食環境から考えるサステナビリティの意義①【スポーツ栄養の果たす役割 #07】

昨今、サステナビリティ(Sustainability)という聞きなれない言葉をよく耳にすることはありませんか? サステナビリティとは、「持続可能性」という意味で、将来にわたって、私たちの社会と地球環境を保ち続けていこうとする取り組みです。

例えば、CO2の排出量削減や再生可能エネルギーの利用促進、水質保全など、環境に配慮したさまざまな持続可能な取り組みが行われていることは、皆さんもご存じの通りだと思います。

そして現在では、環境面だけではなく経済活動や衣食住、さらにはスポーツの分野においても持続可能であることが世界規模で求められるようになってきているのです。

2015年の国連サミットにおいて、すべての加盟国が合意した「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の中で掲げられた、SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)は、「誰一人取り残さない(leave no one behind)」持続可能でよりよい社会の実現を目指す世界共通の目標であり、2030 年を達成年限とし、17のゴールと169のターゲットから構成されています。

17のゴールは、①貧困や飢餓、教育など未だに解決を見ない社会面の開発アジェンダ、②エネルギーや資源の有効活用、働き方の改善、不平等の解消などすべての国が持続可能な形で経済成長を目指す経済アジェンダ、そして、③地球環境や気候変動など地球規模で取り組むべき環境アジェンダといった世界が直面する課題を網羅的に示しています。SDGsは、これら社会、経済、環境の3側面から捉えることのできる17のゴールを、統合的に解決しながら持続可能なよりよい未来を築くことを目標としています。

とはいえ、これらの目標は、各国政府による取り組みだけでは達成が困難。企業や地方自治体、アカデミアや市民社会、そして一人ひとりに至るまで、すべてのひとの行動が求められている点がSDGsの大きな特徴でもあります。まさにSDGs達成のカギは、一人ひとりの行動に委ねられているというわけです(外務省:『持続可能な開発目標 (SDGs)と日本の取組』より)。

近年では、東京オリンピック・パラリンピック開催に当たり、環境保全や人権問題などに貢献することが望まれ、2012年のロンドン大会から、このサステナビリティがソフトレガシーとして提言されるようになりました。

来年に延期された東京2020大会ですが、そこでは一日4万食を超える食事が提供される予定です。その食材については「持続可能性に配慮した調達基準」として明文化され、気候変動への対応や資源管理、自然共生都市の実現、人権や労働といった多様性などに十分に配慮した食材や国産農水産物が優先されることになっています。

このような取り組みは、世界中から集まるトップアスリートたちの健康や教育のためにも大変重要であることはいうまでもありません。スポーツ栄養を通じた食環境におけるサステナビリティの意義や具体例については、次回に譲りたいと思います。

<次回に続く>


まつもと・めぐみ

北海道札幌市生まれ。2004年北海道大学大学院農学研究科応用生命科学博士課程後期修了。日本大学体育学部体育学科教授。管理栄養士。日本スポーツ協会公認スポーツ栄養士。

大学では、陸上競技、柔道、トライアスロン、スキージャンプ選手などの栄養サポートに携わる。スポーツ貧血の改善・予防、試合時のコンディショニング・リカバリーなど幅広い研究をするとともに、ソチ・オリンピックではマルチサポート・ハウス ミール担当など多岐にわたり活動。日本スポーツ栄養学会理事。

サーフィン競技における取り組み②【連載:スポーツ栄養の果たす役割 #06】

今回は、2019年に行われた世界ジュニアサーフィン選手権(米国・カリフォルニア)に帯同したときのお話をしたいと思います。

サーフィン選手にとって、海外での大会期間中の食事といえば、タコスとかピザ、ハンバーガーなどのファーストフードばかりであったことは前回述べた通りです。少ないサポートスタッフの中で、食料を確保することは大変で、とにかく「手っ取り早く手に入るもの」で済ませてしまっているということでした。スポーツニュートリショニストが取り組むジュニア選手の食環境整備として、これほどやりがいのある競技はないと感じたものです(笑)。

とはいえ、私たちがやるべきことに変わりはありません。日本の食事スタイル(3食を規則正しく)を遠征先においても踏襲してもらい、戦いの場であるビーチにおいては、ファーストフードではなく、おにぎりやサンドイッチ、あるいはバナナなど栄養に配慮した安全な補食の提供や水分補給に徹しただけです。

ビーチでは潤沢に食べ物が手に入るわけではありません。それこそ、ファーストフードにしか頼らざるを得ない環境でもあります。だからといって、スポーツニュートリショニストとのかかわりがない環境下においては、選手やコーチ陣に補食を準備もするということは大変な苦労だったと思いますし、ジュニア世代の選手に対して、自身で準備することまで求めるのはハードルが高すぎるともいえるでしょう。

