毎年恒例、経済誌「フォーブス」が発表しているスポーツ選手の長者番付。2022年に最も稼いだスポーツ選手は、クリスティアーノ・ロナウド(アルナスルFC:サウジアラビア)だった。ロナウドは2014年以降、常にトップ3入りを果たしており、スポーツ界での活躍、需要の高さが示されている。

2位はリオネル・メッシ(インテル・マイアミFC:アメリカ)、3位はキリアン・ムバッペ(パリ・サンジェルマンFC:フランス)とサッカー選手が上位を独占した。トップ50には、レブロン・ジェームズ(4位、ロサンゼルス・レイカーズ)らバスケットボール(NBA)選手14人が入って最多。次いで、ダスティン・ジョンソン(6位)らゴルファーが12人、ラッセル・ウィルソン(12位、デンバー・ブロンコス)らアメリカンフットボール選手(NFL)が10人ランクインしている。

日本勢は、前回12位の大坂なおみが妊娠・出産のため対象外、メジャーリーグを席捲し続けている大谷翔平(ロサンゼルス・エンゼルス)は来年以降の超大型契約次第でランクインも。なお、メジャーリーガーのトップ50入りは、マックス・シャーザー(26位、テキサス・レンジャーズ)のみ。

※ランキングは、2023年5月1日までの12カ月間に手にしたサラリー・賞金、ボーナス(競技内サラリー)、スポンサー契約、出演料、自身のビジネス(競技外サラリー)などから総収入を推定。不動産投資など資産運用で得た収入は含まれていない。為替レートは1ドル141円。

リッチマンたちの顔ぶれ(トップ20)

1位 1億3600万ドル(約193億円)
クリスティアーノ・ロナウド(38歳:ポルトガル)サッカー 

2位 1億3000万ドル(約184億円)
リオネル・メッシ(36歳:アルゼンチン)サッカー 

3位 1億2000万ドル(約170億円)
キリアン・ムバッペ(24歳:フランス)サッカー 

4位 1億1950万ドル(約169億円)
レブロン・ジェームズ(38歳:アメリカ)バスケットボール 

5位 1億1000万ドル(約156億円)
カネロ・アルバレス(32歳:メキシコ)ボクシング 

6位 1億700万ドル(約152億円)
ダスティン・ジョンソン(38歳:アメリカ)ゴルフ 

7位 1億600万ドル(約150億円)
フィル・ミケルソン(52歳:アメリカ)ゴルフ 

8位 1億400万ドル(約147億円)
ステフィン・カリー(35歳:アメリカ)バスケットボール 

9位 9510万ドル(約135億円)
ロジャー・フェデラー(41歳:スイス)テニス 

10位 8910万ドル(約126億円)
ケビン・デュラント(34歳:アメリカ)バスケットボール

11位 8760万ドル(約125億円)
ヤニス・アデトクンボ(28歳:ギリシャ)バスケットボール

12位 8500万ドル(約121億円)
ネイマール(31歳:ブラジル)サッカー

12位 8500万ドル(約121億円)
ラッセル・ウィルソン(34歳:アメリカ)アメリカンフットボール

14位 8210万ドル(約117億円)
ラッセル・ウェストブルック(34歳:アメリカ)バスケットボール

15位 8080万ドル(約115億円)
ローリー・マキロイ(34歳:北アイルランド)ゴルフ

16位 7510万ドル(約107億円)
タイガー・ウッズ(47歳:アメリカ)ゴルフ

17位 7300万ドル(約104億円)
キャメロン・スミス(29歳:アメリカ)ゴルフ

18位 7200万ドル(約103億円)
ブルックス・ケプカ(33歳:アメリカ)ゴルフ

19位 7050万ドル(約101億円)
カイラー・マレー(25歳:アメリカ)アメリカンフットボール

20位 6900万ドル(約98億円)
ブライソン・デシャンボー(29歳:アメリカ)ゴルフ

潤うサウジ、スポーツへの投資にも超積極的

アメリカに次ぐ産油国であるサウジアラビアは、ウクライナへ侵攻したヨーロッパ最大の産油国・ロシアの原油供給が遅れていることから需要を伸ばし、近年主要輸出品目である原油を含む貿易黒字額が膨れ上がっている。

日本貿易振興機構(ジェトロ)によれば、2020年の世界的なコロナショックで一時貿易黒字額は縮小したものの、2021年には前年の4倍とV字回復、2022年は前年比2倍と増加(2200億ドル=約31兆円)。2023年は原油価格のさらなる高騰と相まって、2011年に記録した最高貿易黒字額を上回る見込みになっている。

