ケガも老いも酸化から ~スポーツと抗酸化~ 【Z世代におくるスポーツ栄養講座 #13】

神戸女子大学・坂元美子先生による「Z世代におくるスポーツ栄養講座」。第13回は、抗酸化について解説。

ケガの元になる活性酸素を除去(抗酸化)することは、スポーツを頑張るZ世代も成人もしっかり対策をしないといけない。過度なトレーニングはもちろん、日常には酸化を促してしまうものがあふれている。

栄養摂取など体の内外からケアを施し、健康な状態を維持したい。意外と知られていないが、将来にも影響があることから最も大事なのは酸化対策なのだ。

※Z世代とは、欧米で10~20歳を指す言葉として使われている。すぽとりでは「成長世代」と同義と捉えて使用する。

※記事と動画(図表解説あり)で少し内容が異なります。両方をご覧いただき、理解をより深めていただければ幸いです。

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「好相性の食材を組み合わせた目的別スポーツ食」動画一覧

動画「すぽとりChannel」


ケガの大元になる「酸化」、過度なストレスは禁物

体のさまざまな場所に起こるケガの一因になるのは「炎症」で、症状は四段階で現れてきます。患部が赤くなる「①発赤(ほっせき)」、熱く感じたり、患部が温かくなったりする「②熱感」、患部が腫れる「③腫脹(しゅちょう)」、ズキズキと痛む「④疼痛(とうつう)」で、これらは「炎症の四兆候」と呼ばれています。①②はケガに至る前の段階、③④はケガに至っている段階です。

スポーツ選手はトレーニングなどの激しい身体活動によって、炎症が出てきて当たり前の状態といえます。例えば、多くの球を投げる野球の投手は、肩や肘に負担がかかって①②が起きている可能性がありますが、投球後にアイシングなどをすることで③④へ症状が進むのを防いでいるわけです。

炎症は本来、人間が持つ生体防御反応が働いている証拠なので、炎症が起きないこと自体、体に異常があるということになります。ただ、炎症が起きているのに放置すると、ケガや病気につながってしまうので、体のケアや食事・栄養摂取が大切になってくるのです。

スポーツ選手のケガにつながる炎症の原因といわれているのが「活性酸素」で、特に有酸素のエネルギー代謝が活発なほど、体内に大量の活性酸素が生じます。活性酸素はもともと、殺菌作用などがあるので体にとって良い働きをするものです。しかし、激しいトレーニングなどで活性酸素が必要以上に発生すると、今度は発生した場所を攻撃するようになって体に害が及びます。これが「酸化」と呼ばれるもので、炎症や老化の直接的な原因ともいわれています。

スポーツ選手は成長するためにトレーニングを行いますが、しかし、体の負担になる必要以上のトレーニングは、酸化をひき起こす「ストレス」(酸化ストレス)にもなります。激しいトレーニングのほか、普段の日常生活にも酸化ストレスは潜んでいて、喫煙(たばこの煙)、排気ガスなどの大気汚染物質、化学物質、紫外線(日焼け)、アルコールなどが挙げられます。こうした酸化ストレスを日々浴び続けていると、やがて体内で処理することができなくなって炎症、老化につながってしまうわけです。

少し整理すると、スポーツ選手が行う過度なトレーニング(体ヘの過剰なストレス)→活性酸素の発生→(対応しなければ…)酸化(老化)→(対応しなければ…)炎症→ケガとなります。

では、どのように酸化を防いでいくのか。スポーツ選手が成長するためにある程度自分を追い込んでトレーニングが激しくなるのは仕方ないので、酸化ストレスをなくすためにトレーニングをしないというのは本末転倒です。そうなると、酸化を予防する、活性酸素を除去(分解)するなど、「抗酸化」を毎日の生活、食事から意識していくことが問題の解決につながっていきます。

「色」が酸化を防ぐことに役立つ

抗酸化の働きがある食品成分はいくつかあり、その一つが「フィトケミカル」です。多くは、植物が作り出す天然の色素になります。

最も知られているのが「カロテノイド」で、橙色の色素を持つ「β-カロテン」はにんじんに、「β-クリプトキサンチン」はオレンジやパパイヤに含まれています。赤色の色素を持つ「リコピン」はトマト、スイカ、グアバに含まれ、「ルテイン」はほうれん草に多く含まれています。

