スポーツ・運動と食を結ぶ
ウェブマガジン
お問い合わせ
2020.12.02
連載
現場で役立つスポーツ栄養学の知識③【スポーツ栄養の果たす役割 #12】
松本 恵(日本大学文理学部教授、公認スポーツ栄養士)
0
Twitter Facebook

日のトータルで栄養バランスを考える

例えば、フィットネスインストラクターの方々のような不規則な生活を強いられながら、かつ一定以上の運動量を求められる生活環境に対応するためにはどうすればいいのでしょうか?

私たち公認スポーツ栄養士がスポーツ選手のサポートを実施する場合、大会運営や日程、あるいは試合の進行状況、天候や開催時期などに応じたサポート活動を行っていきますが、その方法がそういった方々の食事対策に通じるヒントにもなると考えます。

例えば、1~2時間おきに試合があったりするケース。これをレッスンに置き換えてみましょう。仮に、次のレッスンまで約2時間空くのであれば、固形物であれば問題ないので、小さなおにぎりやバナナを食べたりする。あるいは、最近ではさまざまなスポーツフードやゼリー飲料などのラインナップも豊富で、なおかつその内容も糖質だけでなく、たんぱく質や脂質が含まれている商品など、バリエーションには事欠きません。

したがって、それぞれの状況に応じて、時間のないときには食事の代わりにするなどし、朝もしくは夜、時間のあるときにたんぱく質や野菜をしっかり食べるという方法でもよいでしょう。つまり、1回の食事で無理してバランスをとろうとは思わなくてもよいということ。1日トータルで考えてみるのです。すると、少し肩の荷が下りた気になりませんか?

昼食に時間がとれないとき、あるいはレッスンの合間などには糖質を中心に。糖質は、エネルギーとして必要である一方、消化・吸収には負担がかかりにくい。そこで、隙間時間におにぎりやカステラなど、油脂分の少ないものをちょっとずつ食べてエネルギーを補給しておくのです。

そして、レッスン終了後やトレーニング終了後には成長ホルモンの分泌が高くなるので、たんぱく質と糖質を速やかに摂る。同時に摂ることで、筋タンパクの合成を高めることが期待できます。その際には、プロテインに限らなくても、魚肉ソーセージや今流行りのサラダチキンでもいいし、牛乳・乳製品でもよいでしょう。そして、家に帰ったら、サラダと果物を食べて就寝するという具合です。

たんぱく質は消化・吸収に時間がかかるので、夜遅く食べると、翌日まで胃腸の疲れがとれないこともあります。また、レッスンの合間に摂ると胃腸に血が集まって身体が重く感じるようになり、その結果、レッスンが辛くなってしまうことがあるかもしれません。したがって、たんぱく質は全プログラム終了後に摂るよう心がけましょう。

以上をまとめてみると、糖質と水分はこまめに摂り続け、たんぱく質はレッスン終了後速やかに。そして、野菜と果物は朝、もしくは夜などゆっくり食べられるときにしっかりと食べて寝れば、胃腸に疲れを残さずに、1日バランスよく食べられたということになります。

日間で帳尻合わせ

1日で帳尻を合わせるのが難しい場合には、もう少し余裕をもたせてもいいかもしれません。特に油脂系の栄養素(脂溶性ビタミン:ビタミンA、D、E、Kなど)であれば、3日間で帳尻を合わせてもよいと思います。

例えば、脂質に溶けやすい緑の濃い緑黄色野菜であれば、身体に蓄積する時間も長い。したがって、「今日の食事には緑黄色野菜が入っていなかったので、明日は必ず食べよう」でもいいのです。

ただし、果物や色の薄いキャベツ、レタスなどの野菜に入っている食物繊維やビタミンC(水溶性ビタミン)は蓄積できないので、できるだけ毎日食べるよう心がけたいものです。

このように、3日間で帳尻を合わせるように心がけ、さらにトータル1週間で考えたとき、今週はうまく食べることができたという、少し長い目で見た捉え方であれば、たとえ思い通りにいかなかった日が1日、2日あっても、ストレスがかかることなく実践できるのではないでしょうか。ただし、それ以上で合わせようとするのはNG。なぜなら、ヒトの身体は約2週間バランスの悪い食事が続いてしまうと、代謝が変化して太ったり、痩せたりしてしまうからです。

言い換えれば、悪い習慣は1週間のうちに修正したほうがいいということであり、さらにいえば、身体を絞っていこうと思ったら、2週間以上続けなければ効果は期待できず、すぐにリバウンドしてしまうというわけです。

逆に、1週間程度で痩せたといっているのは、ぬか喜びに過ぎず、決して代謝が変わってきて痩せているわけではなく、実はほとんど脱水によるものだということ。要は、単にスポンジをキュッと絞ったら、水分が溢れ出たというだけの状態なのです。

また、バランスを考慮するという意味では、PFCバランスも重要です。一般的な比率としては、たんぱく質(P)約20%以下、脂質(F)20~30%、炭水化物(C)50~70%。ちなみに、現在一般の人たちが行っている糖質制限の場合、その多くがこのバランスを崩すことから入っています。

しかしながら、公認スポーツ栄養士がスポーツ選手と対峙しながら行う栄養指導では、この考え方は否。したがって、減量を主体とした体重コントロールを行う場合には、PFCバランスは保ったまま、カロリー全体をスケールダウンさせていくことがポイントとなることも付け加えておきます。

<次回に続く>


松本 恵/Megumi Matsumoto

北海道札幌市生まれ。2004年北海道大学大学院農学研究科応用生命科学博士課程後期修了。日本大学体育学部体育学科教授。管理栄養士。日本スポーツ協会公認スポーツ栄養士。

大学では、陸上競技、柔道、トライアスロン、スキージャンプ選手などの栄養サポートに携わる。スポーツ貧血の改善・予防、試合時のコンディショニング・リカバリーなど幅広い研究をするとともに、ソチ・オリンピックではマルチサポート・ハウス ミール担当など多岐にわたり活動。日本スポーツ栄養学会理事。

スポーツ栄養講座バナー

関連記事