日本としては円安進行の遠因にもなっており、輸入製品の購入や燃料・原料費の高騰で生活・企業活動を圧迫され、決して好ましい状況ではないかもしれない。

産油国の多い中東で金満の代名詞として使われる「オイルマネー」。近年では実質、〝サウジマネー〟といえそうだ。産油量世界9位のイラクをはじめ、アラブ首長国連邦(UAE)・カタールなど近年経済発展の著しい産油国と比較しても、サウジアラビアの貿易黒字額は一けた以上違い、好況ぶりは明らか。原油によって儲けた資金で原油以外のビジネスの構築を画策している。

地政学的な理由から経済好調のサウジアラビアは、このほど国家プロジェクトとして政府主導で対外ビジネスへの巨額投資を開始した。その中にはスポーツも含まれており、今後数年でサウジマネーが猛威を振るうことが予想される。

サッカー界ではすでに、元スター選手によるサウジ・プロフェッショナルリーグへの移籍が続いているが、今年はついに世界で最も有名なロナウドが参戦。

ロナウドは移籍によって7500万ドル(約107億円)と、前所属のマンチェスター・ユナイテッドから得ていた年俸の約2倍を手にすることになった。まだまだ一線級とはいえ、全盛期を過ぎた選手には破格の待遇といえる。

また、一時サウジ移籍が噂されていたメッシも、同国観光大使に就任しており、サウジマネーとのつながりは保っている。

この1年間で特徴的な動きだったのがゴルフ界。2020年マスターズ王者、ダスティン・ジョンソン(前回20位)、メジャー大会6度制覇のフィル・ミケルソン(前回29位)がトップ10へジャンプアップ。12人のゴルファーがトップ50にランクインした背景にはサウジマネーがちらついている。

トップレベルのプロゴルファーが集う「PGA(ツアー)」に対抗し、2021年にサウジアラビアの公共投資ファンドが支援する「LIVゴルフ(ツアー)」が創設された。LIVゴルフには、莫大な運営資金が充てられており、賞金額もけた違いに高い。

ミケルソン、ジョンソンといったゴルフ界のスターとはそれぞれ、2億ドル(約285億円)、1億2500万ドル(約178億円)で〝移籍〟契約したとされ、今回ランクインしたゴルファーの大半はLIVゴルフへの移籍が絡んでいる。無尽蔵の資金力から今後、スター選手によるサウジ移籍に歯止めがかからない可能性がある。

4大大会の実施、ツアー体系を敷くゴルフ界と類似するテニス界は、サウジマネーの次のターゲットとして挙げられている。

スポーツ界への投資という意味で、ブラッドスポーツと呼ばれる競馬界にもサウジマネーの波は押し寄せている。2020年に創設されたサウジカップ(ダート1800m)は、1着賞金1000万ドル(約14億円)・レース賞金総額2000万ドル(約28億円)でともに世界最高。

長年最高額を保持していた、同じ中東のUAEでおこなわれるドバイワールドカップ(ダート2000m)は、1着賞金696万ドル(約9億9000万円)、レース賞金総額1200万ドル(約17億円)なので、2倍近くの差をつけて資金力の差を見せつけている。これは、中東における経済発展国の覇権交代を意味するものともみえる。

ちなみに、2023年には日本調教馬のパンサラッサがサウジカップを制し、巨額の1着賞金を獲得している。

ビジネスセンスが光るスポーツ選手は?

競技外で最も多く稼いだのはフェデラー。昨年引退を発表し、ほとんど賞金を得ていないにもかかわらず、9500万ドル(約135億円)を稼ぎ出している。フェデラーの生涯獲得賞金は1億3000万ドル(約193億円)と推定されているが、ビジネスによって大部分を1年で手にしていることになる。

2018年には、アパレルメーカー「ユニクロ」と10年3億ドル(約428億円)のスポンサー契約を結んでいるが、引退後を見越した長期のもの。社会からの需要、人気の高さ、ユニクロ商品の販売促進への貢献が含まれている。

フェデラーは社会への還元も怠っておらず、自身の名前を冠した財団は設立以降、5000万ドル(約71億円)を集めた。これらはアフリカで150万人の子供たちへの教育にあてられている。

フェデラーに次いで多いのがロナウドで、9000万ドル(128億円)。サラリーは4600万ドル(約65億円:シーズン途中の移籍のため、前項の額とは異なる)と2倍近く稼いでいる。

ナイキとの生涯契約に加え、自身のブランド「CR7」の売り上げが好調で、衣料品、アクセサリー、ホテル、ジムなど多角経営で収入を得ている。

3位レブロン、4位メッシと各競技のシンボル選手がビジネス面でも成功を収めているが、5位にランクインしたのは、LIVツアーへの巨額移籍を断ったウッズ。

ウッズはメジャー大会を総なめにしていた2000~2010年代前半に比べると、その活躍は影を潜めているが、ビジネスは順調。獲得賞金の4倍近くを競技外で稼いでいる。

2020年にウッズは、メジャー大会4度制覇を誇るマキロイと共同でベンチャー企業「TMRW Sports」を設立し、新ゴルフリーグ「TGL」の立ち上げ計画を発表。選手としての活動はもとより、ビジネスマン、競技運営側としての動きを強めている。

