<特集:スポーツ貧血 ~基礎編~>見直そう! 鉄の役割と食品 【Z世代におくるスポーツ栄養講座 特別編】

神戸女子大学・坂元美子先生による「Z世代におくるスポーツ栄養講座」。

今回は<特集:スポーツ貧血>と銘打って、選手のパフォーマンスを妨げるスポーツ障害について、基礎編は坂元先生、応用編は日本大学・松本恵先生と、2人のスポーツ栄養学の専門家が解説する。

「スポーツ貧血」について、「もう知っている」「基礎は十分」という人は応用編①

※Z世代とは、欧米で10~20歳を指す言葉として使われている。すぽとりでは「成長世代」と同義と捉えて使用する。

※記事と動画(図表解説あり)で少し内容が異なります。両方をご覧いただき、理解をより深めていただければ幸いです。

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持久系スポーツ選手は絶対に覚えておきたい「スポーツ貧血」

スポーツをするうえで、血液は重要な働きをもっています。一般的には、トレーニングをすることによって、血液中の水分(血しょう)の量が増えるといわれています。血しょう量が増えると全身にめぐる血量が増えて血中の酸素が全身に行き渡るため、体が動きやすくなったり、持久力が高まったりすることにもつながります。この働きがうまく行かなくなると、さまざまな症状が出てきてしまいます。

血液のトラブルでよく聞くのが「貧血」ですね。貧血は血液中の赤血球、赤血球の中にあるヘモグロビンの量が減ることで起こるといわれています。目安(ヘモグロビン量)でいえば、男性(男子)は13~14g/dl、女性(女子)は12g/dlで、貧血と診断されます。

貧血といえば、月経のある女性(女子)に多いイメージがありますが、特にZ世代(成長期)では、女子だけではなく男子にもよくみられるスポーツ障害の一つが「スポーツ貧血」です。スポーツ貧血は、「希釈性貧血」「溶血性貧血」「鉄欠乏性貧血」の3つに分けられます。

希釈性貧血はその名の通り、血液が薄まることで起きる貧血です。トレーニングによって血中の水分、血液中の赤血球、ヘモグロビンも増えるのではなく、水分だけが多い状態になってしまいます。血液検査などでは貧血の数値として出てしまいますが、実際にはヘモグロビンの量が減っているわけではありません。水分量の増加によって、結果的に全身をめぐる血液の量も増えるため、持久力を向上させる可能性があると考えられています。

溶血性貧血は、筋肉に負荷をかけるようなトレーニングをすることで、筋肉繊維が傷つくと同時に血液中の赤血球やヘモグロビンも壊れてしまうことが原因で起こります。体全体にめぐる血液、赤血球、ヘモグロビンの量が低下しますので、持久力の低下につながってしまいます。

スポーツ貧血の中で最も多い症状といわれているのが、鉄欠乏性貧血です。血液を作るためには鉄が必要になっていますが、鉄は有酸素運動をすると大量に消費されていきます。体の中から鉄がなくなっていくということは、赤血球や酸素を体内に行き渡らせるヘモグロビンの量も少なくなりますので貧血をひき起こしますし、スポーツ選手としての持久力・パフォーマンスも低下することになります。

スポーツシーンでの鉄の役割

スポーツ貧血を予防するためには、血液を作る鉄が不可欠ですが、鉄の中にもいくつかの成分があってそれぞれが役割を持っています。よく聞くのが「ヘモグロビン」。これは、全身に酸素を運搬する役目があります。ヘモグロビンが運んできた酸素を受け取り、細胞の中に取り込むのが「ミオグロビン」。ミオグロビンが受け取った酸素を使って、スポーツをする時のエネルギーを作り出すのが「チトクロム」という酵素になります。

そして、有酸素運動をすればするほど、体内から活性酸素が大量に発生します。活性酸素はそのままにしておくと発生源を攻撃してしまいます。これを「酸化」といいます。この酸化を防ぐのが「カタラーゼ」で、活性酸素を分解する酵素です。体内では絶えずカタラーゼが酸化の処理を続けていますが、鉄が不足したり、その他の分解酵素が機能せず処理する限界を超えてしまうと「炎症」が発生してしまいます。炎症はさまざまなケガにもつながりますから、ケガを防止するためには「活性酸素の除去」も考えておく必要があります。

