スポーツに関するすべてが集まった展示会「SPORTEC2023」が8月2~4日に開催された。併設されている「スポーツニュートリション(SN)EXPO」では、競技スポーツ、運動をする人に向けた商品関連ブースが軒を連ね、(日本独自の)トレンドがうかがい知れた。

ここでは、特に気になった商品、企業・団体ブースを紹介しながら、独自で忖度なく評価(◎・〇)する。評価基準は、「新しさ」「機能性(配合原料のエビデンス)」「原料コストと値段設定」「露出度の低さ(広告宣伝<商品の質)」「将来性」を加味し、独断と偏見で。

「プロテイン」+αがトレンドか

プロテインコーヒー(メガロス

メガロスは、野村不動産ライフ&スポーツ株式会社が運営するフィットネスクラブ。不動産=住なので、事業体として「健康」「運動」は範囲内。

メガロスのイチオシは「プロテインコーヒー(30本入りスティック)」で、飲料大手「UCC」とコラボ。1杯あたり6.1gのたんぱく質(ホエイペプチド、コラーゲン)を添加し、健康を強く意識させるもの。

UCCが持つ焙煎技術で、ホエイの独特なにおいを感じさせず、味わいはコーヒーそのまま。「運動前後に飲めるか」という点では、他の飲料に軍配が上がるが、朝食のコーヒーなどでたんぱく質を自然に摂れるのは良いかも。【注目度:〇】

CPIプロテインドリンク(ALL UP)

原料はコラーゲンペプチド(CP)・アイソレート(有効成分のみを抽出)で、スポーツドリンク感覚で飲めるニュータイプのプロテイン飲料。味わいはスッキリとしていて、運動前・中・後に最適。

乳性、植物性プロテイン原料が流行している中、CPを主原料とする商品が増えてきた。CPの筋肉量増加作用が報告されつつあるものの、乳性との効果比較は考慮したい。

アンチ・ドーピング認証「インフォームド・チョイス」取得済みで、乳性よりもやや安価。【注目度:〇】

アセロラinプロテインスムージー(ニチレイフーズ)

アセロラ原料のトップサプライヤー「ニチレイフーズ」がスポーツ分野へ参入。同社は今回、フィットネスジム大手「TOTAL Workout」が展開するオリジナルプロテインにアセロラを加えたスムージーを初披露した。

味わいは、アセロラの酸味が利いていてプロテイン色は全く感じず、サッパリしている。運動前・中・後とどのタイミングでも問題なく使える。

アセロラ自体の健康機能性は、同社で多くのエビデンスを持っていることから、「今後、スポーツシーンでアセロラの持つ魅力を広げていきたい」と、担当者は話している。

ビタミンCリッチで高機能のアセロラは、SNとかなり関連深いと注目していたが、遅ればせながら登場といった感じだ。【注目度:◎】

独自成分配合でこだわりの商品づくり

ピクノレーサー(小林製薬

糸ようじでおなじみの「小林製薬」は、海岸松樹皮エキス(ピクノジェノール©)を主原料とするピクノレーサーを上市してから3年。持久系競技を中心に広がりを見せている。

ピクノジェノール©はかなり前に上市された原料だが、コストが高いため、市販品でお目にかかることは少ない。高コストに耐えられる大手ならではの挑戦的な展開。原料のエビデンス自体はしっかりしているので、スポーツ分野への転用も納得がいき、体感も見込める。ザクロ風味というのも独自性を追求している表れ。通販でのみ対応、値段は少々高め。

同社幹部が持久系競技に理解があることから生まれた商品。改良を重ねており、今後のマーケティング次第で化ける可能性がある。【注目度:◎】

地方・海外発の変わりダネ食品

大豆こんにゃく麺(佐藤商店

大分県のこんにゃく販売専門店「佐藤商店」が、こんにゃくに大豆を添加した「SOY DE NOODLE(ソイデヌードル)」を販売。たんぱく質練り込み系麺は、ここ10年のトレンドで出ては消え、出ては消えしてきた。

