し内容が異なります。両方をご覧いただき、理解をより深めていただければ幸いです。

「Z世代におくるスポーツ栄養講座」動画一覧

「好相性の食材を組み合わせた目的別スポーツ食」動画一覧

動画「すぽとりChannel」


「体脂肪」「栄養」が関連する疲労骨折

骨のスポーツ障害には大きく分けて「骨折」と「疲労骨折」の2つがあります。骨折はご存じの通り、サッカー、ラグビー、アメリカンフットボールなど主にコンタクトプレーの多い競技で起こりやすく、接触のはずみで骨に過度の圧力がかかってしまい、骨が折れることです。一方、疲労骨折は、FATに大きくかかわってくるとともに、Z世代の体の成長が著しいスポーツ選手に非常に多い障害といえます。

疲労骨折の原因はいくつかあり、一つは体の成長を促すための栄養、特に骨の成長に必要な栄養が摂れていないことが挙げられます。また、Z世代のスポーツ選手は、体づくりのためのトレーニング、技術向上のためのトレーニングをハードに行いますが、頻繁に使用する体の部位が“金属疲労”を起こして骨折してしまうケースも見受けられます。さらに、減量を余儀なくされる競技の選手は、過度な食事制限による栄養の不足から疲労骨折に至ってしまうこともあります。ここまでは男女ともに起こるケースといえるでしょう。

そして、女子選手特有の原因から疲労骨折をひき起こすケースは、減量のため必要以上に体脂肪を落としてしまうことです。階級制や審美系競技の選手は特に注意が必要です。

女子選手には月経が周期的に訪れますが、正常に周期的な月経を迎えるためには女性ホルモンがきちんと分泌されるかがカギになります。そのためには適切な量の体脂肪を維持している必要があるのですが、減量のためにホルモン分泌に使われる体脂肪までを落としてしまうと、女性ホルモンの総量は減りますし、骨の成長を促進する「エストロゲン」も不足することになります。結果的に骨量、骨密度が少ない状態になり、少しの衝撃でも骨が折れやすくなってしまいます。

あとは特殊な例ですが、アレルギー疾患を持っていて、治療のために副腎皮質ホルモンを服用している選手も疲労骨折が起きやすいリスクをもっています。副腎皮質ホルモンは、骨の成長を阻害する点もありますので、長期間、連続で服用している人は気をつけましょう。

関連記事:FAT ~月経障害編~

骨の成長は20歳まで。女子に必要なエストロゲン

ここで、骨の成長について説明しておきます。骨量は、誕生から20歳まで増え続けて最高値(ピーク・ボーン・マス)に達し、40歳代くらいまでその値を維持します。そして、50歳代あたりからホルモン分泌の低下に伴って男女とも減少に転じます。男性は、骨量の減少が緩やかなカーブを描く一方で、女性は閉経に伴う女性ホルモン(エストロゲン)の分泌低下によって、骨量の急激な減少が起こりやすくなるといわれています。

ここで、Z世代の女子選手が意識しなければならないことがあります。骨量をいかに獲得するかです。骨量が増加する成長期に栄養が不足するのは論外ですが、減量のために体脂肪を減らしすぎると、女性ホルモンの分泌が正常に行われず、エストロゲンも不足することになるため、骨量が増えていかないということになります。

そうなると、20歳以降最大骨量は低いまま中高年を迎えることになり、骨粗しょう症のリスクもグンと高くなります。骨量を増やせるのは20歳までで、それ以降は成長しません。十分な栄養の確保は骨の成長にもかかわってくるのです。

さらにいえば、Z世代の骨量の値は高齢者と同程度で、成長過程とはいえ骨が“もろい”状態ともいえます。栄養の不足はもちろん、トレーニングの過多も疲労骨折を誘発する原因ともなるので頭に入れておきましょう。

骨の強化に「CaMP」を意識しよう

疲労骨折(将来的な骨粗しょう症)の予防のために、骨をどのように強化するか。それは、「カルシウム(Ca)」を摂取することです。しかし、カルシウムは体への吸収が非常に低いことも知られています。ですから、食事の中でいかに効率良く摂取するかを考える必要があります。

カルシウムが多い食品として挙げられるのは、小魚、わかめ、昆布など「海藻類」、牛乳、ヨーグルトなど「乳製品」です。吸収率でいえば、小魚・海藻類が約20%、乳製品が約40%なので、体の成長が著しいZ世代のスポーツ選手が骨の強化のために摂りたいのは乳製品となります。

