キリンホールディングス㈱のキリン中央研究所は、東北大学加齢医学研究所教・川島隆太博士指導の下、乳由来の成分「βラクトペプチド」の一つ「GTWYペプチド(グリシン、トレオニン、トリプトファン、チロシンと4つのアミノ酸が配列されたテトラペプチド)」が、加齢に伴い低下する前頭前野の脳血流を改善することを世界で初めて臨床試験で確認した。

これまで日本人を対象とした疫学研究で、牛乳や乳製品の摂取が認知症や認知機能低下のリスクを低減すると報告されており、同社はカマンベールチーズなどの発酵乳製品に多く含まれるβラクトペプチドに認知機能改善効果があることをすでに発見している。また、GTWYペプチドに記憶力および注意力の改善効果があることを臨床試験で確認している。ただ、効果メカニズムについては明らかにされておらず、同社は脳血流に着目して、加齢に伴う認知機能低下は脳血流の量が低下することでひき起こされると考え、GTWYペプチドには脳血流の量を増加させる働きがあると仮説を立て、研究を実施した。

<試験方法>
① 45歳から64歳の健常な男女50名を対象に、GTWYペプチド摂取群とプラセボ摂取群を無作為に割りつけた二重盲検化試験を行い、摂取0週目、6週目に認知機能課題実施中の脳血流量を測定器(光トポグラフィー:写真)で測定。
② 50歳から75歳の健常な男女114名を対象に、GTWYペプチド摂取群とプラセボ摂取群を無作為に割りつけた二重盲検化試験を行い、摂取6週目に認知機能課題実施中の脳血流量を光トポグラフィーで測定。

<試験結果>
① GTWYペプチド摂取群では、摂取6週目の認知機能課題中の背外側前頭前野の脳血流量が摂取0週目からの変化で、プラセボ摂取群と比較して統計学的に有意に高まることを確認した(図1)
② 光トポグラフィーを用いた試験でも、GTWYペプチドの6週間の摂取により、GTWYペプチド摂取群では背外側前頭前野の脳血流量がプラセボ摂取群と比較して
有意に高いことを確認した(図2)

川島博士は研究成果を受け、「脳の血流を改善することは、認知機能を維持していく上で非常に重要な要素の一つ。今回の臨床試験により、βラクトペプチドが脳血流を改善し、記憶力や集中力を高めるメカニズムの一端が明らかになった。超高齢化社会の中で、認知機能維持のために食習慣の果たす役割は、今後ますます大きくなっていくと考えられる」とコメント。研究がさらに進み、脳の健康サポートがより身近な社会となることを期待していると述べた。

キリングループは、気持ちの変化や悩みは脳の働きと密接に結びついていることに着目し、ヘルスサイエンス領域を中心に「脳の健康」を守ることを目的とした「キリン脳研究」を進めている。