毎年恒例、経済誌「フォーブス」が発表しているスポーツ選手の長者番付。2023年に最も稼いだスポーツ選手は前回に続き、クリスティアーノ・ロナウド(アルナスルFC:サウジアラビア)だった。ロナウドは通算4度目のトップで、サッカー選手としての最高額を更新し続けている。

2位は、経済好調のサウジアラビアで〝国策〟として進められている「LIVゴルフ(ツアー)」への移籍が絡んだジョン・ラーム(スペイン)、3位はリオネル・メッシ(インテル・マイアミFC:アメリカ)。

ロサンゼルス・ドジャースへの大型移籍を果たした大谷翔平は13位に大きくジャンプアップし、金銭面でもメジャーリーグを代表する選手に。今回、女性のスポーツ選手でトップ50入りはいなかった。

リッチマンたちの顔ぶれ(トップ20)

2023年マスターズを制したラームは2位に躍進

※ランキングは、2024年5月1日までの12カ月間に手にしたサラリー・賞金・ボーナス(競技内サラリー)、スポンサー契約・出演料・自身のビジネス(競技外サラリー)などから総収入を推定。為替レートは1ドル155.7円。【】は前回順位、圏外は前回50位以下。

1位 2億6000万ドル(約405億円)【1位】
クリスティアーノ・ロナウド(39歳:ポルトガル)サッカー 

2位 2億1800万ドル(約339億円)【28位】
ジョン・ラーム(29歳:スペイン)ゴルフ 

3位 1億3500万ドル(約210億円)【2位】
リオネル・メッシ(36歳:アルゼンチン)サッカー 

4位 1億2820万ドル(約200億円)【4位】
レブロン・ジェームズ(39歳:アメリカ)バスケットボール 

5位 1億1100万ドル(約173億円)【11位】
ヤニス・アデトクンボ(29歳:ギリシャ)バスケットボール 

6位 1億1000万ドル(約171億円)【3位】
キリアン・ムバッペ(25歳:フランス)サッカー 

7位 1億800万ドル(約169億円)【12位】
ネイマール(32歳:ブラジル)サッカー 

8位 1億600万ドル(約165億円)【圏外】
カリム・ベンゼマ(36歳:フランス)サッカー 

9位 1億200万ドル(約159億円)【8位】
ステフィン・カリー(36歳:アメリカ)バスケットボール 

10位 1億50万ドル(約156億円)【圏外】
ラマー・ジャクソン(27歳:アメリカ)アメリカンフットボール

11位 1億ドル(約155億円)【圏外】
ジョー・バロウ(27歳:アメリカ)アメリカンフットボール

12位 9330万ドル(約145億円)【10位】
ケビン・デュラント(35歳:アメリカ)バスケットボール

13位 8530万ドル(約133億円)【圏外】
大谷翔平(29歳:日本)野球

14位 8500万ドル(約132億円)【5位】
カネロ・アルバレス(33歳:メキシコ)ボクシング

15位 8440万ドル(約131億円)【24位】
パトリック・マホームズ(28歳:アメリカ)アメリカンフットボール

16位 8300万ドル(約129億円)【28位】
アンソニー・ジョシュア(34歳:イギリス)ボクシング

17位 8100万ドル(約126億円)【22位】
マックス・フェルスタッペン(26歳:オランダ)モータースポーツ

18位 8080万ドル(約126億円)【28位】
アーロン・ロジャース(40歳:アメリカ)アメリカンフットボール

19位 8010万ドル(約125億円)【15位】
ローリー・マキロイ(34歳:アイルランド)ゴルフ

20位 7870万ドル(約123億円)【圏外】
ジャスティン・ハーバート(26歳:アメリカ)アメリカンフットボール

スポーツ選手のサラリーは年々上昇、1億ドルプレーヤーは過去最多

トップ50入りした選手のサラリー総額は、前回が34億4000万ドル(約5359億円)だったのに対し、今回は38億7750万ドル(約6039億円)と増加。スポーツ界全体の高騰に伴い、1億ドル以上稼いだ選手は過去最多の11人になった。1億ドルプレーヤーが一人もいなかった2017年から数年での急増は、スポーツ選手の価値の高まり、スポーツビジネスの堅調さをうかがわせる。

