鉄人レース「トライアスロン」で早い時期から世界の舞台を経験し、現在東京五輪日本代表最有力の高橋侑子選手(富士通)。新しい海外拠点での生活が始まり、日本代表決定の5月に向けて本格的な調整に入った。4年前の悔しい思いを胸に、五輪への挑戦が始まる。
東京五輪が刻々と近づいている2019年12月。高橋は活動拠点をパウロ・ソウザコーチの母国ポルトガル・モンテゴルドに移した。モンテゴルドはポルトガルの南に位置し、スペイン国境にもほど近く、海を越えればアフリカ大陸という比較的温暖な土地。小さな町だが、プールや陸上競技場もあり、不整地でのトレーニング、海、山といろいろなコースが組めるバイクロードと練習環境は一気に充実した。
「レースはヨーロッパでの開催が多いので、アメリカからの移動時間がどうしてもしてネックになります。ヨーロッパ各地を転々としながら、最適な拠点を探していましたが、ソウザコーチの地元に落ち着きました。しっかりトレーニングを積んで、東京五輪に備えたいと思います」
今年は、世界トライアスロンシリーズ(WTS)全8戦を中心に、各地のレースを転戦する。3月に今季初戦(UAE・アブダビ)を迎え、女子の東京五輪代表選考の対象となっているこのレースでしっかりと結果を出し、日本代表入りを近づけたい。
「これまでの成績から五輪に近い位置にいることは間違いないと思います。代表が確定する5月までには数戦出場することになりますが、気を抜かずにやるべきことをやって準備するだけです」
2019年夏に行われた代表選考レース「ITUワールドトライアスロン オリンピッククオリフィケーションイベント(東京五輪プレ大会)」では23位。上位入線なら代表権獲得だったが、結果を残せなかった。それでも、本番へのイメージをつかみ、課題点を見つけることができた。
海外生活が長く、最近の日本の酷暑を体験していない高橋は、練習後に熱めの風呂に入って体温を上げない練習を行った。「それほど暑いとは思わなかった」という通り、対策はうまくいった。ただ、思った以上に水温が高く対策の必要を感じたため、水温の高いプールで泳ぐなどして体を慣らしていく。
ランはアイススティックの使用が特別に認められており、深部体温を下げるアイテムとして活用していく。プレ大会では本番をイメージして、アメリカ・アリゾナ州フラッグスタッフで高地合宿後、千葉県館山市で最終調整した。いい状態で臨めたため、同様の臨戦過程を踏む予定。
「トライアスロンは20歳代後半からピークを迎える競技。ちょうどその時に、自分の生まれ育った東京で五輪が開催されることは2度とありません。絶対に出場したいです。3種目の総合力を武器に、(出場できたら)自分のパフォーマンスを最大限に発揮して上位を目指したいと思います」
壁にぶつかるたびに頭で考え、環境を変えることで前進を続けてきた高橋。トライアスロンが盛んな欧米で研鑽を積み、日本ランキングトップ、世界ランキング日本人最上位(19位:2020年2月現在)と、五輪出場最有力であることは間違いない。生粋のトライアスリートがこれまで着実にレベルアップしてきた成果がもうすぐ出る。(完)