「公益財団法人 日本オリンピック委員会(JOC)」は6日、 第 32 回オリンピック競技大会(2020/東京) 日本代表選手団の結団式・壮行会、記者会見を開催した。コロナ禍を鑑み、出場選手、関係者ら日本代表選手団の大半がオンラインで参加した。

山下泰裕JOC会長は結団式で「(選手たちは)感謝と誇りを感じ、フィールドで思う存分輝いてほしい。開催を1年待った思いを胸に、自己を十分に表現してもらいたい」と日本選手団へ激励の言葉を送り、開会式で日本選手団旗手を務める須﨑優衣(女子レスリング50kg級=早稲田大学)に団旗を託した。日本代表選手団の主将を務める山縣亮太(陸上=セイコー)は「スポーツの力を信じ、チームジャパンの一員として、全力で戦い抜くことを誓います」と、大会への決意を示した。東京大会には史上最多582人が参加し、全33競技に出場する見込み。

以下、日本代表選手によるコメント(選手談話に編集を加えています)。写真提供:JOC

山縣亮太

【結団式・主将決意表明
自国開催となる東京五輪の日本代表に選ばれたことを誇りに、自覚と責任をもって大会に挑みます。コロナ禍で開催自体の意義が問われる中、常に自分たちに何ができるのか、スポーツの意義について考えてきました。今、自分たちにできることは、真摯に競技へ向き合い、ベストを尽くすことだと思います。スポーツの力を信じ、チームジャパンの一員として、全力で戦い抜くことを誓います。

【記者会見】
日本代表選手団の主将が自分でいいのかと思いましたが、大変光栄なのでお受けいたしました。しっかり役目を果たしたいと思います。選手としてはいいパフォーマンスを残すことが第一なので、しっかり競技に集中して頑張っていきたい。

五輪の開催をめぐって賛否がある中で、非常に迷うことはあったんですが、開催に向けてサポートをしてくださった多くの人の努力を信じて、「プレーに集中する」「自分の持っている力を出し切る」ということに意味があると。

自分の中でのスポーツの意義は、競技を含めた人生を豊かにすることです。代表が決まるまでの間、ケガをしたり、うまくいかなかったりしましたが、楽しい思いをしながら競技に取り組むことができました。陸上が自分の人生を豊かにしてくれるものであるように、スポーツが五輪を見てくださった方々の気持ちを明るくするきっかけになればいいなと思っています。

<Ryota Yamagata>
1992年6月10日・広島県生まれ。五輪は3度目の出場。日本の歴史上最も速く100mを駆け抜けた。6月6日に行われた布施スプリントで9秒95をマークし、最高の状態を保って大会に臨む。生まれながらのスプリンターで中学時代から名を馳せていた。2016年リオデジャネイロ大会・4×100mリレーでは日本チームの第1走を務め、銀メダル獲得に大きく貢献。100m走で日本人史上初の決勝進出が見られるか。

石川佳純(日本代表選手団副主将・女子卓球=全農)

【記者会見】
結団式や壮行会にオンラインでいろいろな選手が参加したのを見て「いよいよ五輪が始まるんだな」という気持ちになりました。改めて緊張感が出てきましたし、日本代表選手団副主将の大役を務めさせていただくということで、さらに身の引き締まる思いでいっぱいです。五輪は選手の誰もが目指す舞台で、自国開催であれば、さらに特別なものになります。特別な舞台で副主将の役割を与えていただいたことはとてもありがたいことです。

<Kasumi Ishikawa>
1993年2月23日・山口県生まれ。幼少期より国民が見守り、応援し続けてきた真の卓球ヒロイン。13歳11カ月で全日本選手権史上最年少ベスト4入り、高校1年時には獲得できる高校タイトルを総なめ、18歳で全日本を制するなど国内外で活躍を続ける。2012年ロンドン大会で女子団体銀メダル、2016年リオデジャネイロ大会で同銅メダルを獲得。チームリーダーとして臨む今大会は、次世代を担う伊藤美誠、平野美宇とともに3大会連続の表彰台を目指す。

須崎優衣

【記者会見】
結団式、壮行会に参加し、いよいよ夢に見た五輪が始まるんだなという思いになりました。開催まで残り少ないですが、しっかり調整して最高の状態で試合に臨みたいと思います。初めての出場になりますが、旗手の大役をいただいてとても驚きました。私の憧れである吉田沙保里選手も務めた旗手の役目を全力で果たし、スポーツの力で世界の状況を明るくできたらなと思いました。日本選手団の先頭を堂々と胸を張って歩いていきたいですね。