ダイエットシーンでの訴求で、当初は糖質0で商品開発を検討したが、味が悪くなるため、バランスを考えて「やむを得なく糖質を加えた(?)」とのことだった。こんにゃく自体には栄養がないので、大豆タンパクを添加することで健康価値を高めた。食感は完全にソバ。

ダイエッターには好評で、当日もまとめ買いする人が多く見られた。トレーナー監修による商品。【注目度:〇】

パタカせんべい(酒田米菓

機能性成分を添加したおやつ(補食)は、ここ10年着実に進化して来た印象だ。

パタカせんべいは「咀嚼機能低下」が叫ばれる昨今、硬いせんべいを噛むことで、咀嚼力がアップし、体に好影響を与えることを訴えている。食育のジュニア世代、認知機能を高めたいシニア世代には刺さりそうだ。歯科医監修で作られているため、説得力はある。パッケージは再考の余地ありか(サンプル品なので、変更の可能性大)。

アスリートせんべいは、やや行きすぎな感が否めないが、「米の消費を促す」と考えれば価値はある。【注目度:〇】

フィンランド産ABFポーク(日鉄物産

別名「ブタミンB」といわれる豚肉は、運動をする人にとって最良のたんぱく源の一つ。

ABF(AntimicroBial-Free)ポークは、抗生物質、成長ホルモン剤を一切使わず、自然あふれるフィンランドで飼育された豚を食肉加工したものだ。豚肉の使い勝手の良さに、「安全性」がオンされているABFポークは、スポーツシーンはもちろん、子供にも優しい。

仕入れ先農家とは強固な信頼関係を気づいているため、円安進行の現状でも安定供給できる強みがある。価格は、国産とほぼ同程度、スーパーなどで購入できる。(肩ロースの)味はマイルドで、硬さも全く感じられない。

「食肉だけではなく、いろいろな商品展開を考えていきたい」と、担当者は上々の反響に自信をのぞかせており、スポーツ特化の加工品開発も視野に入れている。【注目度:◎】

知らなきゃいけない! 生理のこと

1252Project(一般社団法人 スポーツを止めるな)

読者諸兄にも知る人は多いことだろう。世界で活躍した元女子スポーツ選手らが、引退後にも影響のある「生理問題」の根本解決を願い、粉骨砕身している。

「1252」は、生理が1年52週のうち、約12週間訪れる意味から命名。生理について詳しく知るインスタ教材、元選手らが生理について語る配信番組、学校への出張授業など、積極的に活動をおこなっている。生理問題の顕在化と認知を広げるため、焦点を絞っているが、関連性が高い栄養に関してもきっと触れていることだろう。

素晴らしい取り組みをしているので、選手に限らずジュニア・ユース世代の女子は各ツールを使って理解を深めてほしい。【注目度:◎】

雑感

東京五輪前から出展している企業・商品はさらなる拡販を狙い、五輪以降に出展した企業・商品は「独自原料」「新機軸」というキーワードで参入する構図。今年は特に、後者が多かった。なお、昨年まで多くのブースがあった「CBD」は姿を消したもよう。推して知るべし。

五輪が不完全燃焼で終わり、コロナも影響してSN市場は大きくなり切らないでしぼんだとみえたが、出展社数、商品バリエーションから盛り返しているもよう。むしろ、五輪後の方がビジネスチャンスは大きいとみる。今後、波に乗らなかった(乗れなかった)後発企業に運が向くかもしれない(コストや投資の効果)。

相変わらずプロテイン商品は多いが、昨年とは異なり、「全能ではないプロテインに不足している物(機能性成分)をオン」というのが多かった。地方、海外、スポーツ系大学の出展も積極的。個人的には中国企業出展エリアののんびり感とチープ感はほほえましかった。

全ブースを回ったが、有名インフルエンサーやYouTuberを広告塔に使っている企業・商品は対象外とした。意識としては「どうやって手っ取り早く売りさばくか」なので、商品の質を評価する以前の話。来年も出展しているかどうか。来場者の多くは運動や健康意識の高い人で「体感」「機能性」が重要。「見ため(露出度)と商品の質は全く別」が商品選びの基本なので、何度でも申し上げておく。