毎年恒例、経済誌「フォーブス」が発表しているスポーツ選手の長者番付。2024年に最も稼いだスポーツ選手は、3年連続でクリスティアーノ・ロナウド(アルナスルFC:サウジアラビア)だった。

ロナウドは通算5度目のトップで、フォーブスが調査を始めて以降、3番目に高い収入額を記録。歴代1・2位は、ボクシングで5階級制覇したフロイド・メイウェザーで、2015年、2018年にそれぞれ3億ドル、2億8500万ドルを計上した。

2位は、〝3P革命〟のステフィン・カリー(NBAゴールデンステイト・ウォリアーズ)が前年9位からトップ3へ、3位にはボクシングの元ヘビー級王者、タイソン・フューリー(イングランド)が入った。

ニューヨーク・メッツと15年総額7億6500万ドル(約1117億円)の超大型契約を結んだフアン・ソトが前年圏外から7位に大きくジャンプアップし、ドミニカ共和国出身のスポーツ選手として初めて、トップ10に名を連ねた。

リッチマンたちの顔ぶれ(トップ20)

超大型契約を結んだソトが7位にランクイン

※ランキングは、2025年5月1日までの12カ月間に手にしたサラリー・賞金・ボーナス(競技内サラリー)、スポンサー契約・出演料・自身のビジネス(競技外サラリー)などから総収入を推定。為替レートは1ドル146.0円。【】は前回順位、圏外は前回50位以下。

1位 2億7500万ドル(約402億円)【1位】→
クリスティアーノ・ロナウド(40歳:ポルトガル)サッカー

2位 1億5600万ドル(約228億円)【9位】⤴
ステフィン・カリー(37歳:アメリカ)バスケットボール

3位 1億4600万ドル(約213億円)【42位】⤴
タイソン・フューリー(36歳:イングランド)ボクシング

4位 1億3700万ドル(約200億円)【圏外】⤴
ダック・プレスコット(31歳:アメリカ)アメリカンフットボール

5位 1億3500万ドル(約197億円)【3位】⤵
リオネル・メッシ(37歳:アルゼンチン)サッカー

6位 1億3480万ドル(約195億円)【4位】⤵
レブロン・ジェームズ(40歳:アメリカ)バスケットボール

7位 1億1400万ドル(約166億円)【圏外】⤴
フアン・ソト(26歳:ドミニカ共和国)野球

8位 1億400万ドル(約152億円)【8位】→
カリム・ベンゼマ(37歳:フランス)サッカー

9位 1億250万ドル(約150億円)【13位】⤴
大谷翔平(30歳:日本)野球

10位 1億140万ドル(約148億円)【12位】⤴
ケビン・デュラント(36歳:アメリカ)バスケットボール

11位 1億100万ドル(約147億円)【圏外】⤴
オレクサンドル・ウシク(38歳:ウクライナ)ボクシング

12位 1億ドル(約146億円)【2位】⤵
ジョン・ラーム(30歳:スペイン)ゴルフ

13位 9440万ドル(約138億円)【5位】⤵
ヤニス・アデトクンボ(30歳:ギリシャ)バスケットボール

14位 9250万ドル(約135億円)【29位】⤴
スコッティ・シェフラー(28歳:アメリカ)ゴルフ

15位 9180万ドル(約134億円)【45位】⤴
デショーン・ワトソン(29歳:アメリカ)アメリカンフットボール

16位 9000万ドル(約131億円)【6位】⤵
キリアン・ムバッペ(26歳:フランス)サッカー

17位 8790万ドル(約128億円)【19位】⤴
ローリー・マキロイ(36歳:北アイルランド)ゴルフ

18位 8680万ドル(約127億円)【15位】⤵
パトリック・マホームズ(29歳:アメリカ)アメリカンフットボール

19位 8300万ドル(約121億円)【圏外】⤴
ジョーダン・ラブ(26歳:アメリカ)アメリカンフットボール

20位 8080万ドル(約118億円)【圏外】⤴
ジャレッド・ゴフ(30歳:アメリカ)アメリカンフットボール

スポーツ選手のサラリーはさらに上昇、競技外サラリー総額は前回並み

トップ50入りした選手のサラリー総額は、前回が38億7750万ドル(約6039億円)だったのに対し、42億3000万ドル(約6176億円)とさらに上昇。競技外サラリー総額は前回と同水準で、単純に選手らの年俸が高騰した。この背景には、NBAやNFLなどプロリーグの運営母体のビジネス(放映権料や広告収入など)が引き続き好調なことが挙げられる。数年は増加傾向が続く見通し。

