マヨネーズなど調味料を取り扱う食品メーカー「キユーピー株式会社(本社:東京都渋谷区)」は、早稲田大学スポーツ科学学術院教授・宮下政司氏らとの共同研究から、野菜(キャベツ)をしっかり咀嚼して食べることで食後の糖代謝を促す可能性があることを示唆した。

厚生労働省が推進する「第4次食育推進基本計画」では、目標の一つに「ゆっくりよく噛んで食べる国民を増やす」ことが掲げられており、両者は「噛むことの大切さ」の啓発と研究に取り組んでいる。

食文化の変化から近年、固い食べ物は敬遠されてやわらかい食品が好まれる傾向にあり、意識して「噛む」ことが求められている。その中で、家庭ではサラダなど歯応えのある生野菜を使うことが多く、野菜を噛んで食べることの健康への影響について両者が研究をおこなった。

試験は19人の健康な成人男性を被験者として、「咀嚼条件(千切りキャベツ+ゼリー飲料)」と「非咀嚼条件(キャベツ粉砕物+ゼリー飲料)に分けて実施。食べ始めを0分として、0分、15分、30分、45分、60分、90分、120分、180分後に、それぞれの条件で採血を行い、「血糖」および、血糖値変動メカニズムの指標になる「インスリン(膵臓のβ細胞で作られるホルモン。血糖値を下げる)」「インクレチン(GIP、GLP-1:インスリンの分泌を促進する)」の血中濃度を調べた。

その結果、食後90分までの経時変化を比較すると、インスリンとインクレチンが咀嚼により高値を示すことが確認された。一方、血糖では明らかな差は確認されなかった。

野菜を「噛む」ことで、インスリンとインクレチンが食後90分までに増加することは、食事をする際、最初に野菜を噛んで食べることで「食事を受け入れる態勢が整う」ことを意味すると考えられる。血糖値を下げる食習慣は大きく分けて、「食材選び」「食事のタイミング」「食べ方」の3点が挙げられ、「食べ方」の一つである「咀嚼」は、インスリンの分泌を促進させる効果が期待されるといえる。

宮下教授は「野菜を『噛んで食べること』に着目して食後の糖代謝の変動を検討した研究は珍しく、特にインスリンの分泌を促進するインクレチンの作用は不明だった。加齢に伴いインスリンの分泌が低下するため、野菜を『噛んで食べること』でインスリンの分泌が刺激される可能性が示唆された本研究の結果は大変意義深いです。日常の食事の際、野菜を『噛んで食べること』をぜひ取り入れてほしい」としている。

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編集部