Z世代からプロまで、サッカーニュートリションならお任せあれ!【ニュートリションな人々 #05 ~鈴木いづみさん 後編~】

ニュートリション関係者の人物背景や取り組みについて紹介する永続企画「ニュートリションな人々」。久々となる第5回目の主人公は、博士(スポーツ健康科学)で日本スポーツ協会公認 スポーツ栄養士の鈴木いづみさんです(全2回)。

サッカーは血で戦う競技、体脂肪と鉄がカギになる

明治在籍時代に培った経験からサッカー栄養のベースを作った鈴木さんは、2000年からJリーグ・ジェフユナイテッド市原・千葉の選手寮の栄養アドバイザーとなる。2010年よりクラブと正式契約を交わし、計18年にわたって、トップから育成年代まで多くの選手へ指導・サポートし、コンディショニング面からチームを支えた。

「長くサッカーに携わってきた中でわかったことは『サッカーは血で戦う』です。体重と体脂肪率の管理に加え、血の中身をいかに管理するかが最も重要。つまり、持久力をサポートするヘモグロビンの量とフェリチン(貯蔵鉄)を長いシーズンにわたっていかに高値で維持するか。これがすべてといっていいと思います。体内で鉄が不足すると走れなくなりますからね。走ることが生業のサッカー選手が意識すべき点だと思います」

鈴木さんは現在、チーム契約のほかに、個人のプロサッカー選手と契約し、試合日程に合わせて1週間単位の栄養マネジメントを行っている。試合が日曜日の場合、前日(土曜日)、当日は高糖質食、試合後24時間(日、月曜日)は運動による筋損傷をケアするために、フェノール化合物(アントシアニンなど)、ω-3多価不飽和脂肪酸(α-リノレン酸、EPAなど)、ビタミンDなど抗炎症が期待されるエレメンツを含む食品の摂取を促す。その翌日(火曜日)はオフのためリフレッシュデーとして好きな物を食べてよい。ただし、翌日(水曜日)からチーム練習なので試合でロスした体重を元に戻す作業も同時に行う。体重が戻っている状態で、試合に向けて鉄を貯蔵するための食生活を試合前日まで続ける。週2で試合がある場合はさらにタイトなマネジメントになるものの、基本的には年間を通じてこの工程を踏み、厳しくチェックしている。

選手個人へのマネジメントは、労力がかかるうえに管理能力も問われる。そして、何より求められるのは「成果」だ。例えば、鈴木さんのサポートを受けた選手が「1年間ケガをしなかった」「出場時間がチームトップ」「スプリントパフォーマンスが前年より向上した」など、具体的な成果が出なければ次の仕事につながらず、ビジネスにもならないシビアな世界。鈴木さんは、あくまで成果を強調する。

「指導・サポートしたからには、絶対に結果を残さなければならない。これがフリーランサーとしての私の信条です。2020年はコロナ禍ということもあり、とても難しい仕事を余儀なくされました。強行日程による選手への負担は大きく、気を抜くとあっという間に体重が落ちる。外部との接触が制限されたことで採血もままならず、血液指標の動態がわからない。そういった中でとにかく体重管理には例年以上に細心の注意を払いました。それでも、シーズンを通じてベスト体重を一定に保てたことや、ケガをしなかったこと、安定的にハイパフォーマンスを発揮してシーズンを無事に乗り切ったことで、結果は出せたかなと思っています」

教育と研究、人とのつながりを大事に

鈴木さんが現在、ライフワークにしていることが2つある。「育成年代への教育」と「学び」だ。スポーツ栄養関係者に問われる、相反する課題に対して真剣に向き合っている。

育成年代への教育は、ジェフ千葉時代の同志でアカデミーコーチをしていた武田雄哉さんと連携し、選手・保護者への栄養教育を施す。武田さんはジェフ千葉を退団後、東京都世田谷区に本拠を置く「駒沢サッカークラブ」で副理事長に就き、未来のトップ選手への指導を行う。同クラブは、育成年代の男女サッカー、男女フットサルチームがあり、都内でも上位の成績を誇る古豪。鈴木さんをはじめとする各分野の専門家もチームにかかわっている。