<Yui Susaki>
1999年6月30日・千葉県生まれ。天賦の才に恵まれた金メダルコレクター。中学6冠の実績をひっさげてJOCエリートアカデミー入りし、英才教育を受ける。高校1年生時に出場した世界カデット(16・17歳)選手権では全試合無失点フォール勝ちの伝説を残す。2014年から2019年に行われたカデット、ジュニア(21歳以下)、シニアの各年代の世界選手権を制している。憧れの吉田沙保里と同様、高速タックルを得意とし、金メダル最有力候補に挙げられている。

内村航平(体操=ジョイカル)

Q、オンラインでの結団式・壮行会について
取材などはオンラインが中心なので慣れたものですが、やはりリオの時と比べると少し物足りないと思いました。オンライン壮行会で流れた「栄光の架橋(ゆず)」は、イコール体操、イコール(金メダルを獲得した)2004年アテネ大会なので、体操選手はみんなモチベーションが上がったのではないかと思います。

Q、現在の調子は?
6月の試技会から本番に向けて調子の波を作っているところです。今は調子の波の底から少し上がっているくらい。状態はそんなに悪くありません。

Q、開催が迫ってきての率直な気持ちを
昨年、開催の是非を国民のみなさんに問いかけた時、状況としては今よりも落ち着いていて、僕の中では「できなくはない」と思っていたので、自分の気持ちを素直に伝えました。そこから状況が二転三転し、「本当に開催されるのだろうか」という気持ちを抱えながら選考会にも臨みました。(開催について)もう考える必要はないかなと区切りをつけ、僕にできることを一つ一つこなし、いい演技を見せて日本に勇気や感動を伝えることしかできないと思いました。選手が何を言っても世界は変わることがないので。

僕は周りの声に影響されない性格なので、これまで自分のやるべきことを着実にやってきたし、変わらずにできるだろうと思っています。自分自身のために戦い抜いて良いプレーをしていけば、日本中に明るいニュースを届けられると思うので、選手のみなさんは自分のために精一杯やってほしいですね。

Q、東京大会の役割は?
体操男子は僕以外、オリンピック初出場。団体は若い世代、個人は僕と同級生が出場するということで、次の世代に伝える立場だと理解しています。過去の3大会と違って団体には出場しないので、やることは決まっています。「鉄棒をやり切ること」ですね。

Q、子供たちへメッセージを
コロナ禍で日本中が大変なことになって、子供たちの運動会も中止になっている中で、僕たちが何をすればいいのか正直わからないところがあります。子供たちのことを考えると複雑な気持ちです。でも、僕たちは子供たちに夢を与えなくてはいけない存在なので、いい演技をみてもらうことでいろいろな困難を乗り越える力になれればと思います。いろいろな意見はありますが、テレビなどで僕たちのプレーを見てほしいです。

<Kohei Uchimura>
1989年1月3日・福岡県生まれ。日本が世界に誇るジムナスティックマスター。19歳で2008年北京大会に初出場して、いきなり個人総合・団体で銀メダルを獲得。2012年ロンドン大会では個人総合優勝、団体とゆかで2位と計3つのメダルを手にした。2016年リオデジャネイロ大会では念願の団体優勝、個人総合2連覇の偉業を達成した。4回連続の出場となる東京大会では鉄棒に絞り、さらなる獲得メダルの上積みを図る。

大野将平(男子柔道73kg級=旭化成)

本当に多くの方の尽力があって東京大会が開催される運びになり、我々は全身全霊をささげて最高の結果を残すのみです。現在は、ナショナルトレーニングセンター(NTC)で最終合宿の最中です。ケガのないように、最後までしっかり追い込んでいきます。

1964年東京大会から柔道競技が正式種目になって、これまで連綿と続いてきた古き良き日本柔道を思い出させるような柔道を日本武道館の畳の上で体現できたらと思っています。柔道の創始者である嘉納治五郎先生が招致にかかわった1940年東京大会、開催はされませんでしたが、この時から柔道とオリンピックは密接な関係にあるので、運命的なものを感じながら戦っていきます。