競技外サラリーの6位以下はカリー、デュラント、ヤニスのNBA勢、女子選手で唯一トップ50入りしたセリーナ・ウィリアムズ(49位、テニス)、トム・ブレイディ(50位、アメリカンフットボール)と続く。

ヤングスター台頭、上位進出は今後の活躍次第

トップ50にランクインした多くは30歳以上の選手で固められている。30歳以下の選手はヤニスら11人しかおらず、さらに25歳以下(Umder25)の選手は5人に絞られる。

5人の選手はいずれも次代のスーパースターで、すでに名声を得ている。競技内サラリーが主要な収入源になっているものの、今後の活躍次第で競技外サラリーのウェイトが上がり、今後5~10年でトップ10入りすることはほぼ間違いない。

U25の筆頭格は3位に入っているムバッペ。2018年ワールドカップ(WC)ロシア大会では弱冠19歳でエースに君臨し、フランスを優勝に導いた。これまでに、リーグ・アン年間最優秀選手賞3度受賞、リーグ得点王を4度獲得と申し分ない活躍を見せており、2022年5月には1億ドル(約141億円)の延長契約に加え、ボーナスも手にしている。

競技外サラリーも2000万ドル(約28億円)で、ナイキ、高級時計メーカー「ウブロ」とスポンサー契約。ゲームブランド「EAスポーツ」が販売・展開している「FIFA21」の表紙を史上最年少で飾るなど、活躍と相まって露出度は年を追うごとに飛躍的に高まっている。

U25の2位はアメリカンフットボール(NFL)から。アリゾナ・カーディナルスのクォータバック(QB)マレーが前回ランク外から一気に19位へ躍進。

マレーはもともと、野球選手として大きな期待をされていたが、アメフトを選択。2019年NFLドラフトでカーディナルスから全体1位指名された。2022年に最大2億3050万ドル(約328億円)で5年の契約延長、契約ボーナスとして2900万ドル(約41億円)を受け取っている。

スーパーボール制覇を経験しているウィルソンやパトリック・マホームズ(24位、カンザスシティ・チーフス)らトップQBと比較すると、実績は物足りないものの、今後の期待を込めた評価になっている。

プロesports組織「FaZe Clan」とコラボしているリアルスポーツ選手の一人。

U25の3位はF1のマックス・フェルスタッペン(22位、25歳:オランダ)。17歳にしてF1参戦、翌年には史上最年少で優勝を果たした天才ドライバー。

2022年シーズンは22戦15勝と圧倒的な走りを見せ、賞金を加算。所属先のレッドブル・レーシングとの大型延長契約により、競技内サラリーは跳ね上がった。2023年シーズンも8月1日現在で12戦10勝と完ぺきに近い成績を収めており、各レースの優勝賞金に加え、年間王者、チーム優勝などで競技内サラリーはさらに巨額なものになる。

ビールメーカー「ハイネケン」、EAスポーツとスポンサー契約をしているが、今季の活躍から競技外サラリーの上乗せが見込まれ、ランキング上位への進出は確実だろう。

U25の4位はマンチェスター・シティ(サッカー)のフォワード(FW)アーリング・ハーランド(32位、22歳:ノルウェー)。194cm/88kgと大柄ながら、スピードと決定力を併せ持つライジングモンスター。今回、最年少でのトップ50入り。

ハーランドは2022年夏にドルトムント(ドイツ)から移籍、6300万ドル(約89億円)を手にした。シティ加入後は、プレミアリーグ新記録となるシーズン36ゴールを記録し、超大型契約にふさわしい活躍を見せた。

ハーランドをめぐっては、シューズメーカーによる獲得合戦が勃発し、結局ナイキがムバッペとハーランドのサッカー2大ヤングスターとの契約を結ぶことに成功した。

U25の5位は、NBAダラス・マーベリックスのポイントガード(PG)ルカ・ドンチッチ(44位、24歳:スロベニア)。NBAきってのバーサタイル(万能)PGで、新人年から連続してオールスター選出と申し分ない活躍を見せる。

安価なルーキー契約が終了した2021年には、5年2億700万ドル(約295億円)のスーパーマックス契約を締結。契約期間内でマーベリックスをNBAチャンピオンに導けるかが最大の焦点になっている。

すでにナイキなど5社とスポンサー契約を結んでおり、競技外サラリーは年間で1000万ドル(約14億円)になる。ナイキのジョーダンブランドからは、超人気選手の証明でもあるシグニチャーシューズが発売された。

スポトリ

編集部