「昨年4月から月1回、選手に向けてオンラインの栄養講習会を実施しました。サッカー選手に必要な栄養摂取、食品の選び方、さらには特殊な状況が続いている中で、免疫力を上げる食事や自粛期間中の食事に関することと、アドバイスは多岐にわたりました」

本来なら選手たちの顔を見ながら講義をして、理解の深化を促すが、オンラインが主になっている昨今、なかなか難しい。画面を見ただけでは選手が本当に理解してくれているのかもわかりづらい。選手の理解度を図るためにどうすればいいか。武田さんと鈴木さんは一計を案じ、「おにぎり選手権」を企画した。

「練習後に食べるおにぎり」をテーマに、選手たちが講習で学んだサッカー選手に必要な栄養を含む具材を使って、おにぎりを自作するというもの。そして、鈴木さんが専門家の立場から「おいしさ」「うんちく(食材の栄養情報)」「見ため」など、さまざまな角度から審査してランキングをつけた。詳細は後報するが、選手、保護者を巻き込んだおにぎり選手権は、選手たちの理解度を確認するのに大いに役立った。

「武田さんとは馬が合うというか(笑)。長い雑談の中でいろいろと話しているうちに、この企画が浮上しました。ほとんど武田さんのアイディアです(笑)。今後は他チームとの対抗戦とか、プロ選手との対決とか、幅を広げていければと思っています。選手が楽しく、競いながら参加できるスポーツ食育として普及させたいですね。オンライン時代でも工夫次第で、きちんと教育できることも示せたと思います」

育成年代への教育をする一方、スポーツ栄養研究の向上も忘れない。トップスポーツ現場での経験が豊富で、スポーツ栄養の発展に情熱を注ぐ鈴木さんだが、行き詰まりを感じた時期があったという。「対エリートアスリートでは現場経験だけでは勝負できない、しっかりとしたサイエンスがなくては」と。

一念発起した鈴木さんは順天堂大学院でスポーツ健康科学を学び直し、博士号を取得。企業との共同研究に携わったり、海外のスポーツニュートリションに関する最新情報を有志とともに翻訳したり、研究分野での実績を着々と積んでいる。

また、スポーツ関係者が集まる私的勉強会「すぽべん(SPOBEN」の活動も熱心に行う。すぽべんは栄養分野だけでなく、スポーツ医科学に関するさまざまな分野の研究者と実践者が集まり、自身の研究や活動内容を発表してディスカッションする場だ。

「少人数から始まったすぽべんですが、今では数十人規模になりました。いろいろな研究内容を聞くことで刺激されますし、とても参考になります。また、スポーツ医科学分野のHUB機能を持たせ、人と人、仕事と仕事をコネクトすることにも注力しています。興味のある方はぜひご参加いただきたいですね。参加要件はすぽべんメンバーの紹介があること、加入1年以内に自身の研究に関するプレゼンの意思があることです。多様なパッションに触れるとともに求める情報がきっと見つかるでしょう」

スポーツの先行きが不透明な中でも「とにかく楽しく仕事をさせていただいています」と、笑顔で話す鈴木さん。自身が組み立てた栄養マネジメントが成果につながった時の達成感は他では味わえないという。

鈴木さんは、厳しさもやりがいも感じながら、スポーツ栄養の最前線で活躍を続けている。「10年後はスポーツ栄養分野がもっと発展しているはずなので、その時にいい仕事ができるように常に勉強を続けています」と、その目は未来を見据えている。

