冬季五輪メダリストを数多く輩出、ノルディック複合王国・長野県

河野 孝典
渡部 暁斗

長野県で生まれたオリンピアンによって、もたらされた五輪のメダル数は夏・冬合わせて21個(夏5、冬16)。最初にメダルを長野県へ持ち帰ったのは渋木綾乃(岡谷市)。「東洋の魔女」の一員として、1964年東京五輪女子バレーボールの金メダル獲得に貢献した。

長野県出身で最多となる4個のメダルを保持しているのは、ノルディック複合・渡部暁斗(白馬村)。渡部は、2014年ソチ五輪(ロシア)・2018年平昌五輪(韓国)でともに個人2位。2022年北京五輪も個人3位、団体3位と、自身だけでなくチームも向上させた。実弟の善斗(白馬村)は北京の団体メンバーとしてともに戦い、銅メダルを獲得した。

渡部に次ぐ3個のメダルを保持しているのが、同じく河野孝典(野沢温泉村)。河野は、1992年アルベールビル五輪(フランス)、1994年リレハンメル五輪(ノルウェー)で団体を連覇。リレハンメルでは個人でも2位。荻原健司と同時期に活躍し、互いに切磋琢磨しながら世界トップの実力を示してきた。

河野の活躍を見た渡部ら、渡部らの活躍を見た山本涼太(木島平村、北京・団体銅)とバトンはしっかり受け継がれ、ノルディック複合王国・長野県を堅持している。

長野県人による活躍は近年顕著で、メダル保持者のうち7割は2010年以降で獲得したものになる。そして、「初」に縁のある選手が多いのも特徴だ。

女子の金メダリストは前述の渋木、スピードスケート・小平奈緒(茅野市)の2人。小平は、初出場となる2010年バンクーバー五輪(カナダ)のチームパシュートで銀メダルを獲得。平昌では500mでついに表彰台の頂点に上り、日本の女子スピードスケート選手として初の快挙を成し遂げた。

2008年北京五輪(夏季)の陸上・400mリレーでは、塚原直貴(岡谷市)がリレー種目で初の銀メダルを獲得。2016年リオデジャネイロ五輪では、バドミントン女子の奥原希望(大町市)が個人として、50km競歩で荒井広宙(小布施町)が競技として、初のメダル(ともに銅)を首にかけた。

長野県出身のスポーツ選手による活躍は、五輪以外の世界大会、プロの世界でも良績を残すが、データが多岐に及ぶため、五輪に絞った。自身の努力によって結果を残してきた長野県出身のスポーツ選手たちに敬意を表したい。

小平 奈緒
奥原 希望

県内のスポーツチームと高校レベルでの活躍

長野県のスポーツチーム(HT=ホームタウン)

長野県内には、プロスポーツチーム、プロの下部組織、独立系などチームが点在している。

注目したいのは、カーリング。平昌五輪で日本代表を丸ごと抱えていたSC軽井沢だったが、その後に〝分割する形〟で新たにTM軽井沢が立ち上がった。ライバルチームの存在はレベルアップにもつながるため、今後、長野県から世界で活躍する選手が輩出される可能性は高い。

高校レベルでみると、バレーボール、新体操、陸上、冬季競技での活躍が目覚ましい。

岡谷工業(岡谷市)は春の高校バレー3連覇を含む4度の優勝、2000年インターハイ(IH)制覇など、1990~2000年代の高校バレー界をリードしてきた(北京五輪・日本代表の越川優は同高出身)。

その後、県内では松本国際(松本市、旧:創造学園)が台頭し、2度IHを制している。一時低迷した岡谷工業は2022年、15年ぶりに春高バレーに出場し、古豪復活を果たした。

新体操では、伊那西高校(伊那市)が全国トップ校として県内を引っ張る存在。橋爪みすず監督指揮の下、2000年代半ばから全国大会で良績を残すようになり、2015年には念願のIH制覇を達成した。

橋爪監督は、岡谷工業を率いていた壬生義文監督とともに「長野県の高校スポーツを盛り上げよう」と、互いに励ましながら選手を指導し、優勝を誓い合っていたという。

自然に〝高地トレーニング〟ができる土地柄なのか、陸上長距離界でも長野県勢は健闘している。中でも佐久長聖(佐久市)の知名度は高く、2012年ロンドン五輪・陸上5000m日本代表の佐藤悠基ら名ランナーを数多く輩出している。

25年連続で出場中の全国高校駅伝では2008、2017年に優勝。昨年の女子優勝校は長野東(長野市)で、佐久長聖は2位に終わり、惜しくも県勢アベック優勝を逃した。

冬季競技も長野県内の高校は活躍している。冬季IHの中でもスキー競技は、ジャンプ、クロスカントリー、ノルディック複合、アルペンなどの個人競技に加えて、これらの総合成績を争う学校対抗戦になっている。昨年は、飯山(飯山市)が男子総合優勝・女子準優勝、中野立志舘(中野市)が男子準優勝、女子3位と表彰台をほぼ独占した。

スポトリ

編集部