口内炎とは?

口内の舌や頬、口唇などの粘膜に炎症が起き、水疱やびらん(ただれ)、潰瘍、白苔(表面が白くなる)が形成される病態が口内炎です。

最もよく見られる口内炎はアフタ性口内炎(図1)であり、栄養不足やストレスなどが原因で発症します。

接触すると激しい痛みを伴い、食事や会話、歯磨きなど日常生活に支障をきたします。

図1 アフタ性口内炎 (写真:筆者提供)

口内炎の症状

数ミリ程度の円形~類円形で白く見える口内炎が口の粘膜表層に1~数個で散在しますが、図1のように不整な形態のものもあります。

口内炎は周囲の粘膜より若干盛り上がり、中心部にびらんや潰瘍、水疱などが認められます。周辺部に赤い充血があることが多く、悪化すると出血を伴うこともあります。

口内炎の原因

口の中の粘膜は全身の健康状態を反映しやすいため、口内炎が何かの病気のサインとなる時があることを知っておいて下さい。

・栄養不足:ビタミンB群や葉酸などの摂取不足や吸収不良で生じることがあります。

・粘膜への機械的刺激:機械的な刺激による粘膜の損傷です。例えば、虫歯で歯が欠けて尖った部分が粘膜を傷付けるケースです。また、歯科矯正中の子供であれば矯正装置、高齢者であれば義歯(入れ歯)の一部が擦れる刺激で口内炎ができることもあります。

・感染:細菌やウイルス、真菌などの感染もよくある原因です。特に多いのがウイルス感染によるもので、発熱を伴うことも多く、単純ヘルペス感染症、帯状疱疹、ヘルパンギーナ、手足口病、麻疹、風疹などの症状の一つとして口内炎が出現します。また、梅毒などの原因菌が口腔粘膜に侵入して口内炎ができるケースもあります。感染による口内炎は口腔内の不衛生により治癒が遅れたり症状が悪化したりしやすいため、要注意です。

・免疫抑制(抵抗力の低下):高齢者やステロイド治療・抗がん剤治療を受けている人、白血病などで免疫力が低下している人は、口腔内に常在する真菌であるカンジダ菌が異常増殖して口内炎をひき起こすことがあります。ストレスに起因する抵抗力の低下も口内炎の誘因になります。

・自己免疫疾患:ベーチェット病やクローン病、全身性エリテマトーデス、尋常性天疱瘡(てんぽうそう)、類天疱瘡などの難病指定されるような疾患でも口内炎ができることがあります。

口内炎の検査法

機械的な刺激など原因が明らかな場合を除くと、口内炎の視診のみで原因が特定できないことも多く、各種の検査が必要な場合もあります。

ビタミンB2等の栄養摂取状態の問診などをするほか、ウイルス感染が疑われる場合は、血液検査でウイルスの抗体価や遺伝子の検査等を実施して確定診断します。
 
一方、細菌や真菌の感染が疑われた場合は、口内炎周辺の組織を採取して培養検査します。培養検査は治療の方向性を決める上で非常に有効な方法であり、難治性の口内炎ではよく実施されます。

また、自己免疫疾患の影響が疑われた場合は、血液検査で自己抗体等を調べます。

口内炎と間違いやすい疾患

「口内炎ができた」という理由で当院を受診された患者さんの少なくない割合で、口内炎ではないことがあります。

例えば、噛み合わせの不良で頬粘膜を噛んでしまった場合、口内炎様の傷が生じることがあります。これは「咬傷」と言い、歯を削って噛み合わせを改善するなどの処置が必要です。また、熱いスープやフライの衣など、熱いものを飲食してできた火傷(やけど)も口内炎様の症状を示すことがあります。

一方、歯根の先端付近の歯ぐきが丸く腫れるケースも、口内炎とよく間違えられます。虫歯が進んで歯根先端にたまった膿が骨を通過して表層の歯ぐきに腫れを起こした状態で「根尖性歯周炎」と呼びます(図2)。治療は、細菌感染した歯根内の消毒などが必要です。

まれなケースでは、図3のように前癌病変といって将来的にガン化する可能性がある粘膜病変もあります。2週間以上経過しても改善しない口内炎があれば、近隣病院の口腔外科など、専門の医師や歯科医師に相談するようにしてください。

図2 根尖性歯周炎 (写真:筆者提供)
図3 前癌病変 (写真:筆者提供)

口内炎の対処法や生活の留意点

通常は1~2週間程度で特別な処置をしなくても自然に治癒しますが、栄養不足が疑われる場合はレバーや卵、牛乳、緑黄色野菜、大豆製品などを加えたりして食事内容を改善し、必要に応じてビタミン製剤等で補います。

強い痛みで日常生活に支障があれば、ステロイド軟膏を塗布したり、アズレンスルホン酸ナトリウムを含んだ含嗽薬でうがい消毒をしたりして対応します。

感染が原因ならば、抗ウイルス薬や抗菌薬、抗真菌薬などを使い、自己免疫疾患による場合は、病状に応じてステロイド剤や免疫抑制剤などを使用します。

ストレスが原因になることも多く、再発防止のため睡眠不足や過労など心身に負担を掛けないよう日常生活を見直すことも重要です。食事で刺激の痛みを感じやすいので、熱い飲食物は控えて味付けは薄めにし、軟らかい料理にする等の工夫も必要です。口内が乾くと雑菌が繁殖しやすく口内炎の治りも悪くなるため、小まめな水分補給を心掛けましょう。

また、歯磨剤の刺激も口内炎の治癒を遅らせる要因になります。口内炎がある間は歯磨剤を減らす、もしくは低刺激性のものを使って下さい。

口内炎は早期発見・早期対応が必須ですが、普段からのバランスのよい食事やストレスのない環境づくりが予防につながります。口の中に異常を見つけたら、早めに医療機関を受診するようにしましょう。(島谷 浩幸)

【参考資料】
・桃田幸弘ほか:口内炎の予防と体質改善-口内炎を治療してきた歯科医の提言-, 徳島大学大学開放実践センター紀要, 28, 69-73 (2019)
・中村美和:化学療法を受ける小児がんの子どもの口内炎に対するセルフケアを促す看護援助, 千葉看会誌, 10(1) 18-25 (2004)

島谷浩幸(歯科医師・歯学博士/野菜ソムリエ)

1972年兵庫県生まれ。堺平成病院(大阪府)で診療する傍ら、執筆等で歯と健康の関わりについて分かりやすく解説する。
大阪歯科大学在籍時には弓道部レギュラーとして、第28回全日本歯科学生総合体育大会(オールデンタル)の総合優勝(団体)に貢献するなど、弓道初段の腕前を持つ。

【TV出演】『所さんの目がテン!』(日本テレビ)、『すこナビ』(朝日放送)等
【著書】『歯磨き健康法』(アスキー・メディアワークス)、『頼れる歯医者さんの長生き歯磨き』(わかさ出版)等
【好きな言葉】晴耕雨読
【趣味】自然と触れ合うこと、小説執筆
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