<完>


鈴木いづみ / Izumi Suzuki

博士(スポーツ健康科学)、日本スポーツ協会公認 スポーツ栄養士、順天堂大学スポーツ健康科学部 協力研究員、とちぎスポーツ医科学センター 協力栄養士

1990年 女子栄養大学栄養学部栄養学科 卒業。1990~1998年 明治製菓(株)ザバススポーツ&ニュートリション・ラボ。2004~2013年 宇都宮文星短期大学地域総合文化学科 准教授。2015年 順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科 博士前期課程修了。

アトランタ大会(1996年)女子バスケットボール日本代表、ロンドン大会(2012年)競泳日本代表・萩野公介選手など、五輪選手への指導・サポート歴多数。ジェフユナイテッド市原・千葉の全年代の栄養教育に携わった。現在は、Jリーグ 北海道コンサドーレ札幌、および個人のプロサッカー選手との契約のほか、、地域のタレント発掘育成事業など育成年代の教育に力を注いでいる。

Z世代からプロまで、サッカーニュートリションならお任せあれ!【ニュートリションな人々 #05 ~鈴木いづみさん 前編~】

ニュートリション関係者の人物背景や取り組みについて紹介する永続企画「ニュートリションな人々」。久々となる第5回目の主人公は、博士(スポーツ健康科学)で日本スポーツ協会公認 スポーツ栄養士の鈴木いづみさんです(全2回)。

「いい仕事をすれば必ず次につながる」

全世代のサッカー選手へ指導・教育に力を注ぐ鈴木いづみさん(クリックで画像拡大)

育成年代からトップのサッカー選手へのサポート・指導に強みをみせる鈴木いづみさん。研究、現場の両方で経験が豊富なスポーツニュートリショニストの一人だ。

プロ意識を常に持ち、チームやプロ選手から課されたミッションに対し、経験に裏打ちされた知識・ノウハウを駆使して成功に導くための任務を遂行する。プロとしての矜持を鈴木さんはこう言い切る。

「スポーツ栄養の仕事はブーメランなんですよね。いい仕事をしていれば、良い結果が自分に帰ってきて、それが必ず次につながる。逆もありますけどね(笑)。でも、独立してからも途切れることなく仕事をいただけているのは、この思いでずっとやってきたからです」

幼いころから活発だった鈴木さんは、スポーツ中心の学生時代を過ごしたという。高校生になるころには、体育教師になることを思い描いていた。ところが、担任の教諭に進路を相談したところ、「体育大学を出て、地元(長野県)に戻って教員採用試験に受からなかったら、つぶしがきかないよ」と、現実を突きつけられた。日ごろから気の置けない間柄の恩師の言葉に、鈴木さんは「確かに」と納得してしまった。そして、スポーツの次に興味のあった「栄養」の道を志すことにした。

進学した女子栄養大学で、栄養学の基礎を学ぶかたわらで、運動生理学も学んだことから、自分の経験・興味、スポーツと栄養学が合わさってスポーツ栄養の道へ。当時は、「スポーツ栄養」「スポーツニュートリション」という言葉がほとんど知られていなかったにもかかわらず、鈴木さんは突き進んでいく意思を固めるのだった。

スポーツ栄養がやりたんだけど…

鈴木さんは大学卒業後、「ザバス」ブランドを立ち上げて間もない明治製菓(現:明治)に入社。健康産業事業部に配属され、顧客に健康・栄養情報を提供するニュートリションセンターで仕事をすることになった。

「上司はどうも、私の外見や雰囲気からスポーツとは無縁だと思っていたようで(笑)。それで、同期がザバスに配属されて、私がセンターに。その後、私がスポーツ分野に強い関心があるとわかって、ザバスへ異動することになったんです。そこがすべてのスタートになりました」

思わぬところで道は開け、晴れてスポーツニュートリショニストの第一歩を踏み出した。入社2年目の夏に、日本陸連長距離マラソンブロック日本代表選手団の高地トレーニング合宿へ科学委員会からの派遣というかたちで帯同することになり、選手への栄養指導と食事管理を任された。ちなみに、当時の代表にはスポーツ医科学分野の研究者が帯同しており、日本でも医科学の観点から選手を強化する取り組みが始まっていた。まさに、スポーツ医科学の黎明期。研究者たちに交じり、入社2年目の鈴木さんは研究のためのデータ取得、方法論を0から確立していった。

