スポーツを頑張る女子の健康上のリスク③ ~骨障害~【Z世代におくるスポーツ栄養講座 #11】

神戸女子大学・坂元美子先生による「Z世代におくるスポーツ栄養講座」。第11回は、成長期を迎える女子選手が抱える問題「女子選手の三主徴(Female Athlete Triad:FAT)」の一つ、「骨障害」がテーマ。

骨障害は、前回までの「利用可能エネルギー不足」、「月経障害」とは異なり、適切な栄養摂取での予防・改善が可能な一方、予防・対策を怠ると生涯にわたって影響を及ぼす可能性もある。

※Z世代とは、欧米で10~20歳を指す言葉として使われている。すぽとりでは「成長世代」と同義と捉えて使用する。

※記事と動画(図表解説あり)で少し内容が異なります。両方をご覧いただき、理解をより深めていただければ幸いです。

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「体脂肪」「栄養」が関連する疲労骨折

骨のスポーツ障害には大きく分けて「骨折」と「疲労骨折」の2つがあります。骨折はご存じの通り、サッカー、ラグビー、アメリカンフットボールなど主にコンタクトプレーの多い競技で起こりやすく、接触のはずみで骨に過度の圧力がかかってしまい、骨が折れることです。一方、疲労骨折は、FATに大きくかかわってくるとともに、Z世代の体の成長が著しいスポーツ選手に非常に多い障害といえます。

疲労骨折の原因はいくつかあり、一つは体の成長を促すための栄養、特に骨の成長に必要な栄養が摂れていないことが挙げられます。また、Z世代のスポーツ選手は、体づくりのためのトレーニング、技術向上のためのトレーニングをハードに行いますが、頻繁に使用する体の部位が“金属疲労”を起こして骨折してしまうケースも見受けられます。さらに、減量を余儀なくされる競技の選手は、過度な食事制限による栄養の不足から疲労骨折に至ってしまうこともあります。ここまでは男女ともに起こるケースといえるでしょう。

そして、女子選手特有の原因から疲労骨折をひき起こすケースは、減量のため必要以上に体脂肪を落としてしまうことです。階級制や審美系競技の選手は特に注意が必要です。

女子選手には月経が周期的に訪れますが、正常に周期的な月経を迎えるためには女性ホルモンがきちんと分泌されるかがカギになります。そのためには適切な量の体脂肪を維持している必要があるのですが、減量のためにホルモン分泌に使われる体脂肪までを落としてしまうと、女性ホルモンの総量は減りますし、骨の成長を促進する「エストロゲン」も不足することになります。結果的に骨量、骨密度が少ない状態になり、少しの衝撃でも骨が折れやすくなってしまいます。

あとは特殊な例ですが、アレルギー疾患を持っていて、治療のために副腎皮質ホルモンを服用している選手も疲労骨折が起きやすいリスクをもっています。副腎皮質ホルモンは、骨の成長を阻害する点もありますので、長期間、連続で服用している人は気をつけましょう。

関連記事:FAT ~月経障害編~

骨の成長は20歳まで。女子に必要なエストロゲン

ここで、骨の成長について説明しておきます。骨量は、誕生から20歳まで増え続けて最高値(ピーク・ボーン・マス)に達し、40歳代くらいまでその値を維持します。そして、50歳代あたりからホルモン分泌の低下に伴って男女とも減少に転じます。男性は、骨量の減少が緩やかなカーブを描く一方で、女性は閉経に伴う女性ホルモン(エストロゲン)の分泌低下によって、骨量の急激な減少が起こりやすくなるといわれています。

ここで、Z世代の女子選手が意識しなければならないことがあります。骨量をいかに獲得するかです。骨量が増加する成長期に栄養が不足するのは論外ですが、減量のために体脂肪を減らしすぎると、女性ホルモンの分泌が正常に行われず、エストロゲンも不足することになるため、骨量が増えていかないということになります。

