古来より親しまれてきた野菜「パセリ」

パセリは、料理の付け合わせやアクセントなどに使うケースが多いと思います。独特の風味を持つため、苦手だったり、添えてあっても食べなかったりすることがあるのではないでしょうか? 

実は、パセリは栄養的にとても優れ、スポーツシーンでも活用できる食品と考えています。今回は、パセリの栄養成分、スポーツシーンでも活用できる理由、食生活に役立てられるレシピを紹介していきます。

パセリは、南ヨーロッパや北アフリカにかけた地中海沿岸が原産で、渓谷の石(petro)の間に自生するセロリ(selinum)であることから、それらを組み合わせて「Parsley(パセリ)」と呼ばれるようになりました。

古代ローマ時代から食用とされていて、栽培の歴史が古い野菜の一つです。パセリの栽培は、9世紀ごろにフランスへ渡り、16世紀までにヨーロッパ全域へ広がって行き、日本へは18世紀ごろに伝播されたといわれています。

パセリの生産は全国幅広く、中国・四国・九州地方で盛ん。長野県は千葉県に次いで生産量が多く1)、日本で作られるパセリの約1/4は長野県産になります。

ビタミンの〝エース〟がそろうパセリ、含まれる栄養成分は?

パセリに含まれる主な栄養成分は図12)の通りで、カリウム、マグネシウム、カルシウム、鉄、β-カロテン、ビタミンK、C、E、葉酸が多く含まれているのが特長です。パセリに含まれる成分と体の関係について解説を加えます。

・カリウム
ナトリウムと共に体の細胞の水分調節をおこなっており、筋肉の収縮、弛緩の働きを正常に保ちます。 

・マグネシウム
カルシウムと拮抗して筋肉の収縮をスムーズにしたり、糖質をエネルギーにしたり、たんぱく質の合成を助けるなど、酵素反応を介して生理機能を支えます。

・カルシウム
骨や歯を構成している成分です。成長ホルモンなどの分泌、血液の凝固など生理機能に関与し、筋肉の収縮に必要不可欠なミネラルです。

・鉄
赤血球やヘモグロビンなど血液の材料になる構成する成分で、貧血にも関係します。ヘモグロビンは全身に酸素を運ぶ役割があります。

・β-カロテン
赤の色素を持つカロテノイドの一つで、体内ではビタミンAに変換されます。ビタミンAの働きと同じく、目の粘膜や皮膚の健康を維持し、目の機能、鼻や喉、消化器の粘膜に関係するビタミンです。細胞の老化を抑制し、がんや動脈硬化の予防に働きます。

・ビタミンE
細胞膜の酸化を防ぎ、動脈硬化を抑えます。血行を良くする働きも持っています。

・ビタミンK
血液の凝固に関係し、骨の形成も助けます。吸収されたカルシウムを骨に取り込むのを助けます。

・葉酸
ビタミンB群で、正確には「ビタミンB」。葉酸は赤血球をつくる時に必要で、貧血予防として鉄と一緒に取るとより効果的です。

細胞の遺伝情報が詰まっているDNAの合成に必要な成分(補酵素)です。DNAの合成が正常にされることで、細胞はその情報を正確にコピーしながら分裂し、新陳代謝や成長をしていきます。健全な発育のために特に重要になってきます。

・ビタミンC
体を構成するコラーゲンの生成に働きます。また、酸化や老化や動脈硬化を予防し、ビタミンEと一緒にとることで、相乗効果を発揮します。

抗ストレスと関係のある「副腎皮質ホルモン」がつくられる時に、ビタミンCは必要になります。鉄の吸収をしやすい形に変え、メラニン色素の沈着を防ぐことでシミ予防が期待できるなど、多くの機能性を持つビタミンです。

・アピイン
香り成分の一種で、精神安定、食欲を増進する効果があります。

特に注目したいのが、ビタミンA・C・E。パセリには、いわゆる「ビタミンのエース」と呼ばれる抗酸化作用が期待できる成分が多く含まれています。

運動をする人は抗酸化能が低下、β-カロテンの摂取で対策を

私たちは、呼吸によって酸素を取り込み、体を動かすエネルギーとして活用します。体内に取り込んだ酸素の一部は活性酸素になり、細菌やウイルスを撃退する役割を持っています。

ただ、活性酸素が過剰に増加する(体内許容量を超える)と、酸化ストレス(酸化的障害)が生じ、体にダメージを与えてしまいます。

活性酸素の増加は、紫外線、タバコや飲酒、激しい運動などが原因とされています。ですから、運動をする人は、発生しやすい活性酸素をいかに除去するかを考えていく必要があります。

以下の研究3)は、運動をする人(若年層)は一般の人と比較し、酸化的障害を受ける割合が高く、抗酸化能力が低下すること、体内の抗酸化ビタミン量に差が出てくることを示唆しています。

