料理家で世界を知るトライアスリートでもある高橋善郎さんのレシピ開発企画「二刀流の流儀」。
日ごろのトレーニングや大会出場時など高橋さんの体感を基に、どんな物が食べたいか、何を食べたらいいかを踏まえて、トライアスロンを構成する3種目、スイム・バイク・ランを愛する人たちに向けて、摂取するタイミングにも言及したスポーツフードを提案します。
夏特有のリスクに備える
4月から管理栄養士を目指すべく、専門学校に入学しました。2年間、栄養士科での過程を経て管理栄養士科に転科予定です。入学してからの3カ月は非常に濃密で、自分が興味を持っていた栄養に関する勉強に注力できています。
勉学に加え、料理研究家の仕事と店舗経営、そして家族の時間も大切にしつつ、さらにはトレーニングもこなしながらなので、とにかく時間がいくらあっても足りない…と思うことはありますが、時間は有限。サイクルをうまく回せるように試行錯誤の日々ですが、そんな毎日も将来のやりたいことに通じていると思うと楽しくてたまりません。
このコラムを書いていても、日々の勉強や実験が役に立っているなと感じるので、少しでもみなさまに小さい気付きを感じていただけるよう工夫していきたいと思います。
今は夏真っ盛り。年代問わず、この時期は熱中症をはじめ夏特有のリスクがたくさんあります。それらを回避し、いかにパフォーマンスを上げるかを考えながらトレーニングされている方も多いのではないでしょうか。
ジュニアとなればなおさら、まだまだ体が発展途上な分、気を使うことも多く、これをやっておけば間違いないということも当てはまらないこともしばしば。しっかり栄養を摂って、それぞれの種目でパフォーマンスを上げていただきたいと思います。
中でも夏場は暑さゆえ、水分補給は特に気にしていただきたいですね。また、夏場は冬に比べて故障のリスクなどは少ないですが、疲労が残りやすい時期でもあるため、トレーニングメニュー+α、食事でケアしていくことで、より短時間でのリカバリーが可能になります。
何となく夏場はさっぱりとしたものがいいな…と思う方も多いと思います。その通りではあるものの、さっぱりした要素だけだとアスリート向けの食事としては不十分。種目によって、そもそも体のエネルギー源となる炭水化物、筋肉などを作るためのたんぱく質、ばてないスタミナを形成するための脂質、さらには体の生理機能を調整するビタミンなど、やはりバランスよく摂るのがベストです。
今回は、そんな要素を取り入れたワンパンレシピ、「鶏肉とズッキーニの黒酢あんかけ炒め」をご紹介します。有名な某和食チェーン店でも人気の高い黒酢あんかけですが、自宅でも簡単に作れて代替食材の幅も広いので、お子さまの好きな食材で作れるのも魅力のひとつですよ。
料理時間
15分
鶏とズッキーニの黒酢あんかけ炒め
レシピ
【材料(2人分)】 | |
鶏もも肉(から揚げ用ぶつ切り) | 約300g |
ズッキーニ | 1/2本 |
にんじん | 1/2本 |
玉ねぎ | 1/4個 |
ごま油 | 大さじ1 |
片栗粉/白髪ねぎ | 各適量 |
【A】 | |
黒酢 | 80ml |
砂糖/しょうゆ | 各大さじ1と1/2 |
みりん/酒/水 | 各大さじ1 |
すりおろししょうが | 小さじ1 |
片栗粉 | 小さじ1/2 |
作り方
STEP:01
鶏肉に片栗粉をまぶす。ズッキーニは1cm幅の輪切りにし、にんじんは皮付きのまま小さめの乱切りにする。玉ねぎはくし形切りにする。ボウルに【A】を混ぜ合わせてたれを作る。
STEP:02
温めたフライパンにごま油をひき、にんじん、鶏肉を皮面から入れ、中火前後で時々返しながら全体に焼き色がつくまで焼く。ズッキーニ、玉ねぎを加え、食材全体に火を通す。
STEP:03
キッチンペーパーで余分な油を軽くふき取る。再度混ぜ合わせた【A】を加え、中火前後で具材全体を混ぜ合わせながらとろみがつくまで加熱して火を止める。器に盛り付け、白髪ねぎを添える。
【ポイント】
・黒酢(酢も同様)は、加熱することで酸味がやわらかくなり、みりんだけでなく、砂糖も加えた方がより食べやすい味付けに仕上がります。
・使用する油はサラダ油でもOKですが、ごま油を使うことでより香ばしく仕上がります。また、たれを加える前にキッチンペーパーで余分な油をふき取ることで油はね防止にもなり、料理全体が重くならずに仕上がります。
・脂質を抑えたい方は、鶏もも肉を鶏むね肉や鶏ささみ肉、また白身魚などで代用していただくのが◎。
ずばり夏場に必要な栄養素は「クエン酸」。クエン酸と聞くと「疲労回復が期待できる」と思い浮かべる方も多いと思います。
今回使用している酢、特に「黒酢」はクエン酸はもちろん必須アミノ酸も豊富でビタミン、ミネラルなど体の調整機能に必要な栄養が多いのが特徴。前述した疲労回復、免疫力向上、カルシウムなど他の栄養素の吸収を高めてくれる効果などが期待できるので、夏場に積極的に摂りたい調味料、要素のひとつであることは間違いありません。
また、今回は鶏もも肉を皮付きで使用します。減量が必要な種目であれば取り除いて調理しますが、脂質は良質なエネルギー源でもあり、強い細胞を作るのにも欠かせない栄養素のひとつです。
ズッキーニに豊富に含まれるカリウムは、ナトリウムとミネラルのバランスを調整する機能もあるため、筋肉けいれんをひき起こすリスク軽減にも効果的。
にんじんに豊富に含まれるビタミンAは、皮膚や粘膜の健康に保つ効果や、免疫力を高める働きがあり、体全体の調子を高めてくれるので、こちらももれなくしっかり摂取。
しょうがはチューブでもOKですが、生のすりおろししょうがを使用することで、香りが良くなることはもちろん、夏場によく見られる隠れ冷え性防止効果も期待できます。
今回のレシピは、時間が経っても食材がパサついたりしないので、作り置きおかずにもおすすめです。
まずは栄養士取得のための2年間ですが、栄養学を学び始めてからはこのコラムも以前よりスラスラ書けるので、勉強の成果が出ていると個人的にも感じます(もちろんまだまだ勉強途中ですが…)。
何より自分がアスリートだからこそ一番大切にしている「学んだことを自分で試して効果が期待できるもの・ことをアウトプットする」ということは、これからも大切にしていきますので、少しでも参考になる内容にするべく精進していきます!