持久系スポーツ選手、激しい有酸素運動を伴うスポーツ選手ほど、鉄が必要になってきます。消費した鉄を補え切れないと一気に貧血になる可能があります。特に、男性(男子)は運動量も多いので、スポーツ貧血予防のためにヘモグロビン量を常に14g/dl以上キープするように心がけましょう。

Z世代の鉄摂取には断然「ヘム鉄」、最強食材は「レバー」

貧血やスポーツ貧血を予防するためには、まず「日常の食事から鉄をしっかり摂ること」が大切です。しかし、鉄は栄養素の中で最も吸収率が低いといわれています。

食品に含まれる鉄には、「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」があります。ヘム鉄の代表格はレバーで、鉄と並ぶ貧血予防のカギになる「タンパク質」も多く含まれている食材です。さらに、赤血球、ヘモグロビンを合成する「ビタミン」もたっぷりと含まれていますので、最適の食材といえます。

ヒレ肉やカツオ・マグロなどの赤身魚、貝にも鉄が多く含まれています。赤身魚にはビタミンB6、貝にはビタミンB12が多く含まれていて、いずれも血液を作ってくれる食材です。これらヘム鉄の吸収率は約20%になります。

一方、非ヘム鉄はホウレンソウ、ひじき、大豆製品にある程度含まれています。吸収率は良くて約5%、大半は約2、3%くらいなので、普通に食事をしていてもほとんど体に吸収されません。Z世代のスポーツ選手は鉄を摂る場合、ヘム鉄から積極的に摂取するようにしましょう。

吸収率が圧倒的に低い非ヘム鉄ですが、タンパク質やビタミンCと一緒に摂取することで多少吸収が高まります。食卓にホウレンソウやひじきなどの非ヘム鉄が出た後に、ビタミンCの多いオレンジ、グレープフルーツなどの果物を摂ると良いと思います。

ちなみに、ひじきは鉄の多い食品と知られ、「貧血予防にはひじき」といわれていました。しかし、数年前に、ひじきに含まれる鉄の量は意外と少ないことが判明しました。

その理由は、ひじきの製造方法にあります。昔は鉄鍋でひじきを加熱加工していて、製造工程の途中で鉄の成分が溶け出してひじきに移ったといいます。最近では多くの製造現場で使用される鍋がステンレス製になったため、鉄の“成分移動”が起きなくなったわけです。ひじきも鉄鍋の鉄も非ヘム鉄なので、吸収率も低いです。

鉄の吸収を妨げる組み合わせは?

鉄の吸収には「胃液の分泌」、つまり胃酸がしっかり出ているということが大切です。鉄を摂取した時に、大量の水分や油(脂質)を一緒にとってしまうと胃酸を薄めてしまいます。こうしたことから、食前~食後の水分は基本、飲み物ではなく食べ物からが鉄則になります。特にコーヒー、紅茶、緑茶、赤ワインなど食事の時に好まれる物は、鉄との相性が悪い「タンニン」が含まれています。

鉄と一緒に摂る食品についてはいくつか注意が必要です。ホウレンソウに多く含まれる「シュウ酸」、豆類に含まれる「フィチン酸」などの野菜のアクは吸収を妨げるので、調理の際に取り除いてください。ホウレンソウのゆで汁を他の料理で使うのもNGです。

「食物繊維」の大量摂取も問題です。普段の食事から摂取する食物繊維は問題ありませんが、食物繊維が化学的に配合されたダイエタリーサプリメントは含有量が多めです。減量のためにサプリを使用するスポーツ選手も多いかと思いますが、パフォーマンスの低下を招きかねませんので、控えた方が良さそうです。そのほか、加工食品に頻繁に使用される「リン酸」も鉄の吸収を下げるものとして挙げられます。

ただでさえ吸収が困難な貴重な鉄を体に効率良く取り込むためにも、食べ合わせ、食材・食品の相性を特に意識しておきましょう。

貧血予防に食事以外はナシ!?