選手のエネルギー摂取量、各栄養素の摂取量をすべて把握し、高地環境の下でヘモグロビン量がどう変化するのか。カロリーとの関係性はどうなっているのか。きちんとデータを取って分析し、世に出してスポーツの強化につなげる。それがミッションだと思い、懸命に取り組んだ。

「毎日の栄養データの管理もそうですし、三食数十人分の食事を用意するのも大変でした。それでも、とにかく楽しかったですね。今思えば、当時一緒に過ごした選手たちがのちのメダリストだったり、実業団や代表の指導者になったりしていて、今でもつながりがある。本当に貴重な経験をさせていただきました」

毎夏の高地トレ帯同を3年続けた後、プロサッカーチームの指導・サポートに携わる。折りしも、Jリーグが産声を上げた時。当時の明治はプロチームを積極的にサポートしており、栄養の知識・現場経験を持つ管理栄養士は重宝された。鈴木さんは、プロサッカーの誕生と歩を合わせて指導・サポートを通じた栄養の重要性をプロに浸透させ、スポーツ栄養学の価値を高めていったのだった。

<後編へ続く>


鈴木いづみ / Izumi Suzuki

博士(スポーツ健康科学)、日本スポーツ協会公認 スポーツ栄養士、順天堂大学スポーツ健康科学部 協力研究員、とちぎスポーツ医科学センター 協力栄養士

1990年 女子栄養大学栄養学部栄養学科 卒業。1990~1998年 明治製菓(株)ザバススポーツ&ニュートリション・ラボ。2004~2013年 宇都宮文星短期大学地域総合文化学科 准教授。2015年 順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科 博士前期課程修了。

アトランタ大会(1996年)女子バスケットボール日本代表、ロンドン大会(2012年)競泳日本代表・萩野公介選手など、五輪選手への指導・サポート歴多数。ジェフユナイテッド市原・千葉の全年代の栄養教育に携わった。現在は、Jリーグ 北海道コンサドーレ札幌、および個人のプロサッカー選手との契約のほか、、地域のタレント発掘育成事業など育成年代の教育に力を注いでいる。

中学生年代の食の問題点とその対策 ~スポーツと五大栄養素~【Z世代におくるスポーツ栄養講座 #05】

神戸女子大学・坂元美子先生による「Z世代におくるスポーツ栄養講座」。第5回は「中学生年代の食の問題点とその対策 ~スポーツと五大栄養素~」をテーマにお送りする。

※Z世代とは、欧米で10~20歳を指す言葉として使われている。すぽとりでは「成長世代」と同義と捉えて使用する。

※記事と動画(図表解説あり)で少し内容が異なります。両方をご覧いただき、理解をより深めていただければ幸いです。

動画「スポーツ栄養講座」をイッキ見!

動画「すぽとりChannel」


成長が本格的に始まる中学生年代

中学生になると、身長・体重の発育・発達が起こり始めると同時に、内臓が大きくなっていくのに伴って消化・吸収能力も高まってきます。そして、最も特徴的なのが、免疫力が成人の約2倍高まるということです。

ですから、中学生年代では、体を大きくするための栄養のとり方はもちろん、免疫力を高めるための栄養のとり方も重要になってきます。

また、中学生、その後の高校生というのは、一生のうちで最もエネルギーをとらなければならない時期になります。エネルギーを獲得するために、どのような栄養のとり方をするかを考えていく必要があります。

スポーツと5大栄養素の関係

みなさんもご存知かと思いますが、毎日の生活の中で、食事から「たんぱく質」「脂質」「炭水化物」「ビタミン」「ミネラル」の5大栄養素をとらなければいけないといわれています。では、これらがスポーツをする時にどのように体内で働くのかを説明していきます。

