現場で役立つスポーツ栄養学の知識③【スポーツ栄養の果たす役割 #12】

日のトータルで栄養バランスを考える

例えば、フィットネスインストラクターの方々のような不規則な生活を強いられながら、かつ一定以上の運動量を求められる生活環境に対応するためにはどうすればいいのでしょうか?

私たち公認スポーツ栄養士がスポーツ選手のサポートを実施する場合、大会運営や日程、あるいは試合の進行状況、天候や開催時期などに応じたサポート活動を行っていきますが、その方法がそういった方々の食事対策に通じるヒントにもなると考えます。

例えば、1~2時間おきに試合があったりするケース。これをレッスンに置き換えてみましょう。仮に、次のレッスンまで約2時間空くのであれば、固形物であれば問題ないので、小さなおにぎりやバナナを食べたりする。あるいは、最近ではさまざまなスポーツフードやゼリー飲料などのラインナップも豊富で、なおかつその内容も糖質だけでなく、たんぱく質や脂質が含まれている商品など、バリエーションには事欠きません。

したがって、それぞれの状況に応じて、時間のないときには食事の代わりにするなどし、朝もしくは夜、時間のあるときにたんぱく質や野菜をしっかり食べるという方法でもよいでしょう。つまり、1回の食事で無理してバランスをとろうとは思わなくてもよいということ。1日トータルで考えてみるのです。すると、少し肩の荷が下りた気になりませんか?

昼食に時間がとれないとき、あるいはレッスンの合間などには糖質を中心に。糖質は、エネルギーとして必要である一方、消化・吸収には負担がかかりにくい。そこで、隙間時間におにぎりやカステラなど、油脂分の少ないものをちょっとずつ食べてエネルギーを補給しておくのです。

そして、レッスン終了後やトレーニング終了後には成長ホルモンの分泌が高くなるので、たんぱく質と糖質を速やかに摂る。同時に摂ることで、筋タンパクの合成を高めることが期待できます。その際には、プロテインに限らなくても、魚肉ソーセージや今流行りのサラダチキンでもいいし、牛乳・乳製品でもよいでしょう。そして、家に帰ったら、サラダと果物を食べて就寝するという具合です。

たんぱく質は消化・吸収に時間がかかるので、夜遅く食べると、翌日まで胃腸の疲れがとれないこともあります。また、レッスンの合間に摂ると胃腸に血が集まって身体が重く感じるようになり、その結果、レッスンが辛くなってしまうことがあるかもしれません。したがって、たんぱく質は全プログラム終了後に摂るよう心がけましょう。

以上をまとめてみると、糖質と水分はこまめに摂り続け、たんぱく質はレッスン終了後速やかに。そして、野菜と果物は朝、もしくは夜などゆっくり食べられるときにしっかりと食べて寝れば、胃腸に疲れを残さずに、1日バランスよく食べられたということになります。

日間で帳尻合わせ

1日で帳尻を合わせるのが難しい場合には、もう少し余裕をもたせてもいいかもしれません。特に油脂系の栄養素(脂溶性ビタミン:ビタミンA、D、E、Kなど)であれば、3日間で帳尻を合わせてもよいと思います。

例えば、脂質に溶けやすい緑の濃い緑黄色野菜であれば、身体に蓄積する時間も長い。したがって、「今日の食事には緑黄色野菜が入っていなかったので、明日は必ず食べよう」でもいいのです。

ただし、果物や色の薄いキャベツ、レタスなどの野菜に入っている食物繊維やビタミンC(水溶性ビタミン)は蓄積できないので、できるだけ毎日食べるよう心がけたいものです。

このように、3日間で帳尻を合わせるように心がけ、さらにトータル1週間で考えたとき、今週はうまく食べることができたという、少し長い目で見た捉え方であれば、たとえ思い通りにいかなかった日が1日、2日あっても、ストレスがかかることなく実践できるのではないでしょうか。ただし、それ以上で合わせようとするのはNG。なぜなら、ヒトの身体は約2週間バランスの悪い食事が続いてしまうと、代謝が変化して太ったり、痩せたりしてしまうからです。

言い換えれば、悪い習慣は1週間のうちに修正したほうがいいということであり、さらにいえば、身体を絞っていこうと思ったら、2週間以上続けなければ効果は期待できず、すぐにリバウンドしてしまうというわけです。