いろいろな食品から栄養を摂取して貧血予防に努めたいところですが、貧血になってしまったら食事では改善できませんので、鉄剤の服用や輸血などの治療が必要になります。

実はスポーツ現場で、貧血の治療行為が競技力向上、もしくは貧血予防のために行われている事象が報告されています。実際には、競技能力向上との因果関係は立証されていませんし、特に成長期のスポーツ選手が行うと体に負担をかけることになります。明らかにマイナスになりますから、絶対に行わないでください。

私が指導している男子サッカーの高校生に食事調査と血中ヘモグロビン量の計測を行ったところ、ほとんどの選手が鉄を基準値以上摂れているものの、ヘモグロビン量を維持できないケースが多かったのです。“問題あり”の選手の食生活を分析すると、成長に必要な、スポーツをするための「エネルギー」が足りていないということがわかりました。

反対にいえば、食事からエネルギーが確保できていれば、貧血予防に必要なタンパク質、鉄、ビタミンB6、B12、葉酸、ビタミンCなどが自然と摂れるようになります。そのために、この講座で何度もお話ししている通り、バランスの良い食事を心がけるということが、成長中の体を大きくすることにもなり、スポーツ障害を予防することにもつながっていくのです。

参考:バランス良く食べるには?

<次回へ続く>

スポーツを頑張る高校生年代が抱える問題点 ~起こりうるスポーツ障害~ 【Z世代におくるスポーツ栄養講座 #06】

神戸女子大学・坂元美子先生による「Z世代におくるスポーツ栄養講座」。第6回は「スポーツを頑張る高校生年代が抱える問題点 ~起こりうるスポーツ障害~」をテーマにお送りする。

※Z世代とは、欧米で10~20歳を指す言葉として使われている。すぽとりでは「成長世代」と同義と捉えて使用する。

※記事と動画(図表解説あり)で少し内容が異なります。両方をご覧いただき、理解をより深めていただければ幸いです。

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競技を取り巻く環境が大幅に変わる高校生

高校生は、中学生の時と比べて、大幅に競技をする環境が変わってくると思います。

練習量が格段に増えて長時間に及んだり、平日のみならず土日も練習や試合があったり、競技によってはダイエットや減量をしなくてはならないこともあります。また、スポーツを頑張るために、遠方の学校へ通うといったケースもあります。

高校生たちには、インターハイ、選抜など目標とする大会が多く、これらに出場することを励みに日々の練習に力を入れていることでしょう。ただ、頑張り過ぎてしまうあまり、生活のリズムが崩れがちになるのも確かです。

例えば、長時間の練習で帰宅が遅くなってしまい、満足に食事をしないまま睡眠に入ったり、寝る時間が遅くなることで休息が十分に取れなかったり。ハードな練習が続いていても体を休める時間がなかったり。これは、本人だけの問題ではないかもしれませんが、考える必要があります。

前回まで、「スポーツ選手としての体を作るためにはしっかりと栄養をとらなければならない」、「中学生~高校生は一生のうちで最も食べなければならない時期」と説明してきました。ハードな練習や生活のリズムが崩れることで十分に食事がとれず、体の成長に必要な栄養が不足してしまうという事態が実際にたくさん起こっています。

このような生活が長く続くと、さまざまなスポーツ障害をひき起こすことにもなります。

栄養不足からくるスポーツ障害のリスク

高校生年代では、さまざまな理由から多くのスポーツ障害が起きるリスクがあります。

ハードな練習をし続けた結果起きる「疲労骨折」、コンタクト競技では不可抗力による「骨折」が多くなってきます。持久系スポーツでは血液の材料になる栄養(鉄)不足による「スポーツ貧血」、体作りのための栄養が足りない場合、「じん帯の損傷・断裂」、「ねん挫」、「脱臼」などの関節系のケガが増えてきます。

心理面が影響して起こりうるのが「オーバートレーニング症候群」で、「もっと練習しなきゃ」「自分はもっと頑張れる」という気持ちがマイナスの方向に働いてしまい、練習ができなくなる症状をいいます。同様に、ダイエットや減量を強いられるあまり食事がとれなくなる「摂食障害」にも要注意です。

高校生年代は男女ともにホルモン分泌が高まる時期ですが、特に女子にはそれが起因となる障害もあります。今世界中の女子選手に起こりえる大きな問題となっている「女子選手の三主徴(FAT)」です。これは、「利用可能エネルギー不足」「疲労骨折」「月経障害」の3つを指し、これらは相関関係を持っているため、問題解決には食事はもちろん、医学的なアプローチも必要不可欠になってきます。FATについては、次回以降、一つずつ解説していきます。