そうなると、20歳以降最大骨量は低いまま中高年を迎えることになり、骨粗しょう症のリスクもグンと高くなります。骨量を増やせるのは20歳までで、それ以降は成長しません。十分な栄養の確保は骨の成長にもかかわってくるのです。

さらにいえば、Z世代の骨量の値は高齢者と同程度で、成長過程とはいえ骨が“もろい”状態ともいえます。栄養の不足はもちろん、トレーニングの過多も疲労骨折を誘発する原因ともなるので頭に入れておきましょう。

骨の強化に「CaMP」を意識しよう

疲労骨折(将来的な骨粗しょう症)の予防のために、骨をどのように強化するか。それは、「カルシウム(Ca)」を摂取することです。しかし、カルシウムは体への吸収が非常に低いことも知られています。ですから、食事の中でいかに効率良く摂取するかを考える必要があります。

カルシウムが多い食品として挙げられるのは、小魚、わかめ、昆布など「海藻類」、牛乳、ヨーグルトなど「乳製品」です。吸収率でいえば、小魚・海藻類が約20%、乳製品が約40%なので、体の成長が著しいZ世代のスポーツ選手が骨の強化のために摂りたいのは乳製品となります。

骨の材料になるのは、カルシウムだけではありません。「マグネシウム(Mg)」も必要になってきます。小魚・海藻類に加え、豆類がマグネシウムの含有量が高い食品です。小魚・海藻類はカルシウムの吸収という点では乳製品に後れを取りますが、マグネシウムも摂れる点で優れています。

そして、「豆乳」はカルシウムを比較的吸収しやすい状態で摂取でき、牛乳よりもマグネシウムが多く含まれているのでお勧めします。自分の生活や好みに合わせて、骨を強化する食品を使い分けて摂取するといいと思います。

骨を作るという点で、カルシウム、マグネシウム以外に「たんぱく質(P)」も重要な役割を担っています。たんぱく質が多く含まれる食品は、肉、魚、大豆製品、卵、牛乳、ヨーグルトで、これらはカルシウムも多く含まれています。さまざまなたんぱく質食品から同時に効率よく栄養を摂取すると良いでしょう。

特にお勧めしたいのが「納豆」。納豆にはカルシウム、マグネシウム、たんぱく質のほか、骨の成長を助けるビタミンKも多く含まれており、一つの食品で多くの栄養を摂ることができるスーパーフードです。体の成長には欠かせない食品の一つなので、みなさんもぜひ意識して食べるようにしてください。

カルシウムの吸着剤「ビタミンD」

吸収率が非常に低いカルシウムですが、ビタミンDを組み合わせることで改善されます。ビタミンDを多く含む食品はズバリ「魚」です。

朝食によく出てくる鮭の切り身を例に挙げれば、1/3切れで1日に必要なビタミンDを摂取することになります。魚を毎日食べていれば、ビタミンDは不足することなく摂れていることになります。きのこ類にもビタミンDは含まれていますが、1日に必要な摂取量を補おうとすると、しいたけで20個食べなければならないので、魚からビタミンDを摂るのが現実的ですね。

そのほかに、カルシウムの吸収を上げる方法として、「酢の物」と一緒に食べるのも有効です。小魚・海藻類は酸っぱい物と組み合わせて摂る。これを覚えておくといいでしょう。

指導現場の選手たちによく勧めているのが「モズク酢」です。パックで売っているモズクに酢をかけるだけで簡単にできますし、カルシウム・マグネシウムもしっかり摂れて体にも吸収されます。さらにアレンジして、シラス干しも加えるとカルシウム強化食の完成です。

酢の物が苦手という人は、食後に果物(すっぱい物)を食べることで吸収率の向上が期待できます。オレンジ、みかん、グレープフルーツなどの柑橘類、キウイ、イチゴも相性がいいので、吸収率を高めることにつながります。