炭水化物と脂質はエネルギー源になります。日常生活での必要エネルギーは一般的に、炭水化物と脂質を半分ずつ使用しているといわれていますが、スポーツをする場合、運動強度や量が増えていくので、より多くの炭水化物が必要になってきます(持久系スポーツは脂質の必要量も増加)。

体に貯蔵されている体脂肪をエネルギーとして利用する脂質に対し、炭水化物は食事からその都度体内に入れてあげないとすぐに不足してしまいます。炭水化物は脳のエネルギー源としても使われます。とる量が十分でないと、スポーツをするうえでの「判断力」「集中力」が失われかねません。スポーツをする前には、「炭水化物をしっかりとる(体に入れておく)こと」を心がけておくと良いですね。

筋肉、骨、血液、爪など体の材料となるのが、たんぱく質です。たんぱく質が不足すると、スポーツ選手としての体作りができなくなってしまいます。もう一つ、たんぱく質には免疫力を上げるという大きな役割があります。ウイルスや病原菌が体に入ってくると、体内では防衛機能を果たす抗体が作られます。この材料になるのがたんぱく質です。

炭水化物、脂質、たんぱく質が体の材料になるものなら、材料を使ってエネルギーや身体に作り変える役割を果たすのが、ビタミンとミネラルになります。いくら炭水化物、脂質、たんぱく質をしっかりとっていても、ビタミン、ミネラルがなければエネルギーや身体への作り変えができなくなるので、忘れず一緒にとる必要があります。ミネラルの中には骨の材料となるカルシウム、マグネシウム、血液の材料になる鉄と、スポーツ選手の体作りには不可欠なものも含まれています。

このように、5つの栄養素を必ず摂取しなければ、スポーツ選手の体作りができませんし、中学生で起こるべきさまざまな発育・発達に支障をきたす可能性があります。

5つの栄養素の関係はチームスポーツと似ています。一人だけ上手な人がいても、周囲が協調しなければ結果を出すことができません。栄養素も同様に、一つ一つがそれぞれ役割をもっていて、うまく機能することで、体を健康に保ったり、強くしたりすることができるのです。

中学生、高校生は、5つの栄養素をバランス良くとらなければなりません。そのためには前回ご提案したように、「毎食、虹色の食材をそろえる」ことをしていただければと思います。

小学生のうちから虹色の食事を心がけていれば、最もエネルギーが必要なこの時期にバランス良く、たくさん食べることができるようになっているはずです。

サプリメントなどに頼らず、消化・吸収能力を高めたい

中学生年代の食事で注意したいのは、サプリメントや加工食品の摂取です。今、スポーツをしている人に向けて多くのサプリメントや加工食品が発売されており、いずれも消化・吸収の良い状態で栄養素が摂取できるように作られています。

成長期が過ぎた成人が使用するのは良いと思いますが、成長が著しい中学生の時から慣れてしまうと、内臓の消化・吸収能力を高めるせっかくの機会を失うことになりかねません。食べ物を咀嚼し、胃で消化することこそが能力を高めることにつながりますので、サプリなどの摂取はなるべく控えた方が良いですね。

また、サプリなどの摂取で食事量が減ってしまう可能性も出てきます。これらはタブレットや粉末など、小さくても栄養素が凝縮された形状になっています。これに慣れてしまうと、摂取量が少なくても栄養は十分と脳が勘違いする(食べた気になる)ため、食欲を止めてしまいます。「サプリなどでお腹一杯になり、食事が食べられない」ということも起こりえます。これでは、たくさんエネルギーが必要な時期に食事量が減ってしまい、身体、内臓の成長が小さくなりますし、先ほどの消化・吸収能力にもかかわってきます。

サプリなどは手軽で便利なので使いたいと思っている人も多いことでしょう。しかし、身体の成長も内臓の成長もこの時期しかありません。せっかくの機会を失わないためにも、使いたい気持ちをグッとこらえて、食事から栄養をとる生活を心がけていきましょう。

