スポーツ・運動と食を結ぶウェブマガジン
お問い合わせ
2021.04.14
食事・栄養学
0
Twitter Facebook
ケガも老いも酸化から ~スポーツと抗酸化~ 【Z世代におくるスポーツ栄養講座 #13】
坂元 美子(神戸女子大学、管理栄養士)

神戸女子大学・坂元美子先生による「Z世代におくるスポーツ栄養講座」。第13回は、抗酸化について解説。

ケガの元になる活性酸素を除去(抗酸化)することは、スポーツを頑張るZ世代も成人もしっかり対策をしないといけない。過度なトレーニングはもちろん、日常には酸化を促してしまうものがあふれている。

栄養摂取など体の内外からケアを施し、健康な状態を維持したい。意外と知られていないが、将来にも影響があることから最も大事なのは酸化対策なのだ。

※Z世代とは、欧米で10~20歳を指す言葉として使われている。すぽとりでは「成長世代」と同義と捉えて使用する。

※記事と動画(図表解説あり)で少し内容が異なります。両方をご覧いただき、理解をより深めていただければ幸いです。

「Z世代におくるスポーツ栄養講座」動画一覧

「好相性の食材を組み合わせた目的別スポーツ食」動画一覧

動画「すぽとりChannel」


ケガの大元になる「酸化」、過度なストレスは禁物

体のさまざまな場所に起こるケガの一因になるのは「炎症」で、症状は四段階で現れてきます。患部が赤くなる「①発赤(ほっせき)」、熱く感じたり、患部が温かくなったりする「②熱感」、患部が腫れる「③腫脹(しゅちょう)」、ズキズキと痛む「④疼痛(とうつう)」で、これらは「炎症の四兆候」と呼ばれています。①②はケガに至る前の段階、③④はケガに至っている段階です。

スポーツ選手はトレーニングなどの激しい身体活動によって、炎症が出てきて当たり前の状態といえます。例えば、多くの球を投げる野球の投手は、肩や肘に負担がかかって①②が起きている可能性がありますが、投球後にアイシングなどをすることで③④へ症状が進むのを防いでいるわけです。

炎症は本来、人間が持つ生体防御反応が働いている証拠なので、炎症が起きないこと自体、体に異常があるということになります。ただ、炎症が起きているのに放置すると、ケガや病気につながってしまうので、体のケアや食事・栄養摂取が大切になってくるのです。

スポーツ選手のケガにつながる炎症の原因といわれているのが「活性酸素」で、特に有酸素のエネルギー代謝が活発なほど、体内に大量の活性酸素が生じます。活性酸素はもともと、殺菌作用などがあるので体にとって良い働きをするものです。しかし、激しいトレーニングなどで活性酸素が必要以上に発生すると、今度は発生した場所を攻撃するようになって体に害が及びます。これが「酸化」と呼ばれるもので、炎症や老化の直接的な原因ともいわれています。

スポーツ選手は成長するためにトレーニングを行いますが、しかし、体の負担になる必要以上のトレーニングは、酸化をひき起こす「ストレス」(酸化ストレス)にもなります。激しいトレーニングのほか、普段の日常生活にも酸化ストレスは潜んでいて、喫煙(たばこの煙)、排気ガスなどの大気汚染物質、化学物質、紫外線(日焼け)、アルコールなどが挙げられます。こうした酸化ストレスを日々浴び続けていると、やがて体内で処理することができなくなって炎症、老化につながってしまうわけです。

少し整理すると、スポーツ選手が行う過度なトレーニング(体ヘの過剰なストレス)→活性酸素の発生→(対応しなければ…)酸化(老化)→(対応しなければ…)炎症→ケガとなります。

では、どのように酸化を防いでいくのか。スポーツ選手が成長するためにある程度自分を追い込んでトレーニングが激しくなるのは仕方ないので、酸化ストレスをなくすためにトレーニングをしないというのは本末転倒です。そうなると、酸化を予防する、活性酸素を除去(分解)するなど、「抗酸化」を毎日の生活、食事から意識していくことが問題の解決につながっていきます。

