神戸女子大学・坂元美子先生による「Z世代におくるスポーツ栄養講座」。第7回は「スポーツを頑張る高校生にとって大切なこと」がテーマ。

高校生になると、プロスポーツ選手並みの練習量、パフォーマンスが求められるようになる。もしかしたら、練習量はプロ以上かもしれない。ただ、勉強、放課後の練習、土日の試合、遠距離の通学など息つく間もない多忙な毎日で、少しでも気を抜けばケガにつながってしまう。

ケガは、ライバルに差をつけられたり、力を発揮できなかったり、目標とする大会に出られなかったりする「悔しさ」の元凶でもある。

光り輝く高校生たちが悔しい思いをしないように、食事はもちろん、他の大切な要素も頭に入れておく必要がある。

Z世代:欧米で10~20歳を指す言葉として使われている。スポトリでは「成長世代」と同義と捉えて使用する。

動画は、図表を交えながらの解説になります。内容は#07-1、#07-2を合わせたもの。

スポーツを頑張るために必要なエネルギー量を知っておこう

これまでの講座で示してきたエネルギー摂取量は、食事摂取基準(厚生労働省)に基づいたもので、あくまで一般的な数値になります。

高校生年代に入り、練習やトレーニング量が増えて成長が進んで筋肉量も増えてくると、必然的にエネルギーの必要量も多くなってきます。

ですから、すでに成長期に入った、または成長が進んでいる高校生たちは、一般的な数値ではなく、よりスポーツに特化した数値を知る必要があります。

スポーツ選手向けの推定エネルギー必要量を求める計算式がありますので、自分の競技特性や体格などを把握し、日々の練習、食事に役立てましょう。

<スポーツ選手の推定エネルギー必要量>


除脂肪体重(LBM)とはその名の通り、体の脂肪分を除いた筋肉・体水分(血液含む)・骨などを合わせた重量のことです。

推定エネルギー必要量を求めるためには「LBM」が、LBMを算出するためには「体脂肪率」が必要です。自分のLBM値がすでにわかっている人は【STEP:03】からでOK。

【STEP:01】
体脂肪率を求めよう(概算)。
①自分の標準体重を求める
身長 (m) × 身長 (m) × 22

②体脂肪率を求める
(実際の体重-①) ÷ ① × 100

【STEP:02】
LBMを求めよう。
LBM = 体重-[体重×(体脂肪率÷100)]

【STEP:03】
推定エネルギー必要量を求めよう。
28.5×除脂肪体重(LBM)×種目分類別PAL(身体活動レベル)


種目分類別PAL(表)は、競技によって特性などが異なり、個人のエネルギー量も変わってくるため、持久系、筋力・瞬発力系、球技系とそれぞれの競技に分けて数値化したものです。

表では、マラソンや長距離などの持久系競技は他の競技よりも数値が高くなっていますが、これはより多くのエネルギーが必要(=著しいエネルギー消費)であることを示しています。

「たくさん食べる」の受け取り方

高校生は「一生のうちで一番食べなければいけない(エネルギーが最も必要な)時期」と繰り返しお伝えてきました。ただ、「たくさん食べる」といっても、食が偏ってしまうと体の中で栄養をうまく使うことができません。

体を大きくする目的で、タンパク質(プロテイン)ばかりとったとしても、タンパク質を体の材料に変換するビタミンB群が不足していては筋肉になりませんし、身長を伸ばすためにはカルシウム、マグネシウムといったミネラルも同時に必要です。

また、エネルギー源である炭水化物が不足した状態でタンパク質をとっても、体の材料になる前にタンパク質がエネルギーとして使われてしまうので、目的を果たすことができないのです。

ですから、「たくさん食べる」よりも「バランス良く食べる」の方を意識してほしいと思います。これは、以前提案した「毎食7つの色をそろえる」につながってきます。

小学生のうちから心がけたいところですが、高校生になってから始めても大丈夫です。まずは量よりもバランス、7つの色の食材を毎食とるように意識して、それができるようになったら量を増やしていくといいでしょう。

男子は男性の体に、女子は女性の体に変化

高校生は、男女ともにホルモン分泌が最も活発になる時期になります。男子は男性らしく、女子は女性らしく、体が変化していきます。

男子の場合、男性ホルモンが正常に分泌されていれば、それほどハードなトレーニングを積まなくても自然と筋肉の量は増えていきます。ですから、筋肉をつけるための栄養よりも、ホルモン分泌が促される栄養を考えていくと良いと思います。

女子の場合、女性ホルモンを正常に分泌させるためには、ある程度の体脂肪が必要になってきます。審美系競技(新体操、フィギュアスケートなど)や体重別競技で、過度なダイエットや減量によって適切な体脂肪が確保できないと、「女子選手の三主徴(FAT=Female Athlete Triad)」を代表とするさまざまなスポーツ障害をひき起こします。

スポーツ障害は選手寿命を縮めたり、競技生活からの引退を余儀なくされるので、そうならないためにも「体脂肪を減らしすぎないこと」を認識しておきましょう。

坂元 美子(神戸女子大学) 文・構成:編集部

神戸女子大学卒業後、仰木彬監督、イチローが在籍するオリックス・ブルーウェーブ(当時)の栄養サポートを担当。在任中に球団の栄養サポート体制を構築、日本シリーズ制覇も経験した。その後、スポーツ系専門学校を経て母校に戻り、健康スポーツ栄養学科で教べんを執る。
特に、サッカー・野球の栄養指導・サポートに定評があり、強豪校での指導経験が豊富。企業との共同研究、スポーツサプリメント開発を手掛けるなど、活動の幅は広い。プロのスポーツ現場で雇用された管理栄養士の先駆け。