<次回に続く>

小学生年代の食の問題点を解決するために ~にじ色をそろえよう!~【Z世代におくるスポーツ栄養講座 #04】

神戸女子大学・坂元美子先生による「Z世代におくるスポーツ栄養講座」。第4回は「小学生年代の食の問題点を解決するために ~にじ色をそろえよう!~」をテーマにお送りする。

バランスの良い食生活を崩してしまう小学生年代特有の「こ」食問題。毎日の生活の中で自然とバランス良く食材がとれるようになるのが解決の糸口になってくる。坂元先生は、7つの色(虹色)と食材を組み合わせて覚え、小学生のうちから食への意識を高める必要性を訴えている。

※Z世代とは、欧米で10~20歳を指す言葉として使われている。すぽとりでは「成長世代」と同義と捉えて使用する。

※記事と動画(図表解説あり)で少し内容が異なります。両方をご覧いただき、理解をより深めていただければ幸いです。

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「こ」食の解決=食のバランス

前回、小学生年代の食の問題点として「こ食」を取り上げましたが、これはバラン良く栄養がとれなくなることを意味しています。ですから、「どのようにしてバランスのいい食事をとるか」がこの問題を解決するポイントになってきます。

一言で「バランス」と言ってもなかなか難しいですよね。「そもそもバランスのいい食事って何?」と思う方もいるかもしれません。

そこで、私からの提案です。朝・昼・晩で毎食、7つの色の食材を意識してそろえていただきたいと思います。7つの色とは、赤、だいだい、黄、緑、青、藍、紫で、「虹」の色を表現しています。

小学生のうちから毎食、「虹色の食事」を意識していただければ、みなさんのスポーツ選手としての未来も虹色に輝いてきますよという、私からのメッセージでもあります。

虹色の食材を一つずつ解説

まず、「赤」は、牛・豚・鶏の肉類と卵。多く含まれる栄養素は、タンパク質、ビタミン、ミネラルになります。肉や卵はいろいろな調理法がありますので、朝食からしっかりそろえるようにしたいですね。

次に、「だいだい」は、魚介類、豆腐・納豆など大豆製品で、多く含まれる栄養素は、タンパク質、ビタミン、ミネラルです。

「黄」は「主食」といわれている物で、ごはん、パン、麺類、餅などが挙げられます。多く含まれる栄養素は、炭水化物(糖質)です。

バランス良く食べるために、毎食虹色の食品をそろえましょう!
バランス良く食べるために、毎食虹色の食品をそろえましょう!(画像拡大)

「緑」は、色が濃い緑黄色野菜といわれる物です。いも類、海藻類もこのグループになります。ほうれんそう・ブロッコリー・にんじん、わかめ・ひじき・こんぶ、さつまいも・じゃがいも・やまいもなど、ビタミン、ミネラル、食物繊維が多く含まれています。

「青」は、淡色野菜といわれる色の薄い物になります。だいこん、きゅうり、なす、ごぼう、たけのこ、なす、レタスとたくさんあります。きゅうりやなすは一見、緑黄色野菜と思われがちですが、皮をむくと白っぽいので、「青」になります。多く含まれる栄養素は、ビタミン、ミネラル、食物繊維です。

ここで、「緑」と「青」の野菜を比較してみましょう。どちらも多く含まれる栄養素は同じですが、実は「緑」の方がより豊富に含まれています。

スポーツ選手に「野菜をちゃんと食べていますか?」と聞くと、「サラダやキャベツの千切りをいっぱい食べています」と、返ってくることがあります。これらは淡色野菜の「青」で、もちろん栄養素はとれるのですが、意識してとりたいのは緑黄色野菜の「緑」の方です。

また、「緑(海藻類:わかめ・ひじき・こんぶなど)」は、特にミネラルが豊富に含まれていますので、体の成長、スポーツ選手になるための体作りを考えて、毎食積極的にとっていきたいところです。