FATの予防・対策のカギを握る「体脂肪」

利用可能エネルギー不足、月経障害と比べると、骨障害、骨の成長は栄養の摂取が大きくかかわってきますので、何を摂ればいいのかを考えながら毎日を送ってほしいと思います。

これまで3回にわたって、FATについての基礎的な情報をお伝えしてきました。いずれも、女子選手特有の栄養の摂り方が問題で、減量をしなければならない競技(審美系、階級制)の選手に頻発しています。そして、障害の根本にあるのが「体脂肪を必要以上に落とす」ことです。女性ホルモンの分泌異常により、正常な月経発来や骨の成長を阻害することにつながってしまうのです。

スポーツをする上で、動きのキレが増すとか、動きやすくなるなどの理由で体脂肪を減らす選手が多いと思いますが、ホルモン分泌の関係から女子選手にはある程度の体脂肪が必要になってきます。ですから、誰かの真似ではなく、自分にとって最適な体脂肪を知る(管理する)こともFATの予防に役立ちます。

成長著しいZ世代の女子選手の多くは、FATを大きな問題として捉えていないかもしれませんし、影響がないと考えるかもしれません。中には、甘んじて受け入れている選手もいるのではないでしょうか。

しかし、スポーツを辞めた後の方が人生は長いのです。現役中にFATへの対策・対応を間違えると、その後に大きな問題として降りかかってくる可能性があるのです。女子が女性らしく人生を送っていくために、成長年代の健やかな過ごし方が将来にもかかわってくることを覚えておいてください。

<次回に続く>

<特集:スポーツ貧血 ~基礎編~>見直そう! 鉄の役割と食品 【Z世代におくるスポーツ栄養講座 特別編】

神戸女子大学・坂元美子先生による「Z世代におくるスポーツ栄養講座」。

今回は<特集:スポーツ貧血>と銘打って、選手のパフォーマンスを妨げるスポーツ障害について、基礎編は坂元先生、応用編は日本大学・松本恵先生と、2人のスポーツ栄養学の専門家が解説する。

「スポーツ貧血」について、「もう知っている」「基礎は十分」という人は応用編①

※Z世代とは、欧米で10~20歳を指す言葉として使われている。すぽとりでは「成長世代」と同義と捉えて使用する。

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持久系スポーツ選手は絶対に覚えておきたい「スポーツ貧血」

スポーツをするうえで、血液は重要な働きをもっています。一般的には、トレーニングをすることによって、血液中の水分(血しょう)の量が増えるといわれています。血しょう量が増えると全身にめぐる血量が増えて血中の酸素が全身に行き渡るため、体が動きやすくなったり、持久力が高まったりすることにもつながります。この働きがうまく行かなくなると、さまざまな症状が出てきてしまいます。

血液のトラブルでよく聞くのが「貧血」ですね。貧血は血液中の赤血球、赤血球の中にあるヘモグロビンの量が減ることで起こるといわれています。目安(ヘモグロビン量)でいえば、男性(男子)は13~14g/dl、女性(女子)は12g/dlで、貧血と診断されます。

貧血といえば、月経のある女性(女子)に多いイメージがありますが、特にZ世代(成長期)では、女子だけではなく男子にもよくみられるスポーツ障害の一つが「スポーツ貧血」です。スポーツ貧血は、「希釈性貧血」「溶血性貧血」「鉄欠乏性貧血」の3つに分けられます。

希釈性貧血はその名の通り、血液が薄まることで起きる貧血です。トレーニングによって血中の水分、血液中の赤血球、ヘモグロビンも増えるのではなく、水分だけが多い状態になってしまいます。血液検査などでは貧血の数値として出てしまいますが、実際にはヘモグロビンの量が減っているわけではありません。水分量の増加によって、結果的に全身をめぐる血液の量も増えるため、持久力を向上させる可能性があると考えられています。

溶血性貧血は、筋肉に負荷をかけるようなトレーニングをすることで、筋肉繊維が傷つくと同時に血液中の赤血球やヘモグロビンも壊れてしまうことが原因で起こります。体全体にめぐる血液、赤血球、ヘモグロビンの量が低下しますので、持久力の低下につながってしまいます。

