モーターコントロールとは?
運動パフォーマンスを向上させるために、動きの効率を高めることは非常に重要です。
「大きな力を発揮する」「しなやかな動きで燃費良くプレーする」「正確にボールを投げられる」など、これらは全身が「協調」することで達成されます。
逆に、筋肉の協調や関節の可動性が悪くなることは、最終的に脳にとって潜在的に危険な要素であると認識され、パフォーマンスは低下します。
これらを改善する方法の一つを「モーターコントロール」と呼びます。
今回は、中学、高校、大学の部活動生はもちろん、運動不足になりがちな社会人の方にも効果のあるモーターコントロールの実践例を紹介していきます。
まずは体の状態をチェック(アセスメント)
モーターコントロールを始める前に、今の体の状態を知っておく必要がありますが、この確認作業を「アセスメント(評価)」といいます。脳神経トレーニングに限らず、個人個人、どのトレーニングが適しているかを知る上で非常に重要です。
アセスメントにはさまざまな方法がありますが、今回は日常生活の中で簡単におこなえるものをピックアップしました。 モーターコントロール後の可動域の広がりなどを比較するため、アセスメントはできる限り同じ条件でおこなってください。
①前屈
・両足を揃え、上体を前方に倒し、両手を床に降ろす。
チェックポイント:指先がどこまで床に近づくか、背中・太ももの裏のハリなども覚えておく。
②後屈
・両足を肩幅に広げ、両手は胸の前に置き、後ろに反る。
※腰痛などで痛みを感じる部分があれば、途中で止めてください。
チェックポイント:後ろに反った際の見え方、前屈同様に後屈のしやすさなど、身体の感覚も覚えておく。
③バランスチェック
・両腕を軽く広げる。右(左)足を上げて10秒間目をつぶり、静止状態を維持するように努める。
※あまりにもふらつきが大きい場合、「時間を短くする」「目を開ける」など、安全に実施してください。
両足で実施しても構いませんが、まずはバランスチェックで悪かった方の足(立ち足)から実施してみてください。多くの方で身体の変化(可動域、バランス能力の向上)を感じると思います。
チェックポイント:体の揺れや動き幅の大きさを覚えておく。
足根骨(楔状骨、立方骨、舟状骨)のモーターコントロール
モーターコントロールには、足首、膝、肩などの関節をターゲットとしたものがかなり多くあります。今回は、初めての人でも効果を実感しやすく、手軽にできる足根骨のモーターコントロールです。
足根骨のモーターコントロールは、多くの人が可動域の変化を感じやすいものの一つです。大きな理由として、日常で靴を履く機会が多く、足の関節などが固まっていることが挙げられます。
足のケガが多い人、扁平足などの足に問題のある人、歩いている時につまずきがちな人、長時間靴を履いている人(=ほぼ全員)などに有効です。
過去に重度の足首ねんざ、手術をした人、モーターコントロール時に足首を強く押しつけ過ぎた人は、可動域が低下する場合があります。「回数を減らす」「強さを下げる」「座っておこなう」など、負荷を下げてみてください。
足根骨のモーターコントロール(手順)
注意:立っておこなうのが難しい場合、「椅子などにつかまる」「座っておこなう」など、安全を考慮しましょう。
1) 楔状骨のモーターコントロール
1. 楔状骨を探す(動画内に詳細)。
2. 楔状骨の周りに感覚刺激(さする)を入れる(10秒間)。
3. 足を後ろに引き、爪先を床につける。この際、姿勢は高く保つ。
4. かかとを真っすぐにして、楔状骨を意識しながら6回程度、屈伸のような動きをする。
5. アセスメント①~③で、モーターコントロール前後の変化を確認する。
2) 立方骨のモーターコントロール
1. 立方骨(外くるぶしの斜め前)を探す(動画内に詳細)。
2. 立方骨の周りに感覚刺激(さする)を入れる(10秒間)。
3. 足を後ろに引き、爪先を床につける。この際、姿勢は高く保つ。
4. かかとを外側に向けて、立方骨を意識しながら6回程度、屈伸のような動きをする。
5. アセスメント①~③で、モーターコントロール前後の変化を確認する。
3) 舟状骨のモーターコントロール
1. 舟状骨(内くるぶしの斜め前)を探す(動画内に詳細)。
2. 舟状骨の周りに感覚刺激(さする)を入れる(10秒間)。
3. 足を後ろに引き、爪先を床につける。この際、姿勢は高く保つ。
4. かかとを内側に向けて、舟状骨を意識しながら6回程度、屈伸のような動きをする。
5. アセスメント①~③で、モーターコントロール前後の変化を確認する。
私の場合、足根骨のモーターコントロールをおこなうと、特に前屈の可動域が広がる傾向にあります。もちろん反応には個人差があり、後屈で大きな変化を感じる人もいます。
アセスメントと比較して、可動域が向上したのであれば、適度な回数、強さであったといえます。変化がなかった場合、「回数を増やす」「動かす強さを上げる」など、負荷を上げて実施してください。
1回にたくさんおこなってもあまり効果はありませんので、1日のスキマ時間におこなうことをおススメします。少なくとも1日2回以上、可動域が向上したと感じるくらい実施しましょう。
今後の連載では、可動域が向上したことによるスポーツパフォーマンスに対する好影響について述べていきます。(竹内 康弘)
竹内康弘(元浦和レッズコーチ・脳神経トレーナー)
年齢問わず、日本・ドイツで10年以上、プロアスリート、世界大会出場選手ら延べ500人以上を指導。
ドイツの機能神経学とサッカーを掛け合わせたトレーニングに出会ったことをきっかけに、機能神経学、応用神経科学を学ぶ。
現在は、サッカーコーチとして活動する傍ら、体の不調を改善したい人や競技力を向上したいアスリートに向けてトレーニングセッションを提供する。
スポーツコーチ、トレーナーや治療家など、その他、健康課題に取り組む企業を対象に脳神経トレーニングの普及活動も積極的におこなっている。
<指導歴>
2013~2016:帝京平成大学女子サッカー部
2016~2017 :ドイツユースチーム(U-19)
2017~2019:南葛SC
2019:岡山湯郷Belle
2019~2022:INAC東京(INAC神戸の下部組織)
2022~2024:浦和レッズ