「藍」は、牛乳、チーズ、ヨーグルトなどの乳製品を表しています。タンパク質、ミネラルが多く含まれ、特にカルシウムが豊富です。「緑」でもカルシウムをとることができますが、吸収率が低めという欠点もあります。一方、「藍」は「緑」よりも2倍の吸収率があるといわれているので、カルシウムを効率的にとるなら「藍」の方が良いでしょう。

「藍(牛乳、チーズ、ヨーグルトなど)」をとる上での注意点は食物アレルギーです。もし、乳アレルギーがある場合、「緑(海藻類)」、「だいだい(大豆製品、骨ごと食べられる小魚)」などで代替して、毎食しっかりとれるように心がけましょう。

「紫」は果物全般になります。特におススメしたいのがすっぱい物で、これらはさまざまな栄養素の吸収を良くするクエン酸が含まれています。食後のデザートにすっぱい果物を食べることで、食事でとった栄養素を体内に取り込みやすくしてくれます。成長に必要なビタミンCもより多く含まれています。

また、果物には糖質が多く含まれているので、成長に必要なエネルギー源を「黄(炭水化物)」とともにとっていただければと思います。

このように、7つの色の食材を毎食とっていれば、自然にバランス良く栄養素をとれるようになっていきます。

不足した色を自分でそろえられるように…

小学生が栄養素の名前を覚えようとすると難しいと思いますので、まずは7つの色とどんな食材があるかを覚えると良いでしょう。

それができたら、次は普段の食事で「これは何色の食材」と一つ一つ確認をしながら食事をとってみましょう。

最終的には、毎回の食事で足りない色があれば、自分で冷蔵庫を開けて用意する。このくらいまでできるようになるのが理想です。

この段階までくれば、無意識にバランスの良い食事がとれるようになっていますし、身長・体重、内臓(消化・吸収能力)などの成長が顕著で、最も栄養が必要な中学生、高校生の時期に「たくさん」食べられるようにもなっているはずです。

「たくさん食べる」という点から注意が一つあります。前回お話しした「濃食(味が濃い物を食べる)」には気をつけていただきたいですね。

特に化学調味料がたくさん使われている物は、少し食べただけで脳が満腹感を覚えてしまい、たくさん食べたと勘違いしてしまいます。小さい頃からこれに慣れてしまうと、本来必要な量をとることができず、成長に悪影響が出てくる可能性もあります。

ですから、小学生のうちはできる限り、自然な食品・食材そのものの味をおいしいと感じるような食生活を送ることが必要になってきます。

<次回へ続く>

小学生年代の食の問題点 ~知っていますか? さまざまな「こ」食~【Z世代におくるスポーツ栄養講座 #03】

神戸女子大学・坂元美子先生による「Z世代におくるスポーツ栄養講座」。第3回は「小学生年代の食の問題点」をテーマにお送りする。

小学生年代特有の「こ」食が問題視されている。本格的に成長を迎える中学生、高校生年代に備え、成長の妨げになるリスクをしっかりと押さえておきたい。

※Z世代とは、欧米で10~20歳を指す言葉として使われている。すぽとりでは「成長世代」と同義と捉えて使用する。

※記事と動画(図表解説あり)で少し内容が異なります。両方をご覧いただき、理解をより深めていただければ幸いです。

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成長の妨げになる「こ」食

今、栄養士の間で話題になっているのが小学生の「こ」食。これは、5つの「こ」の漢字に当てはめて問題提起をしているものです。

1つ目は「孤食」。共働きをする親御さんが多い社会ですが、仕事の都合でどうしても帰宅が遅くなり、出来合いの物をレンチンして食べたり、お子さんの食事時間に合わせて用意することができなかったりする状態をいいます。