スポーツ貧血の中で最も多い症状といわれているのが、鉄欠乏性貧血です。血液を作るためには鉄が必要になっていますが、鉄は有酸素運動をすると大量に消費されていきます。体の中から鉄がなくなっていくということは、赤血球や酸素を体内に行き渡らせるヘモグロビンの量も少なくなりますので貧血をひき起こしますし、スポーツ選手としての持久力・パフォーマンスも低下することになります。

スポーツシーンでの鉄の役割

スポーツ貧血を予防するためには、血液を作る鉄が不可欠ですが、鉄の中にもいくつかの成分があってそれぞれが役割を持っています。よく聞くのが「ヘモグロビン」。これは、全身に酸素を運搬する役目があります。ヘモグロビンが運んできた酸素を受け取り、細胞の中に取り込むのが「ミオグロビン」。ミオグロビンが受け取った酸素を使って、スポーツをする時のエネルギーを作り出すのが「チトクロム」という酵素になります。

そして、有酸素運動をすればするほど、体内から活性酸素が大量に発生します。活性酸素はそのままにしておくと発生源を攻撃してしまいます。これを「酸化」といいます。この酸化を防ぐのが「カタラーゼ」で、活性酸素を分解する酵素です。体内では絶えずカタラーゼが酸化の処理を続けていますが、鉄が不足したり、その他の分解酵素が機能せず処理する限界を超えてしまうと「炎症」が発生してしまいます。炎症はさまざまなケガにもつながりますから、ケガを防止するためには「活性酸素の除去」も考えておく必要があります。

持久系スポーツ選手、激しい有酸素運動を伴うスポーツ選手ほど、鉄が必要になってきます。消費した鉄を補え切れないと一気に貧血になる可能があります。特に、男性(男子)は運動量も多いので、スポーツ貧血予防のためにヘモグロビン量を常に14g/dl以上キープするように心がけましょう。

Z世代の鉄摂取には断然「ヘム鉄」、最強食材は「レバー」

貧血やスポーツ貧血を予防するためには、まず「日常の食事から鉄をしっかり摂ること」が大切です。しかし、鉄は栄養素の中で最も吸収率が低いといわれています。

食品に含まれる鉄には、「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」があります。ヘム鉄の代表格はレバーで、鉄と並ぶ貧血予防のカギになる「タンパク質」も多く含まれている食材です。さらに、赤血球、ヘモグロビンを合成する「ビタミン」もたっぷりと含まれていますので、最適の食材といえます。

ヒレ肉やカツオ・マグロなどの赤身魚、貝にも鉄が多く含まれています。赤身魚にはビタミンB6、貝にはビタミンB12が多く含まれていて、いずれも血液を作ってくれる食材です。これらヘム鉄の吸収率は約20%になります。

一方、非ヘム鉄はホウレンソウ、ひじき、大豆製品にある程度含まれています。吸収率は良くて約5%、大半は約2、3%くらいなので、普通に食事をしていてもほとんど体に吸収されません。Z世代のスポーツ選手は鉄を摂る場合、ヘム鉄から積極的に摂取するようにしましょう。

吸収率が圧倒的に低い非ヘム鉄ですが、タンパク質やビタミンCと一緒に摂取することで多少吸収が高まります。食卓にホウレンソウやひじきなどの非ヘム鉄が出た後に、ビタミンCの多いオレンジ、グレープフルーツなどの果物を摂ると良いと思います。

ちなみに、ひじきは鉄の多い食品と知られ、「貧血予防にはひじき」といわれていました。しかし、数年前に、ひじきに含まれる鉄の量は意外と少ないことが判明しました。

その理由は、ひじきの製造方法にあります。昔は鉄鍋でひじきを加熱加工していて、製造工程の途中で鉄の成分が溶け出してひじきに移ったといいます。最近では多くの製造現場で使用される鍋がステンレス製になったため、鉄の“成分移動”が起きなくなったわけです。ひじきも鉄鍋の鉄も非ヘム鉄なので、吸収率も低いです。

鉄の吸収を妨げる組み合わせは?