この問題は適切に処置しないと、成人になってからも心身に多大な影響を及ぼすことになるので、指導者や保護者の方はぜひ知っておいていただきたいと思います。

高校生年代は、生活のリズムの変化、ハードな練習、身体の成長過程(ホルモン分泌)における影響など、スポーツ障害の原因を考えて日々の練習に向き合っていくことが大切です。

<次回に続く>

中学生年代の食の問題点とその対策 ~スポーツと五大栄養素~【Z世代におくるスポーツ栄養講座 #05】

神戸女子大学・坂元美子先生による「Z世代におくるスポーツ栄養講座」。第5回は「中学生年代の食の問題点とその対策 ~スポーツと五大栄養素~」をテーマにお送りする。

※Z世代とは、欧米で10~20歳を指す言葉として使われている。すぽとりでは「成長世代」と同義と捉えて使用する。

※記事と動画(図表解説あり)で少し内容が異なります。両方をご覧いただき、理解をより深めていただければ幸いです。

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成長が本格的に始まる中学生年代

中学生になると、身長・体重の発育・発達が起こり始めると同時に、内臓が大きくなっていくのに伴って消化・吸収能力も高まってきます。そして、最も特徴的なのが、免疫力が成人の約2倍高まるということです。

ですから、中学生年代では、体を大きくするための栄養のとり方はもちろん、免疫力を高めるための栄養のとり方も重要になってきます。

また、中学生、その後の高校生というのは、一生のうちで最もエネルギーをとらなければならない時期になります。エネルギーを獲得するために、どのような栄養のとり方をするかを考えていく必要があります。

スポーツと5大栄養素の関係

みなさんもご存知かと思いますが、毎日の生活の中で、食事から「たんぱく質」「脂質」「炭水化物」「ビタミン」「ミネラル」の5大栄養素をとらなければいけないといわれています。では、これらがスポーツをする時にどのように体内で働くのかを説明していきます。

炭水化物と脂質はエネルギー源になります。日常生活での必要エネルギーは一般的に、炭水化物と脂質を半分ずつ使用しているといわれていますが、スポーツをする場合、運動強度や量が増えていくので、より多くの炭水化物が必要になってきます(持久系スポーツは脂質の必要量も増加)。

体に貯蔵されている体脂肪をエネルギーとして利用する脂質に対し、炭水化物は食事からその都度体内に入れてあげないとすぐに不足してしまいます。炭水化物は脳のエネルギー源としても使われます。とる量が十分でないと、スポーツをするうえでの「判断力」「集中力」が失われかねません。スポーツをする前には、「炭水化物をしっかりとる(体に入れておく)こと」を心がけておくと良いですね。

筋肉、骨、血液、爪など体の材料となるのが、たんぱく質です。たんぱく質が不足すると、スポーツ選手としての体作りができなくなってしまいます。もう一つ、たんぱく質には免疫力を上げるという大きな役割があります。ウイルスや病原菌が体に入ってくると、体内では防衛機能を果たす抗体が作られます。この材料になるのがたんぱく質です。

炭水化物、脂質、たんぱく質が体の材料になるものなら、材料を使ってエネルギーや身体に作り変える役割を果たすのが、ビタミンとミネラルになります。いくら炭水化物、脂質、たんぱく質をしっかりとっていても、ビタミン、ミネラルがなければエネルギーや身体への作り変えができなくなるので、忘れず一緒にとる必要があります。ミネラルの中には骨の材料となるカルシウム、マグネシウム、血液の材料になる鉄と、スポーツ選手の体作りには不可欠なものも含まれています。

このように、5つの栄養素を必ず摂取しなければ、スポーツ選手の体作りができませんし、中学生で起こるべきさまざまな発育・発達に支障をきたす可能性があります。

5つの栄養素の関係はチームスポーツと似ています。一人だけ上手な人がいても、周囲が協調しなければ結果を出すことができません。栄養素も同様に、一つ一つがそれぞれ役割をもっていて、うまく機能することで、体を健康に保ったり、強くしたりすることができるのです。

中学生、高校生は、5つの栄養素をバランス良くとらなければなりません。そのためには前回ご提案したように、「毎食、虹色の食材をそろえる」ことをしていただければと思います。

小学生のうちから虹色の食事を心がけていれば、最もエネルギーが必要なこの時期にバランス良く、たくさん食べることができるようになっているはずです。

サプリメントなどに頼らず、消化・吸収能力を高めたい

中学生年代の食事で注意したいのは、サプリメントや加工食品の摂取です。今、スポーツをしている人に向けて多くのサプリメントや加工食品が発売されており、いずれも消化・吸収の良い状態で栄養素が摂取できるように作られています。