「色」が酸化を防ぐことに役立つ

抗酸化の働きがある食品成分はいくつかあり、その一つが「フィトケミカル」です。多くは、植物が作り出す天然の色素になります。

最も知られているのが「カロテノイド」で、橙色の色素を持つ「β-カロテン」はにんじんに、「β-クリプトキサンチン」はオレンジやパパイヤに含まれています。赤色の色素を持つ「リコピン」はトマト、スイカ、グアバに含まれ、「ルテイン」はほうれん草に多く含まれています。

紫色の色素を持つ「アントシアニン」は、ぶどう、ブルーベリーに含まれる「アントシアニジン」、なすの「ナスニン」、しその「シソニン」があります。「フラボノイド」もよく知られていて、大豆に含まれる「イソフラボン」は、女性ホルモンと同じ作用を持つもの(ホルモン様作用)として女性の味方になる成分でありながら、抗酸化作用も期待できます。玉ねぎの「ケルセチン」、茶やチョコレートの「フラバノール」は「カテキン」の仲間でもあります。

先に挙げたカロテノイドは「プロビタミンA」と呼ばれており、抗酸化作用を持っているのはもちろんですが、体内でビタミンAが足りなくなるとそれを補完する働きをします。この万能性からカロテノイドを多く含む食品は特にお勧めといっていいでしょう。

抗酸化作用の強い食品は、植物性の物が多いのですが、鮭やエビの殻などに含まれる動物性の色素「アスタキサンチン」があります。食事からアスタキサンチンを摂取しようとすると、鮭の切り身を何枚も食べなければなりませんので、植物性の野菜、果物から摂取する方が現実的といえます。

これまでに挙げた野菜や果物は熟すことで色が濃くなっていくのですが、熟成が進むほど抗酸化作用が強まりますし、旬の時に最も色が深まります。色の濃さも食品を選ぶ時の参考にしてみてください。

「酵素」の力で活性酸素を分解、ビタミンCとEの相乗効果

人間の体は、発生した活性酸素を分解する酵素を作り出すメカニズムが備わっています。体内で産生される活性酸素分解酵素は「スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)」、「カタラーゼ」、「グルタチオンペルオキダーゼ」で、年齢とともに産生力が低下するといわれています。これらの材料になる成分はいずれもミネラルになります。

SODの材料になるのは亜鉛・銅で、亜鉛は玄米、牛肉、貝類、中でも牡蠣に、銅はイカ、タコ、ココアに多く含まれています。カタラーゼの材料になるのは鉄で、多く含まれる食品はレバー、赤身の肉や魚、貝、少し吸収率は劣るものの、ほうれん草、ひじきが挙げられます。

グルタチオンペルオキダーゼの材料になるのは「セレン」で、イワシやサンマなどの魚に多く含まれています。グルタチオンペルオキシダーゼが働くために、「含硫アミノ酸」が存在している必要があります。含硫アミノ酸は、人間の体を合成しているアミノ酸なので、意識してたくさん摂らなければならない物ではありません。動物性の食品に含まれているので、自然と摂取する機会は多いと思います。

抗酸化作用が期待されるものとして、フィトケミカル、酵素のほかにもビタミンC、ビタミンEが挙げられます。この2つのビタミンは一緒に摂取することでお互いの働きを高め合う効果(相乗効果)が見込めます。ビタミンCはオレンジ・グレープフルーツ・ミカン・キウイ・イチゴなどの酸っぱい果物、ほうれん草・ブロッコリーなどの野菜、いも類にも多く含まれています。ビタミンEは、ナッツ類や大豆、胚芽(胚芽米、小麦胚芽)に多く含まれています。

スポーツ選手は、激しいトレーニングなどで発生した活性酸素を分解するための酵素が不足すると酸化が進んでしまいます。一方、有酸素のトレーニングをきちんと(適度に)積んでいくことで、分解酵素を作り出す能力を高めることにもなります。

フィトケミカル、SODなど分解酵素の材料になるミネラル、ビタミンC・Eは、トレーニング以外でも日常生活を送っているだけで消費されていますので、こまめに補充することが大切です。できれば、食事ごとに摂取することを心がけましょう。

次回は「水分補給の重要性①」をお送りいたします。

<次回に続く>

関連記事