逆に、1週間程度で痩せたといっているのは、ぬか喜びに過ぎず、決して代謝が変わってきて痩せているわけではなく、実はほとんど脱水によるものだということ。要は、単にスポンジをキュッと絞ったら、水分が溢れ出たというだけの状態なのです。

また、バランスを考慮するという意味では、PFCバランスも重要です。一般的な比率としては、たんぱく質(P)約20%以下、脂質(F)20~30%、炭水化物(C)50~70%。ちなみに、現在一般の人たちが行っている糖質制限の場合、その多くがこのバランスを崩すことから入っています。

しかしながら、公認スポーツ栄養士がスポーツ選手と対峙しながら行う栄養指導では、この考え方は否。したがって、減量を主体とした体重コントロールを行う場合には、PFCバランスは保ったまま、カロリー全体をスケールダウンさせていくことがポイントとなることも付け加えておきます。

<次回に続く>

現場で役立つスポーツ栄養学の知識②【スポーツ栄養の果たす役割 #11】

「野菜は必須!」 という基本

食事・栄養の基礎・基本は何かと、改めて問われれば――。またそれか、と思われるかもしれませんが、やはり『野菜を中心とした食事をバランスよく!』。これに尽きるといえるでしょう。

なぜ、野菜が中心かといえば、食物繊維やビタミン・ミネラルを豊富に含んでおり、かぜやケガの予防はもちろん、メタボリックシンドロームの予防、あるいは貧血や熱中症の予防にもなるからです。

また、ビタミンCを多く含む食品は、体内に蓄積できないので、日々の摂取を欠かすことはできないという理由もあります。つまり、ヒトの身体が健やかに機能するという意味では、「野菜を中心に!」というのはすべての人に共通した大前提になるというわけです。

ちなみに、USOC(United States Olympic Committee=アメリカオリンピック委員会)のアスリートレストラン(https://www.teamusa.org/nutrition)においても、通常のトレーニング時においては野菜をワンディッシュのうち半分とるようにと指導されています(トレーニングの多い日と試合の日においてもお皿の4分の1程度)。

つまり、外国人選手は肉ばかり食べているから強いなんていうのは、もはや時代遅れのナンセンス以外のなにものでもない。こういったことも正しい情報として認識しておきたいものです。

したがって、指導者や運動実践者の方々であればなおさらのこと、まずは『野菜は必須!』というルールを基本として、そのうえで目的や生活(仕事)環境に応じてさまざまなバリエーションを活用したり、あるいはアレンジを加えるという、まずは健康第一の本来の考え方に切り替えるべきではないかと思います。

飛び道具”を活用するタイミング

例えば、指導者の中でも一日に何本もレッスンを抱えるフィットネスインストラクターの方々の場合、その運動消費量はアスリートに勝るとも劣らないといえるでしょう。ましてや、どの時間帯であっても質の高いレッスンを提供するためには、欠食なく規則正しく食べることが絶対条件となります。ところが、言うは易く行うは難し。おそらく規則正しくとは真逆の不規則な仕事環境を強いられることによって、その条件は十分に満たされていないのが現状ではないでしょうか。

私が教えていた卒業生の中には、インストラクターとなって活躍している教え子も少なくないのですが、その教え子たちが社会人になってから一様に痩せていくのです。これは、明らかに運動による消費エネルギーに見合った摂取エネルギーがとれていない証しといえるでしょう。レッスン過多になると、疲労の影響で食欲もなくなり、次第に痩せていくという悪循環に陥ってしまっているのです。

アメリカスポーツ医学会では、こういった状況をアスリート特有の問題であるlow energy availability(利用可能エネルギー不足)と定義し、警鐘を鳴らしています。こうしたエネルギー不足は、女性の場合、月経周期異常や生涯にわたる骨粗しょう症のリスクを高める可能性を秘めており、女性アスリートの三主徴(Female Athlete Treard)として注意喚起されています。

こういうとき、「それでも基本通りに食べなさい」と正論を振りかざしても、問題はなかなか解決するものではありません。むしろ、それはさらなるストレスとなってしまうものです。したがって、こういったケースでは、いや、こういうケースだからこそ、前回述べた‟飛び道具”を緊急避難的に活用すべきではないかと考えます。