成長期が過ぎた成人が使用するのは良いと思いますが、成長が著しい中学生の時から慣れてしまうと、内臓の消化・吸収能力を高めるせっかくの機会を失うことになりかねません。食べ物を咀嚼し、胃で消化することこそが能力を高めることにつながりますので、サプリなどの摂取はなるべく控えた方が良いですね。

また、サプリなどの摂取で食事量が減ってしまう可能性も出てきます。これらはタブレットや粉末など、小さくても栄養素が凝縮された形状になっています。これに慣れてしまうと、摂取量が少なくても栄養は十分と脳が勘違いする(食べた気になる)ため、食欲を止めてしまいます。「サプリなどでお腹一杯になり、食事が食べられない」ということも起こりえます。これでは、たくさんエネルギーが必要な時期に食事量が減ってしまい、身体、内臓の成長が小さくなりますし、先ほどの消化・吸収能力にもかかわってきます。

サプリなどは手軽で便利なので使いたいと思っている人も多いことでしょう。しかし、身体の成長も内臓の成長もこの時期しかありません。せっかくの機会を失わないためにも、使いたい気持ちをグッとこらえて、食事から栄養をとる生活を心がけていきましょう。

<次回に続く>

小学生年代の食の問題点を解決するために ~にじ色をそろえよう!~【Z世代におくるスポーツ栄養講座 #04】

神戸女子大学・坂元美子先生による「Z世代におくるスポーツ栄養講座」。第4回は「小学生年代の食の問題点を解決するために ~にじ色をそろえよう!~」をテーマにお送りする。

バランスの良い食生活を崩してしまう小学生年代特有の「こ」食問題。毎日の生活の中で自然とバランス良く食材がとれるようになるのが解決の糸口になってくる。坂元先生は、7つの色(虹色)と食材を組み合わせて覚え、小学生のうちから食への意識を高める必要性を訴えている。

※Z世代とは、欧米で10~20歳を指す言葉として使われている。すぽとりでは「成長世代」と同義と捉えて使用する。

※記事と動画(図表解説あり)で少し内容が異なります。両方をご覧いただき、理解をより深めていただければ幸いです。

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「こ」食の解決=食のバランス

前回、小学生年代の食の問題点として「こ食」を取り上げましたが、これはバラン良く栄養がとれなくなることを意味しています。ですから、「どのようにしてバランスのいい食事をとるか」がこの問題を解決するポイントになってきます。

一言で「バランス」と言ってもなかなか難しいですよね。「そもそもバランスのいい食事って何?」と思う方もいるかもしれません。

そこで、私からの提案です。朝・昼・晩で毎食、7つの色の食材を意識してそろえていただきたいと思います。7つの色とは、赤、だいだい、黄、緑、青、藍、紫で、「虹」の色を表現しています。

小学生のうちから毎食、「虹色の食事」を意識していただければ、みなさんのスポーツ選手としての未来も虹色に輝いてきますよという、私からのメッセージでもあります。

虹色の食材を一つずつ解説

まず、「赤」は、牛・豚・鶏の肉類と卵。多く含まれる栄養素は、タンパク質、ビタミン、ミネラルになります。肉や卵はいろいろな調理法がありますので、朝食からしっかりそろえるようにしたいですね。

次に、「だいだい」は、魚介類、豆腐・納豆など大豆製品で、多く含まれる栄養素は、タンパク質、ビタミン、ミネラルです。

「黄」は「主食」といわれている物で、ごはん、パン、麺類、餅などが挙げられます。多く含まれる栄養素は、炭水化物(糖質)です。

バランス良く食べるために、毎食虹色の食品をそろえましょう!
バランス良く食べるために、毎食虹色の食品をそろえましょう!(画像拡大)

「緑」は、色が濃い緑黄色野菜といわれる物です。いも類、海藻類もこのグループになります。ほうれんそう・ブロッコリー・にんじん、わかめ・ひじき・こんぶ、さつまいも・じゃがいも・やまいもなど、ビタミン、ミネラル、食物繊維が多く含まれています。