また、運動をする人にとって、「なぜ食による酸化対策の必要なのか」「具体的に1日どのくらい抗酸化ビタミンを摂取すればいいか」なども考察されていました。

<被験者>

①1回に平均 約4時間の運動をおこなっている高校女子運動部員 18 名(運動群

②運動習慣のない女子大学生10名(コントロール群)

<試験の実施方法>
・両群から採血し、抗酸化ビタミン量、抗酸化能力、酸化的障害(酸化ストレス)の度合いを割り出す。


・採血前の1週間、抗酸化ビタミンの摂取量を調査(両群に大きな差はなかった)。


・睡眠、入浴時を除き、生活習慣記録機を装着し、消費エネルギー量を算出(①の方が大きい消費量)

<主な評価項目>

・血しょう中の抗酸化ビタミン
「β-カロテン(ビタミンA)」、「ビタミンC」「トコフェロール(ビタミンE)」濃度を両群で比較。濃度が低ければ、消費されている(体内に残っていない=利用が難しい)ことになる。


・抗酸化能力

血しょう総抗酸化能の指標になる「FRAPassay」の値を用いて両群を比較。FRAP値が高ければ、抗酸化能力が高い。


・酸化的障害の度合い

採血から得られたリンパ球DNAを培養、酸化的障害の指標となる「小核出現率」を算出し、両群を比較。小核出現率が高ければ、酸化的障害が大きい。

<結果>

は②と比較して、血しょう中のβ-カロテン濃度が低かった。ビタミンC、トコフェロールの値は両群で差はなかった。


は②と比較して、総抗酸化能は低値を示した。


は②と比較して、小核出現率が高かった。


・β-カロテン濃度が低値を示すと、DNAの酸化的障害(小核出現率)が大きく、両者に相関がある可能性。

他の先行研究では、運動選手が抗酸化能を維持・向上させるためには、血しょうβ-カロテン濃度を上昇させること、濃度の上昇は摂取量に依存することが示唆されています。

日々の運動によって体内のβ-カロテンは消費されていきますが、この研究では、運動習慣のある女子高校生が女子大学生と同程度のβ-カロテン濃度を保ち、抗酸化能を維持するためには、「β-カロテンを少なくとも2000μg/日程度摂取する必要がある」と示されています。

ただ、研究対象が女子に限定されているため、性や年代に違いによって必要摂取量は変化することが予想されます。

酸化対策を怠ることは、ケガや病気にもつながってきます。中・高生など部活動を頑張る選手たちや運動習慣のある人たちは、ベストのコンディション(健康)を保つためにも「抗酸化」を意識しておいた方がいいでしょう。

パセリは、ビタミンのエースがそろっていて、β-カロテンも豊富。食生活の中で活用することを考えてみてはいかがでしょうか。

抗酸化ビタミンの補給に打ってつけ! お勧めの食べ方

抗酸化ビタミンが豊富なパセリを上手に活用するために、パセリを使ったポタージュを紹介します。

パセリは抗酸化のほか、リラックスや食欲増進も期待できます。緊張する試合の前日、試合(運動)後のリカバリを促進するためにも効果的といえます。

パセリのポタージュは、抗酸化能維持の目安となる2000μgの半分以上のβ-カロテンがとれます。

料理時間
15

パセリのポタージュ

【材料(2~3人分)】
じゃがいも(正味)250g
玉ねぎ(正味)100g
パセリ(生:葉の部分)20~30g
牛乳50~100g
玉ねぎ塩麹20g

作り方

① じゃがいも、玉ねぎは柔らかくなるまでゆでる(パセリを一緒にゆでると、味がマイルドになります)。
② ①と生(ゆで)パセリをミキサーにかける(野菜が熱い場合、牛乳を少し加えてもOKです)。
③ ②と牛乳、玉ねぎ塩麹を鍋に入れ、加熱する。

・コクを出すために、生クリームなどを加えて◎。
・ビタミンA、E、Kは脂溶性ビタミンなので油と調理することで吸収されやすくなります。
・玉ねぎ塩麴はコンソメで代用可。味見しながら、分量を調節してください。

ビタミン類は日頃から摂取することをお勧めします。パセリのポタージュスープはシンプルで消化に負担が少ないので、運動前後のエネルギー補給としても◎。暑い時期には冷製スープにしてもいいかもしれません。

みなさんの生活・習慣に合ったパセリの活用法を見つけてください。

【参考文献・資料】
1) 令和2年産都道府県別の作付面積、収穫量及び出荷量

2)日本食品標準成分表2020年版(八訂), 文部科学省

3) 木村 典代 etal.: 若年女子運動選手における抗酸化ビタミン摂取量とDNA酸化的傷害の関係, 日本スポーツ栄養研究誌, 3 , 29-34 (2009)

・東京農業大学 園芸学研究室(峯ゼミ) : パセリ特集

・吉田企世子(監修) : 旬の野菜の栄養事典 最新版 春夏秋冬おいしいクスリ, エクスナレッジ (2016)

・上西一弘 : 食品成分最新ガイド「栄養素の通になる」, 女子栄養大学出版部 (2022)

吉田敦子(管理栄養士、NCPメンバー)