前回は、日本が抱える食料問題のひとつ「食料自給率」についてお伝えしました。今回は、もう一つの問題である「食品ロス」について考えてみましょう。日本における食品ロスの現状を知り、私たちに何ができるか考えてみましょう。

食品ロスって何?

「食品ロス」という言葉からどのようなもの(状態)を思い浮かべるでしょうか? 一般的には、さまざまな理由により「まだ食べられるのに捨てられてしまう食品」を指しますが、厳密にいえば以下に大別されます。

使い忘れて期限が切れてしまった食品や食べ残しなど、家庭から出るものが「家庭系食品ロス」、規格外の食品やパッケージのミス・破損、需要を上回る製造などで捨てざるを得なくなった食品、1/3ルール(賞味期間の1/3以内で納品できなかったものは廃棄)で廃棄された食品など、事業活動を伴って発生するものが「事業系食品ロス」です。

日本の食品ロス(家庭+事業)の量は年々減少傾向ではありますが、環境省が発表した2022年度推計(最新)によれば、約472万トンに上ります。比較材料として頻繁に登場する東京ドームが124万m3なので、球場4個分を満杯にした時とほぼ同じです。また、国民1人当たりに換算すると、毎日ご飯茶碗1杯分の食料を捨てていることになります。

これは、2023年に国際連合世界食糧計画(WFP)が貧困や災害に対して支援した食料・370万トンの1.3倍にあたります。

どうして食品ロスが問題になっているの?

まだ食べられる食品を捨てることは単にもったいないというだけでなく、世界規模でさまざまな影響を及ぼします。

海外から輸入する際には多くのCO2を排出しますが(参考記事)、捨てた食品を処分する際にもCO2は排出されます。日本は、輸入するときと捨てる(処分する)ときの2度、環境に負荷をかけているのです。

さらに、日本が飽食の国と呼ばれている一方で、世界では約9人に1人が食糧不足により飢餓に苦しみ、栄養不足や餓死するといわれています。日本をはじめとする先進国ではまだ食べられるものが捨てられ、発展途上国では食料が足りなくなる「食の不均衡」が起きていると言います(WFPより)。

毎日食べるものが当たり前にあると、食べ物に対するありがたみや大切にしようという気持ちが薄れてしまってはいませんか?

食品ロスを減らすための5つのポイント

一人一人が今すぐにでも実践できる食品ロスを減らすポイントを、「買う時」と「食べる時」に分けてご紹介します。

<<買う時>>

①「使い切る・食べ切る」を意識して食材を購入する
セール等で安く食材を買うことができても、賞味(消費)期限内で使い切れずに捨ててしまうことはありませんか?

食品をカゴに入れる前にどうやって食べるのか、どのように保管するのかを考える癖をつけましょう。

②「てまえどり」をする
スーパーなどでは賞味(消費)期限の近いものを手前に、遠い物を奥に並べています。手前にある商品から手に取ることを「てまえどり」といい、国が食品ロス対策として啓発している行動です。買い物をする際には「てまえどり」を意識してみてはいかがでしょうか。

③「規格外」や「ワケあり」の商品を買う
味に問題がないのに、形が悪かったり、大きさが小さかったりして店頭に並ばない食品を「規格外」と言います。

規格外として廃棄される食品は、生産された量の約30〜40%に上るとされています。規格外の商品は安く購入できることが多いので、地球にも家計簿にも負担が軽くなりますよ。

また、今まで捨てていた物を利用した商品、「品質には問題がないけれど形が悪い」「外装が破損している」などのワケあり商品もあるので、買い物の際にはそういったものを探してみるのもいいですね。

<<食べる時>>

④計画的に使う、美味しく食べる
上手に買った物を捨ててしまわないために、ざっくりとでも構わないのでスケジュールを立てて使いましょう。

生鮮食品は、冷凍できるものであれば、冷凍保存するのも一つの方法ですね。家にある食材の量や期限を把握するためにローリングストックをしたり、冷蔵庫の中や食品の保管場所を定期的に整理したりするといいかもしれません。

料理のレパートリーを増やしたり、美味しく作ることも大切です。捨てるのはもったいないことだとわかっていても、美味しくないものを食べ続けるのは辛いですよね。

⑤好き嫌いせずに食べる
「嫌いだから」「他にも食べられるものはあるし」という理由で、好きなものだけを食べて苦手なものを捨ててしまうことに対して抵抗感が薄れてしまっている方もいるのではないでしょうか。

特に、大人がそういった姿を見せてしまうと、お子さんが「だって苦手だったら食べずに捨ててもいいんでしょ?」と罪悪感なく食べ物を捨ててしまうようになってしまうかもしれません。

好き嫌いなく食べられることは健康に良いだけでなく環境にもやさしいことなのです。すべての食べ物を好きになる必要はありません。苦手なものがあっても良いので簡単に「捨てる」ことをしないようにするにはどうしたらよいのか考えてみましょう。

まとめ

食に対して「ありがとう」の意識を改めて持つ、食料問題の解決に向けた取り組みに積極的に関わるなど、私たち一人一人が考えて行動し、それを継続することで「もったいない」と思える気持ちや地球全体のことまでも考える姿勢を次世代へとつなげていきましょう。

次回は子どもを取り巻く食の課題について掘り下げていきます。

㈱ミールケア 食育開発部