鉄の吸収には「胃液の分泌」、つまり胃酸がしっかり出ているということが大切です。鉄を摂取した時に、大量の水分や油(脂質)を一緒にとってしまうと胃酸を薄めてしまいます。こうしたことから、食前~食後の水分は基本、飲み物ではなく食べ物からが鉄則になります。特にコーヒー、紅茶、緑茶、赤ワインなど食事の時に好まれる物は、鉄との相性が悪い「タンニン」が含まれています。

鉄と一緒に摂る食品についてはいくつか注意が必要です。ホウレンソウに多く含まれる「シュウ酸」、豆類に含まれる「フィチン酸」などの野菜のアクは吸収を妨げるので、調理の際に取り除いてください。ホウレンソウのゆで汁を他の料理で使うのもNGです。

「食物繊維」の大量摂取も問題です。普段の食事から摂取する食物繊維は問題ありませんが、食物繊維が化学的に配合されたダイエタリーサプリメントは含有量が多めです。減量のためにサプリを使用するスポーツ選手も多いかと思いますが、パフォーマンスの低下を招きかねませんので、控えた方が良さそうです。そのほか、加工食品に頻繁に使用される「リン酸」も鉄の吸収を下げるものとして挙げられます。

ただでさえ吸収が困難な貴重な鉄を体に効率良く取り込むためにも、食べ合わせ、食材・食品の相性を特に意識しておきましょう。

貧血予防に食事以外はナシ!?

いろいろな食品から栄養を摂取して貧血予防に努めたいところですが、貧血になってしまったら食事では改善できませんので、鉄剤の服用や輸血などの治療が必要になります。

実はスポーツ現場で、貧血の治療行為が競技力向上、もしくは貧血予防のために行われている事象が報告されています。実際には、競技能力向上との因果関係は立証されていませんし、特に成長期のスポーツ選手が行うと体に負担をかけることになります。明らかにマイナスになりますから、絶対に行わないでください。

私が指導している男子サッカーの高校生に食事調査と血中ヘモグロビン量の計測を行ったところ、ほとんどの選手が鉄を基準値以上摂れているものの、ヘモグロビン量を維持できないケースが多かったのです。“問題あり”の選手の食生活を分析すると、成長に必要な、スポーツをするための「エネルギー」が足りていないということがわかりました。

反対にいえば、食事からエネルギーが確保できていれば、貧血予防に必要なタンパク質、鉄、ビタミンB6、B12、葉酸、ビタミンCなどが自然と摂れるようになります。そのために、この講座で何度もお話ししている通り、バランスの良い食事を心がけるということが、成長中の体を大きくすることにもなり、スポーツ障害を予防することにもつながっていくのです。

参考:バランス良く食べるには?

<次回へ続く>

スポーツを頑張る女子の健康上のリスク ~女子選手の三主徴 概要~【Z世代におくるスポーツ栄養講座 #08】

神戸女子大学・坂元美子先生による「Z世代におくるスポーツ栄養講座」。第8回は女子選手をめぐる健康上のリスク(女子選手の三主徴)についてお送りする。

成長が進んでいく中で、男女の体の構造や習慣に変化が出てくるが、女子は将来の出産に備えて多くの栄養を摂取する必要がある。この時期に無理をし過ぎると、現役を退いた後にも響いてくるため、正しい知識と自分の体をいたわる心を持ってもらいたい。

※Z世代とは、欧米で10~20歳を指す言葉として使われている。すぽとりでは「成長世代」と同義と捉えて使用する。

※記事と動画(図表解説あり)で少し内容が異なります。両方をご覧いただき、理解をより深めていただければ幸いです。

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指導者の方には知ってほしい・・・否、知らなければならない問題