例えば、私は、そんな彼女たちに対して「1日1つ、バニラアイスを食べてから寝るように」といったアドバイスをすることがあります。なぜなら、それくらいしなければエネルギーが全く足りていないからです。心身ともに疲弊しているときには、胃腸も弱ってしまっています。いわゆる、これはたくさん食べるよりも高カロリーの食品を少量食べるという考え方です。というのも、食べたものを消化するには、それだけでもエネルギーが必要だから。つまり、疲弊しているときは、たくさん食べなさいといっても、それを消化するエネルギーさえないときもあるというわけで、その究極の状態が点滴といえるでしょう。

ただし、これはあくまでもケガをしたときの‟応急処置”と同じ。したがって、現在の自分に最も適した食べ方を模索し、食事・栄養面からもコンディションを整える術をいち早く身につけることが重要であることはいうまでもありません。

<次回へ続く>

現場で役立つスポーツ栄養学の知識①【スポーツ栄養の果たす役割 #10】

栄養の飛び道具”には要注意!

昨今、TVや雑誌などのマスメディアで健康や美容、あるいはダイエットなどに関する情報が、いわゆる最新メソッドとしてキャッチーなコピーで紹介されると、一躍脚光を浴び、これこそが唯一無二といったほどにもてはやされる傾向があります。そういった場面に出会うたびに感じるのは、「おそらく間違ってはいないのだろうけれども、少々エキセントリックに過ぎるのではないか」ということです。

一方で、スポーツやフィットネスに携わる指導者の方々が、クライアントである運動実践者の方々から栄養アドバイスを求められるという話も時々見聞きします。たとえ、公認スポーツ栄養士等の資格はもっていなくても、身体づくりのスペシャリストであるという意味では、そうした要望にも応えるのが指導者の役割といえるでしょう。

そしておそらく、そういった場合には、それぞれの学びや経験、あるいは入手した情報などから回答を導き出しているのだと思いますが、時々「運動の指導を受けている先生からこういう栄養のアドバイスを受けたのですが、本当にこの方法でいいのでしょうか?」と、念のためにと、私たちスポーツ栄養学の専門家に確認されることがあります。そこで、よくよくその方法について尋ねてみると、実は今、流行りの〇〇メソッドだったということも少なくないのです。

特に最近では、例えば増量や筋肥大を求めるなかで、たんぱく質の摂取量においてちょっと過剰ではないかと思う方法だったり、あるいは糖質制限を間違った方向性で活用してみたりというケースが少なくないのではないかと感じています。そして、それらの発信元が運動指導者の方々からだったりすることが実際にあったりするのです。

確かに、それらは1つの‟飛び道具”や‟奇策”として活用する分においては間違っていない部分もあるでしょう。しかしながら、それは何よりもまず、栄養の基本がしっかり身についているうえで、さらにプラスαとしてというのであれば、通用することもあると思いますが、飛び道具はやはり飛び道具でしかないもの。したがって、もしそれがベースとなってしまうと、かえってコンディションを崩したり、あるいはケガに結びつく要因になったりするのではないかという心配があるのです。

食事はトレーニング不要 !?

一方、スポーツという世界においては、日本記録や世界記録がアスリートたちの努力によって今なお更新され続けています。それを可能にしているのは、むしろ最新メソッドを積極的に取り入れることによって、既存の理論を打ち破っていこうとするチャレンジがあるからこそでしょう。スポーツの世界では特にそういった姿勢が顕著であるといえるかもしれません。しかし、それを可能にさせるのは、彼ら・彼女たちの場合、やはり心技体において基礎・基本がしっかりと確立されているからこそ、なのです。

ところが、トレーニングにおいては、そういった基礎・基本の重要性については誰もが承知しているのですが、こと食事や栄養に関する取り組みには、前述のようにいきなり極端から極端に流れてしまう傾向が強く、本来の基本が抜け落ちてしまっているケースが少なくないのではないかという気がしています。そういう意味では、一般の人が突然、トップアスリートが実践しているトレーニングを始めているような印象を受けるのです。