紫色の色素を持つ「アントシアニン」は、ぶどう、ブルーベリーに含まれる「アントシアニジン」、なすの「ナスニン」、しその「シソニン」があります。「フラボノイド」もよく知られていて、大豆に含まれる「イソフラボン」は、女性ホルモンと同じ作用を持つもの(ホルモン様作用)として女性の味方になる成分でありながら、抗酸化作用も期待できます。玉ねぎの「ケルセチン」、茶やチョコレートの「フラバノール」は「カテキン」の仲間でもあります。

先に挙げたカロテノイドは「プロビタミンA」と呼ばれており、抗酸化作用を持っているのはもちろんですが、体内でビタミンAが足りなくなるとそれを補完する働きをします。この万能性からカロテノイドを多く含む食品は特にお勧めといっていいでしょう。

抗酸化作用の強い食品は、植物性の物が多いのですが、鮭やエビの殻などに含まれる動物性の色素「アスタキサンチン」があります。食事からアスタキサンチンを摂取しようとすると、鮭の切り身を何枚も食べなければなりませんので、植物性の野菜、果物から摂取する方が現実的といえます。

これまでに挙げた野菜や果物は熟すことで色が濃くなっていくのですが、熟成が進むほど抗酸化作用が強まりますし、旬の時に最も色が深まります。色の濃さも食品を選ぶ時の参考にしてみてください。

「酵素」の力で活性酸素を分解、ビタミンCとEの相乗効果

人間の体は、発生した活性酸素を分解する酵素を作り出すメカニズムが備わっています。体内で産生される活性酸素分解酵素は「スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)」、「カタラーゼ」、「グルタチオンペルオキダーゼ」で、年齢とともに産生力が低下するといわれています。これらの材料になる成分はいずれもミネラルになります。

SODの材料になるのは亜鉛・銅で、亜鉛は玄米、牛肉、貝類、中でも牡蠣に、銅はイカ、タコ、ココアに多く含まれています。カタラーゼの材料になるのは鉄で、多く含まれる食品はレバー、赤身の肉や魚、貝、少し吸収率は劣るものの、ほうれん草、ひじきが挙げられます。

グルタチオンペルオキダーゼの材料になるのは「セレン」で、イワシやサンマなどの魚に多く含まれています。グルタチオンペルオキシダーゼが働くために、「含硫アミノ酸」が存在している必要があります。含硫アミノ酸は、人間の体を合成しているアミノ酸なので、意識してたくさん摂らなければならない物ではありません。動物性の食品に含まれているので、自然と摂取する機会は多いと思います。

抗酸化作用が期待されるものとして、フィトケミカル、酵素のほかにもビタミンC、ビタミンEが挙げられます。この2つのビタミンは一緒に摂取することでお互いの働きを高め合う効果(相乗効果)が見込めます。ビタミンCはオレンジ・グレープフルーツ・ミカン・キウイ・イチゴなどの酸っぱい果物、ほうれん草・ブロッコリーなどの野菜、いも類にも多く含まれています。ビタミンEは、ナッツ類や大豆、胚芽(胚芽米、小麦胚芽)に多く含まれています。

スポーツ選手は、激しいトレーニングなどで発生した活性酸素を分解するための酵素が不足すると酸化が進んでしまいます。一方、有酸素のトレーニングをきちんと(適度に)積んでいくことで、分解酵素を作り出す能力を高めることにもなります。

フィトケミカル、SODなど分解酵素の材料になるミネラル、ビタミンC・Eは、トレーニング以外でも日常生活を送っているだけで消費されていますので、こまめに補充することが大切です。できれば、食事ごとに摂取することを心がけましょう。

次回は「水分補給の重要性①」をお送りいたします。

<次回に続く>

好相性の食材を組み合わせて「貧血予防」 ~じゃがいも×菜の花~【スポーツ食マッチング #03】

「季節感(食材の旬)」「好相性の食材を組み合わせて相乗効果を図る」「目的(強化・予防・対策など)」――この3点を踏まえたスポーツ食を提案する「スポーツ食マッチング」。第3回目は「貧血予防編 ①」です。