「青」は、淡色野菜といわれる色の薄い物になります。だいこん、きゅうり、なす、ごぼう、たけのこ、なす、レタスとたくさんあります。きゅうりやなすは一見、緑黄色野菜と思われがちですが、皮をむくと白っぽいので、「青」になります。多く含まれる栄養素は、ビタミン、ミネラル、食物繊維です。

ここで、「緑」と「青」の野菜を比較してみましょう。どちらも多く含まれる栄養素は同じですが、実は「緑」の方がより豊富に含まれています。

スポーツ選手に「野菜をちゃんと食べていますか?」と聞くと、「サラダやキャベツの千切りをいっぱい食べています」と、返ってくることがあります。これらは淡色野菜の「青」で、もちろん栄養素はとれるのですが、意識してとりたいのは緑黄色野菜の「緑」の方です。

また、「緑(海藻類:わかめ・ひじき・こんぶなど)」は、特にミネラルが豊富に含まれていますので、体の成長、スポーツ選手になるための体作りを考えて、毎食積極的にとっていきたいところです。

「藍」は、牛乳、チーズ、ヨーグルトなどの乳製品を表しています。タンパク質、ミネラルが多く含まれ、特にカルシウムが豊富です。「緑」でもカルシウムをとることができますが、吸収率が低めという欠点もあります。一方、「藍」は「緑」よりも2倍の吸収率があるといわれているので、カルシウムを効率的にとるなら「藍」の方が良いでしょう。

「藍(牛乳、チーズ、ヨーグルトなど)」をとる上での注意点は食物アレルギーです。もし、乳アレルギーがある場合、「緑(海藻類)」、「だいだい(大豆製品、骨ごと食べられる小魚)」などで代替して、毎食しっかりとれるように心がけましょう。

「紫」は果物全般になります。特におススメしたいのがすっぱい物で、これらはさまざまな栄養素の吸収を良くするクエン酸が含まれています。食後のデザートにすっぱい果物を食べることで、食事でとった栄養素を体内に取り込みやすくしてくれます。成長に必要なビタミンCもより多く含まれています。

また、果物には糖質が多く含まれているので、成長に必要なエネルギー源を「黄(炭水化物)」とともにとっていただければと思います。

このように、7つの色の食材を毎食とっていれば、自然にバランス良く栄養素をとれるようになっていきます。

不足した色を自分でそろえられるように…

小学生が栄養素の名前を覚えようとすると難しいと思いますので、まずは7つの色とどんな食材があるかを覚えると良いでしょう。

それができたら、次は普段の食事で「これは何色の食材」と一つ一つ確認をしながら食事をとってみましょう。

最終的には、毎回の食事で足りない色があれば、自分で冷蔵庫を開けて用意する。このくらいまでできるようになるのが理想です。

この段階までくれば、無意識にバランスの良い食事がとれるようになっていますし、身長・体重、内臓(消化・吸収能力)などの成長が顕著で、最も栄養が必要な中学生、高校生の時期に「たくさん」食べられるようにもなっているはずです。

「たくさん食べる」という点から注意が一つあります。前回お話しした「濃食(味が濃い物を食べる)」には気をつけていただきたいですね。

特に化学調味料がたくさん使われている物は、少し食べただけで脳が満腹感を覚えてしまい、たくさん食べたと勘違いしてしまいます。小さい頃からこれに慣れてしまうと、本来必要な量をとることができず、成長に悪影響が出てくる可能性もあります。

ですから、小学生のうちはできる限り、自然な食品・食材そのものの味をおいしいと感じるような食生活を送ることが必要になってきます。

<次回へ続く>

小学生年代の食の問題点 ~知っていますか? さまざまな「こ」食~【Z世代におくるスポーツ栄養講座 #03】

神戸女子大学・坂元美子先生による「Z世代におくるスポーツ栄養講座」。第3回は「小学生年代の食の問題点」をテーマにお送りする。

小学生年代特有の「こ」食が問題視されている。本格的に成長を迎える中学生、高校生年代に備え、成長の妨げになるリスクをしっかりと押さえておきたい。

※Z世代とは、欧米で10~20歳を指す言葉として使われている。すぽとりでは「成長世代」と同義と捉えて使用する。

※記事と動画(図表解説あり)で少し内容が異なります。両方をご覧いただき、理解をより深めていただければ幸いです。

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成長の妨げになる「こ」食

今、栄養士の間で話題になっているのが小学生の「こ」食。これは、5つの「こ」の漢字に当てはめて問題提起をしているものです。

1つ目は「孤食」。共働きをする親御さんが多い社会ですが、仕事の都合でどうしても帰宅が遅くなり、出来合いの物をレンチンして食べたり、お子さんの食事時間に合わせて用意することができなかったりする状態をいいます。

