ヨーロッパで流行の兆しを見せるエコな食品原料

ホエイ・カゼイン(動物性)、ソイ、ピー、ライス(植物性)…これらは国内外で流行し、食文化としても定着しつつあるプロテイン商品の原材料だが、新たに「酵母プロテイン」が割って入る将来が来るかもしれない。

健康や環境問題などを考慮した食生活者が多い海外では植物性プロテインの市場が拡大傾向で、動物性プロテインのシェアを奪いつつある勢い。一方、日本国内では独自の市場が形成されるため、まだまだ動物性プロテインが活況。海外の流行に影響されやすいことから、日本でも今後、海外と同様の動きが見られる可能性がある。

こうした中、従来品である動物性・植物性との差別化を図り、パン酵母を由来とした独自のプロテインをひっさげて市場に新風を巻き起こそうとしているのが「株式会社 中原(本社:埼玉県さいたま市)」。国内に酵母プロテインはじめ、様々な素材を供給している。

酵母プロテインの市場は従来品と比較して成長の余地を大いに残しているが、特にパン食文化が定着し、発酵食品が身近なヨーロッパを中心とした地域で徐々に広がりを見せる。酵母の風味を生かした焼き菓子、バーのほか、ドリンクや粉末形状の食品・サプリにも配合され、一般消費者にも浸透しつつある。

酵母プロテインは発酵酵母を由来とするため、その製造工程は省エネルギー化が図られ、廃棄物をリサイクルできる仕組みが構築されている。こうした製造工程も酵母プロテインがエコに対する意識の高い海外で評価される背景にもなっている。

動物性・植物性とも異なる酵母プロテイン

酵母プロテインの主な特徴として、①「パン酵母からたんぱく質を分離しているため、アレルゲンフリー(動物性・植物と異なる)」、②「従来品と比較してそん色ない栄養価」、③「緩やかで持続的な吸収効率」が挙げられる。

①はパン酵母由来なので乳や大豆など体質的に摂取が困難な場合の選択肢、または置き換えにもなり得る。②③については、同社が独自にホエイ、大豆と比較したアミノ酸含有量やホエイと比較した吸収効率など試験をおこなっている。

使用するホエイプロテイン原料によって差は出てくるが、BCAAの総量は酵母プロテインが2原料を上回り(図1)、必須アミノ酸「リジン」「ロイシン」「イソロイシン」などの含有量は高値を示している(図2)

図1 BCAAの総含有量

図2 アミノ酸含量比較(メーカー調べ、ロットによりばらつきあり

また、吸収効率をホエイ(比較原料にもよる)と比較した場合、総アミノ酸(45種)の血中吸収量は摂取6時間まで同等、血中濃度は4~6時間時点で酵母群の方が高い傾向にあることがわかっている(図3)

図3 総アミノ酸吸収効率比較

必須アミノ酸の血中濃度は4~6時間時点でホエイと有意差があり(図4)、BCAAの吸収量はホエイと同等、血中濃度は4~6時間時点で酵母の方が高く(図5)、吸収が緩やかで体内に長く維持される可能性が確認された。この特徴から、運動前に酵母、運動後にホエイと摂取タイミングを考えた使い分けも可能になってくる。

図4 アミノ酸吸収効率比較
図5 BCAA吸収効率比較

現在、栄養価・吸収効率に関するデータを踏まえ、同社ではプロテインに期待される「筋肉」への作用についてヒト試験を実施中。有意なデータが示されれば、酵母プロテインの新たな強調材料として加わってくる。酵母プロテインの拡販を図る同社の担当者は「健康・運動分野での酵母プロテインに関する可能性に期待を寄せている」としている。

この8カ月で30円以上下落している円相場の影響から価格に大きな変動が見られるものの、酵母プロテインはホエイプロテインと原価に差がほとんどなく、前述の製造工程から安定的に供給できるのが強み。これは、商品化された際、他商品と同価格水準で提供できることを意味している。

動物性・植物性プロテインは近10年で、「体づくり」の鉄板アイテムとして多くの人に受け入れられ、それぞれの特徴を感じながら継続的に摂取し、生活に役立てられてきた。従来品とは別の魅力を持つ酵母プロテインなど新たな原料・商品の出現は、生活が多様化した昨今で商品選択、食生活の幅を広げることにもつながってくる。

健康的に体づくりをめざす人、コンディショニング・肉体強化を図りたいスポーツ選手など、今後トレンドが生まれそうな酵母プロテインの動向には注目しておきたい。