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2020.06.24
スポーツ&アスリート
30歳からのスタート、“運命”を変えて勝ち取った女王の座 ~ボクシング・バンタム級 奥田朋子 特別編~
Kiyohiro Shimano
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2020年1月、女子プロボクシング・バンタム級王者に就いた奥田朋子(ミツキボクシングジム)。学生時代は柔道の強豪選手として活躍し、教職の道へ進んだが、30歳を区切りにプレーヤーとして新たな挑戦を始めた。ボクシング歴6年で頂点へと上り詰めた奥田の人生を追った(全3回)。

今回は、女王になるまでのコンディショニング、教職者として奥田が贈る次世代へのメッセージなどを紹介する。

減量とパフォーマンスのバランス

奥田は年2回のペースで試合をこなしている。ボクシングは階級制を敷いているため、「減量」は多くのボクサーにとって避けられないものだ。普段の体重から5、6kg落とす必要がある奥田は、減量を「作業」とみているためそれほど苦とは思っていない。

試合が近づいて激しいトレーニングで追い込んでいく中、これまで最適な減量方法を模索する日々が続いている。当初は糖質をカットすることで減量を達成していたが、レベルが上がるとラウンド数の増加とともに試合時間が長くなるため、糖質カットをするとスタミナ(エネルギー)面での不安も出てくる。

※女子は1ラウンド2分。C級(プロライセンス取得時)は4ラウンド制、B級は6ラウンド制、A級・タイトルマッチは8ラウンド制

そこで、奥田は糖質のカットをするのではなく摂取量を抑え、脂質をエネルギー源として有効活用できる体に作り変えることにした(いわゆるケトジェニック)。体重を落とせても、動けなくなっては意味がないので、減量とパフォーマンス維持のバランスをどう取っていくかがカギになった。

「今回の試合(王座決定戦)は追い込む必要があったので、トレーニングも相当量積みました。普段通り食べても体重がみるみる落ちてバッチリだと思っていたんですが、スタミナ切れを起こす、パフォーマンスが上がらないという問題が出てきて、結局途中から糖質もある程度補充する方向に切り替えました。ケトジェニックとの併用とでも言いますか。栄養摂取の対策を考えるうえで、改めて糖質の使い方、必要性を感じましたね」

栄養戦略のほかにも、日ごろのケアに対する意識も高まった。学校の授業が終わって長時間かけてジムに通い、練習が終わればすぐに帰宅。教員とプロボクサー。忙しい毎日を送る中で、体のケアまで心を配るには時間が足りなかった。しかし、大事なタイトル戦を前に周囲から促されて渋々従ったという。

「練習が終わるとクタクタで、すぐに寝たい、早く食べたいという気持ちが勝ってしまうんですね。ケアを怠っていたわけではないんですが、時間にも限りがありますから。それで、たまたまジム近くのマッサージ店に行ったら、施術師さんの技術と知識が豊富で、ケアを任せることにしました。疲労回復には効果てき面で、練習の質も上がったと思います」

技術の向上もさることながら、体の内と外からのコンディショニングとケア、そして大学時代に学んだ心理学。周囲のサポートも受けながら、心技体を高めて王座を射止めたのだった。

恐れずにチャレンジしてほしい!

ボクシング女王になり、追われる立場となった奥田は、「正直にいうと、女子ボクシング界の発展のためとか、ピンとこないんですよね。私の場合、好きなことをさせてもらっているという感覚なので。もちろん、いろいろな人が活躍することで人気や注目度につながっていくと思っています。次は世界に挑戦したいですね」と、今後の目標を話す。

30歳でボクシングを始め、頂点に上り詰めた奥田。30歳代だからこそ新しく何かを始めることを恐れないでほしいと、同年代へメッセージを送る。

「『女性の30歳は~』みたいなイメージがありますよね。何かを始めるには遅いと。私は全然そんなことないと思っています。30歳代だってまだまだやれる。肉体的には20歳代の時には及ばないかもしれませんが、その分経験という武器がある。これって強みになると思うんですよね。ボクシングに限らず。それに、ジムで一緒にやっている仲間や若い選手と接することで、新しい発見や学びが常にある。ボクシングは、いろいろな経験を経て成長した自分を表現している場なんです。表現者としてリングに立ち続け、同年代の人たちに少しでも『こんなにやれるぞ』と伝えられたらと思っています」

ボクシング女王であるとともに、教職に就く奥田は若い世代に「どんどん失敗したらええ、あんたらには失敗する権利がある」と言う。失敗したからこそ得られる経験は貴重で、それが壁にぶつかった時に乗り越える原動力になる。

「今は、デジタルとかネットとかが進んで、サポートが充実した生きやすい世の中ですよね。何でも手に入りやすいゆえに、若い子たちはそれに慣れてしまって、壁にぶつかって失敗することに抵抗があるのかなと感じています。失敗は成功のヒントが詰まっている。失敗を恐れて望まない無難な道を選ぶより、失敗を糧に自らを成長させて望んだ道へ進んでほしい」

数々の失敗を乗り越えて、新しい道に進むことでそれまでの経験を生かして大きな成功を果たす。奥田のこれまでの人生がそれを物語っている。

<完>

奥田朋子選手のSNS

ブログ】【YouTube

 

奥田朋子選手所属ジム

ミツキボクシングジム

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