ファーザータイムを迎えてもなお最強誇る”キング” ~レブロン・ジェームズ (NBA) 前編~ 【海外トップ選手のコンディショニング術 #01】

プロ入りから18年。今でも輝き続ける“キング”

八村塁(ワシントン・ウィザーズ)、渡邊雄太(トロント・ラプターズ)がNBAのコートでプレーするようになり、日本でも世界最高峰のプロバスケットボールリーグへの関心が高まっている。

現在NBAの現役選手の中でナンバーワンは、何といってもレブロン・ジェームズ(ロサンゼルス・レイカーズ)だ。2003年、高校卒業後にアーリーエントリー(早期志願)したNBAドラフトでクリーブランド・キャバリアーズから全体1位で指名されたジェームズは、高校時代にスポーツイラストレイテッドの表紙を飾った際、「The Chosen One(選ばれし者)」と題された通り、1年目からスターダムを駆け上がった。

シーズンMVP受賞4回、NBAファイナルMVP受賞4回、これまでに所属した3チーム(キャバリアーズ、マイアミ・ヒート、レイカーズ)で優勝4回という実績により、今ではNBA歴代最高選手(G.O.A.T:Greatest Of All Time)に彼の名前を挙げる識者も多い。

通説を信じるのなら、ジェームズのように超がつくスーパーアスリートであっても、30歳を境にパフォーマンスレベルが低下し始める。ところが昨年の12月30日に36歳の誕生日を迎えたジェームズは、NBAキャリア18年目の2020-21シーズンも名門レイカーズのリーダーとしてチームを引っ張っている。精神的な柱としてだけではなく、36歳という年齢で出場時間、得点、リバウンド、アシスト、スティールの平均値でチーム最高の数字を残していることからわかるように、彼に通説は当てはまらない。

30歳を境にパフォーマンスレベルが落ちるどころか、ジェームズの場合は肉体、技術、精神のどれもがレベルアップし続けている。その根幹を支えているのは、当然ながらトレーニング、食事、生活スタイルのルーティンだ。

コンディションを上げるための「食」と「鍛錬」

元来ケガにも強いジェームズだが、キャバリアーズからレイカーズへ移籍した2018年の12月25日に行われたクリスマスゲーム(ゴールデンステイト・ウォリアーズ戦)で鼠蹊部を痛めた。この負傷によって1月末までの間、キャリア最長となる17試合連続欠場を経験。欠場していた間、ジェームズはリハビリの一環として減量に取り組んだ。

2019年、ジェームズのトレーナーを長年務めているマイク・マンチアスは、「GQ」とのインタビューで、鼠蹊部を痛めてからは身体への負担を軽減させるために減量することを決め、余分な炭水化物と糖分の摂取を控えるように指導したと答えている。

ジェームズは試合後に赤ワインを嗜むことで知られているが、マンチアスによれば、2019年1月1日から復帰するまではアルコールも断ったという。抗酸化物質のポリフェノールを多く含む赤ワインは、試合後の疲労回復に役立つ。リラックス効果もあり、良質な睡眠に繋がるというメリットもある。

マンチアスは、厳しいリハビリを終えて復帰を果たした時のご褒美になるからと、ジェームズと一緒に1カ月間の断酒を行った。最近は見かけないが、ジェームズ自身がワインをソーシャルメディアで紹介することもある。

ジェームズの1日は、前日の夜からすでに始まっている。前日の夜にその日を総括し、翌朝のトレーニングに気持ちを向ける。マンチアスは、2019年に「Men’s Health」でジェームズが実践しているトレーニングメニューを紹介している。

ウォームアップとして行っている運動から、バーベル、ケーブル、バーサクライマーと呼ばれる器具を使っての運動など、上半身と下半身をバランスよく鍛えるメニューが組まれている。特に腕、肩、背中、腹筋、尻、大腿四頭筋、下腿部が鍛えられる全身運動が可能なバーサクライマーを好むジェームズは、フットボールフィールドでのスプリントも好きなトレーニングメニューに挙げている。その理由は、屋外で気持ちをリフレッシュさせられるのと、高校時代にアメリカンフットボールをプレーしていたことが関係している。

2018年、ポッドキャスト番組の「THE BLOG OF AUTHOR TIM FERRISS」で、ジェームズは「屋外での有酸素運動という以外にも、フットボールフィールドでの運動は、個人的に意味があるもの」と話している。

もちろん、彼は身体を動かす燃料となる栄養にもこだわるアスリートだ。オフの身体のケアに100万ドル(約1億円)もの金額を費やすといわれているジェームズは、ヒートに所属していた2014年のNBAファイナル第1戦で足の筋肉が痙攣してプレーを続行できなくなってから、摂取するサプリメントにもいっそう気を配るようになった。

はじめはマンチアスと市販されている物を吟味して選んでいたようだが、求めているパフォーマンスレベルに繋がる製品が市場で見つからなかったため、安全で高品質のサプリメントを開発するブランド「LADDER」を自ら立ち上げた。

商品数は少ないものの、いずれもプレワークアウト、水分補給と摂取タイミング、シーンごとに訴求されている。商品に配合されている原料も世界標準になりつつあるプラントベース(植物性)のほか、メンタルヘルスに効果が期待されるカフェイン、コリンを採用したり、日本ではほぼ知られていないイワベンケイ由来の原料を使用したりしているあたり、ジェームズのこだわりが感じられる。

加齢による衰え、いわゆる「ファーザータイム」がいつかやってくるとはいえ、今のジェームズを見ていると、今後数年は現状を維持できるように思えてしまう。コートでのパフォーマンスはもちろん、コンディショニングとトレーニングに対する意識の高さ、取り組む姿勢が伴っているからこそ、彼はNBAの「キング」にふさわしい。

<驚きの進化を遂げるレブロン・ジェームズ>

(クリックで画像拡大)キャリアを通じて全試合先発出場を続けるレブロン・ジェームズ。19~29歳の1試合平均出場時間は39.5分(20歳時の1試合平均42.4分出場がキャリアハイ)に上り、毎試合ほとんどコートに立っていたことになる。30~36歳の1試合平均出場時間は35.8分と20歳代より減少したものの、代えの利かない選手とあって依然としてコートに立つ時間は長い。パフォーマンスの衰えは一向に見られず、主要3部門のうち、PPG(得点)のキャリアハイこそ30.0を記録した23歳時のものだが、RPG(リバウンド)は32、33歳、APG(アシスト)は35歳と、いずれも30歳代で最高の成績を残し、得点型の万能選手からバランス型の万能選手へとさらに進化した。ちなみに、シュートの正確性を示す「FG%」、3Pシュートの正確性を示す「3P%」も、20歳代より30歳代の方が向上している。プロ生活18年で大きなケガもなく、新人からトップレベルの成績を残し続けている選手は、スポーツの歴史上でも簡単には見つからない。レブロンはそれほど偉大で稀有な存在なのだ。

<後編へ続く>


菅野貴之 / Takayuki Kanno

海外スポーツ関連の媒体に翻訳記事、コラムを寄稿。