競技別では、レブロンらバスケットボール(NBA)選手がトップ50の半数近くになる19人で最多。次いで、ジャクソンらアメリカンフットボール(NFL)選手が11人、サッカー選手が8人と続く。前回、12人がトップ50にランクインしたゴルファーだが、今回は5人に留まった。国別では、スポーツ大国・アメリカが29人と過半数以上を占め、イギリスが4人、フランスが2人となっている。

1位のロナウドは2023年1月、マンチェスター・ユナイテッド(イングランド)からアルナスルへ移籍。シーズン途中の移籍だったため、受け取れる競技内サラリーが一部だったのに対し、今回は〝満額支給〟。前回よりも大幅に数字を伸ばした。

2023年マスターズ・トーナメントを制すなどPGAツアー通算11勝を誇るラームは、2023年12月にLIVゴルフへ移籍。巨額の契約金を手にしたことで、圏外から2位に食い込んだ。ゴルフ界では、ダスティン・ジョンソン、フィル・ミケルソン(ともに圏外)らビッグネームによるサウジ移籍が続いている。

進境著しいMLS(米メジャーリーグサッカー)で変わらぬ活躍を見せる3位のメッシ。元イングランド代表主将、デビッド・ベッカムがオーナーを務め、ビジネス手腕を発揮するマイアミFCの資産価値は年々増加し、リーグ全体で2番目に高くなっている。メッシの移籍がアメリカでのサッカー人気、クラブ経営と大きな影響を与えている。

タイガー・ウッズ(23位)とレブロンは純資産(生涯サラリー)が10億ドル(約1557億円)を突破し、現役中にビリオネア入りを果たした(ウッズは2287位、レブロンは2410位、ロナウドはすでに10億ドルを突破)。

スポーツ選手では、NBA人気を全世界に広げたマイケル・ジョーダン(シカゴ・ブルズほか)とマジック・ジョンソン(ロサンゼルス・レイカーズ)が引退後にビリオネア入りしている。

ちなみに、世界一のビリオネアは、ルイ・ヴィトンやジバンシーなど多くの高級ブランドを展開するファッション業界最大手「LVMH」を率いるベルナール・アルノー(一族)。純資産は233億ドル(約3628億円)に上る。

需要の高さを誇るキング・レブロン、競技外サラリーが7割超の大谷

いまだ全盛期のレブロン。ビジネスも絶好調

スポンサー契約は、スポーツ選手にとって競技のみならず、社会からの需要の高さを図るバロメーター。今回、競技外サラリーが最も多かったのはレブロン。40歳を間近に控えるも一向に衰えを見せず、NBAの象徴として存在し続ける。2024年ドラフトでは息子のブロニーが指名される可能性があり、親子共演も現実的になってきた。

若い時からビジネス意識が高かったレブロンは、競技内サラリーよりも競技外サラリーが上回り、2023年に稼いだ額は8000万ドル(約1億2456万円)。大半は飲料大手「ペプシコ」、スポーツ用品大手「ナイキ」など15社とのスポンサー契約によるもの。

提携しているオーディオ機器大手「ビーツバイ ドクター・ドレー」の株式を取得するなど投資もおこなう。自身の運営するレブロン・ジェームスファミリー財団は、子供たちへの支援をするために学校を開設するなど、社会福祉活動も積極的に続けている。

2位のメッシは、スポーツ用品大手「アディダス」との生涯契約をはじめ、14社とスポンサー契約を結んでいる。自身が立ち上げたファッションブランドも人気で、品薄状態が続く。

3位のヤニスは、競技外サラリーが増加したことで前回11位からトップ3入り。ネット通販「アマゾン」、ネットサービス「グーグル」など業界最大手企業との提携が特徴的で、自身のルーツであるギリシャの巨大企業からも支援を受けている。スポンサー契約は12社。