ましてや、たとえ準備していたとしても砂浜には強い陽射しが容赦なく照り続けるため、食べ物も傷みやすい。したがって、衛生管理にも十分に配慮する必要があります。であれば、とりあえずタコスやピザで急場をしのぐという発想は頷けないわけでもありません。

そこで、私が取り組んだことは、食べ物、飲み物をクーラーボックスに入れ、温度管理を徹底し、その場、その場で選手のヒートの時間や体調に合わせて必要なものを取り出し、「今、このタイミングで!」と言って提供していくということでした。おそらくサーフィン界においては、ある意味、画期的な試みではなかったかと思います。

一方で、こんな後日談もあります。あるAという選手のマネジメント会社の方が「今回、松本先生が帯同してくれて一番印象に残ったことは何か?」と、A選手に尋ねたそうです。すると、「ヒートから上がってきたら、バナナとかおにぎりとかドリンクをくれた」と(笑)。

一般的な大人のイメージとしては、ニュートリショニストが、「バランス良くこういうものを食べなさい」、「こういうときにはこういう食事を心がけるべき」などといった模範的な栄養教育や最新のスポーツ栄養学についての講義をするのだと思っている。すなわち、理論的なことを選手に教育するために私が帯同していて、選手には、知識を学んでくることを期待されていたのでしょう。だから、子どもたちの答えには拍子抜けされていたようでした(笑)。でも、選手の言葉は言葉足らずですが、事実です。

この連載を第1回から読んでいただいたいる方々にはすでにご理解いただけていると思いますが、実はそれこそが私が自身の仕事として誇りをもって、最も広めていきたいと思っていたことです。なぜなら、いくら言葉で理解を求めても、実践が伴わなければ意味がなく、体感しなければ次の行動には移しにくいものです。

A選手はこのとき、ヒートの後には次に備えて、リカバリーをしっかりするために、補食をすぐに摂ることでパフォーマンスに影響が出るということを体感しました。そして、このことが心に残り、次からの試合では私が帯同しなくても、補食を用意しようと思ってくれるでしょう。スポーツ栄養は、実践力こそがものをいう世界なのです。

そういう意味において、サーフィン競技に「スポーツ栄養サポートとはこういうものである」ということを知ってもらい、選手の実践力をゼロから育んでいくうえでは、非常にフラットで肯定的な環境だったと思っています。これまでの慣習に左右されない高い順応力もあった。コーチ陣もスタッフも、私たちの役割にはとても理解があり、まさに最適な環境で仕事ができたといえるでしょう。

もしかするとサーフィン界こそ、スポーツニュートリショニストを最も活用してくれている、先進的な競技と自信をもっていえる日も、そう遠くないのではないかと思っています。

<次回に続く>


まつもと・めぐみ

北海道札幌市生まれ。2004年北海道大学大学院農学研究科応用生命科学博士課程後期修了。日本大学体育学部体育学科教授。管理栄養士。日本スポーツ協会公認スポーツ栄養士。

大学では、陸上競技、柔道、トライアスロン、スキージャンプ選手などの栄養サポートに携わる。スポーツ貧血の改善・予防、試合時のコンディショニング・リカバリーなど幅広い研究をするとともに、ソチ・オリンピックではマルチサポート・ハウス ミール担当など多岐にわたり活動。日本スポーツ栄養学会理事。

サーフィン競技における取り組み①【連載:スポーツ栄養の果たす役割 #05】

私が現在、サポートしている競技にサーフィンがあります。実は私、競泳選手を引退してからは長年サーフィンに取り組んでおり、そういう意味では、この競技には特に思い入れがあるといっても過言ではないかもしれません(笑)。

2018年に、一般社団法人日本サーフィン連盟から栄養サポートと世界ジュニア選手権への帯同依頼があったときには、自分自身になじみのある競技のサポートに関われるということとよく知った現場で食環境整備ができるという意味で、まさに念願がかなったという思いでした。

栄養サポートは、主に13~18歳くらいまでのジュニア年代を対象に実施しています。彼ら、彼女たちが取り組んでいるショートボードは2020年東京オリンピックで新たに採用された競技であり、2018年に行われた世界ジュニアサーフィン選手権では日本が団体で優勝するなど、若い世代の成長が大いに期待されている種目として注目されています。

