心を育む食事とは
みなさんには「思い出に残る食事」はありますか。また、「今まで食べた中で一番おいしかった料理」は何でしょうか。
同じ料理でも、1人で食べるより家族や友人と食べる方がおいしく感じたり、旅行での食事の方が満足感を得られたりしたことがある方もいるでしょう。
私たちは食事をする際、「何を」「どのくらい」食べるかに加えて、「誰と」「いつ」「どんな風に」食べるのかを選ぶことができます。食事は、身体をつくるだけではなく、楽しみや癒しの時間となり、心の健康にも大きく影響します。
では具体的に、心の健康にとって良い食事とはどのような食事なのでしょうか。3つのポイントを挙げていきます。
①誰と食べるのか
心の健康にとって良い食事の1つ目のポイントは「誰と食べるのか」です。皆さんは「誰か」と食事を共にしていますか。最近では「孤食・子食」という言葉があるように、共働き家庭や習い事をする子が増えたことで、1人だけ、もしくは、子どもたちだけで食事する場合が多くあります。
ある調査では、大人と一緒に食事をする子どもの方がそうでない子どもに比べて、食事中の会話量が多く、食事を「楽しい」「とても満足」と感じる割合が高いことが報告されています。また、高齢者でも「孤食」をしていない人は「孤食」をしている人に比べて、心理的な健康度が高く、うつ傾向の頻度が低いことが明らかになっています。
食事を通して家族や友人とのつながりを持ち、自分自身を大切にしたい・自分自身が大切にされているという自尊感情を得ることは、子どもにとっては健やかな発育の土台となり、大人にとっては活動的な日常生活を支える生きがいとなります。とはいえ、毎食誰かと食事をすることは難しいという方も多いでしょう。その様な方は、1日や1週間の中で誰かと一緒に食べる時間を意識して作れると良いですね。
②いつ食べるのか
2つ目のポイントは「いつ食べるのか」です。「空腹は一番のスパイス」といわれますが、この「空腹になる時間を自分で整える」=「食事の時間を一定にして生活リズムを整える」ことが、心の健康にもつながります。
私たちの身体や心は、目には見えないさまざまな「ホルモン」の働きによってバランスが調整され、健康を保っています。これには生活リズムや食事の時間が密接な関係にあります。一日は24時間ですが、実は人間の身体のリズムである「体内時計」は一日25時間です。この1時間のずれを、朝食がリセットしてくれます。
朝食を抜かないことはもちろんですが、夕食が夜遅くになってしまいそうなときには、夕方に一度間食をとり、遅い時間には消化の良いもののみにするなど、工夫をしてみてください。
③どのように食べるのか
最後のポイントは「どのように食べるのか」です。ここで想像してみてください。「家族や友だちとテーブルを囲んでいるものの、スマートフォンやテレビに夢中になっている人がいたり、仕事をしながら食べている人がいたりする食卓」と「同じ料理を食べながら会話を楽しむ食卓」。どちらの食卓が心の健康にとって良いものになるでしょうか。
子どもたちにとって、大人のスマホ使用の有無が食事の楽しさと関係していたという報告や、ただ一緒に食べることよりも、食事中に家族と会話をすることが心の健康にとって大切だという報告もあります。さらに、家族でそれぞれ自分の好きなものを食べることは、子供の好き嫌いやわがままを助長することになります。
子どもの味覚を広げるためにも大人と同じものを同じ空間で食べることが一番理想です。食事中は同じ空間にいるだけで終わらせず、一緒に食べる人とコミュニケーションを取り、心を育む時間にしていきたいですね。食事を誰かと食べているよという人でも、今一度「どんな風に」食事をしているか見直しをしてみてはどうでしょうか。
また、家族での食事の時間は、子どもたちが大人からマナーや食文化を学ぶ良い機会です。「今日の○○美味しいね」「箸を上手に使えているね」「いただきますとごちそうさまをちゃんと言えたね」「今日は学校でこんなことがあったよ」などちょっとした会話で構いません。食事の時間は食事や食卓から生まれる会話に花を咲かせるように心掛けていきましょう。
最後に
今回は、「心を育む食事」というテーマでお伝えしました。「何を」「どのくらい」食べるのかを選ぶだけではなく、「誰と」「いつ」「どのように」食べるのかという環境を選ぶ力も選食力です。
難しく考えるのではなく、食事を楽しむことを第一に考え、日々の出来事を話せる賑やかな団欒が理想なのかもしれませんね。身体と心が健康でいられるように、今回お伝えしたことも皆さんが食事を選ぶ際のものさしに加えてみてください。
次回は、選食力の最後「安全・安心のルール」についてお伝えします。