南北に延びる長野県、各地の特徴を生かした生産力

長野県各地域の収穫物(農林水産省より転載)

長野県は、山間部、平野部と地形が複雑で南北に長く、平均気温や降水量、日照時間が地域によって異なるため、全域でさまざまな農産物が作られている。耕地の約8割は標高500~1500mに位置し、水田の約3割は傾斜地に存在している。

農林水産業は、変化に富む自然条件、東京圏・大阪圏・名古屋圏と三大都市圏に比較的近い立地条件から、アルストロメリア(切り花類)、園芸作物、米、きのこ類など多彩な生産がおこなわれ、水稲の10a(1000m2)当たり平年収量が高いのが特徴。特に、野菜、果樹、花き等の園芸作物の生産量は、全国上位となっている。

産品の強みや魅力を可視化する「地理的表示産品」には、長野県から「市田柿」「すんき」が登録されている。これらは、農林水産省が主導する「地理的表示(GI)保護制度」の下、地域ならではの産物のブランド化や国内外の模倣品対策として、日本の産物を保護している。

生産量ランキング上位多数、長野県の農産物を見てみよう!

農水省から発表された最新のデータから、長野県の生産力をみていく。

長野県は、標高1000m近辺の高地で栽培される「高原野菜」のメッカとして知られる。サラダなどで使用頻度の高いレタス、国内生産の約50%を占めるセルリー(セロリ)は日本一。他にも、白菜(2位)、パセリ(2位)、ブロッコリー(7位)、アスパラガス(8位)、大根(9位)と、多くの作物を生産している。

根菜類のサトイモ(2位)、ばれいしょ(ジャガイモ、6位)、国内消費量トップの野菜・キャベツ(5位)などの生産量も多い。米の生産量は全国12位も、1000m2(田んぼ一反とほぼ同じ)の収穫量は日本一。「信州そば」で名高いソバは全国2位になっている。

みかんに次いで、日本で多く生産されるりんごの生産量は2位。長野県で作られ始めたのは1873年で、歴史は意外と浅い。当時、果樹栽培を奨励していた内務省が、全国へ果樹の種子を配布し始めたのがきっかけといわれる。その後、善光寺の参拝客にお土産として売り出したところ大ヒットし、県内での生産・全国への出荷が加速した1)

日本人が好きなぶどうも生産量2位。生産の端緒はりんごと同じ国策。松本、塩尻、須坂地域で生産が盛んだったが、植物病害で一時衰退した。それでも、松本市の生産者はあきらめず、気候、自然条件が合致したコンコード種を中心に長期栽培のメドが立ち、長野県は一大産地になった2)。その他の果物の生産は、プルーン(2位)、あんず(2位)、桃(3位)、柿(6位)など。

山の幸・きのこ類の生産は日本トップクラス。えのきたけ、ぶなしめじ、エリンギが生産1位、まいたけ・ひらたけは2位。これは、長野市を拠点とする、きのこ販売大手「ホクト㈱」による生産技術力の向上と関連が深い。わさびの生産は日本で最も多く、国産の約1/3は長野県産。日本の寒天製造の8割は長野県が担っている。

【参考文献・資料】
1) 原田 尚美 : 長野県のりんご産業 : その歴史といま, 長野国文, 20, 27-51 (2012)
2) 柴 寿 : 長野県のブドウ栽培の生い立ちと技術, Journal of ASEV Japan, 8(1) 25~31 (1997)
・令和3年「野菜生産出荷統計」
・令和4年「産作物統計(普通作物・飼料作物・工芸農作物)」
・令和3年「果樹生産出荷統計」
・令和4年「特用林産基礎資料」

スポトリ

編集部