例えば、体操のトップアスリートのウルトラHとかI難度の技などは、とても人間業ではないということは誰もが理解しています。それは一朝一夕にできるほど生易しいものではありません。不断の努力があったればこその高い技術である、と。

ところが、そういった選手が取り入れている食事法というのは情報を入手して真似しようと思えば、誰もがその日のうちに実践できてしまうもの。すなわち、食事というのはそれだけハードルが低いと思われがちということでしょう。

しかしながら、公認スポーツ栄養士の立場からいえば、トップアスリートというのは身体も鍛えているけれども、実は消化・吸収など食べ方も鍛えられており、トレーニングと同様、基礎・基本ができているからこそのプラスαであることを理解しておかねければなりません(そういう意味では、胃腸が強いこともトップアスリートたる条件の1つといえるでしょう)

例えば、身体を大きくする、いわゆる増量のために頻回食を実践しているというトップアスリートの事例が紹介されれば、なるほど1日に5~6回食べればいいのか、と納得し感心する。これなら自分も簡単にできそうだ、と。人によって、胃が小さい人の場合には頻回食を勧めるケースもありますが、本来は朝昼夕、それぞれ1回の食事で必要十分量しっかりと食べることができるのであれば、食後、胃腸も休まるのでむしろそのほうがいいのです。

<次回へ続く>

食環境から考えるサステナビリティの意義➁【スポーツ栄養の果たす役割 #08】

サステナビリティ(Sustainability)とは、「持続可能性」という意味で、将来にわたって、私たちの社会と地球環境を保ち続けていこうとする取り組みである——。前回はその全体像について詳しく紹介しました。

では、スポーツ栄養を通じた食環境は、サステナビリティにどのように貢献しているのか、あるいは貢献できるのでしょうか。今回は、その現状と今後の可能性について考えてみたいと思います。

例えば、オリンピックや世界選手権で活躍するトップアスリートたちは、日々のトレーニングや筋量の維持のため、動物性たんぱく質を日常的にたくさん摂取しています。ところが、あえて指摘されなければまったく想像も及ばないことですが、その一方で肉や乳製品などは生産過程において温室効果ガスを大量に排出するという負の財産も生み出してしまっているのです。

温室効果ガスはご存じの通り、人間活動によって増加したもので、二酸化炭素、メタン、一酸化窒素、フロンガスがあります。この中で、二酸化炭素は地球温暖化に及ぼす影響がもっとも大きな化石燃料由来の温室効果ガスです(国土交通省 気象庁のHP「温室効果ガスの種類」より)。

水力や太陽エネルギーなどのいわゆる再生可能型エネルギーとは全く異なる化石燃料を消費して、世界中を飛び回るアスリートたちにとって、だからといって罪はありません。とはいえ、ある意味、間接的ではあるけれども、矛盾を強いられる立場に身を置いているのもまた事実。しかし、スポーツ栄養の観点からいえば、この矛盾を解決することこそが、アスリートにとって持続可能な社会の実現への貢献を求められる大きな一助となるのではないかと考えるのです。

なぜなら、アスリートはフェアプレー、スポーツマンシップ、あるいは清廉性といった精神性を培いながら日々過酷なトレーニングに取り組んでいるという意味で、人々の模範となり、信頼するに足る人材だといえるからです。そういったアスリートたちが、サステナビリティの啓発活動に努めてくれることの効果は計り知れません。日本から世界に向けた説得力のある発信源になると間違いなく期待できるからです。

例えば、大豆やソバなどを工夫した日本の料理を食べてもらえば、温室効果ガスの排出量の少ない植物性たんぱく質の活用法を知ってもらうことになります。それによって、たんぱく質の過剰摂取による肝機能障害、あるいは腎機能障害を防ぐことになるし、ドーピングコントロール違反が問題となっているプロテインパウダーやサプリメントに頼らない食生活の教育にもなるでしょう。

東京オリンピック・パラリンピックでは、選手や関係者、さらに多くのスポーツファンに対して「食のおもてなし」が期待されています。日本には世界に誇る食文化があり、その伝統やおいしさばかりが注目されがちですが、実はダイニングの多様性にもあふれていることを忘れてはなりません。すなわち、日本におけるさまざまな食材の料理法や食文化の発信は、持続可能性というキーワードからも、世界のアスリートに向けても貴重な教育の機会となるのではないでしょうか。