骨の材料になるのは、カルシウムだけではありません。「マグネシウム(Mg)」も必要になってきます。小魚・海藻類に加え、豆類がマグネシウムの含有量が高い食品です。小魚・海藻類はカルシウムの吸収という点では乳製品に後れを取りますが、マグネシウムも摂れる点で優れています。

そして、「豆乳」はカルシウムを比較的吸収しやすい状態で摂取でき、牛乳よりもマグネシウムが多く含まれているのでお勧めします。自分の生活や好みに合わせて、骨を強化する食品を使い分けて摂取するといいと思います。

骨を作るという点で、カルシウム、マグネシウム以外に「たんぱく質(P)」も重要な役割を担っています。たんぱく質が多く含まれる食品は、肉、魚、大豆製品、卵、牛乳、ヨーグルトで、これらはカルシウムも多く含まれています。さまざまなたんぱく質食品から同時に効率よく栄養を摂取すると良いでしょう。

特にお勧めしたいのが「納豆」。納豆にはカルシウム、マグネシウム、たんぱく質のほか、骨の成長を助けるビタミンKも多く含まれており、一つの食品で多くの栄養を摂ることができるスーパーフードです。体の成長には欠かせない食品の一つなので、みなさんもぜひ意識して食べるようにしてください。

カルシウムの吸着剤「ビタミンD」

吸収率が非常に低いカルシウムですが、ビタミンDを組み合わせることで改善されます。ビタミンDを多く含む食品はズバリ「魚」です。

朝食によく出てくる鮭の切り身を例に挙げれば、1/3切れで1日に必要なビタミンDを摂取することになります。魚を毎日食べていれば、ビタミンDは不足することなく摂れていることになります。きのこ類にもビタミンDは含まれていますが、1日に必要な摂取量を補おうとすると、しいたけで20個食べなければならないので、魚からビタミンDを摂るのが現実的ですね。

そのほかに、カルシウムの吸収を上げる方法として、「酢の物」と一緒に食べるのも有効です。小魚・海藻類は酸っぱい物と組み合わせて摂る。これを覚えておくといいでしょう。

指導現場の選手たちによく勧めているのが「モズク酢」です。パックで売っているモズクに酢をかけるだけで簡単にできますし、カルシウム・マグネシウムもしっかり摂れて体にも吸収されます。さらにアレンジして、シラス干しも加えるとカルシウム強化食の完成です。

酢の物が苦手という人は、食後に果物(すっぱい物)を食べることで吸収率の向上が期待できます。オレンジ、みかん、グレープフルーツなどの柑橘類、キウイ、イチゴも相性がいいので、吸収率を高めることにつながります。

FATの予防・対策のカギを握る「体脂肪」

利用可能エネルギー不足、月経障害と比べると、骨障害、骨の成長は栄養の摂取が大きくかかわってきますので、何を摂ればいいのかを考えながら毎日を送ってほしいと思います。

これまで3回にわたって、FATについての基礎的な情報をお伝えしてきました。いずれも、女子選手特有の栄養の摂り方が問題で、減量をしなければならない競技(審美系、階級制)の選手に頻発しています。そして、障害の根本にあるのが「体脂肪を必要以上に落とす」ことです。女性ホルモンの分泌異常により、正常な月経発来や骨の成長を阻害することにつながってしまうのです。

スポーツをする上で、動きのキレが増すとか、動きやすくなるなどの理由で体脂肪を減らす選手が多いと思いますが、ホルモン分泌の関係から女子選手にはある程度の体脂肪が必要になってきます。ですから、誰かの真似ではなく、自分にとって最適な体脂肪を知る(管理する)こともFATの予防に役立ちます。

成長著しいZ世代の女子選手の多くは、FATを大きな問題として捉えていないかもしれませんし、影響がないと考えるかもしれません。中には、甘んじて受け入れている選手もいるのではないでしょうか。

しかし、スポーツを辞めた後の方が人生は長いのです。現役中にFATへの対策・対応を間違えると、その後に大きな問題として降りかかってくる可能性があるのです。女子が女性らしく人生を送っていくために、成長年代の健やかな過ごし方が将来にもかかわってくることを覚えておいてください。

<次回に続く>

現場で役立つスポーツ栄養学の知識②【スポーツ栄養の果たす役割 #11】

「野菜は必須!」 という基本

食事・栄養の基礎・基本は何かと、改めて問われれば――。またそれか、と思われるかもしれませんが、やはり『野菜を中心とした食事をバランスよく!』。これに尽きるといえるでしょう。