スポーツを頑張る女子選手には、「女子選手の三主徴:Female Athlete Triad(FAT)」と呼ばれる健康上のリスクが存在し、近年、指導者や専門家などの愛大で問題視されています。

FATとは、疲労骨折、若年性骨粗しょう症などの「骨障害」、「月経障害」、オーバートレーニング症候群や摂食障害をひき起こす「利用可能エネルギー不足」の3つを指しています。この3つの症状は、1つしか出ないこともあれば、同時期に2つ、3つ出てしまうこともあります。中でも、利用可能エネルギー不足は、骨障害、月経障害の原因にもなり得ます。

FATは、女性ホルモンの分泌に異常をきたす、無理な減量、過剰なトレーニング、指導者からの“圧力”など、栄養、精神ともに健全ではない状態が続き、自分が耐えられるストレスの容量を超えると発症してしまいます。多感で体が変化している高校生(中学生)の時期は、少しでも気を抜くと簡単にFATに陥ってしまいます。

スポーツを頑張っている間にFATに発症すると、パフォーマンスが落ちたり、最悪は競技が続けられなくなることにもなりますが、実は引退した後の生活にも響いていきます。最近では、著名な女子のトップ選手が減量や疲労骨折に苦しんだ過去を告白した事例もあります。

元気に競技生活を送るために、FATの正しい知識、対処方法について、次回以降、一つずつ解説していきます。

<次回へ続く>

スポーツを頑張る高校生にとって大切なこと【Z世代におくるスポーツ栄養講座 #07-2】

神戸女子大学・坂元美子先生による「Z世代におくるスポーツ栄養講座」。第7回は「スポーツを頑張る高校生にとって大切なこと」がテーマ。

高校生になると、プロスポーツ選手並みの練習量、パフォーマンスが求められるようになる。もしかしたら、練習量はプロ以上かもしれない。

ただ、勉強、放課後の練習、土日の試合、遠距離の通学など息つく間もない多忙な毎日で、少しでも気を抜けばケガにつながってしまう。ケガは、ライバルに差をつけられたり、力を発揮できなかったり、目標とする大会に出られなかったりする「悔しさ」の元凶でもある。

光り輝く高校生たちが悔しい思いをしないように、食事はもちろん、他の大切な要素も頭に入れておく必要がある。

今回は記事2本立て(動画は1本)で、スポーツを頑張る高校生たちに伝えたいことをまとめた。2本目はコンディショニングを中心に。

※Z世代とは、欧米で10~20歳を指す言葉として使われている。すぽとりでは「成長世代」と同義と捉えて使用する。

※記事と動画(図表解説あり)で少し内容が異なります。両方をご覧いただき、理解をより深めていただければ幸いです。

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量よりも質! 3時間勝負の「睡眠」

スポーツを頑張っている皆さんの理想的な睡眠時間は、「7時間」といわれています。長く眠ればいいかといわれるとそうでもありません。

一晩の睡眠で「浅い眠り」と「深い眠り」が繰り返されて、朝を迎えることになります。浅い眠りを「レム睡眠」、深い眠りを「ノンレム睡眠」と呼び、前者は主に身体、後者は脳をそれぞれ休ませる役割をもっています。みなさんの成長に必要なホルモンは、深いノンレム睡眠時に分泌が促進されます。

深いノンレム睡眠は入眠1時間後、2時間後、3時間後で訪れますが、4時間後以降は成長ホルモンの分泌促進が終わっています。ですから、入眠3時間後までに深い眠りにつくことが質の良い睡眠(=成長のためになる)をとるために重要となります。

成長ホルモンの分泌促進のために早く深く眠りにつきたいのですが、高校生(中学生)たちの天敵になる物があります。ズバリ、「スマートフォン」です。スマホで動画を見たり、ゲームをしたりと楽しくなってついつい遅くまで夢中になってしまうでしょう。ハードな練習の後ですから、なおさらです。

