前回までは「年代別の食育のポイント」をお伝えしてきました。

その中で、“心身ともにより健やかに生きていくために学んでいくことが「食育」とされており、何かに限定せず、広い視野で「食」を考えること”が大切であるとお話しました。

ただ、広い視野と言われても漠然としていて結局どうすればよいか分かりませんよね。

そこで今回は「食育」の3つの柱についてお話いたします。

「食育」を3つの視点から見てみよう

日本のみならず、世界には「食」に関する問題がたくさんあります。

生活習慣病、やせ、肥満、食品偽装、失われる伝統、貧困、飢餓、環境問題、食料自給率など、一見「食」とは関係ないような物事も、私たちの食を脅かす要因となっています。

では、私たちが自分自身で食を守るためにはどうすれば良いのでしょうか。食育の必要性やねらい、具体的な実践方法などについて、食育の内容を整理し、分かりやすくまとめたものが、料理評論家で教育者の服部幸應氏が提唱した「食育の3本柱」です。

選食力 ~安全・安心・食べ物を選ぶ力~

旬や安全性、産地、国産、鮮度、値段、など食べ物を選ぶ基準は数多くあり、「食」に関する選択肢はあふれています。その中から、自分や家族などの周りの人の身体や心に良い食べものとはどういったものなのか?

「何を」「いつ」「どこで」「誰と」「どのくらい」、そして「どのように食べれば良いのか」。選択するのは皆さん自身です。スーパーでみなさんが手に取ろうとしている食材について正しく理解していますか? まずは、食べる前に、食を選ぶ力を身に付けていくことこそが食育の第一歩です。

共食力 ~日本の美しい食文化を次世代に~

ごはん、味噌汁、おかずを正しく食卓に並べること、「いただきます」「ごちそうさま」の挨拶、正しい箸の持ち方や食事のマナー、行事食などの日本の食文化、などをいつどこで学んだか覚えていますか?

これらは本来、家庭の食卓で家族から子どもへ伝えられてきたものです。昔は祖父母など親以外の大人とも一緒に生活をしており、毎日の食事の時間を通して自然と食文化は子ども世代へと受け継がれていました。

しかし今、社会は核家族が中心となり当たり前であった食卓で伝えるということが難しくなってきました。また、「一家団らん」は食事に関するマナーだけではなく、子どもの人格や自立心・社会性・協調性などを育てる役割もあります。

楽しく美味しく、心を育む団らん=共食を見つめ直してみましょう。

地球の食を考える ~食の問題を地球規模で考える~

「SDGs」という言葉はもうずいぶん馴染みのあるものになっているのではないでしょうか。

食に関するSDGsで、まず「フードロス」「食べ物を無駄にしないこと」を思い浮かべる方も多いと思います。世界には飢餓で苦しむ人がいる一方で、日本では毎日大量の食品が捨てられています。

さらに日本の食料自給率は低く、多くの食材・食品を外国からの輸入に頼っています。外国に頼り豊かな食生活を維持している日本。世界で異常気象が多発している今、「食べ物を無駄にしないこと」以外にも、地球環境を守るために私たちにできることとは何でしょうか。

まとめ

「食育」は食べ物について学び、食べることだけでなく、「心身豊かに生きること」すべてを取り巻くもの、そして地球環境までも含めたスケールの大きなものです。しかし、それは私たち一人ひとりが現状を知り、正しい知識を身につけ、日々の過ごし方をどうするか次第で大きく変わります。

次回は食育3本の柱の一つ「選食力」について深掘りして考えてみましょう。

㈱ミールケア 食育開発部