サポートに携わってまず感じたのは、サーフィンという競技と食事をはじめとした体調管理体制がうまくかみ合っていないことでした。その理由を考えてみると、1つ目が、例えば陸上や柔道などのように、学校スポーツとして管理されておらず、たとえ10歳代であっても、すでにプロとして世界の大舞台で活躍している選手たちであるということ。2つ目が、スノーボードなどと同様、ファッション性の高いエクストリームスポーツであるという特性にも起因しているからではないかということ。すなわち、そこには誰にも干渉されない“自由”な気風が漂っており、食生活においてもまたしかりだった、というわけです。

サーフィンの場合、大きな大会になると、ビーチの周りで1~2週間過ごし、連日のヒート(試合の組み合わせのこと)に臨むという戦いが繰り広げられます。各ヒートは最大4名で競い合い、上位2名が次のラウンドに進み、下位2名はリパチャージ(敗者復活戦)に進むことになる。

さらにファイナルでは、本戦の上位2名とリパチャージの上位2名が戦うことになり、優勝するためには最低でも7ヒートを勝ち抜く必要があります。また、1ヒートは原則15~20分で実施され、選手は競技中にパドリングとライディングを繰り返す全力間欠運動が続くため、筋持久力や強い心肺機能、筋パワーが必要となる競技なのです。

そのため、試合期間中の選手の食事内容としては、持久系競技に適した高糖質食の摂取が望まれるわけですが、その間、選手たちは何を食べているかといえば、タコスとかピザなどのファーストフードばかり(笑)。

でも、だからといって、彼ら、彼女たちを責めるわけにはいきません。なにしろ、ビーチカルチャーの周りにいるわけですから、それらの食事こそが彼ら、彼女たちにとっては手っ取り早く手に入る食事の典型だからです。

あるいは、たとえお腹が空いていてもビーチ周辺には何も食べるものがなかったり、飲むものもなかったり…。一方で、緊張感が高まってくると、食べるのも飲むのも忘れてしまったり…。

結局、飲まず、食わずでヒートに臨むことも日常茶飯事だったようです。ビーチでは潤沢に食べ物が手に入るわけでもありません。したがって、もともとそういうことには無頓着であり、だからこそ何の違和感も覚えなかったのでしょう。結局、「試合における食事とは不便でもがまんするものだ」と思い込んでいる選手もいたのです。

私は、かつて競泳選手だったころ、身近に私が抱えている食生活の悩みに相談に乗ってくれる人や体調やトレーニングに合わせた食事を整えてくれる専門職のサポートスタッフがいてくれたら、どんなにいいだろうと考えていたことはすでに述べた通りです。

一方、彼ら、彼女たちのケースは環境の整った都市型の競技よりも栄養サポートの重要性はもっと高いと現場を知ってさらに感じました。また、ジュニア選手の健全な体をつくっていくためには、しっかりした体調管理体制を整え、スポーツニュートリショニストが現場の最前線で指導することの意義は非常に高く、どの競技にも共通している事柄ではないかと思いますが、サーフィンのような独特のカルチャーの上にある競技のジュニアの選手の育成では、さらにその意義は高いのではないかと考えています。

もちろん、座学において栄養教育を実施することも重要ですが、現場において日々のご飯を健全に食べるということに勝る教育はない。同時に、健全な食生活には、自己管理能力はもちろん、スポーツマンシップにも通じる数多くのことが学べるのではないかと思っています。

<次回へ続く>


まつもと・めぐみ

北海道札幌市生まれ。2004年北海道大学大学院農学研究科応用生命科学博士課程後期修了。日本大学体育学部体育学科教授。管理栄養士。日本スポーツ協会公認スポーツ栄養士。

大学では、陸上競技、柔道、トライアスロン、スキージャンプ選手などの栄養サポートに携わる。スポーツ貧血の改善・予防、試合時のコンディショニング・リカバリーなど幅広い研究をするとともに、ソチ・オリンピックではマルチサポート・ハウス ミール担当など多岐にわたり活動。日本スポーツ栄養学会理事。

名門ラグビー部を支えるスポーツニュートリショニスト【ニュートリションな人々 #03 ~藤井瑞恵さん 後編~】 

ニュートリション関係者の人物背景や取り組みについて紹介するオープニング企画。第3回目は、帝京大学助教(スポーツ医科学センター所属)で、日本スポーツ協会公認スポーツ栄養士の藤井瑞恵さんの半生を振り返る(全2回)。

藤井さんは、名門ラグビー部に帯同し、選手たちのコンディション作り、パフォーマンスアップのために、スポーツ現場で日々活動している。

名門ラグビー部に帯同、「選手の観察」が目標達成の肝

ラグビーはコンタクトスポーツなので、まずケガをしないための体づくりが大切になってきます。その上で、フォワードならパワー負けしないようにもっと増量しようとか、バックスなら瞬発力を落とさずに筋力アップしようとか、ストレングスコーチなどのスタッフと情報共有しながら選手のパフォーマンスアップを目指します。