五輪連覇に関してはいろいろな方からいわれますが、言葉以上に難しいということは重々自覚しています。勝ち続ければ勝ち続けるほど、勝負は簡単ではないことを再確認しますし、それを意識するような立場になってきたと感じています。(連覇を達成するには)試合の直前まで自分の弱点を見続けることしかない。防衛的悲観主義といいますか、自分の実力を最後まで疑い続けていきたいと思います。日本武道館で試合をするのは好きですし、(先人の柔道家も戦った)前回の東京大会と同じ場所で戦えることを誇りに、自分の柔道スタイルを存分に発揮していきたいです。

オリンピックは、スポーツを通してメッセージを伝える場だと考えています。壮行会では本当に多くの国民のみなさんから応援をいただきました。われわれはその応援を力に変えて最高のパフォーマンスを見せることで、応援をいただいたことへの恩をお返しし、「オリンピックをやって良かったな」と思ってもらえるようなものを提供できれば、それが一番だと思っています。

<Shohei Ono>
1992年2月3日・山口県生まれ。2016年リオデジャネイロ大会・男子柔道73kg級覇者、東京大会で連覇を狙う。柔道の私塾「講道学舎」から世田谷学園高校、天理大学と名門で技を磨いた。世界選手権は2013、15、19年と3度制覇。最新の世界ランキングは7位、得意技は内股と大外刈り。

川井梨紗子(女子レスリング57kg級=ジャパンビバレッジ)

リオの時とは違って今回はオンラインで壮行会を開いていただき、画面越しではありましたが、やはり五輪は特別だなと感じました。自分自身、リオよりも経験を積み、5年間いろいろなことがあったと思い返しました。これまで大きなケガもなく順調にきていると思います。やるしかないという思いを持ちながら、万全の状態で挑めるように毎日練習をしています。

開催の延期が決まった時は「このままで本当にできるのだろうか」と気持ちが不安定になったんですが、家族や指導者のみなさんのおかげで気持ちを持ち直し、ここまでくることができました。

コロナ禍で開催される五輪に向けて、いろいろなことが初めてづくしでしたが、日本代表としての役割を果たすために、ベストパフォーマンスを見せられるように準備するのが第一だと考えています。

出場するからには金メダル(2連覇)を目指します。ただ、2連覇にこだわり過ぎないようにしたいですね。(吉田)沙保里さんからも「結果は後からついてくるもの」といわれてきていますので、初挑戦の気持ちで優勝を目指して頑張りたいと思います。

<Eriko Kawai>
1994年11月21日、石川県生まれ。2016年リオデジャネイロ大会・女子レスリング63kg級女王。父・母とも国内外で活躍したレスリング選手で、幼いころから指導を受ける。ジュニア時代からその名をとどろかせると至学館大学で才能が開花し、世界選手権3連覇を果たすなどトップレベルを維持し続けている。妹・友香子も62kg級ので東京大会代表に内定、姉妹揃ってのメダル獲得に期待がかかる。

三宅宏実(女子重量挙げ49kg級=いちご)

コロナ禍で壮行会を開いていただいたことに感謝したいですし、出場選手のみなさんとそろいの日本代表Tシャツを着て参加できたことをうれしく思います。あともう少しで大会も始まるので頑張りたいです。

五輪の開催が1年延びたことで(加齢による)体力の低下などもあり、調整の難しさを痛感しました。5年前のリオはケガをしながらの出場だったので、東京ではしっかり治して臨みたいと思っていましたが、なかなか思うようにいきませんでした。でも、それが30歳代での調整だと割り切り、経験として蓄積することにしました。5度目の五輪になりますが、指導者である父や周囲のみなさんが導いてくれたおかげで今日があると思っています。

<Hiromi Miyake>
1985年11月18日、埼玉県生まれ。父は1968年メキシコシティ大会重量挙げ(フェザー級)銅メダリスト、叔父は1964年東京大会、メキシコシティ大会で連覇を果たした、重量挙げ界のサラブレッド。若いころから将来をしょく望され、2012年ロンドン大会で2位に入り、女子重量挙げ史上初のメダリスト、3組目の親子メダリストとなった。2016年リオデジャネイロ大会でも腰痛に悩まされながら銅メダルを獲得。射撃・中山由起枝とともに、柔道・田村亮子以来の女子選手による5大会連続出場(史上2人目)。

スポトリ

編集部