しかし、スマホから出る光は太陽とほぼ同様の明るさで、脳を刺激して覚醒させてしまいますし、眠る前にたくさんの情報を得てしまうとかえって脳が働き、眠りに入りづらくなってしまいます。成長のためにも、眠る前のスマホやゲームはできる限り避け、早く深くノンレム睡眠に入りましょう。

ストレス状態の継続には注意

高校生年代は顕著な成長をとげる半面、精神的に不安定な時期ともいえます。特に、スポーツを頑張る人たちは、小さいころから高いレベルで活躍することを目標にしてハードなトレーニングを続けています。

練習や試合で負う身体的なストレスはもちろん、「がんばらなきゃ」「勝たなきゃ」といった精神的なストレスを常に受け続けている状態といっていいでしょう。この状態が続くと、「慢性疲労(ステルネス)症候群」や「オーバートレーニング症候群」に陥ってしまいます。

これらは、気持ちがついていかずに体が動かなくなってしまい、最悪の場合、選手生命を絶ってしまう恐れもあります。選手自身が気をつけるのはもちろんですが、指導者のみなさんも選手のメンタルケア、休むべき時には休ませることを検討していただきたいと思います。

自分への栄養ケアは自己管理能力の向上に

最もエネルギーが必要な高校生年代にとって、3食きちんととることは成長を促すことにつながります。また、決まった時間に食事をとることで、消化酵素の分泌が活発になり、栄養を効率良く吸収できるようになります。

そして、何よりも大切なのが、自分自身で「いつ」「何を」「どれだけ」食べればいいかを理解する、考えることです。これが、自己管理能力の向上に結びついてきます。

高校を卒業して、さらに高いレベルで活躍する人もいるでしょう。海外で活躍する人もいるかもしれません。その時、いかに自分をコントロールして競技に集中するか、自分にとって身になる食べ物を選択できるか。これを当たり前のようにできるのがトップ選手たちなのです。高校生年代は、自己管理能力を高める最後のチャンスなので、意識して食べ物、栄養と向き合うと良いでしょう。

最後に、成長のために食べ物や栄養への意識をする以前に、食べることが苦にならないようにしてほしいと思います。

食べることは楽しいことですし、おいしい物を食べれば心も安らいできます。反対に、無理をして食べても体にうまく吸収されませんし、体重制限などで食べたいのに食べられない、食事も楽しむことができない。これでは、体が成長するはずがありません。

ですから、食事が楽しみになるように、指導現場、家庭でもどうするかを一緒に考えていただきたいですね。

<次回に続く>

スポーツを頑張る高校生にとって大切なこと【Z世代におくるスポーツ栄養講座 #07-1】

神戸女子大学・坂元美子先生による「Z世代におくるスポーツ栄養講座」。第7回は「スポーツを頑張る高校生にとって大切なこと」がテーマ。

高校生になると、プロスポーツ選手並みの練習量、パフォーマンスが求められるようになる。もしかしたら、練習量はプロ以上かもしれない。

ただ、勉強、放課後の練習、土日の試合、遠距離の通学など息つく間もない多忙な毎日で、少しでも気を抜けばケガにつながってしまう。ケガは、ライバルに差をつけられたり、力を発揮できなかったり、目標とする大会に出られなかったりする「悔しさ」の元凶でもある。

光り輝く高校生たちが悔しい思いをしないように、食事はもちろん、他の大切な要素も頭に入れておく必要がある。

今回は記事2本立て(動画は1本)で、スポーツを頑張る高校生たちに伝えたいことをまとめた。1本目は食関連について。

※Z世代とは、欧米で10~20歳を指す言葉として使われている。すぽとりでは「成長世代」と同義と捉えて使用する。

※記事と動画(図表解説あり)で少し内容が異なります。両方をご覧いただき、理解をより深めていただければ幸いです。

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スポーツを頑張るために必要なエネルギー量を知っておこう

これまでの講座で示してきたエネルギー摂取量は、食事摂取基準(厚生労働省)に基づいたもので、あくまで一般的な数値になります。高校生年代に入り、練習やトレーニング量が増えて成長が進んで筋肉量も増えてくると、必然的にエネルギーの必要量も多くなってきます。

