連載を通じてお伝えしている「食育の3本柱」。3つ目の柱は「地球の食を考える」です。

今の日本は、いつでもどこでも食べられる物が手に入る、とても便利で豊かな国です。しかし、普段の食事の中で、どれくらいの食品が国産なのか考えてみたことはありますか?

日本が抱える課題の一つに「食料自給率の低さ」があります。どんなことが問題なのか、その解決策も一緒に見ていきましょう。

日本の食が危ない! 日本食のつもりが中身は外国産

私たちが食べている物全体で、どれだけ国産の物を使っているかを表す指標を「食料自給率」と言います。食料自給率は、①金額で求める方法「生産額ベース」と、②供給熱量で求める方法「カロリーベース」があります。2022年度の日本の食料自給率(カロリーベース)は38%で、先進国の中でも最低の水準だと言われています。

食品自給率の推移(農林水産省)

例えば、日本食に代表される天ぷらそばの材料は、そばやえび、天ぷらの衣に使う小麦など、ほとんどが外国産です。外国産の食品に頼って作られた天ぷらそばは、はたして胸を張って日本食と言えるのでしょうか。

天ぷらそばの食料自給率(農林水産省)

また、日本で消費される米は国産品でまかなえていますが、日本食に欠かせない、みそ、しょうゆ、納豆の原料になる大豆の自給率はわずか5%。つまり、残りの95%は輸入に頼っているということです。

日本の食料自給率が低下してきた主な要因としては、日本人の食生活が多様化してきたことが挙げられます。国の需要量を満たせる米の消費量よりも、パンや麺類などの小麦製品の消費量が多くなると、必然的に輸入品が多くなります。家庭のメニューに肉や油脂が多く登場するようにもなりました。畜産物の餌となる飼料は多くを輸入に頼らざるを得ない状況ですので、私たちの消費量が増えるということは、国産の畜産物と言えども、輸入なしには成り立たちません。

食生活変化のイメージ(農林水産省)

輸入に頼り続けるとどうなる?

外国産の食品は、広大な農地で大量生産を行うため、国産と比較すると多くが安く購入できます。しかし、世界人口増加、更にもし不作になってしまったり、戦争などで貿易が出来なくなってしまったりすると、供給不足や価格高騰といった危機に陥ってしまいます。このまま食料自給率が回復しなければ「天ぷらそばが食べられない!」「みそやしょうゆが作れない!」なんてことになってしまうかもしれません。

輸入による影響はこれだけではありません。海外で生産、加工された食品は毎日、世界中から日本各地へ膨大なエネルギーを消費しながら運ばれています。距離が長くなるとその分タンカーなどの燃料を多く使うので、外国からの輸送は多くのCO2を排出し、地球温暖化などの悪影響をもたらしています。

この食料の輸送が環境に与えるダメージを数字に表したものを「フードマイレージ」と言います。フードマイレージの値が小さい方が、エネルギーの無駄が少なく、地球環境にやさしいと言えます。

日本のフードマイレージは2001年からゆるやかに減ってきているものの、実は世界で一番高いのです。日本のフードマイレージがここまで高いのは、島国であることも一因ではありますが、自給率の低さが大きく関係しています。自分たちが食べるものを外国からの輸入に頼ることは、環境汚染を助長することになってしまうんですね。

各国のフードマイレージ比較(フードマイレージ資料室

食料自給率を上げるための3つのポイント

それでは、食料自給率を上げるために私たちに何ができるでしょうか。ポイントを3つ、紹介いたします。

地産地消する

「地産地消」とは、地元で取れた食べ物をその地域の中で食べることです。輸送距離が抑えられるため、フードマイレージを抑えることもできます。また、「生産者の顔が見え安心して食べられる」「新鮮な食材が手に入る」なども地産地消のメリットです。

地産地消は難しく考える必要はありません。農園の直売所やファーマーズマーケットを見かけたらちょっと立ち寄ってみる、食材の産地を確認するだけでも前進です。

国産品を選んで食べる

住んでいる地域によって地産地消が難しい場合は、できる限り国産のものを選ぶのも方法の一つです。例えば、「米を主食にした食事の回数を増やす」「米粉を使ったパンや国産大豆で作った豆腐を食べる」などが、ささやかながら自給率アップにつながります。

旬の物を知り、選んで食べる

日本の四季に合わせた旬の食材を食べることも意味のある取り組みです。旬から外れて店頭に並んでいるものは、輸入品である可能性も高いからです。旬の食材は新鮮で栄養価も高く、たくさん出回り価格も安くなるので、ぜひ探してみてください。

食料自給率アップのために(農林水産省)

まとめ

現在の日本では、深刻な食料難に直面している訳ではありませんが、このまま輸入に頼り続けることは私たちの生活だけでなく、地球環境にまで大きな影響を及ぼします。食べ物を選ぶ時に「いつもは値段だけで比べている」という方も、これを機に産地で比べてみてはいかがでしょうか。

次回は日本が抱えるもう一つの課題、食品ロスについて触れていきます。

㈱ミールケア 食育開発部