食品大手「カルビー株式会社(本社:東京都千代田区)」は、全国1880人の男女18~69歳に対して朝食に関する意識調査を実施した。朝食欠食による健康リスクはさまざまな研究で示唆されており、朝食習慣の見直しは課題となっている。
最近の朝の起床時に自覚する症状について、「毎日朝食を食べている人(70.8%)」のうち、57.4%が朝の起床時の体調について「問題がない(目覚めがすっきりする/頭がすっきりする/快調である/気分が良い/身体が軽い/特に自覚することはない )」と回答した(図1)。
起床後の行動時間について、「朝起きてからどのくらいで脳が働き始めるか」に対し、「朝食を噛んで食べる(よくかんでいる・まあまあかんでいる:75.9%)」のうち、81.1%が「起床後1時間未満で脳が働き始める」と回答した(図2)。咀嚼派(75.9%)のうち、37.3%が仕事上の目標に対して「常に達成できる/おおむね達成できる」と回答した(図3)。
一人暮らしをしている人(19.8%)のうち、「朝食を毎日食べている」と回答した人は57.6%となり、同居人がいる層の74.1%に比べて朝食習慣を持っている人が少ないことがわかった(図4)。
調査結果を受けて、医学博士で自然科学研究機構 特任准教授の坂本貴和子氏は以下のようにコメントしている。
・朝食と体調に関する調査結果について
朝の寝起き時は、体が一番栄養を欲しているタイミングです。その時にきちんとエネルギーを摂ることは、体をその日一日きちんと機能させる上でとても大切なことだと思います。
・咀嚼と脳の目覚めに関する調査結果について
(自身がおこなった)研究によると、咀嚼は、外界から入力された刺激を脳が認知、判断、処理する過程へ影響を与え、結果的に脳の活性化や反応時間の短縮など、さまざまな効果をもたらすことがわかっています。朝食をしっかり噛んで食べた人の多くが覚醒を実感できたという回答は、研究成果からも不思議ではないと思います。
・咀嚼をすることの意味 ~咀嚼によって脳の活動を賦活化~
噛み切ることに適した切歯とすり潰すことに適した臼歯を併せ持つ人間は、咀嚼することで食物を細かく分解し、胃や腸での消化と吸収を助けます。
しっかりよく噛むことは、食べ物をより消化・吸収しやすくすることで、迅速に栄養を全身に巡らせることにつながります。さらに最近の研究では、咀嚼によって脳の活動を賦活化することがわかってきました。
・咀嚼によって脳が活性化する(脳が目覚める)理由 ~リズム運動は脳の覚醒を促す効果~
歩行や自転車漕ぎなどのリズム運動(無意識で続けることができる運動)には、脳の覚醒を促す効果があることが知られています。
咀嚼は、体勢や場所を選ばない、静止状態でもできるミニマムなリズム運動ですので、歩行などと同じく脳の覚醒を促すことにつながっているのではないかと考えられます。
・朝食をよく噛んで食べることのメリット ~寝起きは脳もまだきちんと覚醒していない状況~
朝の寝起き時は、体も低血糖状態で栄養を必要としていますし、脳もまだきちんと覚醒していない状況です。朝によく噛んで食べることで、胃や腸の負担を軽減しながらいち早くからだ全体へ栄養を行き渡らせることにつながります。
加えて、咀嚼には脳の覚醒効果があることから、ドリンクなどで朝食を済ませてしまうより、よく噛む必要のある食事の方が脳をより迅速に覚醒させることにつながると考えます。
● 新生活のシーズンにおける朝食習慣のアドバイス ~自分の体や生活そのものに負荷をかけない範囲で、まずは朝食をとる生活を意識~
咀嚼による脳の活性を促す上で大切なのは、「無理に固いものを食べよう」「たくさん噛もう」と意識し過ぎないことです。口や顎の状態は人それぞれ違いますし、体調も日によって違うため、食材の硬さや噛む回数の最適解は、人それぞれ、日によって異なります。
脳を覚醒させるリズム運動のポイントは、無意識で続けられる運動であることです。自分の体や生活そのものに負荷をかけない範囲で、まずは朝食をとる生活を意識しましょう。そしてその中に、できる範囲で良いので、よく噛む食品を選ぶことから始めてみてはいかがでしょうか。