ですから、すでに成長期に入った、または成長が進んでいる高校生たちは、一般的な数値ではなく、よりスポーツに特化した数値を知る必要があります。スポーツ選手向けの推定エネルギー必要量を求める計算式がありますので、自分の競技特性や体格などを把握し、日々の練習、食事に役立てましょう。

以下、スポーツ選手の推定エネルギー必要量の計算式です。

28.5×除脂肪体重(LBM)×種目分類別身体活動レベル(PAL)

LBM = 体重-(体重-(体脂肪率÷100))

除脂肪体重(LBM)とはその名の通り、体の脂肪分を除いた筋肉・体水分(血液含む)・骨などを合わせた重量のことです。LBMを求めるためには体脂肪率の値が必要になりますが、すでに学校やチームで定期的に測定してわかっている人は数値を当てはめ、計算をしてみてください。

そうでない人は、以下の手順で計算すると、おおよその体脂肪率が求められ、LBMを算出することができます。

①自分の標準体重を求める
身長 (m) × 身長 (m) × 22

②体脂肪を求める
(実際の体重-①) ÷ ① × 100 👉LBMの計算式へ

種目分類別PALは、競技によって特性などが異なり、個人のエネルギー量も変わってくるため、持久系、筋力・瞬発力系、球技系とそれぞれの競技に分けて数値化したものです。表を見ると、マラソンや長距離などの持久系競技は他の競技よりも数値が高くなっていますが、これはより多くのエネルギーが必要(=著しいエネルギー消費)であることを示しています。

「たくさん食べる」の受け取り方

高校生は「一生のうちで一番食べなければいけない(エネルギーが最も必要な)時期」と繰り返しお伝えてきました。ただ、「たくさん食べる」といっても、食が偏ってしまうと体の中で栄養をうまく使うことができません。

体を大きくする目的で、タンパク質(プロテイン)ばかりとったとしても、タンパク質を体の材料に変換するビタミンB群が不足していては筋肉になりませんし、身長を伸ばすためにはカルシウム、マグネシウムといったミネラルも同時に必要です。

また、エネルギー源である炭水化物が不足した状態でタンパク質をとっても、体の材料になる前にタンパク質がエネルギーとして使われてしまうので、目的を果たすことができないのです。

ですから、「たくさん食べる」よりも「バランス良く食べる」の方を意識してほしいと思います。これは、以前提案した「毎食7つの色をそろえる」につながってきます。

小学生のうちから心がけたいところですが、高校生になってから始めても大丈夫です。まずは量よりもバランス、7つの色の食材を毎食とるように意識して、それができるようになったら量を増やしていくといいでしょう。

関連記事:バランス良く食べるには?

男子は男性に、女子は女性に

高校生は、男女ともにホルモン分泌が最も活発になる時期になります。男子は男性らしく、女子は女性らしく、体が変化していきます。

男子の場合、男性ホルモンが正常に分泌されていれば、それほどハードなトレーニングを積まなくても自然と筋肉の量は増えていきます。ですから、筋肉をつけるための栄養よりも、ホルモン分泌が促される栄養を考えていくと良いと思います。

女子の場合、女性ホルモンを正常に分泌させるためには、ある程度の体脂肪が必要になってきます。審美系競技(新体操、フィギュアスケートなど)や体重別競技で、過度なダイエットや減量によって適切な体脂肪が確保できないと、「女子選手の三主徴(FAT=Female Athlete Triad)」を代表とするさまざまなスポーツ障害をひき起こします。スポーツ障害は選手寿命を縮めたり、競技生活からの引退を余儀なくされるので、そうならないためにも「体脂肪を減らしすぎないこと」を認識しておきましょう。

<#07-2に続く>