本企画は神戸女子大学 健康スポーツ栄養学科 坂元ゼミとのコラボ企画で、栄養解説は坂元美子先生、レシピ作成&調理は坂元先生監修の下、森田紀子さん(3回生)が担当しました。

Z世代のスポーツ選手を想定して献立を作成していますが、自炊しているスポーツ選手、部活のマネジャー、運動習慣のある成人の方にもご活用いただけます。簡単、かつ栄養価の高い献立で、スポーツや運動シーンでお役立てください。

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【貧血予防に必要な栄養素は?】

<ポイント>

「鉄」には、「ヘム鉄」「非ヘム鉄」がある。

とセットで「ビタミンC」を摂取する。

鉄は栄養素の中でもダントツに吸収率が低いといわれている。食べ物に含まれる鉄はヘム鉄と非ヘム鉄がある。

ヘム鉄は、ヒレ肉やモモ肉などの赤身の肉、カツオやマグロなどの赤身の魚、貝、レバーに多く含まれ、比較的吸収率が高い(約20%)。

非ヘム鉄は、ほうれん草などの野菜や豆類、ひじきなどの海藻類に多く含まれ、吸収率はそれほど高くない(約5%)。ビタミンCは、非ヘム鉄の吸収を助けてくれる。

血液中の鉄は有酸素運動のエネルギーを作るために必要で、特に有酸素トレーニングの機会が多いスポーツ選手や、集中力が必要な人は、不足しないように日ごろから摂取しておきたい。

【好相性の食材組み合わせ】

貧血予防のために組み合わせたい食材は、葉物野菜じゃがいも(今回は菜の花とじゃがいもの組み合わせ)。

菜の花などの葉物野菜には、鉄が多く含まれているものの、吸収率の低い非ヘム鉄。ビタミンCが豊富に含まれているじゃがいもで吸収率の底上げを図る。ビタミンCは一般的に加熱すると働きが失われやすいとされるが、いも類に含まれるビタミンCはでんぷんに守られている分、加熱に強い

新じゃがはこれからの季節(4~5月)に栄養価も高くなり、買いやすい。菜の花も同様。

組み合わせNGの食材はあぶら(脂、油)の多い物揚げ物などたくさん油を使う調理方法もアウト。食事中、大量の水分を一緒に摂るのも、鉄の吸収を下げてしまう原因になる。

【摂取タイミング】

就寝中に体の修復や血液の合成が高まるので、運動後(睡眠前の)夕食がベスト。


◎じゃがいもと菜の花の炒め物 アーモンド添え

<材料(2人分)>

菜の花:60 g

じゃがいも:160 g

豚モモ肉:60 g

にんにく:3g

ゴマ油:12 g

濃い口しょうゆ:8g

塩・こしょう:少々

アーモンド:3.6 g

<手順>

① じゃがいもは皮をよく洗う。水がついた状態で食品用ラップにくるみ、600Wの電子レンジで3分程度加熱する

② 菜の花:3㎝長さに切る

豚モモ肉:長さを三等分にし、塩・こしょうで下味をつける

じゃがいも:食べやすい大きさに切る

③ フライパンにゴマ油半分を熱し、にんにくを炒める

④ 豚肉を入れて炒める。火が通ったら一度取り出す

⑤ そのままのフライパンに残りのゴマ油を熱し、じゃがいも・菜の花を炒める

⑥ 菜の花がしんなりとしてきたら豚肉を戻し、濃口しょうゆを絡めたら完成

※お好みで、素焼きアーモンドを袋に入れて砕いたものを上からかける

<栄養量(1人あたり)> ()はアーモンド込み

エネルギー:169 kcal (191 kcl)

たんぱく質:9.6 g (10.4 g)

脂質:7.2 g (9.2 g)

炭水化物:16.7 g (17.4 g)

カリウム:579 mg (606 mg)

カルシウム:53 mg (62 mg)

鉄:1.5 mg (1.7 mg)

ビタミンD:0.0 μg (0.0 μg)

ビタミンB1:0.41 mg (0.41 mg)

ビタミンB2:0.18 mg (0.22 mg)

ビタミンB6:0.35 mg (0.35 mg)

ビタミンB12:0.1μg (0.1μg)

ビタミンC:67 mg (67 mg)

<レシピ作成&調理担当:森田紀子 / Noriko Morita>