規則正しい食習慣を身につけたい時期ですが、お子さん一人の食事となり、食べる時間がバラバラになったり、バランスの良い食事をとることが難しくなります。

2つ目は「個食」。例えば、おじいさんは柔らかい物(煮物など)、お父さんは酒の肴、お母さんはダイエット食、お子さんは好きな物と、家族そろって食卓を囲むことができているものの、それぞれで食べる物が異なる状態をいいます。

3つ目は「固食」。これは、「こり固まった物を食べる(偏食)」という意味になります。例えば、毎日の朝食が菓子パンだけ、ダイエット中だから〇〇だけしか食べない(お子さんには少ない)など、食事が偏ってしまってバランス良く栄養が取れなくなってしまいます。

ちなみに、文字通り、固い物を食べることはお勧めします。固い物は自然とかむ回数が増えて、食べ物の消化・吸収を助けたり、脳の活性化にもつながります。

4つ目は「粉食」。小麦粉を使った料理ばかり食べることです。粉物の代表的なお好み焼きは具材がある程度そろっているのでまだマシですが、具材がシンプルなたこ焼きが夕食というのは栄養バランスを欠くことになりますので、気をつけたいですね。

最後は「濃食」で、味の濃い物ばかり食べることをいいます。味の濃い物、特に塩辛い物ばかり食べて、それがおいしいと感じてしまうと、味つけの薄い物や食品そのものの味を感じづらくなってしまいます。

もう一つ、大きな問題として挙げられるのが化学調味料と添加物です。化学調味料はごく少量で味がつきますし、添加物は本来の味に似た物を人工的に作り出します。これらを使用した物に食べ慣れると、本来の味がわからなくなってしまうという錯覚が生まれます。

さらに、食品や飲料で使用されている人工甘味料。こちらもごく少量で味つけできるため、とても甘いのにゼロカロリー(エネルギーがない)という物があります。エネルギーが足りていないのに、甘さだけを感知して勘違いした脳が「もう満腹だから食べるのをやめなさい」と指令を出してしまいます。

小学生年代で人工甘味料に慣れてしまうと、この後の中学生、高校生でエネルギーが必要な時に適切な量を食べることができなくなります。人工的な物はとても便利で食生活にも密接していますが、体作りを考えるのであれば、小学生年代ではなるべく控えた方が良いでしょう。

「しっかり食べる」意識づけを

小学生年代でも、熱心に練習を続けている人は多いと思います。ただ、これも体の成長を考えると弊害が出てきます。

夜遅くまで練習が続く場合、帰宅時間が遅くなって食事の時間が本来睡眠をとる時間帯にかかってしまいます。そうなると、睡眠時間が削られて眠りが浅いまま起床→お腹がすいていないので朝食を抜くという悪循環に陥ります。

週末は1日で何度も試合があって、物を食べる機会が失いがちになります。お腹に物が入っていると動きが鈍くなるので、簡単な物で食事を済ませてしまうこともあるでしょう。

しかし、小学生年代のうちから、しっかり食べることを意識しておかないと、何度もいうように中学生、高校生で最も食べなくてはいけいない時期に食べられなくなります。

それから、小学生年代は味覚が確立されてきて、好き嫌いが増えやすい時期でもあります。食べ方や食べる物を意識することが大切になってきます。

今年は新型コロナウイルスの蔓延によって、かつてない状況になっています。学校が始まらなかったり、給食が提供されなかったりと、必要な栄養をとれないケースが出てきてしまいました。

「こ」食問題に始まり、今年の状況を踏まえると、小学生年代は特にスポーツを頑張っているお子さんにとって、理想的な食習慣を整えることが難しいといえます。

小学生年代は体が急激に大きくなる時期ではないので、たくさんの量を食べることがそれほど必要ではありません。「規則正しい時間に食事をする」「きちんと朝ごはんを食べる」といった基本的なところを押さえておきましょう。

また、小学生自身でバランスの良い食事をとれるようになりたいですね。最初は意識をしながらですが、それを続けていけば無意識にできるようになってくるはずです。

<次回に続く>