例えば、増量を目標にする選手がいたとして、食事の量、内容、サプリメントの活用とトレーニングで強化を図るのですが、食の面で「脂肪がつき過ぎてしまう」、「増量しにくい(体質)」、「食が細い」など、目標達成に向けた課題も見つかってきます。

選手たちの食の課題を見出すためには「よく観察すること」が重要です。私はチームスタッフとして練習や合宿に帯同しているため、練習時はもちろん、食堂へ行って選手たちの食事の仕方や量、顔色をうかがいつつ、会話をしながら選手たちの状態を把握していきます。

毎日バランスのいい食事を摂るというのは前提としてあるものの、やはり個人で体質や習慣が異なってきますので、すべてが思い通りに行くとは限りません。身体強化のための食のアプローチはもちろん大事なのですが、選手たちの体調、体質を把握して良いコンディションを作るために、食事や補食の工夫を施したり、アドバイスをしたりするのが私たちの仕事になってきます。

現在、ラグビー部には約150名の部員が在籍しており、2人(藤井さん、堀内麻央さん)で栄養サポートをしています。1年間でみると、春先はチーム全体へのアプローチを中心にしています。

普段の生活では「残食はしない」「規定量の食事を摂る」といった、チームで決めたことを全員が実行していくように、指導・教育していきます。練習時には、リカバリーのためのプロテイン摂取を徹底しています。

ラグビーはエネルギー消費が激しいスポーツなので、練習の合間に小さいおにぎりやバナナなどの補食も欠かせません(練習メニューによって異なる)。エルゴジェニックエイド※3も有効なのですが、まずは、食事から体づくりやコンディションづくりを考えられるように、アドバイスをしています。

※3 パフォーマンスアップを目的としたサプリメント。クレアチン、HMB、β-アラニンなどがあるが、各国によって定義はさまざま。

ラグビーシーズンが深まってくる秋までに、こうしたチーム全体の基本方針に沿って、食のアプローチはしていきますが、秋以降はトップチームの選手たちへのサポートに重点を置いていきます。

オフの日の食事管理から、試合後のリカバリーに何を摂っているか、試合で消費した体力(体重)がどれだけ戻っているか、水分補給はきちんとできているかなど、一人一人の細かいコンディションについて数字を用いながら細かくチェックしていきます。コンディションで課題が見つかった選手に対しては、個別に話をしながら次の試合をベストな状態で臨めるように改善を図っていきます。

本当は選手一人一人をしっかり見ていければいいのですが、物理的に難しい部分があります。ですから、チーム全体で決めた最低限のルールを、意志を持って自主的に考えて行動してもらえるように、私たちは最初に指導していきます。

スポーツ現場では「選手を強くする」、「チームが強くなる」ことが目指すところです。栄養の部分は強化のための一過程で、選手たちには「栄養も大事だけど、トレーニングと組み合わせてこそ効果が出てくる」といったことをよく話します。

自身の強化やコンディショニングと栄養の関わりがわかっている選手はどんどん実践していきますが、当然そうでない選手もいて栄養だけの話をすると理解が難しい面もあります。

選手たちの「こうなりたい」という理想像を作り上げるために、指導者や各分野のスタッフ、スポーツニュートリショニストが一緒になって考え、結果に結びつけていく。こういった姿勢がラグビー部には浸透していると思いますので、とてもいい環境で仕事をさせていただいています。

早いものでラグビー部に来て4年になり、培った現場での指導・サポート経験を次の世代に伝達していく立場にもなりつつあります。でも、やはり選手たちが日々成長していく姿を見ていくのはとてもやりがいがあるので、これからもスポーツ現場で栄養の大切さを伝えていければと思っています。

<完>

名門ラグビー部を支えるスポーツニュートリショニスト【ニュートリションな人々 #03 ~藤井瑞恵さん 前編~】 

ニュートリション関係者の人物背景や取り組みについて紹介するオープニング企画。第3回目は、帝京大学助教(スポーツ医科学センター所属)で、日本スポーツ栄養協会公認スポーツ栄養士の藤井瑞恵さんの半生を振り返る(全2回)。

