前回は乳幼児期~学童期の子どもに焦点を当てた「食育」についてご紹介しました。今回は青年期~高齢期の大人編です。
大人の場合は乳児期・学童期と違って、食べるものを自由に選ぶことができるため、知らず知らずのうちに悪い食習慣が作られてしまうことがあります。健康で元気にいきいきと過ごすためにも、年代に合った課題を把握して行動に移していくことが大切です。
年代ごとに異なる食育(青年期)
青年期は、15歳から24歳ごろを指します。社会に出て人間関係が大きく変わり、広い範囲で社会との関わりを持つようになります。
外食や中食の頻度が増えるとともに、飲酒もできる年齢になるため、遅い時間の食事によって栄養バランスが偏りやすくなります。
代謝もまだ活発であることから、身体への負荷は回復しやすい傾向にありますが、確実に身体的ダメージは蓄積していきます。
また、女性であれば妊娠・出産を考える方も多くなる年代です。近い将来を見据えて、食事に運動に健康な身体作りを目指しましょう。
年代ごとに異なる食育(壮年期)
働き盛りともいえる壮年期は過労やストレスが重なる時期です。また、年齢と共に自然と代謝が落ちてくるため、今までよりも健康的な食事内容を意識する必要があります。
一日3食を規則正しいリズムで食べ、内臓に負担をかけないためにも、ゆっくりよく噛んで食べましょう。食べ過ぎないように気をつけるのはもちろんですが、エネルギーをとっている意識が薄れてしまいがちな間食やお酒の量は特に注意が必要です。
さらに、子育てや家族、仕事優先で自分のことは後回しにしがちになります。身体と心が元気でないと、食事のおいしさは実感しにくくなります。自分を大切にすること、健康診断を定期的に受診すること、適度な運動を心がけると良いでしょう。
年代ごとに異なる食育(中年期)
仕事や子育てなどで社会的な責任が最も大きく、精神的にストレスを抱える方が多くなる時期です。この頃には長年の生活習慣の影響で肥満や高血圧など、身体の異常が徐々に表面化してきます。
しかし、自覚症状があまりないため、生活習慣病を気にしつつも、なかなか生活習慣を変えることができない場合が多くあります。身体への負債は少しずつ蓄積してきているため、運動不足や飲酒、喫煙が及ぼす影響を理解するとともに、少し遠回りして家に帰ってみる、休肝日を設ける、おつまみをサラダ類に変えるなど、負担にならず続けやすいことから取り組んでみましょう。
また、中年期は、子どもや若い世代に食生活や食文化を伝えていく役割を持つ時期でもあります。家族と食を楽しみ、経験・知識・技術を伝える機会を作ってみてはいかがでしょうか。
年代ごとに異なる食育(高齢期)
高齢期に入り、「最近、痩せてきた気がする」「むせることが増えた」「外出するのがおっくうになってきた」と感じることはありませんか。これらは、年齢を重ねると誰もが感じることです。
加齢に伴い、気力や体力、噛む力・飲み込む力などすべての機能が落ちて、健康な状態と要介護状態の間まで身体が弱ってくることをフレイル(虚弱)といいます。フレイルになると、さらに活動量・食事量・気力が減少していくため、身体はより虚弱となっていきます。
フレイルを予防するために、高齢期の方は少しふくよか(BMI※ 21.5~24.9程度)の方が、栄養状態が良く長生きできる傾向にあることがわかってきました。そのため、「太りすぎてはいけない」よりも「しっかり食べて栄養状態を保つ」に意識を切り替える必要があります。
親しい人と食事を楽しみ、食べる意欲を向上させると共に、積極的に適度な運動を取り入れることを心がけましょう。食欲がない時にも食べられて、元気が出る食べ物を見つけておくのも良いですね。
※Body Mass Index:体重(kg)を身長(m)の二乗で割った値で、肥満や痩せの判定に使います。日本肥満学会が定めた基準では、18.5未満が「痩せ」、18.5~25未満が「普通体重」、25以上が「肥満」に分類されます。
まとめ
子どもの時の食事とは異なり、大人の食事や食育は成長・発育発達のためではなく、健康をいかに維持・増進していくか、また病気の予防などに変化してきます。
どのような年代においても最も重要なことは、自分の身体の状態と食事・運動・睡眠の状態をきちんと把握することです。現状を維持した先の未来には、何が待っているのか。生き生きとした未来のためにも、今から少し考えてみてはいかがでしょうか。
次回は食育の大切な「3つの柱」について一つずつお話していきます。