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2020.04.29
ニュートリションな人々
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名門ラグビー部をニュートリションから支える【ニュートリションな人々 #03 ~藤井瑞恵さん 前編~】 
Kiyohiro Shimano

ニュートリション関係者の人物背景や取り組みについて紹介するオープニング企画。第3回目は、帝京大学助教(スポーツ医科学センター所属)で、日本スポーツ栄養協会公認スポーツ栄養士の藤井瑞恵さんの半生を振り返る(全2回)。

トレーナー志望からスポーツニュートリショニストに

小さいころから体を動かすのが好きで、いろいろなスポーツをしてきました。中学時代はバレーボール部、高校時代はテニス部に所属し、青春時代を過ごしました。残念ながらプロやトップレベルを目指すほどの実力ではなかったため、プレーヤーとしては一区切りして、選手をサポートする側に回りたい、スポーツの仕事をしたいと思い、トレーナーの道を志すことにしました。高校卒業後はスポーツが盛んな順天堂大学に進学しました。

ところが、進学した順天堂大学はメディカル分野で有名でしたが、トレーナーを養成する環境はまだ整っていませんでした。大学でスポーツ関連の講義を受けて知識を蓄えていたものの、トレーナーになるために実際にどのように生かせばいいかとか、どういう手順を踏めばいいか、全くわかりませんでした。部活に所属しながら機会を待つといった感じでした。

入部したスキー部では、夏場のオフシーズンに体力づくりをしなくてはいけないんですが、ローラーブレードや夏スキーなど遊ぶことに夢中でした(笑)。順天堂大学では1年生は全寮制で、入寮当時は毎日パーティー(笑)。生活が乱れて体重が急増してしまいました。その後、極端な食事制限をして減量しましたが、リバウンドをしてしまい、うまくいきませんでした。

「このままではマズい」と危機感に迫られて生活を見直した時、「極端な食事制限は続かないし、逆効果、食べながら有酸素運動を増やして少しずつやせるにしたらうまくいくかもしれない」と思って実践してみたんです。すると、効果てきめん、リバウンドせずに、減量もうまくいくようになりました。体を変えるには、食と運動の両方で実践することの大切さを知りました。

それから、食や栄養にも興味を持つようになり、視点も変わって「スポーツや運動と食は関連性がある」と思うようになりました。順天堂大学のスポーツ部活動生やスキー部の人たちはトレーニングを一生懸命やるんですが、食に気を使うことがほとんどなく、食を意識すればもっと良くなるんじゃないかなと考えていました。

ちょうどそのころ、スポーツ現場で栄養指導・サポートをしている管理栄養士の先生の話を聞く機会があり、「食から選手をサポートして行きたい!」と思い、進むべき道を見つけました。このころは少し道に迷っていたので、話を聞くことができて本当に良かったと思います。

順天堂大学を卒業してからはスポーツニュートリショニスト(栄養士)を目指し、管理栄養士の資格を取得するため、スポーツクラブで働きながら専門学校に通いました。このころ、いろいろな方と縁ができて今につながっているので貴重な時間でしたね。

管理栄養士の資格を取った直後は、スポーツ栄養学の勉強会に参加し、東海大学で栄養サポートの現場経験を積ませていただきました。当時サポートしていた女子ラクロス部は月2~3回程度の現場訪問でしたが、ここで経験したことで目標への扉がほんの少し開いた気がしました。

その後、勉強会で知り合った方のご縁でトレーニングと栄養指導ができる人材を求めていた青山学院大学のトレーニング施設で働くことになり、学生、教職員向けに健康のための食事指導、簡単なトレーニング(運動)指導を担当することになりました。

トレーニングと栄養の指導ができる専門家は当時ほとんどいなくて、両方を知っていた私に白羽の矢が立ったわけですが、学生時代にトレーニングの勉強をしたことが無駄になりませんでしたね。

大学からは「チームも見てほしい」という要望もあり、バスケットボール、バレーボール部など部活動の栄養指導をするようになりました。選手の体組成測定の際に同席して体の変動を見たり、トレーナーと連携して選手の体づくりのためのアドバイスをしたりしていました。日常業務をこなしながら、日本スポーツ協会公認スポーツ栄養士の資格を取得したのはちょうどこのころです。

そして、2016年からは帝京大学に移り、スポーツ医科学センター※1・フィジカルチームの一員としてラグビー部※2を専門的に見ています。やはり、チームに帯同して毎日のように選手と顔を合わせ、接するのは楽しいですし、やりがいもあります。

現在は帝京大学に在籍する栄養チーム(計7名)のリーダーを務めていて、現場の意見を聞いて改善策を見出したり、各チームのリーダーが集まるセンターの運営会議に出席してセンターの方針を決めたり、少し責任を負う役割も増えてきました。8割が現場、2割がマネジメントといった割合で毎日を過ごしています。

※1 センター長を頂点に、フィジカル(トレーナー、栄養士)、メディカル、サイエンス、テクノロジーの4チームで構成され、各専門家が科学的にアスリートをサポートする体制が整っている。

※2 全国大学ラグビーフットボール選手権大会で前人未到の9連覇(2009~2017年)を達成した大学ラグビー界の雄。昨年のW杯では日本代表31人中7人が帝京大学ラグビー部出身。

<後編に続く>

Kiyohiro Shimano

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