トップ50を競技別でみると、カリーらバスケットボール(NBA)選手が16人で最多。次いで、プレスコットらアメリカンフットボール(NFL)選手が13人、サッカー選手が8人と例年通りの内訳。国別では、スポーツ大国・アメリカが29人と半数以上を占めた。

1位のロナウドは、競技外サラリーが前年度より微減したものの、競技内サラリーが前年より2500万ドル(約36億5000万円)上乗せされた分、数字を伸ばした。

この1年、ロナウドは競技外での動きを活発化させており、ウェアラブル技術企業「Whoop」、磁器メーカー「Vista Alegre」、サプリメントブランド「Bioniq」と新たに提携した。また、スパイ映画「キングズマン」の監督、マシュー・ヴォーンと共同で映画スタジオの設立、自身のYouTubeチャンネルを開設するなど、特にメディア事業への進出は顕著だ。

2位のカリーは、11年続いていたレブロンのNBA最高年棒選手の座を奪った。

自身のシューズブランドを手がけるスポーツ用品大手「アンダーアーマー」と新たに結んだスポンサー契約などにより、カリーの競技外サラリーは、前年から倍増の1億ドル(約146億円)に達した。

カリーと並び〝ビジネス王〟の大谷は、実に収入の97.6%が競技外。大谷の場合、年棒は250万ドル(約3億6500万円)と超格安で、2034年から繰り越し分の年間6800万ドル(約99億円)を受け取る契約になっている。

スポンサーがほぼ日本企業だった前回(6000万ドル=約87億6000万円)と比べ、日本以外の企業も〝大谷マネー〟に参入してきたことでさらに上積みした。

ドジャースは、本来支払うべき巨額のサラリーが浮いた分、戦力補強にあてられたことが奏功して、いきなりワールドシリーズを制覇。ビジネス面でも大きな恩恵を受け、大谷さまさまだろう。

3位のフューリーは、ウシクとの2度のヘビー級最強決定戦で得たファイトマネーにより、前年42位から上位に食い込んだ。これは、2度とも開催地がサウジアラビアだったことが大きい。

近年、スポーツ界にインパクトを与えてきたサウジマネー。ロナウドらサッカー選手、LIVゴルフ所属のゴルファー、フューリー&ウシクと、トップ20の1/3はサウジマネーとの絡みがある。

女子プロスポーツもけん引するアメリカ、市場は拡大傾向も…

女子スポーツ選手トップのココ・ガウフでもトップ50入りには届かず

米スポーツメディア「スポルティコ」によれば、女子スポーツ選手で最も収入が多かったのが、テニスのココ・ガウフ(参考記事)で、3040万ドル(約44億4000万円)だった。セリーナ・ウィリアムス(2023年49位)以来のトップ50入りはならず。

女子のトップ15(10億円以上)では、テニス界が最多の9人で、ネリー・コルダらゴルフ界から3人、スキーのアイリーン・グー、体操のシモーネ・バイルズ、WNBAのケイトリン・クラークが名を連ねた。

世界最大手の会計事務所「デロイト」は、2025年の女子スポーツ全体の収益が23億5000万ドル(約3431億円)に達すると予測している。2023年が10億ドル規模だったことを考えれば、2年で2倍以上に市場が拡大している。これに伴い、上位20人の平均収入額は、2023年が850万ドル(約12億4000万円)、2024年が1017万ドル(約14億8500万円)と上昇傾向を示す。

市場をけん引するのはやはり、スポーツビジネスが最も成熟しているアメリカで、特にWNBAはその注目度の高さから、放映権料などが前年の3倍以上となる2億ドル(約290億円)に引き上げられる。これは、NBAの放映権料が30億ドル(約438億円)から69億ドル(約1007億円)に増額されたことに起因している。