レブロンのように、競技外サラリーが競技内サラリーを上回る選手はトップ50のうち8人で、特にウッズと大谷は、競技外サラリーの占める割合がレブロン(62%)より大きい。

近年、競技よりビジネスに特化した動きを見せるウッズは、実に82%が競技外サラリー。不動産投資が主で、イギリスの資産家、ジョー・ルイスらビリオネアたちがビジネスパートナーに名を連ねる。

大谷は、アナハイムから都心部を本拠とする全米屈指の人気球団への州内移籍によって、さらに価値を高めた。競技外サラリーが占める割合はウッズに次いで高い70.3%。ほとんどが日本企業によるもので、たこ焼きチェーン店「築地銀だこ」とのパートナーシップ契約も新たに締結した。

北米スポーツ史上最高額でドジャースへ移籍した大谷

サッカーとバスケのヤングスターそろい踏み、次代を担うU25世代

トップ50の平均年齢は、前回の33歳から31.2歳へと低下した。背景として、NBAでは新たな契約上限の規定、NFLでは巨額契約のボーナス設定と、若いスポーツ選手がより収入を得られるような仕組みに変わったことが挙げられる。

今回は30歳未満の選手が22人で、前回の17人から増加。さらに、次代を担う25歳以下(Umder25)でトップ50にランクインした選手は5人。

前回に続く〝有資格者〟となるのが、パリサンジェルマンFC(フランス)のフォワード(FW)ムバッペ、マンチェスター・シティ(イングランド)のFWアーリング・ハーランド(23歳、27位)、ダラス・マーベリックスのポイントガード(PG)ルカ・ドンチッチ(25歳、34位)。昨季22戦19勝と圧倒的な走りを見せたフェルスタッペン、大型契約の影響が大きかったカイラー・マレー(圏外)らは1つ歳を重ねたことで対象外となった。

代わりに、アトランタ・ホークスのPGトレイ・ヤング(25歳、44位)とニューオーリンズ・ペリカンズのパワーフォワード(PF)ザイオン・ウィリアムソン(23歳、48位)が新たに加わった。

優勝から遠ざかるホークスを頂点へと導けるか

ヤングは、2018年ドラフトでダラス・マーベリックスから全体5位指名されたが、3位指名されたドンチッチとのトレードでアトランタ・ホークスへ。両者は入団の経緯や同じポジションからライバルとされている。

キャリア6年で3度のオールスター選出を誇るヤングは、2021年にホークスと5年総額2億7000万ドル(約322億円)の契約延長を結んだ。契約しているアディダスからは、人気選手の証・シグニチャーシューズが出ている。

最高級のポテンシャルが開花する日も近い!?

ザイオンは、ハーランドとともに最年少でのランクイン。2022年に5年総額1億9700万ドル(約307億円)の延長契約を結んだ。ヤングもザイオンも年々サラリーが上がる契約になっているため、今回トップ50入りした。

チームとの契約条項に「健康状態」と「コンディショニング」が入っていることから、ケガがちなザイオンの来季以降の契約は不透明と一部報じられている。ただ、今季はキャリア最多の70試合先発出場を果たし、チームもプレイオフへと進出。PFを超越したプレーを見せ、ポテンシャルは開花しつつある。

デューク大学時代から全米での人気が高かったザイオンは、すでに競技外サラリーが1200万ドル(約18億7000万円)に達し、トップ50全体でも中位。長期契約を結んでいるナイキのジョーダンブランドからはシグニチャーシューズが発売されているほか、ゲータレード、ペプシコ、マウンテンデューとスポンサーが好物?の飲料メーカーに偏っている面も。

世界的な人気を誇るバスケ・サッカー界の次代スーパースターがそろい踏みし、数年後のトップ10を見込めるメンバー構成だが、ロナウド・メッシ、レブロンらシンボルアスリートの牙城を崩すにはまだまだ時間がかかりそうだ。

スポトリ

編集部