規則正しい食習慣を身につけたい時期ですが、お子さん一人の食事となり、食べる時間がバラバラになったり、バランスの良い食事をとることが難しくなります。

2つ目は「個食」。例えば、おじいさんは柔らかい物(煮物など)、お父さんは酒の肴、お母さんはダイエット食、お子さんは好きな物と、家族そろって食卓を囲むことができているものの、それぞれで食べる物が異なる状態をいいます。

3つ目は「固食」。これは、「こり固まった物を食べる(偏食)」という意味になります。例えば、毎日の朝食が菓子パンだけ、ダイエット中だから〇〇だけしか食べない(お子さんには少ない)など、食事が偏ってしまってバランス良く栄養が取れなくなってしまいます。

ちなみに、文字通り、固い物を食べることはお勧めします。固い物は自然とかむ回数が増えて、食べ物の消化・吸収を助けたり、脳の活性化にもつながります。

4つ目は「粉食」。小麦粉を使った料理ばかり食べることです。粉物の代表的なお好み焼きは具材がある程度そろっているのでまだマシですが、具材がシンプルなたこ焼きが夕食というのは栄養バランスを欠くことになりますので、気をつけたいですね。

最後は「濃食」で、味の濃い物ばかり食べることをいいます。味の濃い物、特に塩辛い物ばかり食べて、それがおいしいと感じてしまうと、味つけの薄い物や食品そのものの味を感じづらくなってしまいます。

もう一つ、大きな問題として挙げられるのが化学調味料と添加物です。化学調味料はごく少量で味がつきますし、添加物は本来の味に似た物を人工的に作り出します。これらを使用した物に食べ慣れると、本来の味がわからなくなってしまうという錯覚が生まれます。

さらに、食品や飲料で使用されている人工甘味料。こちらもごく少量で味つけできるため、とても甘いのにゼロカロリー(エネルギーがない)という物があります。エネルギーが足りていないのに、甘さだけを感知して勘違いした脳が「もう満腹だから食べるのをやめなさい」と指令を出してしまいます。

小学生年代で人工甘味料に慣れてしまうと、この後の中学生、高校生でエネルギーが必要な時に適切な量を食べることができなくなります。人工的な物はとても便利で食生活にも密接していますが、体作りを考えるのであれば、小学生年代ではなるべく控えた方が良いでしょう。

「しっかり食べる」意識づけを

小学生年代でも、熱心に練習を続けている人は多いと思います。ただ、これも体の成長を考えると弊害が出てきます。

夜遅くまで練習が続く場合、帰宅時間が遅くなって食事の時間が本来睡眠をとる時間帯にかかってしまいます。そうなると、睡眠時間が削られて眠りが浅いまま起床→お腹がすいていないので朝食を抜くという悪循環に陥ります。

週末は1日で何度も試合があって、物を食べる機会が失いがちになります。お腹に物が入っていると動きが鈍くなるので、簡単な物で食事を済ませてしまうこともあるでしょう。

しかし、小学生年代のうちから、しっかり食べることを意識しておかないと、何度もいうように中学生、高校生で最も食べなくてはいけいない時期に食べられなくなります。

それから、小学生年代は味覚が確立されてきて、好き嫌いが増えやすい時期でもあります。食べ方や食べる物を意識することが大切になってきます。

今年は新型コロナウイルスの蔓延によって、かつてない状況になっています。学校が始まらなかったり、給食が提供されなかったりと、必要な栄養をとれないケースが出てきてしまいました。

「こ」食問題に始まり、今年の状況を踏まえると、小学生年代は特にスポーツを頑張っているお子さんにとって、理想的な食習慣を整えることが難しいといえます。

小学生年代は体が急激に大きくなる時期ではないので、たくさんの量を食べることがそれほど必要ではありません。「規則正しい時間に食事をする」「きちんと朝ごはんを食べる」といった基本的なところを押さえておきましょう。

また、小学生自身でバランスの良い食事をとれるようになりたいですね。最初は意識をしながらですが、それを続けていけば無意識にできるようになってくるはずです。

<次回に続く>