取材の裏側を伝える「サクッと取材・編集メモ」です。編集長が取材を通じて感じたことや思ったことを、3分で読めるボリュームにまとめました。
歯科医・島谷浩幸先生による歯に関する解説記事も合わせてご覧ください。
#28|デンタル連載一覧|取材・編集メモ
知られざる専門分野「スポーツデンタル」
正直に言えば、私自身も15年ほど前までは、歯とスポーツを結びつけて考えたことはありませんでした。歯といえば虫歯や歯周病の話で、競技力とは直接関係ないもの。多くの人と同じ感覚だったと思います。
しかし、専門家への取材を重ね、関連論文を編集する中で、私の認識は大きく変わりました。歯は単なる口の中の問題ではなく、健康、ひいては身体全体のコンディションと密接に関係しているのです。
スポーツの世界では「健康=コンディション」と言い換えられます。ならば、歯にも必ず専門領域があるはず。そうして辿り着いたのが「スポーツデンタル」という分野でした。
歯科医・島谷浩幸先生の連載では、これまで歯と健康に関する話題を中心に扱ってきましたが、医療現場の視点と研究データの両方に精通している先生だからこそ、ここ数回はスポーツ分野に特化した内容をお願いしました。
歯の意識、現場では?
今回、スポーツデンタルを取り上げた背景には、取材現場での率直な違和感があります。
ユース世代の選手や保護者に話を聞くと、「歯のことはあまり意識していない」という声が多く、これまでの取材でも歯や噛み合わせに触れる指導者に出会ったことはほとんどありません。
指導現場の空気も理解できます。競技力向上といえば、トレーニングや技術が最優先されます。栄養やメンタル、さらに歯のように効果が見えにくい要素は後回しにされがちだからです。
数値化しにくく、専門外とされやすい領域ほど、語られずに置き去りにされてきたのだと思います。
パフォーマンスを支える歯の力
今回の記事で示されたのは、筋力、バランス、瞬発力といったパフォーマンス要素の裏側に、歯や噛み合わせが確かに影響しているという事実です。
たとえば、咀しゃくや噛み合わせの状態が身体のバランスや反応速度に関わることもあるとされています。「パフォーマンスを上げる」という目的に向かう過程で、歯は決して周辺的なものではありません。
選手や学生、保護者が「うまくなりたい」「試合で活躍してほしい」と願う中で、ふと「歯」のことが頭をよぎるかどうか。それだけでも、この記事を届ける意味は十分にあると感じています。























