神戸女子大学・坂元美子先生による「Z世代におくるスポーツ栄養講座」。第4回は「小学生年代の食の問題点を解決するために ~にじ色をそろえよう!~」をテーマにお送りする。
バランスの良い食生活を崩してしまう小学生年代特有の「こ」食問題。毎日の生活の中で自然とバランス良く食材がとれるようになるのが解決の糸口になってくる。
坂元先生は、7つの色(虹色)と食材を組み合わせて覚え、小学生のうちから食への意識を高める必要性を訴えている。
Z世代:欧米で10~20歳を指す言葉として使われている。スポトリでは「成長世代」と同義と捉えて使用する。
「こ」食の解決=食のバランス
前回、小学生年代の食の問題点として「こ食」を取り上げましたが、これはバラン良く栄養がとれなくなることを意味しています。ですから、「どのようにしてバランスのいい食事をとるか」がこの問題を解決するポイントになってきます。
一言で「バランス」と言ってもなかなか難しいですよね。「そもそもバランスのいい食事って何?」と思う方もいるかもしれません。
そこで、私からの提案です。朝・昼・晩で毎食、7つの色の食材を意識してそろえていただきたいと思います。7つの色とは、赤、だいだい、黄、緑、青、藍、紫で、「虹」の色を表現しています。
小学生のうちから毎食、「虹色の食事」を意識していただければ、みなさんのスポーツ選手としての未来も虹色に輝いてきますよという、私からのメッセージでもあります。
虹色の食材を考えてみよう
ず、「赤」は、牛・豚・鶏の肉類と卵。多く含まれる栄養素は、タンパク質、ビタミン、ミネラルになります。肉や卵はいろいろな調理法がありますので、朝食からしっかりそろえるようにしたいですね。
次に、「だいだい」は、魚介類、豆腐・納豆など大豆製品で、多く含まれる栄養素は、タンパク質、ビタミン、ミネラルです。
「黄」は「主食」といわれている物で、ごはん、パン、麺類、餅などが挙げられます。多く含まれる栄養素は、炭水化物(糖質)です。
「緑」は、色が濃い緑黄色野菜といわれる物です。いも類、海藻類もこのグループになります。ほうれんそう・ブロッコリー・にんじん、わかめ・ひじき・こんぶ、さつまいも・じゃがいも・やまいもなど、ビタミン、ミネラル、食物繊維が多く含まれています。
「青」は、淡色野菜といわれる色の薄い物になります。だいこん、きゅうり、なす、ごぼう、たけのこ、なす、レタスとたくさんあります。きゅうりやなすは一見、緑黄色野菜と思われがちですが、皮をむくと白っぽいので、「青」になります。多く含まれる栄養素は、ビタミン、ミネラル、食物繊維です。
ここで、「緑」と「青」の野菜を比較してみましょう。どちらも多く含まれる栄養素は同じですが、実は「緑」の方がより豊富に含まれています。
スポーツ選手に「野菜をちゃんと食べていますか?」と聞くと、「サラダやキャベツの千切りをいっぱい食べています」と、返ってくることがあります。これらは淡色野菜の「青」で、もちろん栄養素はとれるのですが、意識してとりたいのは緑黄色野菜の「緑」の方です。
また、「緑(海藻類:わかめ・ひじき・こんぶなど)」は、特にミネラルが豊富に含まれていますので、体の成長、スポーツ選手になるための体作りを考えて、毎食積極的にとっていきたいところです。
「藍」は、牛乳、チーズ、ヨーグルトなどの乳製品を表しています。タンパク質、ミネラルが多く含まれ、特にカルシウムが豊富です。「緑」でもカルシウムをとることができますが、吸収率が低めという欠点もあります。一方、「藍」は「緑」よりも2倍の吸収率があるといわれているので、カルシウムを効率的にとるなら「藍」の方が良いでしょう。
「藍(牛乳、チーズ、ヨーグルトなど)」をとる上での注意点は食物アレルギーです。もし、乳アレルギーがある場合、「緑(海藻類)」、「だいだい(大豆製品、骨ごと食べられる小魚)」などで代替して、毎食しっかりとれるように心がけましょう。
「紫」は果物全般になります。特におススメしたいのがすっぱい物で、これらはさまざまな栄養素の吸収を良くするクエン酸が含まれています。食後のデザートにすっぱい果物を食べることで、食事でとった栄養素を体内に取り込みやすくしてくれます。成長に必要なビタミンCもより多く含まれています。
また、果物には糖質が多く含まれているので、成長に必要なエネルギー源を「黄(炭水化物)」とともにとっていただければと思います。
このように、7つの色の食材を毎食とっていれば、自然にバランス良く栄養素をとれるようになっていきます。
不足した色を自分でそろえられるように…
小学生が栄養素の名前を覚えようとすると難しいと思いますので、まずは7つの色とどんな食材があるかを覚えると良いでしょう。
それができたら、次は普段の食事で「これは何色の食材」と一つ一つ確認をしながら食事をとってみましょう。
最終的には、毎回の食事で足りない色があれば、自分で冷蔵庫を開けて用意する。このくらいまでできるようになるのが理想です。
この段階までくれば、無意識にバランスの良い食事がとれるようになっていますし、身長・体重、内臓(消化・吸収能力)などの成長が顕著で、最も栄養が必要な中学生、高校生の時期に「たくさん」食べられるようにもなっているはずです。
「たくさん食べる」という点から注意が一つあります。前回お話しした「濃食(味が濃い物を食べる)」には気をつけていただきたいですね。
特に化学調味料がたくさん使われている物は、少し食べただけで脳が満腹感を覚えてしまい、たくさん食べたと勘違いしてしまいます。小さい頃からこれに慣れてしまうと、本来必要な量をとることができず、成長に悪影響が出てくる可能性もあります。
ですから、小学生のうちはできる限り、自然な食品・食材そのものの味をおいしいと感じるような食生活を送ることが必要になってきます。
坂元 美子(神戸女子大学) 文・構成:編集部
神戸女子大学卒業後、仰木彬監督、イチローが在籍するオリックス・ブルーウェーブ(当時)の栄養サポートを担当。在任中に球団の栄養サポート体制を構築、日本シリーズ制覇も経験した。その後、スポーツ系専門学校を経て母校に戻り、健康スポーツ栄養学科で教べんを執る。
特に、サッカー・野球の栄養指導・サポートに定評があり、強豪校での指導経験が豊富。企業との共同研究、スポーツサプリメント開発を手掛けるなど、活動の幅は広い。プロのスポーツ現場で雇用された管理栄養士の先駆け。