これにより、WNBA選手の最高年俸は25万~100万ドルで推移するとみられるが、NBAの平均年俸120万ドルには及ばない。また、公平を期すため、4大大会で男女同額の賞金が設けられているテニス界だが、その他の大会ではいまだ賞金に大きな性差がある。

現状では、数少ない女子プロスポーツ団体・特定の選手に一極集中した末の拡大であり、女子スポーツ全体の底上げになっているかは疑問。女子選手の中での格差がますます広がっていく可能性がある。

U25世代の5人、ジェファーソンは歴代最強候補

超ハイペースで成績を伸ばすジェファーソン

トップ50の平均年齢は、前回が31.2歳で今回は31歳とほぼ変わらず。トップ50にランクインした25歳以下(Umder25)選手は、NFLから2人、サッカーから2人、NBAから1人の5人で、前回までの顔ぶれと大きく様変わりした。

U25の筆頭格は、NFLジャクソンビル・ジャガーズのクォーターバック(QB)トレバー・ローレンス(25歳、21位)。2024年6月に5年総額2億7500万ドルの延長契約で大幅にサラリーが増加した。

ローレンスはクレムソン大学3年時の2021年NFLドラフトで、ジャガーズに全体1位されてプロ入り。以降、エースQBを務めるものの、プレーオフ進出は1度のみでチーム状況はいまひとつ。大型契約を結んで迎えた昨シーズンはケガに見舞われ、フランチャイズプレーヤーとしては物足りないパフォーマンスが続く。

一方、ミネソタ・バイキングスのワイドレシーバー(WR)ジャスティン・ジェファーソン(25歳、28位)は2024年6月に、当時WRで史上最高額になる4年総額1億4000万ドル(約204億円)の延長契約に合意(その後、シンシナティ・ベンガルズのWRジャマール・チェイスが最高額を更新)。その価値にふさわしい活躍を見せる。

ジェファーソンはルイジアナ州立大学3年時の2020年ドラフトで、バイキングスに全体22位指名を受けてプロ位入り。新人年からエースWRを務め、2022年シーズンにはレシーブ王、チームもジャファーソン加入後、少しずつ上昇傾向に転じている。

新人年から5年連続で1000ヤード以上獲得(一流の証)はNFLで過去に2人しか達成しておらず、5年間で獲得した7432レシーブヤードは歴代最多。このままケガなく順調にキャリアを重ねれば、前人未到といわれるWRジェリー・ライスの歴代記録(2万2895レシーブヤード)超えも見えてくる。

人材豊富なNBAで次代のスーパースター候補に名乗りを上げるアント

毎年のようにスーパースター候補が登場する人材豊富なNBAから最年少でのトップ50入りを果たしたのが、ミネソタ・ティンバーウルブスのポイントガード(PG)アンソニー・エドワーズ(23歳、33位)。

2020年ドラフトで大学1年生ながらウルブスに全体1位指名されたアントは昨季、オールNBAセカンドチームに選出されたことから〝商品価値〟をさらに高めた。

チームの将来を託された立場で迎えた今季はほぼ休みなく出場し続け、プレイオフではレブロン、カリーを打ち破って2年連続でNBAファイナルまであと一歩のところまで迫り、新旧交代を印象づけた。

マンチェスター・シティのノルウェー代表フォワード(FW)アーリング・ハーランド(24歳、34位)は、2025年1月に結んだ2034年までの延長契約により、競技内サラリーはさらに増加。ナイキとのスポンサー契約も継続中。

昨年、バロンドール(世界最優秀選手)投票2位と躍進した、レアル・マドリードのブラジル代表FWヴィニシウス・ジュニオール(24歳)が46位に滑り込み。母国では、ネイマール(25位)に匹敵する人気を誇り、ゲータレードやペプシの飲料大手とのスポンサー契約、金満・ドバイの観光大使など、ハーランドを超える競技外サラリーを手にしている。

スポトリ

編集部