このように、スポーツ栄養の果たす役割は、サステナビリティという観点から考えても、今後益々、重要になってくることは間違いないと考えています。

<次回に続く>


まつもと・めぐみ

北海道札幌市生まれ。2004年北海道大学大学院農学研究科応用生命科学博士課程後期修了。日本大学体育学部体育学科教授。管理栄養士。日本スポーツ協会公認スポーツ栄養士。

大学では、陸上競技、柔道、トライアスロン、スキージャンプ選手などの栄養サポートに携わる。スポーツ貧血の改善・予防、試合時のコンディショニング・リカバリーなど幅広い研究をするとともに、ソチ・オリンピックではマルチサポート・ハウス ミール担当など多岐にわたり活動。日本スポーツ栄養学会理事。

食環境から考えるサステナビリティの意義①【スポーツ栄養の果たす役割 #07】

昨今、サステナビリティ(Sustainability)という聞きなれない言葉をよく耳にすることはありませんか? サステナビリティとは、「持続可能性」という意味で、将来にわたって、私たちの社会と地球環境を保ち続けていこうとする取り組みです。

例えば、CO2の排出量削減や再生可能エネルギーの利用促進、水質保全など、環境に配慮したさまざまな持続可能な取り組みが行われていることは、皆さんもご存じの通りだと思います。

そして現在では、環境面だけではなく経済活動や衣食住、さらにはスポーツの分野においても持続可能であることが世界規模で求められるようになってきているのです。

2015年の国連サミットにおいて、すべての加盟国が合意した「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の中で掲げられた、SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)は、「誰一人取り残さない(leave no one behind)」持続可能でよりよい社会の実現を目指す世界共通の目標であり、2030 年を達成年限とし、17のゴールと169のターゲットから構成されています。

17のゴールは、①貧困や飢餓、教育など未だに解決を見ない社会面の開発アジェンダ、②エネルギーや資源の有効活用、働き方の改善、不平等の解消などすべての国が持続可能な形で経済成長を目指す経済アジェンダ、そして、③地球環境や気候変動など地球規模で取り組むべき環境アジェンダといった世界が直面する課題を網羅的に示しています。SDGsは、これら社会、経済、環境の3側面から捉えることのできる17のゴールを、統合的に解決しながら持続可能なよりよい未来を築くことを目標としています。

とはいえ、これらの目標は、各国政府による取り組みだけでは達成が困難。企業や地方自治体、アカデミアや市民社会、そして一人ひとりに至るまで、すべてのひとの行動が求められている点がSDGsの大きな特徴でもあります。まさにSDGs達成のカギは、一人ひとりの行動に委ねられているというわけです(外務省:『持続可能な開発目標 (SDGs)と日本の取組』より)。

近年では、東京オリンピック・パラリンピック開催に当たり、環境保全や人権問題などに貢献することが望まれ、2012年のロンドン大会から、このサステナビリティがソフトレガシーとして提言されるようになりました。

来年に延期された東京2020大会ですが、そこでは一日4万食を超える食事が提供される予定です。その食材については「持続可能性に配慮した調達基準」として明文化され、気候変動への対応や資源管理、自然共生都市の実現、人権や労働といった多様性などに十分に配慮した食材や国産農水産物が優先されることになっています。

このような取り組みは、世界中から集まるトップアスリートたちの健康や教育のためにも大変重要であることはいうまでもありません。スポーツ栄養を通じた食環境におけるサステナビリティの意義や具体例については、次回に譲りたいと思います。

<次回に続く>


まつもと・めぐみ

北海道札幌市生まれ。2004年北海道大学大学院農学研究科応用生命科学博士課程後期修了。日本大学体育学部体育学科教授。管理栄養士。日本スポーツ協会公認スポーツ栄養士。

大学では、陸上競技、柔道、トライアスロン、スキージャンプ選手などの栄養サポートに携わる。スポーツ貧血の改善・予防、試合時のコンディショニング・リカバリーなど幅広い研究をするとともに、ソチ・オリンピックではマルチサポート・ハウス ミール担当など多岐にわたり活動。日本スポーツ栄養学会理事。