時代が進むとともに、私たちの生活を取り巻くものが変化していく中、「家族や親しい人と共に食事をする」という機会が少なくなってきました。今回は「現代の食卓における問題」について2つお話しします。

現代社会の〝食卓問題〟

昔は、祖父母など親以外の大人とも一緒に生活をしており、マナーや文化は「共に食べること」を通して自然と子ども世代へと受け継がれていました。しかし、現在は核家族や共働き家庭の増加で、その機会は失われつつあります。

時代の変化などによって生じた家庭の食卓で起きている問題には、どのようなものがあるのかを見ていきましょう。

①朝食を食べない

近年おこなわれた子どもと朝食に関する調査1-2)によれば、「朝食を毎日食べている子ども」は、乳幼児(2~6歳)と小学6年生で約95%、中学3年生で約90%に上り、ほとんどの子どもに朝食を食べる習慣があることがわかります。

しかし、大人を対象とした調査3)では、「朝食を食べない人」の割合は20~29歳の男性で27.9%、女性で18.1%、30~39歳の男性で27.1%、女性で22.4%と、男女ともに若い世代の朝食欠食が高いことが示されました。また、女性よりも男性の方が朝食を食べる習慣がない傾向にあるようです。

食べない・食べられない理由として、「夕食の時間が遅い」「朝早く起きられない」「作る時間がない」「食べる時間がない」「食欲がない」「あえて食べない(ダイエット)」などが挙げられます。

子どものころは朝食を食べていても、大人になると食べなくなる傾向にあり、朝食を食べた方が良いと頭では分かっていても、「忙しい」「面倒くさい」などの理由で後回しになっているのが現状です。

実際に生活習慣を変えるとなると難しいものですが、〈朝ごはんを食べる時間を作る〉→〈早寝をする/夜のうちに朝食の支度をする〉→〈夕食の時間を○時にする/風呂は○時までに済ませる〉→〈○時までに帰宅する〉…のように、朝食を中心に考えると健やかな生活習慣を送るヒントが浮かび上がってくるはずです。

1) 厚生労働省 : 平成27年度乳幼児栄養調査
2) 文部科学省 : 令和元年度全国学力・学習状況調査
3) 厚生労働省 : 平成29年国民健康栄養調査

② 子どもから高齢者までをとりまく7つの「こ食」

現代の家庭での食卓の問題点を表した「こ食」。それぞれの意味と、「こ食」によって生じる問題・リスクを見ていきましょう。

〈孤食〉一人だけで食べること
「おいしいね」と食事の楽しみを共有したり、マナーの見本となったりする人がいない状態での食事は、偏食や社会性が身につかないことにつながります。

〈個食〉家族それぞれが自分の好きなものを食べること(バラバラ食)
「食べたいもの」の主張があることは大切ですが、食べたいものばかりを食べることは偏食や協調性に欠けることにつながります。

〈子食〉大人がいない状態で子どもだけで食べること
食べるものや食事量、噛む回数など、様々なことを子どもの好みで判断できてしまうため、偏食の要因の一つになります。見本となる人がいないため、食事のマナーを日常的に学ぶ機会を得られないことも問題点です。

〈小食〉食欲がなく、食べる量が少ないこと
必要な栄養が不足し、発育に影響が出たり、何に対しても無気力な状態に陥ったりします。また、〈孤食〉が続くと〈小食〉につながりやすくなります。

〈固食〉好きなもの、決まったものしか食べないこと
食べるものが固定されてしまうと、栄養が偏り、味覚が育たないことや生活習慣病、アレルギーの原因になります。ビタミン・ミネラル不足は集中力低下の原因にもなります。

〈濃食〉濃い味のものを好んで食べること
味の濃いものばかりを食べ続けていると、塩分の摂り過ぎや食べ過ぎの原因になるだけでなく味覚が鈍る原因にもなります。

〈粉食〉粉製品を好んで主食にすること
パン、うどん、ラーメン、パスタなどの粉から作られたものは、米と比べると柔らかいため噛む回数が少なくなります。また、カロリーや脂質、塩分が多くなる傾向があります。

避けたい7つの「こ食」4)

この中で、近年特に問題になっているのが高齢者の「孤食」です。その背景としては、核家族の増加や地域の過疎化、また地域の集まりの減少等が挙げられます。

「孤食」の回数が多い高齢者は、「QOL(生活の質)が低い」「うつ傾向がある」「食の多様性に乏しい」「やせ傾向にある」などの問題を抱えており、これらは食育の側面からだけでなく、地域医療・介護の点からも問題視されています。次世代へ食のマナーや食文化について伝えるという役割を顕在化させることが解決に向けた一つの手になるのでは、と考えられています。

一緒に食べるために一緒に買い物をしたり、料理をしたりすることも良いですね。「食べたい」「食べてみたい」気持ちが駆り立てられることでしょう。あるいは家庭菜園や農業体験をするのもおすすめです。「おいしく食べるための」または「食べものを作る」苦労や喜びを知ることができます。毎食「こ食」を避けることは難しいかもしれませんが、食事の際には心掛けてみてくださいね。

4) 厚生労働省 : 保育所における食事提供ガイドライン

まとめ

今回お話しした「朝食」や「こ食」に関する問題点の多くは、「一緒に食事をする」「食事をしようと意識する」ことで、解消につながるのではないかと考えます。誰かと一緒に食べると、その分おいしく楽しくなるはずです。

毎日の家事や仕事で忙しく、生活習慣を変えることは腰が重くなりがちですが、今できることから少しずつ取り組んでみませんか?

次回は食育3本柱の3つ目「地球の食を考える」についてお話しします。

㈱ミールケア 食育開発部