トレーナー志望からスポーツニュートリショニストに

小さいころから体を動かすのが好きで、いろいろなスポーツをしてきました。中学時代はバレーボール部、高校時代はテニス部に所属し、青春時代を過ごしました。残念ながらプロやトップレベルを目指すほどの実力ではなかったため、プレーヤーとしては一区切りして、選手をサポートする側に回りたい、スポーツの仕事をしたいと思い、トレーナーの道を志すことにしました。高校卒業後はスポーツが盛んな順天堂大学に進学しました。

ところが、進学した順天堂大学はメディカル分野で有名でしたが、トレーナーを養成する環境はまだ整っていませんでした。大学でスポーツ関連の講義を受けて知識を蓄えていたものの、トレーナーになるために実際にどのように生かせばいいかとか、どういう手順を踏めばいいか、全くわかりませんでした。部活に所属しながら機会を待つといった感じでした。

入部したスキー部では、夏場のオフシーズンに体力づくりをしなくてはいけないんですが、ローラーブレードや夏スキーなど遊ぶことに夢中でした(笑)。順天堂大学では1年生は全寮制で、入寮当時は毎日パーティー(笑)。生活が乱れて体重が急増してしまいました。その後、極端な食事制限をして減量しましたが、リバウンドをしてしまい、うまくいきませんでした。

「このままではマズい」と危機感に迫られて生活を見直した時、「極端な食事制限は続かないし、逆効果、食べながら有酸素運動を増やして少しずつやせるにしたらうまくいくかもしれない」と思って実践してみたんです。すると、効果てきめん、リバウンドせずに、減量もうまくいくようになりました。体を変えるには、食と運動の両方で実践することの大切さを知りました。

それから、食や栄養にも興味を持つようになり、視点も変わって「スポーツや運動と食は関連性がある」と思うようになりました。順天堂大学のスポーツ部活動生やスキー部の人たちはトレーニングを一生懸命やるんですが、食に気を使うことがほとんどなく、食を意識すればもっと良くなるんじゃないかなと考えていました。

ちょうどそのころ、スポーツ現場で栄養指導・サポートをしている管理栄養士の先生の話を聞く機会があり、「食から選手をサポートして行きたい!」と思い、進むべき道を見つけました。このころは少し道に迷っていたので、話を聞くことができて本当に良かったと思います。

順天堂大学を卒業してからはスポーツニュートリショニスト(栄養士)を目指し、管理栄養士の資格を取得するため、スポーツクラブで働きながら専門学校に通いました。このころ、いろいろな方と縁ができて今につながっているので貴重な時間でしたね。

管理栄養士の資格を取った直後は、スポーツ栄養学の勉強会に参加し、東海大学で栄養サポートの現場経験を積ませていただきました。当時サポートしていた女子ラクロス部は月2~3回程度の現場訪問でしたが、ここで経験したことで目標への扉がほんの少し開いた気がしました。

その後、勉強会で知り合った方のご縁でトレーニングと栄養指導ができる人材を求めていた青山学院大学のトレーニング施設で働くことになり、学生、教職員向けに健康のための食事指導、簡単なトレーニング(運動)指導を担当することになりました。

トレーニングと栄養の指導ができる専門家は当時ほとんどいなくて、両方を知っていた私に白羽の矢が立ったわけですが、学生時代にトレーニングの勉強をしたことが無駄になりませんでしたね。

大学からは「チームも見てほしい」という要望もあり、バスケットボール、バレーボール部など部活動の栄養指導をするようになりました。選手の体組成測定の際に同席して体の変動を見たり、トレーナーと連携して選手の体づくりのためのアドバイスをしたりしていました。日常業務をこなしながら、日本スポーツ協会公認スポーツ栄養士の資格を取得したのはちょうどこのころです。

そして、2016年からは帝京大学に移り、スポーツ医科学センター※1・フィジカルチームの一員としてラグビー部※2を専門的に見ています。やはり、チームに帯同して毎日のように選手と顔を合わせ、接するのは楽しいですし、やりがいもあります。

現在は帝京大学に在籍する栄養チーム(計7名)のリーダーを務めていて、現場の意見を聞いて改善策を見出したり、各チームのリーダーが集まるセンターの運営会議に出席してセンターの方針を決めたり、少し責任を負う役割も増えてきました。8割が現場、2割がマネジメントといった割合で毎日を過ごしています。

※1 センター長を頂点に、フィジカル(トレーナー、栄養士)、メディカル、サイエンス、テクノロジーの4チームで構成され、各専門家が科学的にアスリートをサポートする体制が整っている。

※2 全国大学ラグビーフットボール選手権大会で前人未到の9連覇(2009~2017年)を達成した大学ラグビー界の雄。昨年のW杯では日本代表31人中7人が帝京大学ラグビー部出身。

<後編に続く>