なぜ、野菜が中心かといえば、食物繊維やビタミン・ミネラルを豊富に含んでおり、かぜやケガの予防はもちろん、メタボリックシンドロームの予防、あるいは貧血や熱中症の予防にもなるからです。

また、ビタミンCを多く含む食品は、体内に蓄積できないので、日々の摂取を欠かすことはできないという理由もあります。つまり、ヒトの身体が健やかに機能するという意味では、「野菜を中心に!」というのはすべての人に共通した大前提になるというわけです。

ちなみに、USOC(United States Olympic Committee=アメリカオリンピック委員会)のアスリートレストラン(https://www.teamusa.org/nutrition)においても、通常のトレーニング時においては野菜をワンディッシュのうち半分とるようにと指導されています(トレーニングの多い日と試合の日においてもお皿の4分の1程度)。

つまり、外国人選手は肉ばかり食べているから強いなんていうのは、もはや時代遅れのナンセンス以外のなにものでもない。こういったことも正しい情報として認識しておきたいものです。

したがって、指導者や運動実践者の方々であればなおさらのこと、まずは『野菜は必須!』というルールを基本として、そのうえで目的や生活(仕事)環境に応じてさまざまなバリエーションを活用したり、あるいはアレンジを加えるという、まずは健康第一の本来の考え方に切り替えるべきではないかと思います。

飛び道具”を活用するタイミング

例えば、指導者の中でも一日に何本もレッスンを抱えるフィットネスインストラクターの方々の場合、その運動消費量はアスリートに勝るとも劣らないといえるでしょう。ましてや、どの時間帯であっても質の高いレッスンを提供するためには、欠食なく規則正しく食べることが絶対条件となります。ところが、言うは易く行うは難し。おそらく規則正しくとは真逆の不規則な仕事環境を強いられることによって、その条件は十分に満たされていないのが現状ではないでしょうか。

私が教えていた卒業生の中には、インストラクターとなって活躍している教え子も少なくないのですが、その教え子たちが社会人になってから一様に痩せていくのです。これは、明らかに運動による消費エネルギーに見合った摂取エネルギーがとれていない証しといえるでしょう。レッスン過多になると、疲労の影響で食欲もなくなり、次第に痩せていくという悪循環に陥ってしまっているのです。

アメリカスポーツ医学会では、こういった状況をアスリート特有の問題であるlow energy availability(利用可能エネルギー不足)と定義し、警鐘を鳴らしています。こうしたエネルギー不足は、女性の場合、月経周期異常や生涯にわたる骨粗しょう症のリスクを高める可能性を秘めており、女性アスリートの三主徴(Female Athlete Treard)として注意喚起されています。

こういうとき、「それでも基本通りに食べなさい」と正論を振りかざしても、問題はなかなか解決するものではありません。むしろ、それはさらなるストレスとなってしまうものです。したがって、こういったケースでは、いや、こういうケースだからこそ、前回述べた‟飛び道具”を緊急避難的に活用すべきではないかと考えます。

例えば、私は、そんな彼女たちに対して「1日1つ、バニラアイスを食べてから寝るように」といったアドバイスをすることがあります。なぜなら、それくらいしなければエネルギーが全く足りていないからです。心身ともに疲弊しているときには、胃腸も弱ってしまっています。いわゆる、これはたくさん食べるよりも高カロリーの食品を少量食べるという考え方です。というのも、食べたものを消化するには、それだけでもエネルギーが必要だから。つまり、疲弊しているときは、たくさん食べなさいといっても、それを消化するエネルギーさえないときもあるというわけで、その究極の状態が点滴といえるでしょう。

ただし、これはあくまでもケガをしたときの‟応急処置”と同じ。したがって、現在の自分に最も適した食べ方を模索し、食事・栄養面からもコンディションを整える術をいち早く身につけることが重要であることはいうまでもありません。

<次回へ続く>


松本 恵/Megumi Matsumoto

北海道札幌市生まれ。2004年北海道大学大学院農学研究科応用生命科学博士課程後期修了。日本大学体育学部体育学科教授。管理栄養士。日本スポーツ協会公認スポーツ栄養士。

大学では、陸上競技、柔道、トライアスロン、スキージャンプ選手などの栄養サポートに携わる。スポーツ貧血の改善・予防、試合時のコンディショニング・リカバリーなど幅広い研究をするとともに、ソチ・オリンピックではマルチサポート・ハウス ミール担当など多岐にわたり活動。日本スポーツ栄養学会理事。